放課後 軽音部部室


澪「見て分かる物なのか?」

唯「勿論。なんだか、笑ってるみたいじゃない」

紬「唯ちゃんらしい、優しい発想ね」

澪「亀が、笑う?」

律「こっっちは、生真面目さ全開だな」

唯「トンちゃん♪トンちゃん♪」

律「本当、唯はトンちゃんが好きだな」

唯「だって可愛いし見てて飽きないし、なんと言っても軽音部の仲間だからね」

紬「もしトンちゃんが話せたら、どんな事を言うのかしら」

澪「亀が、話す?」

律「それはもう良いんだ」

   カチャ

梓「済みません、遅れました」

唯「あずにゃん、トンちゃん見てあげて」

梓「・・・うん。今日も元気そうですね」

律「分かるのか」

梓「なんだか、笑ってるみたいじゃないですか」

紬「うふふ♪」

澪「亀って、やっぱり笑うのか?」

律「私もちょっと、背筋が寒くなってきたよ」

梓「トンちゃん♪トンちゃん♪」

律「・・・梓も、トンちゃんが好きだな」

唯「だって可愛いし見てて飽きないし、なんと言っても軽音部の仲間ですからね」

紬「もしトンちゃんが話せたら、どんな事を言うのかしら」

澪「それは私も聞いてみたいな」

律「本気だろ、お前」

律「とはいえ、唯と梓が同じ発想とはな」

梓「え」 びくっ

紬「トンちゃんが元気そうとか、笑ってるみたいとか。同じ事言ってたわよ」

梓「・・・この中野梓、一生の不覚っ」

唯「しどいよ、あずにゃん」

澪「でも良く観察していれば、トンちゃんの事がもう少し分かるのかな」

律「澪は普段怖がってばかりいるから、それも良いんじゃないのか」

唯「私、一日中トンちゃんを見てても飽きないよ」

律「それはそれでどうなんだ?」

梓(言えない。自分も見てられるなんて、絶対言えない)


紬「今日のお菓子は、紅茶のパウンドケーキでーす」

澪「味も良いし、やっぱり風味が良いよな」

律「食べ応えだろ、食べ応え」 はむはむ

唯「私達は色々食べてるけど、トンちゃんは毎日同じご飯で飽きないのかな」

梓「一度聞いてみたいですね」

律「・・・お前を食べてやるっ、みたいな?」

唯「わっ、びっくりした」

梓「もう、またそういう事を」

澪「本当、律は子供だな。あはは」

律「さりげなく、部室を出て行こうとするな」

唯「もしトンちゃんが演奏するとしたら、どのパート担当なのかな」

紬「弦を押さえるのは難しそうだから、ドラムかキーボードね」

澪「律、ライバル登場だぞ」

律「私もまだ、トンちゃんに負けるレベルじゃないけどな」

唯「私達が帰った後、こっそり練習してるかも知れないよ。ドラムはずっと置いてあるし」

澪「自主練か」

律「・・・真夜中。誰もいないはずの音楽室から聞こえるドラムの音色。床はびっしょりと濡れ、ひたひたと這うような音がする」

紬「なんだか、素敵よねー」

梓(単なる怪談じゃないのかな、それ)

澪「という訳で、トンちゃんに負けないよう練習するぞ」

律「ちぇっ、上手く繋ぎやがって。・・・最近同じ曲ばっか演奏しているし、そろそろ新曲なんてどうだ?」

唯「良いね、それ。みんなで、アイディア出してみようよ」

澪「普段は軽いノリが多いから、たまにはシックな曲も面白いんじゃないか」

唯「思い切って、演歌風とか民謡風も良いよね」

梓「唯先輩、民謡好きですね」

紬「いっそ、デスデビルの曲をコピーするのは?」

唯、律、澪「それは無いと思う」

紬「ですよねー♪」

梓(さりげなくひどいな、同感だけど)


   30分後

律「・・・駄目だ。何も思い付かん」

紬「取りあえずお茶にしましょうか」

唯「ありがとー。ジャンルを考えるだけでも大変なのに、本当に曲を作ろうと思ったらもっと大変なんだね」

律「やっと気付いたか、平沢さんよ」

澪「お前が言うな」 ぽふ

梓「産みの苦しみって事ですか」

唯「案ずるより産むが易しだよ」

澪「お前もだ」 ぽふ

紬「お待たせしましたー」

澪「ありがとう。・・・そういえば、誕生日っていつなんだろう」

唯「11月27日だよ。プレゼントなんて、そんな事気にしなくて良いからね」 ちらっちらっ

律「誰が唯の誕生日を聞いたんだよ」 ぽふ

紬「となると、トンちゃんの誕生日って事?」

澪「ああ。それって、いつだと思う?」

梓「そう言われると、ちょっと考えちゃいますね。・・・ペットショップから連れてきた日とか」

澪「でもそれは、引っ越して来た日だろ」

梓「あ、そうか」

紬「・・・謎は解けたわ」

律「みんな悪いけど、琴吹探偵のボケに付き合ってくれよ」

紬「手がかりは全て揃っているわ。ヒレ、伸びる首。そして背中の甲羅」

律「で、その心は」

紬「言うまでも無いわね。つまりは、亀年って事なのよっ」

唯「おおっ、さすがムギちゃん」

律「・・・一応突っ込むけど、亀年なんて人類の歴史上一度も無いからな」

紬「うーん。意外な所を突いたと思ったんだけど」

澪「そもそも知りたいのは、誕生日だ」

唯「あ、そかそか。となると、卵が産まれた日?」

梓「もしくは、卵から孵化したした日じゃないんですか?」

澪「そうなると誕生日が2回?」

紬「スッポンモドキは誕生日を二度迎える。・・・これは新たなミステリーの予感ね」

律「まずは、その発想がミステリーだな」

紬「誕生日もだけれど、トンちゃんは何をプレゼントしたら喜んでくれるのかしら」

唯「桜餅なんて、たまには良いよね」

澪「トンちゃんの話をしてるんだ。・・・例えば、別なスッポンモドキを連れてくるとか?」

梓「でも、ケンカしませんか?動物の相性って難しそうですし」

紬「そうよね。水槽内だと逃げ場もないし」

律「気の合わない奴と同居か。確かにそれは憂鬱だ」

唯、澪、紬、梓「全く、全く」

律「一斉にこっちを見るのは止めてもらえますか」

梓「それに子供が生まれたら大変ですよ」

律「水槽の中が、スッポンモドキでぎっちぎちか」

澪「・・・それは想像もしたくない」

唯「狭いながらも楽しい我が家って言うし、結構上手くやっていくかもよ」

律「そうか?」

唯「だって私だったら、ロッカーにみんなと入ってても楽しいもん」

梓「私は絶対入りませんけどね。唯先輩とは」

唯「もう、あずにゃんのいけず」

紬「だったら梓ちゃんは、私と二人で入りましょうね♪」

律「さりげなく、連れて行こうとするんじゃない」 ぽふ

律「そもそもトンちゃんって、オスなのか?それともメスなのか?」

澪「それによって、贈るプレゼントも変わってくるな」

唯「桜が丘高校軽音部の部員なんだから、女の子じゃないの?」

律「・・・こう言っちゃ何だけど、女の子って顔か?」

梓「男の子でも女の子でも、スッポンモドキはこういう顔だと思いますよ」

紬「もしかして、案外美形かも知れないわね」

澪「だったら、プレゼントは鏡でも良いんじゃないのか」

唯「亀に鏡って、なんだかことわざにありそうだね」

律「誰1人理解出来んって意味だろうな」

唯「私はチョコババロアなんて嬉しいな」

律「だから、お前の好みは聞いてないんだよ」

唯「もう、りっちゃんのいけず。いいもん、今度憂に作ってもらうから」

澪「・・・一つ聞きたいんだけど。唯の誕生日には、憂ちゃんがケーキを作ってくれるよな」

唯「この前は、ブルーベリータルトを作ってくれたよ」

紬「えーと。憂ちゃんの誕生日の時は?」

唯「レアチーズケーキを作ってくれたよ」

梓「・・・唯先輩は、つくづく幸せですね」

唯「えへへ。あずにゃんもそう思う?」

梓(皮肉って分かってないんだから。まあ、そういう所も唯先輩らしいけど)


   夜 平沢家リビング

唯「トンちゃんの誕生日って、結局いつなんだろうね」

憂「動物の誕生日は難しいと思うよ。動物園で生まれる動物も、気付いたら生まれてた時もあるし」

唯「そうなると、いつお祝いしてあげればいいのかな」

憂「何月とか何日とかこだわらずに、いつでも良いんじゃないのかな」

唯「どういう事?」

憂「お祝いしたいって気持があれば、その時がトンちゃんの誕生日だと私は思うよ」

唯「はー。憂は良い事言うね」

憂「トンちゃんのために一所懸命考えてるお姉ちゃんも立派だよ」

唯「えへへ♪」

憂「ふふ♪」

唯「だったら、プレゼントは何にしようかな」

憂「プレゼント?」

唯「私は、チョコババロアなんて喜ぶと思うけど」 ちらっちらっ

憂「それは、お姉ちゃんが食べたい物でしょ」

唯「えへへ。分かっちゃった?」

憂「丁度材料があるし、今から作ってみるね」

唯「私も及ばずながら手伝うよ」

憂「ありがとう、お姉ちゃん♪」

唯「憂ー♪」


   翌朝 3年生教室

唯「という訳で昨日は、チョコババロアを食べました」

和「全く。相変わらず仲が良いわね、あなた達は」

唯「姉妹だからね」

和「さらっと言ってくれちゃって」

唯「えへへ」

律「うーすっ。ん、どうした?」

和「唯と憂が仲良いって話」

唯「りっちゃんも、聡君と仲良いよね」

律「まあ、普通だろ。それに姉弟だしな」

和「さらっと恰好良いわね」

唯「りっちゃん♪りっちゃん♪」

律「も、もう良いって」

澪(和、もっと言え)

紬「やっぱり兄弟って、仲が良い物なのかしら」

律「唯と憂ちゃんは特別って気もするけれど」

唯「そかな。私は憂が大好きなだけで、それは普通だと思ってるよ」

澪「たまにすごいよな、唯って」

唯「本当にすごい?」

和「たまにって言ったでしょ」

唯「もう、和ちゃんのいけず」

律、澪、紬「あはは」


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最終更新:2012年02月25日 23:18