梓「ギターの練習しましょうか、唯先輩」
唯「ギター?あずにゃん、ギター持ってきてるの?」
梓「いえ、私は持ってきてません。だから、唯先輩の練習をお手伝いしようかなって」
唯「あー、なるほどね」
そう言えば昨日はギー太に少ししか触ってないや
唯「じゃあちょっと持ってくるよ。あ」
そう言えば、
唯「あずにゃん、実は弾きたい曲があるんだよ」
梓「弾きたい曲?」
唯「うん。自分なりに耳コピしてみたんだけど。ちょっとCDも持ってくるから、聞き比べしてもらえないかな」
梓「はい。いいですよ」
唯「ありがとね。じゃあ、持ってくるね!」
唯「シェアーしよー、with loveー」
じゃーじゃーじゃかじゃかじゃん、じゃん、じゃーん
梓「わー」
あずにゃんが拍手してくれます
何だか恥ずかしいような嬉しいような、そんな気持ちです
唯「えへへ、どうかな」
梓「ちゃんと音が出てない箇所があったり、ストロークの細かいミスというか、やり方の不備はありましたけど」
あずにゃんが微笑みます
梓「そんな感じでいいと思いますよ。歌い辛かったら、ちょっと音程を調整すればいいと思いますし」
唯「本当?ありがとうー」
あずにゃんのお墨付きがあれば大丈夫でしょう
へへ、結構練習したからねー
梓「それにしても」
あずにゃんがCDケースを手に取り、眺めながら言いました
梓「唯先輩知ってたんですね、この人。結構マイナーなアルバムだと思うんですけど」
唯「ううん。こないだ知ったんだ。憂の好きな曲なんだって」
梓「あー、憂の」
なんだか憂らしいですね、とあずにゃんが微笑みます
唯「練習して、弾いてあげるって約束したんだー。あずにゃんはこの人知ってるの?」
梓「知ってますよ。とても優しいギターを弾く人です。まあ、私が知った時には、既に亡くなってましたけどね」
唯「そっか」
あずにゃんも好きなんだー
梓「ギターはそんな感じでいいと思いますよ」
唯「そう?」
試しに軽く弾いてみます
優しく、だけどポップな感じで音が流れるようなイメージを意識してっと
梓「……」
弾いていると、何やら視線を感じます
唯「……あずにゃん?」
梓「は、はい!?」
何故かあずにゃんがそんな声をあげます
顔も心なし赤いし
唯「どっか変だったかな?」
梓「い、いや、全然!……そのままで、良いと思います」
唯「へへ、そっか」
変なあずにゃんー
唯「ふいー、このくらいにしよっかー」
梓「もう、まだちょっとしか練習してないのに」
唯「あずにゃんとの貴重な時間だからねー、練習ばっかりしてちゃ勿体ないよー」
梓「またそうやって……」
唯「アイス食べたいー」
梓「ダメです。お風呂あがってからです」
唯「ちぇー」
ギー太を立てかけて、私はソファーにダイブします
目の前には、ソファーに座ってるあずにゃんの太ももが
言い忘れてましたが、今のあずにゃんの格好は半ズボンに長袖のしましまのTシャツです
可愛い
梓「寝転がると眠たくなりますよ。……お風呂、まだなんですから」
唯「眠らないよー。時間がもったいないしー」
そんなことを言った後で、ふと思いつきました
唯「あずにゃん、膝枕して?」
梓「……いいですよ」
唯「ですよねーって、え!?」
梓「どうぞ、唯先輩」
そう言って、あずにゃんは自分の太ももを軽く叩きました
唯「……本当に?」
梓「こんなことで嘘ついてどうするんですか」
唯「……本当に?殴ったりしない?」
梓「私がそんなことをするとでも思ってるんですか……?」
唯「だって昨日の夜は強く」
梓「わーわー!ど、どうするんですか!別に膝枕しなくてもいいんですよ恥ずかしいし!」
唯「お願いします」
あずにゃんの気が変わらないうちに、あずにゃんの太ももに滑り込みます
あずにゃんの太ももは白くて温かくて柔らかいです
昨日の夜は勝手に触っちゃったけど、今は違います
あずにゃん公認です
梓「髪、撫でてもいいですか?」
唯「え?うん、もちろん」
ふわっとあずにゃんの手が私の頭に乗ります
そのまま、猫を撫でるかのように
昨日の夜のように撫でてくれます
その太ももの感触と撫でられる気持ち良さで、油断するとすぐに眠ってしまいそうです
もったいないから、意地でも起きてますけど
唯「あずにゃん、何か今日は優しいね。膝枕してくれるし」
今日『も』、ですよねとあずにゃんは呆れます
梓「いえ、まあ。二人きりですし、お願いされましたから」
唯「ありがとね。これからは二人きりの時にだけお願いしようかな。わがまま聞いてくれそうだし」
梓「内容にもよりますけどね」
そんなことを言っていても、あずにゃんは優しく髪を撫で続けてくれます
その気持ちがとても嬉しくて、なんだかニヤけちゃいます
梓「そう言えば、今日はどうしたんですか?」
唯「んー?何が?」
梓「今日の唯先輩、なんか必死というか、何かに頑張ってた気がしたんですが」
さすがあずにゃん
私のことをよく見てくれている気がします
まあ、気がするだけで、実際はいつもと違う私に違和感があったんでしょうけれど
唯「朝も言ったけど、かっこよくなりたいなー、なんて思っちゃって」
梓「なんですかそれ」
あ、あずにゃん笑ったな
唯「酷いよー。まあ、確かに似合わないと思うけどさ」
梓「なんでまたそんなこと思ったんですか」
それは、言えないよね
まだ
唯「なんとなくだよ」
あずにゃんの視線から逃れるように、あずにゃんの反対方向に顔を向けます
梓「もう……」
あずにゃんはため息をついて、そして
梓「そのままでいいですよ、唯先輩は」
優しく髪を撫でてくれます
唯「そういうわけにもいかないんだよ……」
梓「もしかしたら、唯先輩はすでにかっこいいのかも知れないですよ?」
唯「え?」
一瞬喜んでしまいましたが
唯「……いやぁ、それは無いね」
そうですか、とあずにゃんが言います
梓「まあ、自分のことなんて意外とわからないものですよね」
唯「少なくとも、自分がかっこいいかどうかくらいはわかるもん」
梓「拗ねないでくださいよ」
拗ねてないもん
唯「じゃあさ」
顔をあずにゃんの方に向けます
唯「あずにゃんは、私のことかっこいいって思ってる?」
梓「練習を真面目にしてくれればね」
唯「ほらー、やっぱりそうじゃん!」
梓「違いますよ。これは捉え方の違いだと思います」
唯「あずにゃんが難しいこと言う……」
梓「まあ、そう難しく考えずに」
唯「でも……」
梓「ゆっくりでいいですから、無茶しないで。怪我でもされたら困ります」
そう言って微笑むあずにゃん
優しくて、思わず甘えちゃいそうになるけど
でも、私がのんびりしてたらあずにゃんは他の誰かさんに取られちゃう
この温かい膝枕も笑顔も、全部その人のものになっちゃう
焦らなきゃ、いけないと思うんですけれど
唯「……難しいところだねぇ」
梓「なっ!唯先輩、そんなところに顔突っ込まないでください!」
和「お風呂空いたわよ」
唯「あ、和ちゃん」
和ちゃんと憂が出てきました
和ちゃんは気持ちよさそうに、憂は何故か落ち込んでるように見えます
和「気持ちよかったわね、憂。お話もいっぱい出来たし」
憂「う、うん。そうだね、和ちゃん……」
梓「憂……次があるよ……」
憂「うん……」
何やらあずにゃんと憂がこそこそ喋っています
むぅー、なんか悔しいような……
でも憂、どうしたのかな
私は牛乳を一気飲みする和ちゃんに耳打ちします
和「ん?どうしたの?」
唯「憂と何かあったの?なんだか落ち込んでるような気がするんだけど」
和「そう?いつも通り可愛いじゃない。湯上がりの憂って色っぽいわよね」
唯「んー、お姉ちゃんだからわからないや」
和「お風呂の中でも楽しくお喋りしてたし、手も出さなかったわよ。ちょっとのぼせたのかしら」
唯「あー、そっか」
のぼせたのか。それじゃあ、
唯「憂-、アイスあるよー。のぼせたんなら、食べないと!」
憂「え?あ、うん!ありがとうお姉ちゃん」
のぼせるくらいお風呂に入ってたら、アイスもきっと美味しいよね
元気も出るだろうし
唯「じゃあ、私達も入ろっか。あずにゃん」
梓「お先にどうぞ」
流れでおっけーしてくれるかと思いましたが、甘かったようです
唯「入ってきますね……一人で……」
和「そんな落ち込まなくても……私がもう一回入りましょうか?」
憂「ダメ」
梓「ダメです」
唯「ふぃー」
シャワーで軽く体を洗って、湯船につかります
結構熱めだけど、それがまた気持ちいい
最近は夜は冷えだして、そんな時のお風呂は気持ちいいです
唯「あー、あずにゃん……」
結局あずにゃんと入れなかったなー、お風呂
明日のお昼にはもう帰っちゃうみたいだし
どうせなら月曜日の朝、ここから学校に行けばいいのに
それならあともう一回、一緒にお風呂に入るチャンスもあるし
唯「でもまあ、それでもダメか……」
あずにゃん、頑なに拒否の姿勢を貫いてたし
もしかしたら警戒されてるのかもね
昨日の夜、私が「女の子が好き」ってこと告白しちゃったし
あずにゃんの身持ちが堅いのかもしれません
好きな人としかお風呂に入らない、とか
それはそれでショックです
あずにゃんと一緒にお風呂に入れるその人が羨ましい
きっとあずにゃんも喜んで入るでしょう
もしかしたら、洗いっことかするかもしれません
唯「ふぅ……」
そのことを考えるのは止めよう。お腹の下らへんが痛くなる
それに、あずにゃんも昨日の夜は抱きついてくれたり、髪を撫でてくれたり
さっきだって髪撫でてくれながら膝枕してくれたりしたじゃん
自分が「女の子が好き」ってこと、カミングアウトしてくれたし
信用されてるよ、きっと
良いことだけを考えよう
唯「……先は長いんだしね」
今日のでわかりました
あずにゃんの理想の女の子になるのは難しい
これから気を抜かずに毎日努力したところで、きっと間に合わない
間違いなく、私は他の人と幸せそうに笑うあずにゃんを見ることになる
私の想いは無駄になる
それでも
唯「それでも、頑張るって決めたんだ」
私はあずにゃんが好きで、その気持ちは世界で一番価値がある
何もせずにただぼうっと見ているだけでは、この気持ちがもったいない
せめて、ロックンロールしよう
決まっている結末に銃口を向けて引き金を引いてやる
当たらなくてもいい。流れ弾がカスるだけでも、ヒビくらいは入れてやる
変わったなぁ、私と自分で思いました
こないだまで、ただこの気持ちを隠すために必死だったのに
今では伝えたくてたまらない
唯「欲張りになっただけかも」
少し笑います
さて、と
唯「あずにゃんをその気に出来るように、綺麗にしとかなくちゃね。髪も身体も」
ザバっと私が湯船から立ち上がろうとするのと
唯「え」
ドアが開いて、全裸のあずにゃんが入ってくるのはほぼ同時でした
唯「あ、あずにゃん!?」
急いで湯船に戻ります
み、見られた?見られたよね
あずにゃんがドア開けるタイミングとほぼ同時だったもん!
いや、そりゃ裸を見られたのが初めてってわけじゃないけどさ!
で、でもだっていきなり過ぎて
唯「ど、どうしたのあずにゃん……」
あずにゃんは嘆息してから、
梓「……唯先輩が一緒にお風呂ってしつこいから、来てあげました」
嫌ですか、と言われて全力で首を横に振ります
唯「ぜ、是非一緒に!」
梓「なんですかそれ」
笑って、そしてシャワーで体を軽く流して、あずにゃんが湯船に入ってきます
梓「すみません、もうちょっとそっち寄ってもらえます?」
唯「う、うん」
一人が足を伸ばせるくらいには大きい浴槽ですが、さすがに二人で並んで足を伸ばせる幅は無くて
唯「あ、あずにゃん、こう座る?私の、足の間に」
ちょっと足を開いてみます
いや、ちゃんと隠しはしますけど
あずにゃんは大して抵抗することも無く、私の足の間に座ってくれました
自然と、あずにゃんが私の胸に背中を預けてくれて、私は軽く抱きしめる形になります
なんだろう、もの凄く嬉しい
最終更新:2012年02月27日 21:35