「ねぎなべ!」


律「なん↑でなん↓だろ、気になるネギ♪ 君へのこの思い鍋にして~♪」

梓(帰ってきて早々超ゴキゲン……)

律「おっす梓! 聞いてくれよネギがすごく安くてさ」ニギニギ

梓「分かったから私の髪にぎらないでください」

律「へっへ~、今日はネギ鍋だよん♪」

梓「あ、嬉しい」

律「今日でようやく冬休み突入だからな。軽くお祝いと行こうぜ!」

梓「はい!」


「ネギ鍋ふっふ~♪ 熱々ふっふ~♪」

梓(相変わらず、こういう時には子供みたくはしゃぐんだから)クスッ

「……!? ぬおおぉぉぉっぅいえぅぁっ!!!??」

梓「!? ど、どうしたんですか律先輩っ?」


律「」ずう~ん

梓(打って変わって超ブルーモード……)

律「あずさぁ」

梓「何かあったんですか?」オソルオソル

律「これ……」

梓「ネギが何か?」

律「ニラだった」

梓「……」

律「……」


梓「ぷっ」

律「笑うな!」

梓「だって……くすくす……ニラとネギを……ぷっ」

律「ぬわっっかのおぉっ!!」




「めもりー!」



ゴチャ…

梓「……」

梓「あーもうっ、どうして部屋って掃除してもすぐに汚くなるんだろう」

梓「……」チラッ

カッチコッチ カッチコッチ

梓「律先輩の帰りはまだだよね」

梓「よーし、ちょっと早いけど年末の大掃除しちゃおう!」


梓「ゴミは一つにまとめて」

梓「えっとこの書類はもういらないっと」

梓「このノートのコピーは……律先輩のだけど多分要らないよね」

梓「思い切ってこの服も捨てちゃおうっ」

梓「そういえばこれ、初めてのデートのときに着ていった服だっけ」

梓「……」

梓「やっぱり取っておこう」


梓「テーブルの下も掃除しなきゃ」

梓「うわ、律先輩のペンケースから筆記具が飛び出してるし」

梓「もう、こういう所がずぼらなんだから」ブツブツ


梓「あっ……これって」

梓「律先輩、まだ持っててくれたんだ」


梓「すっかりボロボロになっちゃって」

梓「ここまで大切にしてもらえば、この子も本望だよね」

梓「懐かしいなあ。まだ律先輩と付き合う前のことだっけ」

梓(あれからもうどれぐらい経つんだろう)

梓(………)

梓(………………)


-----



入試本番直前――


憂「週末、いよいよだね」

純「ジャズ研の先輩も追い込みに入ってるよ」

憂「お姉ちゃんは相変わらず、マイペースにやってる」

純「あの人らしいや」

梓(……そっか、もう今週か)

梓(律先輩、大丈夫なのかな……)

梓「……」

憂「梓ちゃん?」

梓「……」

憂「?」フリフリ

純「あずさー!」

梓「わっ、急に大声出さないでよ!」

純「梓がぼーっとしてたんじゃん」

梓「えっ、そうだった? ごめん……」

憂「」チラッ

純「」チラッ


純「……律先輩のこと考えてた?」

梓「な、何でそこで律先輩が出てくるの」

純「梓がもの憂げな顔見せるのって大体あの人絡みだから」

梓「うー……」

梓「……律先輩、ギリギリらしいからさ」

憂「お姉ちゃんも大変みたいだけど」

梓「唯先輩はいざという時に力を発揮するタイプの人だし、そんなに心配ないと思う」

梓「澪先輩とムギ先輩ももちろんね」

純「じゃあ、一番危ないのは……」

憂「……」

梓「今必死に勉強してるけど、やっぱり不安で一杯みたい」

純「そっか」

梓「でも私は見てることしかできないから……」

純「梓……」

憂「……」

憂「梓ちゃんにしかできないことがあるよ」

梓「えっ?」

憂「律さんが今一番必要としてることをしてあげられるのは、梓ちゃんだよ」

梓「な、何を急に」

憂「だって梓ちゃん、ずっと律さんのことっ……」

梓「……」

憂「ご、ごめん。取り乱しちゃった」

梓「う、うぅん」

純「私は憂に同意。律先輩のこと、見てきたんでしょ?」

純「きっと、梓にしかできないことがあるはずだよ」

梓「……二人とも」

梓「私にしかできないこと……」

梓(私には律先輩の応援ぐらいしかできない)

梓(……でも、応援ならできるんだ!)

梓「うん!」


~~


梓母「梓、裁縫道具なんかどうするの?」

梓「ちょっとね」

梓母「もしかして花嫁修業かしら?」

梓「ち、ちがうもん!」

梓母「へぇ~~」

梓「知らないっ」


梓「う~ん」

梓「ぜんぜん上手くいかない……」

梓「う~~、こんな下手なの渡せないよ」

梓「もっと家庭科の授業まじめに受けとくべきだったなぁ……」


~~


梓「憂、針仕事ってできる?」

憂「うん、よくお姉ちゃんのボタンとか縫ってあげてるよ」

梓「じゃ、じゃあ少し教えてほしいんだけど」

憂「いいけど、何を?」

梓「えっとね……」


~~


部室

唯「あずにゃんどうしたの、その絆創膏」

梓「あ、ちょっと切っちゃいまして」アセアセ

律「気をつけろよー、指はギタリストの命なんだから」

梓「はい、大丈夫です」

紬「……」


紬「梓ちゃん」コソッ

梓「はい、何ですか?」

紬「りっちゃん、きっと喜ぶわ♪」

梓「はい! ……って」

紬「」ニコニコ

梓(何で知ってるんだろう……)

紬「詳しいことは分からないけど、りっちゃんのために何かしてるんだろうなって」

梓「ひ、人の心読まないでくださいっ!」


~~


梓「こんな感じかな」

憂「うん、律さんにそっくり……あ、ここほつれてるよ」

梓「へっ? どこどこ?」

純「二人して何こそこそやってるの?」

梓「何でもないよ。ね、憂?」

憂「うん」

純「……仲間はずれですか」

梓「べ、別にそういう訳じゃなくて」

純「……」シクシク

梓「あーもう、絶対内緒だからね!」


純「なるほど、そういうことか」

憂「純ちゃんもジャズ研の先輩にどう?」

純「だめだめ、私手先が壊滅的に不器用だし。それに今日明日じゃなあ」

梓「先輩不孝者」

純「うるさいっ」


~~


梓母「あずさー、ごはんよー!」

梓「すぐ行くから!」

梓「……」セッセッセ

梓「あと少し……痛っ」

梓「」フーフー

梓(焦らない、焦らない)

梓「ここを通せば……」

梓「……よし、完成っ!」




当日

憂「お姉ちゃん、もうすぐ駅だよ!」

唯「うー……緊張するよぉ」

紬「大丈夫よ。あんなに勉強したじゃない」

律「試験会場であがるなよー?」

澪「お前もだぞ、律」

律「うっ……分かってるよ」

梓「……」

梓(緊張するよぉ……)ドキドキ

澪「それじゃ梓、憂ちゃん。この辺で」

紬「お見送りありがとう♪」

憂「あの、みなさん! 実は……」

唯「ほぇ?」

律「どうした憂ちゃん」

憂「皆さんに……お守りを作ってきまして」

律澪(す、すごく効きそう!)

憂「ムギさん、がんばってください」

紬「ありがとう、とても嬉しいわ」

憂「澪さん、普段通りにやれば大丈夫ですよ」

澪「はは……ありがとう。頑張るよ」

憂「……お姉ちゃん、絶対大丈夫だからね」

唯「憂ぃ……ありがとう」

憂「もう、お姉ちゃん。泣かないの」ギュッ

唯「うい~~」ギュウ

憂「よしよし」

唯「お姉ちゃん、頑張るからね!」

憂「うん!」

律「姉妹愛だな」

紬「~♪」ニコニコ


憂「では皆さん、頑張ってください!」

律「う、憂ちゃん私のは?」

憂「ごめんなさい、忘れてました」テヘッ

律「ひどっ!」

憂「冗談ですよ、律さんにもちゃんとあります」

憂「私からじゃありませんけどね」チラッ

律「へっ?」

梓「……!」ピクッ

律「あ、梓?」

梓「……」モジモジ


澪「あぁ、なるほど」

紬「キマシタワー」

唯「モテる男は羨ましいですなあ」

律「私は女だ!」


憂「それじゃ私たちは退散しますか」

澪「先に駅行ってるから。遅れるんじゃないぞ?」

紬「りっちゃん、頑張って♪」

唯「りっちゃん隊員、ご武運を!」

律「お、おいお前ら!」

梓「……」ドキドキ

律「行っちゃった」

梓「……」

律「何なんだよ、全く」

梓「……」

律「なあ、梓」

梓「……」

律「……あの、梓さん?」

梓「にゃっ!? ご、ごめんなさい、ぼっとしてました」

律「い、いや大丈夫だけど」

梓「……」

律「……」

梓「あの、律先輩」

律「な、何?」

梓「……これ!」


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最終更新:2012年02月25日 20:46