猫「にゃう」

純「うわ、真っ黒。可愛いじゃん」

憂「うん。お姉ちゃんが貰ってきてくれたんだよ」

純「さすが憂のお姉ちゃん」

憂「名前も決めたよ。"梓"っていうの」

純「あずさ、か。いいね」

憂「でしょ。最近お姉ちゃんが軽音部ばっかりで少し寂しかったけど、これからは梓ちゃんがいてくれるから」

梓「にゃー」ゴロゴロ

純「あー、軽音部。沢山部員入ったからねー」

憂「うん。お姉ちゃんもたくさんの後輩を面倒見ないといけなくて、大変みたいだよ。
  へとへとで帰ってくるんだ。休日も練習に行くし」

純「そうなんだ。軽音部って凄い熱心に活動してるから、ジャズ研も負けてられないな」

憂「うん。頑張ってね純ちゃん」

純「ありがと。本当その猫、憂に懐いてるよね」

憂「そうかな?」

純「だって、憂の膝から離れないじゃん。羨ましいぞこのー」

梓「…」スリスリ

純「うわ。これ見よがしに擦り寄っちゃって」

憂「そんな…えへへ」

純「でもなんか、誰かに似てる。梓って名前も、どこかで聞いたことあるような」

憂「えー?梓ちゃんは梓ちゃんだよ。猫の梓ちゃん」

純「いや、夢かな。確かにどっかで…」ジー

梓「?」


よる!

憂「梓ちゃん、ご飯だよー。おいで」コト

梓「にゃー」トテトテ

憂「いっぱい食べてね」

梓「…」モグモグ

憂「えへへ、かわいい」

梓「…」モグモグ

憂「お姉ちゃん、遅いね」

梓「…」モグモグ

ヴーッヴーッ

憂「あ、メール」

「差出人:お姉ちゃん
件名:ごめんね~
本文:練習長引いちゃった!
いまから急いで帰るね!」

憂「…しょうがないよね」

梓「…」モグモグ

憂「梓ちゃんも、早くお姉ちゃんに会いたいよね」

梓「…」モグモグ

憂「…わかんないか」


梓「にゃー」ペロペロ

憂「きれいにたべたね」

梓「…」ペロペロ

憂「おいで」

梓「…」ピタ

憂「抱っこしてあげる」

梓「…」モギュ

憂「えへへ、あったかあったか」ギュ


………

『えっと、平沢さん』

『憂でいいよ。私も、梓ちゃん、って呼んでもいい?』

『あ…じゃあ、憂』

『えへへ、梓ちゃん』

『憂』

『何を二人で名前呼び合ってんの?』

『あ、純ちゃん。今ね、梓ちゃんに憂って呼んでもらってたんだよ』

『ほー。じゃあ、私のことも純って呼んでよ』

『え、あ、』

『だからさ、梓って呼んでもいいよね?』

『うん。…純』

『えへへ。これで私たち友達同士。最強!』

………

パチ


憂「…夢?」

憂「…お姉ちゃん待ってて、そうだ、寝ちゃったんだ…」

憂「…」

憂「…梓ちゃんが、うい、って」

梓「zzz」

憂「…寝てる」

憂「…」

憂「もしかして、本当にどこかで…」

憂「…でも、そんなわけ」

梓「zzz」

憂「梓ちゃん」

梓「…にゃう」パチ

憂「起きた?」

梓「…」モゾモゾ

憂「よしよし」ナデナデ

梓「…」

―――

唯「ただいまー!」

憂「あ、お姉ちゃんおかえり!」

唯「ごめんねうい。連絡する暇もなかったや…」

憂「おつかれさま。さむかったよね。ご飯すぐ準備するね」

唯「わーい!」

憂「今日はお姉ちゃんの好きなハンバーグだよ」

唯「やったー!でへへ…ハンバーグ、ハンバーグ!」

梓「にゃー」

唯「あ、あずにゃん。あずにゃんも、お留守番ありがと!」

梓「…にゃー」

唯「あずにゃんはいい子だね。むちゅちゅー」

梓「にゃーー!」ジタバタ

唯「おおう…よしよし」ナデナデ

梓「にゃう…」ポワワ


唯「ーーでね、澪ちゃんが、ようこちゃんがうまくできないからって、泣いちゃって」

憂「あはは、いい先輩だね」

唯「でもね、私はあきちゃんに教えてもらってばかりで…」

憂「大丈夫だよ。お姉ちゃん上手だもん」

唯「でへへ…あ、あと、りっちゃんはびっくりしてるよ。しゅがちゃんがデスメタル好きだって聞いて」

憂「へー。大人しそうな子なのに」

唯「ムギちゃんとみなちゃんは苗字の読みも一緒だから、すごいよねー」

憂「ほんとだね」

唯「うん」

憂「軽音部、賑やかで楽しそう」

唯「すごく楽しいよ」

憂「いいなぁ」


唯「憂はどう?」

憂「え?」

唯「あずにゃんが家に来て、どう?」


憂「お姉ちゃん?」

唯「ほら、私が軽音部で忙しくなってから、うい、一人だったから」

唯「憂を寂しくさせたくなくて、あずにゃん貰ってきたけど…どうかな」

憂「…ああ」

唯「…迷惑とかじゃ、なかったかな」

憂「ううん。梓ちゃんすっごく可愛くて、一緒にいると楽しいよ」

唯「本当?」

憂「うん!ありがとう、お姉ちゃん」

唯「ういー!」パァァ

憂「ね、梓ちゃん」

梓「…」

唯「よかったぁ。あずにゃんもよかったね」

梓「にゃー」


憂「そういえばお姉ちゃん。どこから梓ちゃんを貰ってきたの?」

唯「内緒だよ」

憂「?」



ういのへや!

憂「梓ちゃん、明日はお休みだね」

梓「…」

憂「お散歩、行ってみる?」

梓「…」

憂「寒いから、嫌かな…」

憂「明日、お姉ちゃんは軽音部なんだ…明後日は私の誕生日だし、ケーキの材料を買いに」

憂「お姉ちゃんのためにおいしいケーキ作りたくて…」

憂「…やっぱり、猫の散歩って変かな」

梓「…」

憂「でも、梓ちゃんとお出かけしてみたいんだ」

梓「…」

憂「…梓ちゃんが来てくれて、私、ほんとに嬉しいんだよ。梓ちゃんのこと大好きなの」

梓「…」

憂「純ちゃんが言ってたみたいに、もしかしたらどこかで会ったかもしれない…とか思っちゃうくらい」

憂「でも、そんなわけはないんだけどね」

梓「…にゃ」

憂「ね、純ちゃんも誘って、一緒に出かけよう?」

梓「…」

梓「…」スリスリ

憂「!」

憂「…えへへ。ありがとう」

梓「…」フワァ

憂「あ、おねむ?ベッドはいろっか」


憂「おやすみ、梓ちゃん」



よくあさ!


憂「お姉ちゃん、朝だよー」

唯「うー…」

憂「軽音部は?」

唯「……はっ!」ガバッ

憂「おはよう、お姉ちゃん」

唯「おはよーういー」

梓「…」

唯「あずにゃんもおはよ!」

梓「にゃー」

唯「おーよしよし。お姉さんが抱っこしてあげよう」ダキッ

梓「にゃー!」ジタバタ

憂「あはは、朝ごはんできてるからね」

唯「おいしい!」モグモグ

憂「フレンチトースト、好き?」

唯「ういの料理はなんでも好きだけど、フレンチトーストは大好きだよ」

憂「よかった。…あ、梓ちゃんにもごはんあげないと」

唯「あ、あずにゃんのは、私缶詰買ってきたから、それをあげるね」

憂「本当?ありがと」

唯「猫缶だよー。あずにゃんどうぞ」コト

梓「!」

唯「食べないの?」

梓「にゃー」モグモグ

唯「かわいいねえ」

憂「うん」

唯「今日は出かけるの?」

憂「うん。純ちゃんとお買い物」

唯「そっか。あずにゃんは連れてく?」

憂「そのつもり」

唯「うんうん」

憂「…ねえお姉ちゃん。変なこと言ってもいい?」

唯「ほえ?」

憂「猫じゃない梓ちゃんのこと、知ってる?」

唯「…猫じゃないあずにゃん?」

憂「うん。ちっちゃくて、黒い髪で…私と同い年で、私のこと『憂』って呼ぶの」

唯「…」

憂「…お姉ちゃん?」

唯「ああ、うん。知ってるし、いるよ。変なことじゃないと思うな」

憂「?」

唯「うーん、だから、憂がそう思うならそうだよ」

憂「そう…?」

唯「じゃあ、行ってきます!今日も練習頑張るぞー!」


ドタドタ
バタン


憂「あ…」

憂「…行っちゃった」


梓「にゃー」

憂「梓ちゃん、ご飯食べた?」

梓「…」

憂「じゃあ、私たちも行こうか」

梓「…にゃー」

憂「ねえ、私たち、どこかで」

梓「…」

憂「なんでもない」


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最終更新:2012年02月22日 23:40