梓「今日の体育は走り高跳びだね」
純「あ~あ、今日はテニスしようと思ってたのに……」ブー
憂「まあまあ、雨じゃ仕方ないよ」
純「わしの波動球は108式まであったんだぞーっ!」
梓「絶対そんなの打てないでしょ……」
純「ただ跳ぶだけなんてつまらないよー……あっ、そうだ!ねえねえ二人とも、勝負しない?」
憂「勝負?」
純「そう、誰が一番高く跳べるか!ビリの人には罰ゲーム!」
梓「また純はそんなことを……私はやらないからね」
純「あれあれ~?ひょっとして梓は負けるのが負けるのが怖いのかな~ん?」
梓「なっ」ムカ
純「まあ仕方ないか~。私と憂が相手じゃ勝負にならないもんね~?」ニヤニヤ
梓「そ、そんなわけないでしょ!いいよ、受けて立ってやる!」ニャオーン
純「うむうむ、扱いやすい奴め。憂もやるよね?」
憂「わ、私は見てるだけでいいよ~」
純「えー?憂もやろうよー」
憂「えっと、じゃあ私は審判を……」
純「あっ、そういえば唯先輩がこの前……」
唯『誰よりも高くジャンプ出来る人って素敵だよね~♪抱きしめて頬擦りしてナデナデしたい!』
純「って言ってたよ?」
梓(絶対嘘だ……憂だってそんな話を信じるわけが……)
憂「そ、そっか……お姉ちゃんが……」
梓(信じてらっしゃる!?)
憂「……うん!私もやるよ!」フンス!
純「いよっしゃー、全員参加!燃えてきたぞー!」
憂「負けないからね梓ちゃん!お姉ちゃんのハグは私のものだよ!」
梓「あはは、お手柔らかに……」
……
純「ルールは単純!バーの高さを上げていって、一回でも跳べなかったら脱落。最後まで残った人が優勝です!」
憂「一回で失敗かあ。けっこう厳しいね」
純「じゃあ最初のバーの高さは……梓、決めていいよ」
梓「えっ?私?」
純「梓が確実に跳べる高さを決めていいよ~♪」ニヤニヤ
梓「……」
梓(純め、余裕綽々だな……)
純『まあ梓は相手じゃないよね、ちっちゃいし。まずはウォーミングアップをして、憂との一騎打ち!』
梓(……とか考えてるに違いない。むむむ……でもそれは間違ってはいないよね。私あんまり跳べないし)
憂「梓ちゃん?どうしたの?」
梓(でも純に負けるのはなんか嫌だ。罰ゲームも何をさせられるか分かんないし)チラッ
純「ん~?どしたの梓」ニヤニヤ
梓(くっ、私は一体どうすれば……!?)ギリリッ
『ほっほっほ。梓殿、迷うておりますな』
梓(だ、誰っ!?)
律『敵を知り己を知らば百戦して危うからず。戦力差を認めた上で勝つにはどうすればいいのか……』ソヨソヨ
梓(り、律先輩!?)
律『敵には慢心が見えましょう。まずはそこを突くのが上策……動揺させその隙を狙えば、勝ちを掴むなどたやすいこと』パタパタ
梓(慢心……動揺……?)
純「あずさー、早く決めてよー」
梓(……はっ!そ、そうか!分かりましたよ律先輩!)
律『はっはっは、では私は勝利の報告を楽しみに待っておりますゆえ』スルスル
梓(ありがとう律せんぱ……いや。謝々、謝々諸葛律先生……!)
梓「決めたよ、最初の高さは……90センチ!」
憂「90だね?じゃあセットしてくるよ」タタッ
純「90って梓、小学生じゃないんだから」プププッ
梓「ふふっ、笑っていられるのも今のうちだよ純」
憂「セットできたよ~」
梓「よし、じゃあ私から行くよ」
純「どうぞどうぞ」
憂「梓ちゃん、頑張って!」
梓「む~……ふんっ!」ピョンッ
……
梓「全員クリアだね」
純「まあ90だしね。じゃあ次は……」
梓「……130」
純「え?」
梓「次は、130でお願い、憂」
憂「う、うん。分かった」タタッ
純「ちょ、ちょっと梓、あんた正気!?いきなり40センチも上げるなんて……」
梓「……」
梓(ふふ、動揺してるね純。いきなりこんなに上げたんだから無理はないけど)
憂「準備できたよ~」
梓「よし……!」グッ
純「は、はは。あ、梓があの高さを跳べるわけが……」
梓(そう、ここが勝負。これを私が跳べなきゃ意味がない!今の私にとっては間違いなく限界ギリギリの高さ……!)
梓「はあああああああっ!」タタタッ
梓(跳ぶんだ!私!)ピョンッ
…ボフッ
純「と、跳んだ……」
憂「梓ちゃんすごーい!」
梓(いよっし!計画通り!)
梓「ふう……次は純だね。でも私が跳べたんだから、純も楽勝だよね?」ニコニコ
純「あ、ああ当たり前じゃん。みみ見てなよ、私の華麗な跳躍を」
憂「純ちゃん頑張れ~」
梓(ふふふ、動揺してるね純。そう、純の敗因は……)
純「大丈夫、普通にやれば跳べる高さだから落ち着いて……」タタタッ
純「……あっ!?しま、踏み切り足をまちが――――」グッ
梓(油断と慢心、そしてプレッシャーに弱い心だよ!)
…ガシャーンッ
……
純「うう、まさか梓に負けるなんて……」
梓「ふふん」
憂「ドンマイだよ純ちゃん!」
純「はあ……それで次の高さはどうするの?」
梓「……」
梓(憂は130を何なくクリアした。やっぱり純のようにはいかないか……)
梓(しかし私には先生がいる!先生、策をお願いします!)
律『……』ソヨソヨ
梓(先生?諸葛律先生?)
律『憂ちゃんすげーなー。私の軍にも憂ちゃん欲しかった……無念』スー
梓(あれ、先生?策は……)
律『三十六計逃げるに如かず!』ダッ
梓(あっ!ちょ、諸葛……逃げるな田井中ーっ!)
純「まーた梓が長考してるよ」
憂「梓ちゃん、決まった?」
梓(……ええい、こうなったら!)
梓「……170!170センチで勝負だよ憂!」
純「ええええっ!?さ、さすがにそれは無理なんじゃあ……」
憂「あ、梓ちゃん……」
梓「いいから純はセットしてきて!」
純「う~……どうなっても知らないからね!」
憂「うう、170かあ……」
梓(ふふふ、さっきまでの憂のジャンプを見る限りオーソドックスなはさみ跳び……ざっと150くらいが限界と見た!)
梓(多めに見積もって170……もちろん私も跳べないけど、憂にだって無理なはず!)
純「セットできたよ~」
憂「あ、ありがとう純ちゃん」
梓(授業時間はあと少し……そう、私の狙いは引き分け!もとい、同点優勝!)
純「また梓は考え込んで……憂、時間ないし先行けば?さすがにあの高さは無理な気がするけど……」
憂「うん、そうだね。じゃあ……」
梓(これで私も唯先輩に……いや違う違う、そういうのが目的じゃなくて)
憂「梓ちゃん、ごめんね」
梓「……えっ?」
憂「私、負けるわけにはいかないんだ。だから……」グッ
梓「う、憂……?」
憂「……本気で、行くよっ!」ダッ
純「憂、速い……!」
梓「で、でもいくら憂が本気になっても170センチなんて高さを女子高生がはさみ跳びで跳ぶのは……」
憂「ん~……えいっ!!!!」グッ
フワッ
純「わあ……!」
梓「そ、そんな……あれは背面跳び!?」
――――そのジャンプは
今までよりも高く
美しい弧を描いた――――――
…ボフッ
……
唯「うい~♪」ギュウウッ
憂「お姉ちゃ~ん♪」ギュウウッ
純「いや~、負けた負けた!憂には完敗だった!」
梓「むう……」
純「梓の最後のジャンプは無様だったね~」プププ
梓「うっさいビリ」
純「な、なにーっ!梓のくせに梓のくせに!」ポコポコ
梓「はいはい」
純「……それにしても、憂を思いっきり抱きしめて下さいって頼んで即応するんだね唯先輩は」
梓「まあ唯先輩だし」
唯「いい子いい子♪」ナデナデ
憂「えへへ///」
純「……ま、幸せそうだからいっか」
梓(次は絶対に負けないからね憂……!)
憂「おしまい」
おしまいです
どうもでしたー
最終更新:2012年01月23日 23:04