ファミレス
梓「なんの話ですか」
律「おいおい梓。しばらく会わない間に察し悪くなったんじゃないか?」
梓「……澪先輩の話、ですか」
律「なんだやっぱわかってんじゃん」
梓「休日にいきなり呼び出してきたOGがしょっぱなから愚痴を言ってくるとは考えたくなかったので」
律「お前前にも増して毒吐くようになったな」
梓「で、なんですか?コンプレックス?」
律「おお、そうだ。腹立たしいとは思わないか?」
梓「うーん、あんまり考えたことないですけど。ていうか澪先輩って巨乳コンプレックスじゃないんでしたっけ?」
律「ちげーよ。も、昔から全然コンプレックスじゃねーよあいつ」
律「下ネタNG、怖い話NG、痛い話NG、人見知り、恥ずかしがり、臆病、引っ込み思案、etc…」
律「全身コレ弱点のくせに、澪のやつどういうわけか自分の胸に関しては全くと言っていいほど恥じらいがないんだよ!」
梓「そうでしたっけ」
律「合宿の時を思い出してみろ。あいつビキニだったろ。しかもけっこう攻撃的な」
梓「まぁ…そうですね。言われてみればそうでしたね。正直最初は面食らいました」
律「だろ?コンプレックスどころかホレ、どーん!と。ボイーン!と。ドヤ胸炸裂させてるんだよあいつは」
梓「でも律先輩がたまに胸触るとけっこう本気で怒ってませんでしたか?澪先輩」
律「そりゃ胸触られたら大抵のやつは怒るだろ」
梓「ああ、わかっててやってたんですね…」
律「でさ、あいつ今大学でつるんでる友達がいるんだけどさ、これがまたヤーな感じなんだよ」
梓「へえ、澪先輩友達出来たんですね」
律「まぁな。澪もあれで胸以外も成長してるってことだ。ていうかお前今のそれ澪に失礼じゃね」
梓「あ、いや…。それでその友達がなんなんですか?」
律「その友達がさ、あーその子幸っていうんだけど、これまたデカいんだよ。身長もデカいけどまず胸が。ドーン!って」
律「二人してドドーン!ボインボイン!たゆんたゆんってさせてキャンパス歩いてんの」
律「あああ!くっそ!気分良いだろうなそりゃ!巨乳二人、並び立つって感じでそりゃもう立派なもんだよ!」
梓「ああ、それはちょっと私も悔しいかもしれません…」
店員「お待たせしました。ポテトとナゲットのプレートでございます」
梓「あ、そこ置いといて下さい」
律「……」
梓「……」
律「でさ、こないだなんて澪とその子でブラの話してんの」モグモグ
律「大きいと大変だよねー、かわいいの少ないもんねー、なんつって。何食わぬ顔でしれっとな。巨乳ですが何か?みたいな」
律「も、聞いてないフリするので精一パイだったよ私は」
梓「まぁ…私達には縁のない話ですからね」モグモグ
梓「ところで律先輩は新しい友達とかできてないんですか?」
律「なわけねーだろ。いるわそんなんいくらでも。まぁよく一緒に行動する子は一人かそこらだけどさ」
梓「…でしょうね。そういうのだけはホント上手いですからね律先輩。で、どういう子なんですか?」
律「私より背が低い。あとAカップ」
梓「ああ…」
律「あ、ドリンクバーいってくるけど何か汲んでこようか?」
梓「あ…じゃあメロンソーダで」
律「あいあい」
一分後
律「ほれ」
梓「どうもです」
律「でさ、そいつは私ら以上に胸が小さいのコンプレックスにしてるんだけどさ」
梓「『私ら』って何ですか、『ら』って。私は別にそこまで気にしてませんけど」
律「うそつけよ。じゃあ梓、この…ほら、このテーブルにあるベルスターが胸の大きくなるスイッチだったらどうするよ?」
梓「えいっ!」ポチ
ピーンポーン
律「な?押すだろ?…ていうか押すなよ。店員さん来ちゃうじゃん」
梓「すみません、つい…」
店員「お待たせしました」
梓「あ、えーっと…どうしよう…。じゃあコーヒーゼリーください」
律「私も同じのください」
店員「コーヒーゼリーお二つですね。かしこまりました」
律「…」
梓「…」
律「…な?やっぱ梓も胸大きくなりたいんじゃん」
梓「そりゃどっちがいいって言われたらそうですけど…」チュー…
律「で、何の話だっけ。ああ、そうそう。私の友達が、あ、そいつ菖って言うんだけどさ、胸小さいのすげー気にしてんの」
梓「いいじゃないですか。気が合うんじゃないですか?」チュー…
律「まぁ気が合うから一緒にいるんだけどさ。そいつは私らと違ってコンプレックス全然隠さないんだよ」
律「どーせ私はAカップですよー!とか言っちゃうの。そういうの先に言われたらこっちとしてはなんとなく譲っちゃうじゃん?そーゆーキャラ」
梓「そういうもんですかねえ」ズズズ…ズゴッ…
律「おい、音立てるなよ。小学生かよ」
梓「あ…すみません」
店員「お待たせしました。コーヒーゼリーお二つでございます」
梓「どうもです」
律「…」
梓「…」
律「ん?あれ?ミルクついてなくね?」
梓「あ、ほんとですね」
律「かーっ!ほらな!貧乳だとこういうところでも乳に縁が無いんだよ!」ガシガシ
梓「いやこれは単に店員さんのミスでじゃないですか」
律「こういう星の下に生まれちゃってんだよ私達は!」
律「これが澪やムギ、あとさっき言った幸だったらミルクポーション五個くらいついてくるぞ!」
梓「無いですって…」
律「あーくっそ!腹立つなー!」ポチポチポチ
梓「ちょ、ちょっと!ベル連打しないでくださいよ…」
店員「お待たせしました」
律「ミルクポーションついてないんですけど」
店員「あっ!…失礼いたしました。すぐにお持ちいたします」タタタ
律「あーくそ…」
梓「荒れすぎですよ。ていうかもしかして胸の話するために私を呼んだんですか?」
律「…うん。梓ならわかってくれると思って」
梓「私受験生なんですけど…。ていうか胸の話ならそれこそその…えーと、誰でしたっけ、大学の友達」
律「菖な」
梓「そのあやめって人にすればいいじゃないですか」
律「いやだからさっき言ったじゃん。貧乳コンプレックスキャラはもう大学じゃ出しにくいって」
梓「律先輩のくせに何恥ずかしがってんですか」
店員「お待たせしました。ポーションでございます。大変失礼いたしました」
律「はーい」
梓「…」パカ…タラーッ
律「…」パカ…タラーッ
律「…で、なんだっけ。ああそうだ。いや別に恥ずかしがってるとかじゃないんだって」モグモグ
梓「じゃあなんなんですか」モグモグ
律「だから単純にもう出鼻挫かれてキャラ出しにくいだけだっつの。話聞いてろよ」モグモグ
梓「そんなみみっちいこと何気にしてるんですか」モグモグ
律「そういうもんなんだよ大人は」
梓「まだ十代じゃないですか」
律「梓も大学生になればわかる」
梓「はぁ」
律「…あ、そういやどうなんだ?新入部員は」
梓「普通に楽しくやってますけど」
律「じゃなくて、胸だよ胸。話の流れ的にさぁ」
梓「まだ続くんですか!?」
律「その話するために呼んだっつったじゃん。で、どうなんだよ」
梓「…はぁ。…そうですね…あ、一人おっきめの子がいますね」
律「どんくらい?」
梓「うーん…この前合宿行った時に水着を見ただけですけど…憂よりちょっと大きいくらい…だったような」
律「憂ちゃんってどんくらいだっけ?」
梓「割と大きいですよ。ムギ先輩にちょっと近いくらい、かなぁ」
律「じゃあその後輩はムギくらいあるんじゃん」
梓「…ですね。はい、そうです。ムギ先輩くらいあったような気がします」
律「あー!もう!ちょっと歩けばそこらじゅうに巨乳はいるってことだよな!何で私らだけこんなんなんだろうな!悔しくね?」
梓「だから私は別にそこまで…」
律「やっぱアレか。その子もけっこうスタイル良かったりすんの?」
梓「そうですね。背も高いですし。私、前にその子の頭撫でようとしたんですけど届きませんでしたし」
律「で、逆に梓が撫でられた、と」
梓「な、そ、そんなことあるわけないじゃないですか何言ってんですか」
律「……で、どうなのよ梓的には。女子としてさぁ。後輩に負けてんだぞ?身体的に!」
梓「うーん…どうって言われても…。まぁ菫は、あ、菫っていうんですけどね」
律「うむ」
梓「菫は綺麗な金髪ですしなんていうか私とは真逆すぎて比較して考えたこともないですよ。だから悔しいとかそういうのは…」
律「え、ちょっと待って。金髪?何その子不良なの?昔のさわちゃん系?」
梓「ああ、違います違います。外国の血が入ってるみたいなんですよ。目も青いですし」
律「なんだ外国の子かよ。じゃあノーカンだわな」
梓「は?ノーカン?」
律「外国人と日本人じゃ勝負になんないじゃん。そりゃ胸もでかいわ」
梓「なんですかそれ」
律「ほら、なんていうか、黒人と日本人で短距離走比べても『ああそりゃ黒人勝つよね』的な?」
梓「なんとなくわかるような…わからないような…」
律「つーか外人いんのか、今の軽音部。つーか桜高」
梓「でも日本育ちですし名前も全然和名ですし。
斉藤菫っていう」
律「へー」
梓「あれ?ていうかムギ先輩から聞いてないんですか?その子ムギ先輩の妹ですよ?」
律「は!?ムギって妹いたの!?」
梓「まぁ妹…みたいなものですけど」
律「いや全然聞いてないし!うわー…マジかよ何それ初耳だわ」
梓「おかげで今年の合宿もムギ先輩のとこの別荘借りれましたよ。しかも例の一番大きいところでした」
律「はぁ~…なんだよいい思いしてんなぁ梓…」
律「つーかさっきも思ったんだけど、梓ってその菫って子の水着見たんだよな?」
梓「?はい、そうですけど」
律「じゃやっぱちゃんと遊んだんだ?」
梓「……」
律「いやー梓が部長だったらスパルタな部活になるかと思ってたけど私らと全然変わんねーじゃん」
梓「……」
律「あ、で、どーよ?梓的に。部長の椅子の座り心地は」
梓「なんですかそれ」
律「部長になりたがってたじゃんお前」
梓「べ、別に特別そんななりたかったわけじゃないですよ!」
律「まぁまぁ隠すな隠すな。で、どーよ?ぶっちゃけけっこう良いだろ?部長ポジション」
梓「ま、まぁ…悪くはない…ですね」
律「だよな、だよな。なんていうの?自分の鶴の一声でビシィッと色々決められるのってけっこう気持ち良いんだよな!」
梓「…律先輩って何か決めたりしてましたっけ?」
律「してただろ!」
梓「すみません、記憶にないです」
律「おま……あーあー…ちょっと時間たつとすぐこれだ梓は。『先輩は最高の部長だったと思います』とか手紙に書いてたのにさぁ」
梓「ちょっ…!?」
律「なんだっけ?いつもいつも元気一杯にとかなんとか…」ゴソゴソ
律「お、あったあった」
梓「ちょ、ちょちょちょ、ちょっと!?何持ち歩いてんですか人の手紙!?」
律「いや私のだろこれ。貰ったんだから。えー、コホン。律先輩へ。いつもいつも元気一杯に軽音部を引っ張って…」
梓「ちょっ!や、やめてくださいよ!返してくださいそれ!」ガタン
律「先輩が刻んでくれる力強いリズムに」
律「いつもパワーを貰いました」
律「もらいました!」
梓「本当にやめてくださいってば!ちょっ…この…!やめて!!」
律「あははは、わるいわるい」シマイシマイ
梓「はぁ…はぁ…」
梓「あぁー…もう…律先輩に手紙書いた事心底後悔しました…」
律「へっへっへ。んで、どうなん?部長らしくビシッとやってんの?」
梓「…律先輩よりはちゃんとしてるんじゃないですかね」
律「え~、ちょっと走りすぎなところもありましたが~律先輩がいてくれたから軽音部は~」
梓「やめてくださいってば!ていうか何で暗記してるんですか!もうこっちも歌いますよあれ!天使にふれたよってやつ!」
律「お、おお…わるいわるい…。よしこの件はこれで和解といこうじゃないか中野くん。お互いダメージ食らうだけだからな」
梓「まったく…」
最終更新:2012年02月05日 20:01