放課後 軽音部部室
紬「お茶入りましたー」
澪「ありがとう。・・・今日も美味しいな」
唯「それに、このティーセットが良いよね」
澪「確かに。私達は気楽に使ってるけど、本当は結構高いんだろ」
律「そんな事気にしないで、みんなはお茶を楽しんでくれよ」
澪「お前が言うな」 ぽふ
唯「やっぱり何十万とか何百万とかする訳?」
紬「まさか。毎日使う物だから、割れても良いようにそれなりの物を持って来てるの」
律「ムギにとってはそれなりでも、私達にとっては拝むレベルかも知れないからな」
紬「本当、それ程高い物は持って来てないわよ。むしろ、毎月のお菓子代の方が高いくらい」
唯「え」 びくっ
澪「なんだか、怪談よりも怖い話を聞いた気がする」
律「明日から、水と氷砂糖にするか・・・」
カチャ
梓「済みません、遅れました」
紬「今、お茶の準備するわね」
梓「ありがとうございます。・・・なんですか、唯先輩」
唯「お菓子、大切に感謝を込めて食べた方が良いよ」
梓「それは唯先輩が、でしょ」
律「お前、ムギの持ってくるお菓子がいくらか知ってるのか」
唯「少なくとも、たらこじゃないよね」
律「誰が、魚卵の話をしたんだよ」
紬「今日のお菓子はアップルパイでーす」
梓「頂きます」 はむはむ
唯「美味しいね-」
澪「うん、本当に美味しいな
律「んめー、んめー。・・・って、喜んでる場合じゃねー。いや、喜んでる場合だけど」
梓「何の話ですか、さっきから」
澪「ムギの持ってくるお菓子は結構高価で、一月分だとこのティーセットよりも高いそうだ」
唯「だから、大切に食べないと駄目なんだよ」
梓(生クリーム、鼻についてるし)
紬「みんなさっきから色々気にしてるけど、本当に大丈夫だから」
澪「そうは言ってもな。高い物は、大切に扱わないと」
唯「はっ」
律「ひらめいた、みたいな顔したな」
梓「・・・抱きしめないで下さいよ」
唯「あれ、気付いてた?」
律「私の大切な物はあずにゃんだよー、みたいな話か」
澪「確かに唯っぽい行動だな」
唯「でもやっぱり、あずにゃんなんだよー」 きゅっ
澪「本当に唯は仕方ないな」
梓(全くです♪) くんかくんか
律「あー、うまかった。・・・でだ。私達の大切な物って言うと」
澪「やっぱり、楽器だろ。というか、それ以外の答えはない」
唯「そだね。ギー太に何かあったら、私泣いちゃうよ」
梓「それにレスポールですからね。私なら、違う意味で泣いちゃいます」
澪「ギターやベースは何かあった時すぐ動かせるけど、ドラムとキーボードはきついよな」
律「重いしかさばるし。逃げてると、共倒れになりかねん」
唯「いざとなったら、私も手伝うよ」
澪「仕方ないな」
梓「及ばずながら」
紬「さながら三勇士ね」
唯、澪、梓「あはは」
律「爆弾じゃないぞ、おい」
唯「楽器以外だと、何が大切?」
律「部室とか、講堂とか。私達が軽音部なら、その辺は大切だな」
梓「だったらトンちゃんもです」
紬「梓ちゃんは、本当にトンちゃんを大切にしてる物ね」
唯「その内、恩返ししてくれるかな」
紬「でも竜宮城へ行くには、ちょっと小さすぎない?」
澪「大丈夫。その時は、決して覗かないで下さい」
律「お前ら、まずは突っ込まれる順番を決めろ」
紬「大切な物、大切な物。・・・澪ちゃんだと、歌詩を書いたノートとか?」
律「私だったら、速攻で燃やしたくなるけどな」
澪「なんだと?」
紬「まあまあ。でもノートが無くなる可能性もあるから、ちょっと心配じゃない?」
澪「心配ない。全ページコピーを取って、部室と家にそれぞれ保管してる」
律「後で見つかった時、黒歴史になりそうだな」
澪「何言ってるんだ。それはきらきらきらめく魔法の言葉。戸棚の奥から現れた、10年前の宝物だ」
梓(さらっと語り出したし。10年間も軽音部にいるし)
律「唯はさっきから静かだな・・・。って、寝てやがる」
梓「唯先輩、唯先輩」
唯「・・・あずにゃん、どしたの」 じゅるり
梓「それは私の台詞です。もう、部活中に寝ないで下さいよ」
唯「ごめん、ごめん。ただ私的には、寝てる時とか何もしてない時間が大切なんだよね」
紬「それ、すごく分かるわー」
澪「確かに一理ある」
律「結局、寝てるんだけどな」
澪「唯も起きた事だし、練習するぞ」
律「あーあ。練習しなくても上手くなれれば良いのにな」
澪「そんな都合のいい話があるか。何事も努力努力。努力に勝る近道無しだ」
梓「はいです」
唯「でも、急がば回れって言うよね」
紬「ずっと回ってたら、どうなるのかしら」
唯「やっぱり、バター?」
紬「でもって、ばったり倒れちゃったりして?」
唯、紬「あはは」
律「ばっさり切り捨てるぞ、お前ら」
30分後
紬「・・・開けて良いよね-♪」 ぴらりらーん
律「ふー。結構上手く行ったんじゃないか?」
澪「これもみんなが努力をしたからだ」
唯「それもあるけど、やっぱり歌詞や曲が良いからじゃない?」
梓「ムギ先輩の声も素敵ですしね」
律「さすが合唱部志望だった事はある」
澪「私達が、強引に勧誘したんだけどな」
紬「でも私は、軽音部に入部出来てすごい幸せよ♪」
梓(懐が深いというか、人が良いというか。良い匂いというか♪) くんかくんか
夕方 商店街
澪「私達の中でメインボーカルをやってないのは、律と梓か」
梓「い、いえ。私は結構です。正直、自信無いですし。ギターで精一杯ですし」
唯「となると、りっちゃんがボーカル?」
律「い、いや。私も良いよ」
唯「どして?」
律「そ、それはその。・・・は、恥ずかしいじゃん」
紬「あらあら♪」
梓「ちょっと意外ですね。そういうの、全然平気だと思ってました」
澪「こう見えて、律は結構繊細なんだ」
律「こう見えてってなんだよ。こう見えてって」
律、澪「なんだとー」
梓(何気に仲が良いな、この二人)
夜 平沢家リビング
唯「・・・という訳で、楽器もだけど歌詞や曲も大切だと思うんだ」
憂「そうだね。いくら演奏が上手くても、歌詞やメロディが良くないと心に響かないし。でも曲が良くても、演奏が駄目だと良くないし。音楽って難しいね」
唯「知れば知る程、音楽は奥が深いよ」
憂「お姉ちゃんも、すっかりミュージシャンだね」
唯「そかな」
憂「そうだよ。私、今の内にサインもらおうかな」
唯「私のサイン第一号は、憂に決定だね」
憂「ありがとう、お姉ちゃん♪」
唯「憂ー♪」
翌朝 3年生教室
唯「という訳で昨日は、憂にサインを書いてあげました」
和「姉妹で何やってるのよ、あなた達」
唯「てへへ。そういう和ちゃんは、何が大切?」
和「・・・そうね。すぐ思い付くのは、眼鏡かしら」
唯「やっぱり無いと困る?」
和「歩けないって程ではないけれど、唯と憂の見分けは付かなくなるかも知れない」
唯「きりっとした方が私で、優しい方が憂って覚えればいいよ」
和「唯。あなた、まだ寝てるの?」
律「うーっす」
紬「きねー」
唯「ぺったん、ぺったん。ぺたぺったん♪」
唯、紬「あはは」
律「・・・いや、そういう事じゃないから」
和「相変わらずね、あなた達は」
澪「私は違うぞ。月のウサギもお餅をつくよ。今夜は満月カーニバルだ」
和(むしろ、一番ひどいんじゃないの)
唯「和ちゃんは、眼鏡が大切なんだって」
紬「それで行くと、りっちゃんはヘアバンドかしら」
唯「ああ、なるほどね。ちょっと交換してみたら」
律「ま、良いけどさ。ほら」
和「はい、私も。・・・こんな感じかしら」 すちゃっ
紬「・・・素敵♪」
澪「うん。驚くくらい似合ってるな」
唯「和ちゃん可愛いよ。すごく似合ってるよ。さすが和ちゃんだよ」
和「もう、唯は大げさなんだから」
澪、紬「あはは」
律「で、私は置いてけぼりですか」
2年生教室
純「サインかー。澪先輩のサインなら、素で欲しいな」
梓「今度、澪先輩にお願いしてみたら?」
純「それは恐れ多いというか、なんというか」
憂「だったら、梓ちゃんのサインをもらったら?」
純「じゃあ、この空欄にお願い。印鑑も一緒にね」
梓「これは、純の借用書でしょ」 ぽふ
純「ちょっと備品を借りただけだって。梓は、そういう雑用とかやらないの?」
梓「・・・あまり考えた事無いな」
純「あんたね。軽音部で、唯一の後輩でしょ。そこは労を惜しまなくてどうするのよ」
梓「うっ」
憂「それだけお姉ちゃん達は、梓ちゃんを大切に思ってるんじゃないのかな」
純「もしくは、甘やかされてるかだね」
憂「でも厳しいお姉ちゃん達も想像出来ないし、やっぱり人は褒められて伸びるんだよ」
純「もう、憂も甘いんだから。大体梓って、甘えるのも下手でしょ」
梓「甘えるって、例えば?」
憂「ごろにゃーん♪とか?」
梓、純(憂ー♪)
最終更新:2012年01月30日 00:32