お昼ご飯を食べ終わり、また食後のお茶をみんなで飲んでいます
お皿洗いで怪我をしてしまった私がお昼ご飯を作らせて貰えるわけもなく
どころか今、お皿洗いすらあずにゃんにやってもらう始末です
まだ、あずにゃんの好みの一番目だと言うのに
かっこいいとか、私には無理なのでしょうか
和「それで、午後はどうする?」
ずずっとお茶をすすりながら和ちゃんが言いました
和「何も予定が無いなら、ちょっと外でブラブラしない?」
憂「外?商店街の方?」
和「ええ。せっかく天気がいいんだもの。デートしましょうよ」
憂「で、デート……!」
あずにゃん可愛いなー
ツインテールが揺れてる。あの揺れ方はきっと、ご機嫌なんだな
和「唯、聞いてるの?」
唯「え?」
和「聞いてないのね」
憂「みんなで、外で遊ぼうかって」
唯「へー」
和「Wデートって形になるわね」
唯「……ほう」
あずにゃんとデート
たぶん夕飯の買い出しのついでとかそんなレベルだろうけど、それでもデートには違いありません
もしかしてこれは、チャンスなのではないでしょうか
あずにゃんをしっかりリードして、頼れる先輩=かっこいい私です
唯「行く」
和「梓ちゃん、ちょっといい?」
梓「はい?なんですか?」
ひょこっとあずにゃんがキッチンから顔を出しました
和「みんなで買い物ついでに外でブラブラしようって話してたの。梓ちゃんも大丈夫?」
梓「はい。大丈夫ですよ」
唯「へへ、あずにゃんとWデートだね!」
梓「……唯先輩、Wデートの意味わかってます?」
唯「四人でデートすることだよね!」
梓「そうだけど違うというか……まあ正直、期待はしてませんでした」
あれ、なんかあずにゃんがため息ついてる
憂「じゃあ、お皿洗い終わってしばらくしたら行こうか」
和「そうね」
唯「あずにゃーん、やっぱり私も手伝うよー」
梓「ダメです。怪我してるでしょ唯先輩は」
―――
律「次、どこ行く?」
澪「楽器屋寄っていい?ベースの弦、予備が切れちゃってて」
律「はいよ」
行き先を決めて、澪と歩く
土曜日、商店街
人は当たり前のように多くて、それを理由にして澪と手を繋ぐ
いつもなら、人前で手とか繋げないからな
まったく、澪ったら恥ずかしがり屋さんなんだからー
澪「律?どうした?」
律「いや、別に。――こっち、もっと寄れよ」
澪の手を引いて、肩を密着させる
いっそのこと腕を組んで欲しいけど、さすがに無理だろうな
澪「人が多いな」
律「休日だもんな。ちょっと疲れた?」
澪「いや。……でも、ちょっと人に酔ったみたい」
人見知りが関係あるのかどうかはわからないけど、澪は人混みが苦手だ
まあ、程度の差はあれ人混みが好きな人なんて居ないと思うけれど
律「じゃあ、楽器屋寄ったら、どこか喫茶店でも行って休もうか」
澪「本当?じゃあさ、ちょっと行ってみたい喫茶店あるんだ」
律「いいよ、そこで。……でもなぁ、ぶっちゃけむぎの紅茶に慣れちゃってるから」
律「どんな紅茶飲んでも、普通って感じなんだよな」
澪「あー、それはあるな。舌が肥えちゃってるっていうか」
律「まあ、休めればいいか」
澪「そうだな。……って、あれ?」
律「どしたー?」
澪「なあ律、あそこに居るのって……」
澪の視線の先を辿ると、そこには
律「あれ、唯と梓じゃん」
小物を扱っている小さな店の前に唯と梓がいた
二人とも、店先に並んでいるカップや食器を眺めている
律「おー、デートか?」
澪「二人きり……じゃないみたいだ。ほら、店の中に和と憂ちゃんがいる」
確かに、店の中の小物を眺める和と憂ちゃんの姿もあった
律「ほほう、Wデートか」
澪「そ、そうなのかな」
澪がどこか照れたように言う
なんでお前が照れるんだよ
律「せっかく会ったんだ。話していこうぜ。おーい、ゆ」
澪「ば、馬鹿!律ちょっと待て!」
ぐいっ、と腕を引き寄せられる
弾みで澪は私と腕を組む形になったし、澪の大きいおっぱいの感触も楽しめた
わざとやってるんだとしたら、最高だ、乗ってやる。今すぐ帰ろう
でも意識してない行動だってのも当然気づいてる
律「なんだよー、みおー」
澪「私達が一緒に現れたら、デートしてるのバレるだろ!」
律「……ああ、そっか」
澪「お前はもう……」
そういやそうだったな。バレちゃいけないんだった。特に唯と梓には
律「むぎに言っちゃったから、ちょっと油断してたっぽい。あはは」
澪「まったく……」
そう言って、澪はまた唯と梓の方に向き直る
二人は何がおかしいのかクスクス笑いながら食器を見ていた
澪「なんか、いい感じだな」
律「そうだなー。ほら、見ろよ唯のやつ」
唯が背後から梓の肩を抱こうとして、何度も手を伸ばしては引っ込めてる
つーかそんなことするような雰囲気なのかよ
もっと夜景が綺麗なところとかさ。間違っても商店街じゃないよ
澪「あー、結局諦めたな、唯」
律「あんな肩落とさなくても……」
梓に顔をのぞき込まれて、慌てて手を振って笑う唯
なんつーか
律「面白いな、これ」
澪「なんか覗き見してるみたいで悪いよ、律。早く行った方が良くないか?」
私の腕を引いて、澪はそう言うけれど
律「ちょっとだけ見てようぜ!」
澪「な、本気か!?」
律「大丈夫だって。あいつらお互いに夢中で私達なんて気づいてねーし。それに、澪だって気になるだろ?」
澪「気にならないって言うなら、嘘になるけど……」
澪は心配してたもんな、唯のこと
まあそれは、私もムギも、同じことだけど
律「じゃあ決まりだ。大丈夫、ちょっとだけだって」
そうして、私達は手近な看板の陰に隠れる
一応、バレないように工夫はしておかないとな
律「さーて、ホシに動きはあるか?」
澪「ホシって……あ、梓が何かいいの見つけたっぽいぞ」
見ると、梓が何かカップを持ってて、そこに唯が話しかけている
唯が大袈裟に両手を上に上げて、梓が慌てた様子で手を振ってて
律「私が買ってあげるよー、かな」
澪「そうみたいだな」
プレゼント作戦か
またベタというか……
澪「なんか今日、積極的じゃないか?唯のやつ」
律「だな」
いつもはこんな風じゃなく、チャンスがあればちょっとアプローチするくらいなのに
律「梓、昨日から唯ん家泊まってるんだろ?なんか進展があったんじゃないか」
澪「へー、唯も頑張ったんだな」
頑張ったのが唯とは限らないけどなー
澪「お?今度は唯のカップを選ぶらしいぞ」
梓の選んだカップを唯が受け取ると、何やら話をして、それからまた梓がカップを選び始めた
澪「……あずにゃん、私のカップ選んでくれる?」
律「だろうな。唯のやつ、結構やるな」
並んだカップの前で、梓が悩んでいる
そんな真剣になるようなことなんだろうか。まあ、あいつらにしかわからない何かがあるんだろうけど
しばらくして梓が一つのカップを取り上げた
両手で持って上から下から横から眺めて、そして隣の唯に見せる
律「おーおー、唯、嬉しそうだなおい」
澪「見てるこっちが照れてくるな。梓のと色違いっぽい?」
律「本当だ。なんだよ、仲良いなあいつら」
笑顔で梓からカップを受け取る唯
そのまま、梓と二人で店の中に入ろうとする
会計のためだろうが、唯、はしゃいでんなー
つーか、
律「たぶん、こけるな」
澪「はしゃいでるしなー。おそらく」
案の定、カップを二つ持ってはしゃいでた唯は何かに足を引っかけた
そのまま、こけてカップがしゃーんでお店に弁償……
律「お?」
澪「おお……」
そうはならなかった
咄嗟に梓が唯の前に回って、唯を抱き止めた
まるで唯がこけるのを予想していたかのように、その動作はスムーズだった
まあ、私達も予想出来たことだから、梓も難なく予想はついたんだろうけど
身長差があるから、梓は文字通り体全体で唯を支えていた
両手を唯の腰に回して、体を密着させて
律「……なんか長いな、おい」
澪「人前で抱き合うなんて……」
澪が顔を真っ赤にしながらも二人を凝視している
澪って恥ずかしがってやってくれないけど、それでも憧れてる節はあるよね
まあ、今度やってやろう
唯と梓はしばらく抱き合ってて、突然ぱっと離れたかと思うと、お互い顔を真っ赤にして笑っていた
初々しいったらないね
まあ、唯は気づいてないし、梓も確証は持てていないみたいだけど
端からみれば一目瞭然だけど、当事者としちゃ、わかりづらいのかもしれない
私と澪も、あんな感じで周囲をやきもきさせていたのかもな
言わなくちゃわからないよ、お互いのことなんて
律「帰るか、澪」
二人が揃って店内に消えたのを確認して、私は言った
澪「そうだな。喫茶店はまたみんなで行こうか」
見せつけられちゃって、ちょっと私も澪といちゃいちゃしたくなった
たぶん澪も同じだろう
なんかそわそわしてるし
澪「なあ、律」
商店街を出ようと澪の手を握ったところで、澪が言う
あ、この声のトーンは何かをお願いする時のだ
律「なんだ?なんか欲しいの?」
私達もカップ買うのかな
あいつらまだ店内残ってるけど
澪「い、いや、違う!そうじゃなくて」
なんかモジモジしてる澪が可愛い
澪「律、その……今日も、泊まってくよね?」
律「ん?ああ」
なんだ、そんなことか
律「当たり前だろ。土日は澪と一緒にいるって言ったじゃん」
澪「そ、そっか。へへ」
可愛いなちくしょう
律「寂しがり屋の澪さんをひとりぼっちには出来ませんよねー」
澪「あ、ありがとな。……あ、でも結局、日曜の夜は一人で寝るのか」
律「日曜の夜も泊まるよ。朝、澪ん家から登校すりゃいいし」
そうなると思って、制服も教科書も持ってきてるしな
律「それに、せっかく二人きりなんだ。もったいないだろ?」
澪「そ、そうだよな!」
嬉しそうに微笑む澪
なんだよ、そんなこと心配してたのか
ったく、私が澪を一人にするわけないだろ
澪「なあ、帰りにスーパー寄ってかない?夕飯の材料買わないと」
律「寄ってくか。今夜は何にする?」
澪「どうしようかな。何か食べたいものある?」
律「魚や野菜って気分じゃないな。肉」
澪「わかった。じゃあ、スーパーで見てから決めるか」
りょーかい
そう言って、二人で歩き出す
スーパーに寄って、夕飯を二人で作って、お風呂入って
明日も休みだ。夜更かし出来る
さらに親は居ないし、二人きり
そう考えると、なんか身体がウズウズしてくる
たぶん澪もそうだ。握る手にちょっと力が入ってる
そんなことを考えつつ、歩いていたら
律澪「あ」
二人揃って気づく
楽器屋行くの忘れてた
―――
和「ごちそうさまでした」
唯「ごちそうさまでした……」
夕飯を食べ終わりました
私と和ちゃん、揃って手を合わせます
憂「お粗末様でしたー。どうだった?」
和「美味しかったわよ。そう言えば、憂の作る煮物食べたの初めてかも」
憂「えへへ。初めて挑戦してみたんだ。お口に合って良かったよ」
梓「先輩、卵焼きどうでした……?ちょっと甘すぎですかね」
唯「とんでもないよ。美味しかったよあずにゃん。お料理上手だね……」
梓「泣くほどですか」
今日の朝から始めた「あずにゃんの理想の女の子になろう」作戦
まずは初期段階の「かっこいい唯先輩」を達成しようと色々努力したのですが
朝はお皿洗いレベルで指を切ってあずにゃんに手当てしてもらって
昼にプレゼント作戦を決行するも、お店の前で転びそうになってあずにゃんに支えてもらって
スーパーでは汚名返上しようと買い物袋に色々詰めてたら卵割っちゃって
せめて夕ご飯のお手伝いをしようとしたら、もちろん「怪我するから」とあずにゃんに止められて
唯「かっこいいって難しい……」
私ってこんなにダメなんだ……
なんかやること全部裏目に出てる感じ
その点、あずにゃんは違います
今日ずっと私のフォローしてくれたし、お料理だって今朝憂に習っただけでここまで美味しく仕上げています
ギターも私と違って上手いし、真面目だし、可愛いし
そんな私があずにゃんに何をしたか
何もしてないし、むしろ昨日の夜なんか寝てるあずにゃんに痴漢紛いなことしてるし
かっこいいどころかこれ、最低なんじゃ……
梓「唯先輩、流しにお皿持って行くの手伝ってもらっていいですか?」
唯「任せてあずにゃん!」
梓「そんな意気込まなくても……慌てなくていいですよ」
とりあえず、これで失点分の僅かな穴埋めにはなると信じたいです
先は遠いけれど、何もしないわけにもいきませんから
和「ねえ、先にお風呂入ってもいいかしら」
憂とあずにゃんがお皿洗いを終えてしばらくたって
和ちゃんがそう言いました
唯「いいよー。昨日は先にお風呂入らせてもらったし」
梓「はい、お先にどうぞ」
和「ごめんね、二人とも。じゃあ憂、行きましょうか」
憂「うん」
至極当然のように、憂と一緒にバスルームに向かおうとする和ちゃん
梓「そ、そんな目で見てもダメですよ!」
ですよねー
あずにゃんはダメですよねー
唯「いいなー、憂、和ちゃんと入れて」
梓「なっ……!?」
唯「そう言えば私、和ちゃんとしばらくお風呂入ってないよー」
和「そういえばそうね。唯も来る?」
憂「の、和ちゃんとお姉ちゃんと三人で……!」
梓「だ、だめですそ」
唯「あー、いいよ。家のお風呂、三人じゃちょっと狭いしね」
憂も、久しぶりに和ちゃんが泊まっているんだから、お話したいこともあるでしょうし
でもやっぱり、羨ましいなー
私もあずにゃんと入りたいけれど
唯「まー、仕方ないよねー」
梓「……」
唯「あずにゃん、二人がお風呂入ってる間、なにしよっか」
二人っきりです
面白いテレビはやってないし、ご飯も食べた
唯「いちゃいちゃ……する……?」
梓「お断りします」
唯「ですよね……」
わかってたのに……
わかっていたのに、何で私は敢えて傷つくような発言をするんでしょう……
最終更新:2012年02月27日 21:32