澪はペタリと腰を落とし、そのカクテルを指で軽くすくい舐め取った。

澪「あぁ…あずにゃんが浴室の先に居るのに、しちゃった…。
  そういえば、わたしが脱いだ着替え…パンツを一番上にしたんだけど、見てくれたかな?
  あずにゃんに対抗して、パンダさんパンツにしたんだけど…
  もう、今日の澪にゃんったら積極的っ!」



梓「!?」
 (あーあ…また3位か、SFCマリオカートのタイムアタックがこんな難しいとは思わな
  かった。
  マリオサーキット1で1分切ってる1位の人なんて、どんなプレイしているんだろう…
  しかし、澪先輩遅いなぁ…)

バタン

梓「澪先輩、ずいぶんと長湯でしたね…ふぁ…澪先輩色っぽいです」
 (うぁ…バスローブから、おっぱいがこぼれ落ちそう…
  澪先輩ってこんなにスタイルよかったんだ…)

澪「そ…そうか?」
 (あずにゃんの掴みはバッチグー!バスローブに感謝しなきゃ)

梓「それじゃ、残り時間…全部使ってがんばりましょう♪」

澪(これって、OKってことだよね?いいんだよね!?)




律「うー…寒いし誰も来ないし…もう諦めようかなぁ」

徐々に陽は沈み辺りは薄暗くなってきており、
澪と梓が入った建物はぽつぽつとカラフルにライトアップされつつある。
そして、たまに通り過ぎる冷たい風は、律の下半身を煽る。

律「ううっ… さっむー…」

冷えのせいだろうかプリーツスカートを押さえ、律は太股をこすり合わせ始めた。
もじもじと動くその姿は小動物をイメージさせる。

律(やば…おしっこしたくなってきた…)

内股で必死に尿意を我慢する律の顔色は、どんどん青くなっていく。
肩をぷるぷると震わせ始め、辺りを見回しスクールバッグを漁る。

律(お、コレ使えるかも…)

ジャボッ!
律が取り出したのは張り込みの時に買った、500ml紙パックのレモンティー。
いそいそと中身を捨て、空っぽの紙パックをスカートの中へ潜り込ませた。


律「ん…ふっ… はぁ…」
 (屋外でも、こればかりは恥ずかしいっ…)

ちょろっ… ちょっ… しょぁゎゎ…っ
薄手のショーツを横へずらし、体内から暖かい液体を放出する。
膀胱に溜まっていたのだろうか、しばらく止むことはない。
強張った表情がだんだん緩んでいくのがわかる。

律(うぁ、なかなか止まらない…どうしよう)

~~

「ねぇ、キミ…こんなところで何しているの?」

律「ひっ!?」

律の片手からは、ほのかにアンモニアの香りを纏った湯気が出ている。
そして、水分を放出する音…最早誤魔化すことはできない。

「へぇ~、キミ…おしっこしていたんだ?
 安心して、ちゃ~んと写真撮っておくからね」

カシャッ

電柱の影で立ちションをする少女の姿はとても滑稽である。
律は青ざめるものの、彼女の意思に反して放尿は止まなかった。

「おー…なかなか止まないね、キミのおしっこ…ん?」

少しずつぷっくりと膨れていくクリトリスは、ほんのりと赤みを帯び始めている。
また、クリトリスだけではなく律の顔色も紅潮していっている。

「キミは随分と変態さんなんだね…
 ホテルの前でこんなことするなんて、もしかして誘ってる?」

律は他人に放尿姿を見られ恥らっているのか、瞳に涙を溜め始め首を左右に振った。
ちょろちょろと水分を放出する音は止まず、尿は紙パックにどんどん溜まっていき
重さを増していく。

律「や… 違うっ」

「何が違うの?野外でおしっこを紙パックに溜めるお嬢さん♪」

律「これは、これはぁぁ…」
 (澪…助けて、怖い…怖いよぉ)

ちょろっ…

「どうやら、"しーしーの時間"は終わったみたいだね、それじゃ…行こうか」

律はカサカサとティッシュでデリケートゾーンを拭きはじめた。
そして、これから始まると思われる恐怖に、溜めた涙をポツポツとアスファルトへ落とす。
そんな様子に目をくれることはなく、律の細い手首を強く掴み歩き出した。

律「ちょっ!ちょっと、やめて…  …ください」

写真を見せ付けられた律は、抵抗することを諦め男の言うことに従いホテルへと姿を消した。

~~

律(…なんてことになったら、どうしよう)ぽわぽわ

ちょろっ…
よからぬ妄想を終えたと同時に、尿は無事に切れた。
嬉しさ半分、寂しさ半分といったところだろうか律は微妙な表情をしている。
律はことりと生暖かい液体が入った紙パックを置き、
カサカサとポケットティッシュでデリケートゾーンを拭いていると誰からか声をかけられた。

「なぁ…何やっているんだ?」


急に声をかけられ、律はビクッと背中を弾ませいそいそとショーツを元の位置に戻した。
拭き残しがあったのか、ショーツには水分を吸った跡ができている。
そして、おそるおそる後を振り向くと…澪と梓の姿がそこにあった。

二人から漂う同じシャンプーの香り…そしてサッパリとした表情。
律は"澪と梓が抱き合った"と思い、不安げな表情を浮かべる。
すると、澪と梓は律にとどめを刺すような会話をし始めた。

澪「そういえば梓…なかなか上手だったぞ」

梓「でも、澪先輩のリードがあったから私も気持ちよくできたんですよ?」

ここが音楽室だったら…律はいつも通りに笑い飛ばしていたかもしれない。
しかし目撃現場にいる上、事実を知った今の律にそんなことができる余裕は無かった。

できることといえば、立ち去ることか、泣きじゃくって座り込むことくらいだ。
これ以上耐えられない…悔しさと寂しさで涙がじわりと込み上げてくる。
二人が談笑している隙に、律はそっと立ち去ることにした。

澪「さて、いつものように二人で帰るか…あれ?」
 (あずにゃんと一緒の匂い…しばらく制服に染み付くだろうな)

梓「律先輩…?」
 (もしかして、今まで私と澪先輩をつけていたのって…律先輩だったのかな?)

タッタッタッ…
律は今日のことを忘れようと、ひたすら走った。
彼女の髪の毛は乱れ、アクセントでもあるカチューシャははずれつつある。
しばらく走り続け、精神的にも肉体的にも疲弊した律は近所の公園で休憩することにした。
そしてベンチに座り込み、いままで我慢していた涙を流し始めた。

律「えぐっ…澪… みおぉ…」



「あら…?律じゃない」

聞き覚えのある声…律は薄暗い中確認すると、メガネをかけた少女がそこにいた。

律「の…和… のどかぁぁっ!!」

ギュッ

和「きゃっ、どうしたのよ…泣きついてくるなんて律らしくない…
  ところで、その袋の中身何?
  パックのジュースが少し溢れているみたいだけど、大丈夫?」

今までずっと澪のことで頭がいっぱいだった律は、
自分の排泄物を封入した紙パックのことをすっかり忘れていた。
口が少し開いたのか、ビニル袋の中に雫が付着している。

律「うわっ!こここ…これは… ちょっとトイレ!」

律の顔は真っ赤に染まり、泣き顔から慌てる顔へ変化した。
あまりの変化ぶりに心配した和は律の顔を覗きこむが、
律にとっては羞恥プレイに等しい。
全力で紙パックの入ったビニル袋を持ち、トイレへ駆け込んだ。

和「ん?」

ザバー…ッ

律(あっぶな…すっかり忘れていた…危うく家まで持ち帰るところだった)

和「それで…ベンチで泣いているなんて、何があったの?」

律は尾行開始から澪と梓がホテルから出るまでを全て話した。
(さすがに日ごろガサツである律でも、紙パックに放尿したことは話せなかったが…)

和「そ…そんなことがあったの!?」

律「そうなんだ…幼馴染が肉体的に奪われる感じって、こうなのか?」

和「いや…確かに唯と私は幼馴染だけど…
  そういう"好き"という感情を抱いたことが無いから、なんとも言えないわ」

律「そっか…和、ありがとう。
  打ち明けることができて、何だか胸がスッとした気がするよ…」
 (そっち系の話は、やっぱりムギに頼るしかないか…。)

和「ふふ、少しでもチカラになれて嬉しいわ…それじゃ、また学校で」

バイバイと手を振り、和は律を後にした。
そして、和が公園から出ていったことを確認した律は、
澪を祝福すべきか、奪い返すか悩んだ…。

律(そんな時、あの子ならどうするだろう…?)

律は恋愛についての知識が不足していることを悔やみ、
助言してくれそうな人の下へ足を運ぶことにした。


-平沢家-
律「唯が誰かに取られたらどうする?」

憂「死刑…いや、私刑にするかも…」

律「…」
 (答えは解っていたようなものだけど、唯に触れようものなら極刑かよ…。
  かわいい顔して、なんてことを言うんだ…)

憂「…」
 (そういえば放課後…
  律さんのことを、さりげなくデコピンして気絶させたんだっけ。
  忘れていてくれてよかった…)

唯「ねーねー、りっちゃんもせっかくだから遊ぼうよぉ…」

唯は両手に、梓を模した「あずにゃん」と澪を模した「みおにゃん」なる
パペットをつけて、一人おままごとをして遊んでいる。
それを見た律は、夕刻にあった出来事を思い出し瞳に涙を浮かべた。

憂「律…さん?」

唯「りっちゃんどうしたの??」

唯は「あずにゃん」と「みおにゃん」でそっと律の涙を拭った。


涙を拭い終えると、唯は「あずにゃん」を律のおでこに近づけ、
キスの真似事をしようとした…その時。

パシッ…

憂「!?」

唯「えっ!?」

律の手により弾かれたパペットは宙を舞い、床へぱさりと落ちた。
憂がいるというのに、唯に対しての冷たい行為。

律は憂に何かされることを不安に思ったが、どうやら杞憂だったようだ。
彼女は律に注意することも怒ることもせず、ただ微笑みかけエールを送った。

憂「…がんばってください」
 (そっか、律さんは澪さんのことが好きなんだ…
  叶わぬ恋に一途になるなんて、なんか…私みたい。
  私のとってきた行動そのものを、律さんに勧めればいいんだよね?
  …おねえちゃん)


澪(今日のあずにゃんとの出来事、ずっと忘れない♪
  あずにゃんと同じ、くまさん柄のぱんちゅも買ったしお揃いだにゃぁ)

梓(律先輩…なんで私たちのことを尾行していたんだろう、明日聞いてみようかな…)

律(憂ちゃんのおかげで迷いが晴れた…あのドロボウ猫から澪を取り返すぞ…
  私の幸せは私が掴むんだ… 私が…澪のイチバンになるんだ…)

♪~翌日~♪
ガタッ! ガッシャーン!
ティーセットがひっくり返る音と同時に飛び交う怒号。

律「おい…梓、私たちをナめているのか?」

梓「えっ…でも、今のは律先輩が…」

梓が言いかけた言葉は、律の罵声によりさえぎられた。
怒りに満ちたその声色からは、以前の律とは思えないほどだ。

律「へぇ…梓って、先輩に注意するそんなイケナイ子だっけ?」

梓「痛っ…」

律はツインテールを手綱のように引っ張り、梓を調教しようとした。
どうやら梓を軽音部から追い出し、澪と梓を引き離す魂胆らしい。


普段は「りっちゃん落ち着いて…」という感じで収まるのだが、今日はそうもいかない。
律の豹変ぶりに誰も順応することはできず、皆瞳を潤ませ全身を震わせている。

その中の一人、澪の震える姿を確認した律は彼女に近づき、そっと声をかけた。

律「み~お♪ もう怖くないぞぉ」

わざとらしい猫なで声に、澪はハッと我に返った。

澪「…怖いのは…お前だっ!」
 (あずにゃん、怖かったよね?今日は私と一夜をともにしてもいいんだよ??)

ゴスンッ!

律「痛っ… あはは、やっぱり澪はこうじゃないとな。」

澪のゲンコツのおかげか、いつもどおりの律に戻った…ようだった。
律の目の前にいる梓は急に腰を落とし、落胆した表情を浮かべた。

梓(これから私…どうなっちゃうんだろう…)

律「おいおい梓…しっかりしてくれよ…。…これからなんだからさ」


日没近い時間になり練習はサイドギター担当の少女を除き、無事終えることができた。

梓(はぁ…恐怖で手が震えて全然弾けなかった…)

澪「それじゃ、今日は用事があるから先に帰るな」

梓「あっ、今日は私も失礼します」
 (結局、律さんが私たちを尾行していた理由…聞けなかったな)

紬「あらあら、仲がよろしいようで♪」

その時、紬の言葉が律の琴線に触れた。

律「おい…梓は残れ…」

澪「なんで梓だけなんだ?」
 (あぁぁ…今日はあずにゃんとお買い物Dayなのにぃっ!)

律「澪は黙っててくれ」


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最終更新:2010年01月27日 03:05