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唯「た、ただいまー!」

階段を降りてリビングへ出ると、三人はさっそくお茶してました

憂「お姉ちゃん、そんな慌てなくても……」

和「なんだか今日はいつにもまして落ち着き無いわね、唯」

梓「そんなに走ると怪我しますよ、唯先輩」

唯「へへへ、ごめんごめん」

私もソファーに座ります

自然にあずにゃんの隣に座ることも忘れてはいません

憂「お姉ちゃん、はいお茶」

唯「ありがとー」

さて、と

唯「あずにゃん、今日からゆっくりしていってね」

梓「はい、お世話になります」

憂「和ちゃんも、いっぱいお話しようね!」

和「そういえば最近忙しくて、憂ともあまり話が出来てなかったわね。その分の埋め合わせしましょうか」

憂「うん!」

あずにゃんと憂が顔を見合わせて、微笑みます

やっぱり仲がいいんだなー、二人とも

同じクラスだし

……私も同じ学年で、同じクラスだったら良かったのに

あずにゃんに名前で呼んでもらったりとか、考えただけでドキドキします

まあ、唯先輩って響きも、とてもたまらないのですが

梓「ところで、これから何をしましょうか」

唯「ゴロゴロしようよー」

梓「ダメですよ、だらしのない……」

憂「そうだね。ちょっと時間が中途半端だよね」

憂がちらっと、時計を見ます

今の時刻は、午後三時半

みんなに用事があるので、今日の部活はお休みにして急いで帰ってきた次第です

憂「そうだ。今のうちに夕飯の買い物行っちゃおうか」

ぽん、と手を打って憂が言いました

憂「四人だから、いつもより多めに作らなきゃね」

和「そうね。そうしましょうか」

あ、だったら

唯「私が行ってくるよ、憂!」

憂「え、いいの?」

唯「うん!私とあずにゃんとで行ってくるよ!」

梓「え、私もですか?」

唯「だ、だめ?」

梓「だ、だめじゃないです。ご一緒します!」

そうです

こんな風に自然な感じで、あずにゃんとプチデートが出来るのです!

和「四人分ともなるとそれなりの量になるだろうから、二人の方がいいわね」

ほら、和ちゃんもフォローしてくれてます

憂「それじゃ、お願いしていいかな、お姉ちゃん、梓ちゃん?」

唯「もちろんだよ!さあ行こうあずにゃん!」

梓「ちょ、わかりましたからそんなに急かさないで下さい!」


唯「えっと、それから」

梓「人参と……たまねぎですね」

商店街のスーパー

二人で夕飯のお買い物中です

梓「牛乳っと……あった。こっちでいいんですよね?」

唯「うん。いっつもそれだよー」

梓「うちと一緒ですね」

唯「本当に?えへへ、気が合うねあずにゃん」

梓「選んでるのは私じゃなくてお母さんですよ」

そう言って微笑むあずにゃん

梓「それよりもほら、次は何を買うんですか?」

唯「えーっとね」

憂に書いてもらったお買い物メモに目を向けます

唯「次はお刺身だねー。好きなのでいいってさ」

梓「っていうか、他にも結構量がありますね。食べきれるのかな……」

唯「大丈夫だよ。四人も居るし。それに、憂のご飯は美味しいよー?」

梓「憂、料理上手ですもんね」

あずにゃんがマグロとカレイのお刺身を手に取ります

梓「どっちがいいですか?」

唯「マグロ」

梓「じゃあマグロで」

あずにゃんがカゴの中にマグロのお刺身を入れました

唯「え、あずにゃんいいの?」

梓「私もマグロの方が好きなので」

そうなんだ。じゃあ、

唯「今度こそ、気が合うね、あずにゃん」

梓「ふふ、そうですね」

そっかー。あずにゃんマグロ好きなんだー

猫っぽいからかな?

梓「さて、あとは……」

唯「アイス!」

梓「もうそんな季節じゃないのに……」

唯「季節なんて関係ないよ!ちゃんと四人分買うから!」

梓「はいはい、わかりました」

唯「あずにゃんは何がいい?」

梓「唯先輩と同じやつでいいですよ」

唯「本当に?おそろい?じゃあねー、おすすめのやつがあってねー」


―――

唯「あずにゃん、重くない?」

帰り道

二人、両手にビニール袋を持ってゆっくりと歩きます

アイスは氷と一緒に入れているので、しばらくは溶けないでしょう

随分と涼しくなったし

梓「大丈夫です。唯先輩こそ重くないですか?そっちと変えましょうか」

唯「大丈夫だよー。あずにゃんよりも先輩なんだから、重い方は私が持つの!」

梓「じゃあ、ゆっくり帰りましょうか」

二人で並んで、川原の道をゆっくりと歩きます

今が何時頃なのか、時計も携帯も持っていないのでわかりませんが、もう陽が暮れ始めていました

唯「陽が落ちるの、早くなったねえ」

梓「そうですね。もう今年もあと二ヶ月で終わりですよ」

唯「早いねー」

梓「早いですねー」

少し前まで、夏のなごりというか

そういう残り香みたいなものも感じられたのですが、今ではもう、欠片もありません

唯「ねえ、あずにゃん」

梓「なんですか?」

唯「夏の終わりってさ、なんか寂しいよね」

梓「夏、嫌いなんじゃないんですか?唯先輩。暑いの苦手だから、てっきり」

唯「あー、暑いのは苦手なんだけどね。でも、夏の雰囲気は好きなの」

唯「なんか、にぎやかな感じがするんだよね。お祭りというか、全部が生き生きしてるというか」

梓「それが終わっちゃうのが寂しいんですね」

唯「うん。そうだと思う」

へへ、と笑うと、あずにゃんが微笑んでくれる

唯「だから、夏の終わりになると名残りを探しちゃうの。まだどっかに残ってないかなって」

梓「例えば、どんな名残りですか?」

唯「風の匂いとか、空の青さとか……あと、蝉の鳴き声とか」

梓「蝉ですか?」

唯「うん。蝉の鳴き声って、夏だなーって感じがするじゃん。だから、蝉の鳴き声が聞こえてる間はまだ夏かなって」

梓「なるほど」

唯「変な話しちゃってごめんねー」

梓「いえ。……他の季節は嫌いなんですか?」

唯「そんなことないよー。春は桜が綺麗だし、秋は美味しいものたくさんあるし。冬は寒いけど、雪とか降るしクリスマスもあるし」

でも、

唯「でもやっぱり、夏はなんか特別なのかな。来るとワクワクするし、終わると寂しいよ。なんでだろうね?」

梓「なんででしょうね。でも、気持ちはわかりますよ」

唯「そっか。ありがとね、あずにゃん」

梓「いえ。……もう蝉は鳴いてないんですか?」

唯「うん。毎年ね、ここらへんで蝉の鳴き声が聞こえなくなるとさ。近所に林があるから、そこまでぶらーっと行ってさ。蝉の鳴き声を探すの」

唯「ここら辺じゃ聞こえなくても、その林だけ、蝉がまだ鳴いてたりするんだけどさ。一週間前くらいかな?もうそこでも鳴き声は無くなっちゃったから」

もう夏は行っちゃったんだよ

そうですか


そのまま、あずにゃんも私も何も言いませんでした

この沈黙がどういう種類の沈黙なのかわかりませんでしたが

居心地の悪い沈黙ではありませんでした

お互いの考えていることがわかるというか

わかるというのは言いすぎでも、検討は付くというか

まあ、私はあずにゃんが大好きで、ただ一緒に歩いているだけで幸せだということもあるのでしょう

梓「また……」

唯「え?」

梓「また来ますよ、夏。来年も」

唯「……うん」

あずにゃんはとても優しいです


―――

唯「ただいまー」

憂「おかえりー、お姉ちゃん、梓ちゃん」

唯「重かったよー」

梓「お疲れ様です。頑張りましたね、唯先輩」

唯「あずにゃんもねー」

憂「お疲れ様、二人とも。すぐにご飯の準備するからね」

唯「今日のご飯なにー?」

憂「ん?いろいろ。いっぱい作るから、お腹をすかせて待っててね」

憂が張り切っています

やっぱり、和ちゃんとあずにゃんがお泊りにきてくれたのが嬉しいのでしょう

リビングに入り、キッチンへ

買い物袋を置くと、憂がエプロンを付けます

梓「あ、私も手伝うよ。夕飯の支度」

憂「いいよ梓ちゃん。お買い物行ってもらったし、ゆっくりしてて。……お姉ちゃんと」

どこか悪戯っぽく憂が微笑むと、なんだかあずにゃんの顔が赤くなったような気がしました

唯「……あずにゃん、風邪?」

だったら大変です

季節の変わり目。こういう時に体調を崩しやすいのですから

風邪を引いてあずにゃんが学校を休むということになれば、私はもうどうしたらいいか……

梓「だ、大丈夫ですから!顔覗き込まないでください!」

ぷいっと顔をそむけるあずにゃん

風邪じゃないなら、いいのですが

唯「じゃあ、私と一緒にゆっくりしようよー」

ぎゅっとあずにゃんを抱きしめます

梓「ちょ、唯先輩……!」

唯「いいでしょ?今は学校じゃないし。それに今日は部活無かったから、あずにゃん分補給出来なかったもん」

梓「で、でも憂も和先輩も居るじゃ……」

唯「そういえば和ちゃんはどこに行ったんだろうね」

見当たらないけど

靴はあったから、お出かけではないでしょう

おっと、それどころじゃない

唯「あーずにゃーん……」

あずにゃんの首元に鼻先をうずめます

いい匂いで、あったかくて、肌なんかさらさらで

本当に落ち着きます

唯「ふあー……」

出来るだけ、このあずにゃんの感触を体で覚えておかないと

許された時間は少ないのですから

三、二、一、と

唯「……はい、終わり!」

梓「え?」

唯「補給終わりー。どうしたの?」

梓「なんかいつもより短か……なんでもないです」



どこか浮かない顔のあずにゃん

どうしたのでしょう

ちゃんと十五秒ルールは守りましたよ?

梓「むー……」

上目遣いで睨まれます

唯「あずにゃん怖い顔しても可愛いよ?」

梓「な、何言ってるんですか!」

ああ、いつものあずにゃんに戻った

唯「ほらほら、あずにゃん。疲れてるでしょ?一緒に座って、テレビでも見ようよ」

そんなあずにゃんをソファーに誘います

もちろん私の隣に

梓「じゃあ、失礼します」

唯「……あずにゃん、もっと近くにおいでよ」

梓「いや、ソファー大きいんですから、そんなに密着しなくても……」

唯「えー!ダメだよこっちの方がテレビ見やすいから!だからお願いあずにゃん!」

梓「ちょ、だから近いですって!先ほども言いましたけど、憂も和先輩も……」

和「あら、二人ともお帰りなさい」

あずにゃんと必死の攻防をしていると、和ちゃんが戻ってきました

半ズボンに半そでTシャツというラフな格好の和ちゃん

寒くないのでしょうか

唯「ただいまー。和ちゃんどこ行ってたの?」

和「ああ、お風呂を掃除してきたの。憂にばかりやらせても大変だろうから」

梓「……聞きましたか唯先輩。これが年上の女性というものですよ」

唯「耳が痛いよ……」

和「いいのよ梓ちゃん。唯に手伝わせると、ほら……ね」

梓「ああ……そうですね」

唯「え、なに?なんでそんな目で見るの二人とも」

和「気にしなくていいのよ」

梓「そうです。それが唯先輩の良い所でもあるんですから」

唯「なんかよくわからないけれど、喜んでもいいの?」

梓「はい」

やったー!あずにゃんに褒められた!

憂「あ、和ちゃん」

キッチンからひょっこりと憂が顔を出しました

和「お風呂掃除終わったわ、憂」

憂「ありがとう和ちゃん。ごめんね、お客様なのに……」

和「何言ってんの。幼馴染なんだし、遠慮しないで。夕飯の支度も手伝うわ。エプロンはこれ着ていいのね?」

憂「で、でも和ちゃん、疲れてるんじゃ……」

和「お風呂掃除だけだもの。平気よ」

梓「そうだよー。手伝って貰いなよ和先輩に。四人分だと結構大変でしょ?」

憂「も、もう梓ちゃんったら……」

憂の顔が心なしか赤くなってます

あずにゃんはニヤニヤしてるし


そんなあずにゃんも可愛い

憂「じゃ、じゃあ、お願いしてもいい?」

和「もちろんよ。えっと……」

そうして和ちゃんと憂が夕飯の支度を始めました

こうやってソファーに座りながら二人が夕飯の支度をするという光景は久しぶりでした

中学までは見慣れていたので、どこか安心するというか、ほっとする光景です

唯「絵になるでしょ。二人がキッチンに立ってると」

同じく私の隣に座って(話かけながらあずにゃんとの距離を少しづつ詰めています)、二人を見ているあずにゃん

梓「そうですね。なんか、和先輩も憂もしっかりしてるタイプだから、お似合いというか」

唯「でしょー?」

梓「……唯先輩も少しは和先輩を見習ったらどうですか。そんなにベタベタしないとか」

唯「えー?」

あずにゃんの肩と私の肩を密着させながら、私はあずにゃんに言いました

唯「でもほら、和ちゃんもけっこうベタベタするよ?」

梓「え?」

和「相変わらず良いお尻してるじゃない」ナデナデ

憂「あっ!……もー、和ちゃんったら」

和「別にいいじゃない。幼馴染でしょ?」モミモミ

憂「お料理中だから危ないよぉ」

唯「ね?」

梓「聡明な和先輩のイメージが……」

和ちゃんも久しぶりに憂とお泊り出来て、浮かれているのかもしれませんが

唯「幼馴染だし、あんなもんでしょー」

梓「お尻揉みしだいてましたよ、和先輩……」

唯「憂もスキンシップ大好きだよ?」

梓「憂も嫌がってないところがまた、ね……」

だーかーらー

唯「私達もしよーよー」

梓「だからなんでそうなるんですか」

この流れだったら、あずにゃん、お尻触らせてくれないかなー

唯「だって悔しくない?あっちに負けてるよ!」

梓「こっちはこっちで、マイペースでやるんで心配しないでください」

唯「じゃあマイペースにやろー」ギュー


梓「んむぅ……もう、唯先輩は……」

三、二、一

唯「はい終わり!」

梓「……」


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最終更新:2012年02月27日 21:22