『ドリームウォーズ』


梓「はあ、はあ・・・」タッタッタ

姫子「なかなか逃げ足の早い子ね」スタスタスタ

梓「だ、誰か・・・っ!助けて・・・」タッタッタ

姫子「無駄だよ。もうどこにも逃げられない!!」バッ!

梓「きゃあああああああ!」

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数時間前 2年生 教室

純「ねえねえ、2人とも将来の夢ってある?」

憂「夢?」

梓「どうしたの?いきなり?」

純「いやー、なんか昨日眠れなくてさ・・・いろいろ考えてたんだ」

憂「あーわかる!眠れないときってすごく難しいこと考えたりするよね」

純「そうそう、それで私って具体的な将来な夢を持ってないなーって思って」

梓「ふーん」

純「で、2人は将来の夢あるの?」

憂「私は・・・あるといえばあるかな。でもちょっと恥ずかしくて言えない//」

純「なんとなく想像つくわ」

憂「あ、梓ちゃんは?」

梓「私は・・・」

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純「はあ」トボトボ

純「二人ともちゃんと夢があるんだなあ。私なんて、せいぜい『カッコよくなりたい』とか漠然な夢しかないし」

純「いいなあ」

姫子「夢が・・・欲しいのかい?」

純「!?えっと、誰?」

姫子「私は、そうね・・・『夢商人』とでも呼んでもらいましょうか」

純「はあ??」

姫子「あなたは『夢』が無くてお困りですね。私が『夢』を売ってあげましょうか?」

純「本当ですか!?」

姫子「ええ、どのような夢をご希望で?」

純「えっと、なんというか向上心のある、目標に向かって努力できる感じの・・・」

姫子「かしこまりました。料金は後払いで結構です。明日の同じ時間、この場所に来てください。では」サッ

純「何者なんだろう・・・」

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澪「今日は久々に練習できたな」

梓「はい!あ、すいませんちょっと教室に忘れ物しちゃったんで、みなさん先に帰っててください」


廊下

梓「ふう、遅くなっちゃったな」

姫子「すいません、ちょっと」

梓「え、はい?」

姫子「あなたの『夢』・・・もらうわ!」バッ

梓「ええええええ!?」

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現在

梓「う、うう」

姫子「おとなしくしなさい。痛くないから、ね」ガシッ

ギュウウウウイイイイイイン!!

梓「あああぁあああぁあ!」

姫子「ふふふ、これであなたの夢は私の物・・・」

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次の日

姫子「では、夢をあたなに移します」

ギュアアアアアアン!

純「あぁん!はあぁ!」

姫子「これでこの夢はあなたの物」

純「はぁ、はぁ、すごい・・・これが向上心のある夢!全身からやる気が溢れてくるよう」

姫子「またのご利用をお持ちしてます」ニコッ

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次の日

姫子「では、夢をあたなに移します」

ギュアアアアアアン!

純「あぁん!はあぁ!」

姫子「これでこの夢はあなたの物」

純「はぁ、はぁ、すごい・・・これが向上心のある夢!全身からやる気が溢れてくるよう」

姫子「またのご利用をお持ちしてます」ニコッ

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軽音部 部室

梓「・・・」ポケー

唯「なんか今日のあずにゃん、ずっとボーっとしてるね」

律「梓ー!いつものやる気はどうしたー!」

梓「・・・なんか、やる気が起きません」ポケー

澪「そういえばムギは?」

律「委員会で遅れるってさ」

トントン ガチャ

和「ちょっと?例によってまた軽音部の書類が出てないんだけど」

律「ああ!ごめん!」

梓「・・・」ポケー

和「あら、梓ちゃん何かあったの?」

唯「今日ずっとこんな感じなんだよー」

澪「昨日までは普通だったのにな」

和「!」ハッ

和「ちょっと梓ちゃん借りていくわ!」ガシッ グイッ

梓「?」

スタスタ バタン

唯「和ちゃん!?」

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和「梓ちゃん、あなたの夢を言ってみて」

梓「夢・・・えーっと、思い出せないです」

和「やっぱり、『夢商人』・・・別名ドリームハンターに夢を奪われたみたいね」

梓「はい?」

和「最近、生徒たちが夢を奪われて無気力になる事件が多発しているの。夢はやる気の原動力だから」

和「昨日、何かおかしなことは無かった?」

梓「昨日・・・そういえば、人に話しかけられて・・・それからの記憶が無いです!」

和「その人、誰だかわかる?」

梓「確か、唯先輩の隣に座ってた人・・・ですかね。ルーズソックスの」

和「姫子・・・やっかいな子に捕まったわね。でも大丈夫。私が梓ちゃんの夢を取り返すから」

梓「和先輩はいったい何者なんですか?」

和「私は、彼女と同じ・・・人の夢を奪ったり与えたりすることができる能力の持ち主よ」

梓「・・・!」

和「でも安心して。私は彼女みたいに人の夢を奪ったりはしない。あなたのような被害者のために夢を取り返すことが仕事よ。
  ドリームハンターたちから生徒を守る。ドリームガーディアン、ってところかしら」

梓「よ、よくわからないけど頼もしいです」

和「さて、あなたの夢が売り飛ばされないうちに姫子を追い詰めましょう。梓ちゃんにも協力してもらうわ」

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憂「じゃあ、また明日ね」

純「ねえ!せっかくだしどっかで遊ばない?」

憂「え、でも夕飯の準備しないといけないし」

純「いいじゃんいいじゃん、遊ぼうよ!ね!遊ぼう!」

憂「今日の純ちゃんはやけに元気だね」

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3年 教室

ガララッ

姫子「あら、和じゃない。どうしたの?」

和「あなた、『力』を悪用したわね」

姫子「・・・もう気づかれちゃったか」

和「闇取引とは落ちぶれたものね。姫子」

姫子「仕方なかったんだよ・・・」

和「夢を奪うだけならまだしも、それを他人に渡したらどれだけ危険かわかってるでしょう?」

姫子「・・・」

和「話しても無駄みたいね。来なさい、教室じゃ戦うには狭すぎるわ」

姫子「いいけど・・・私に勝てるとでも思っているの?夢商人を引退したあなたが」

和「わかってるわ・・・夢商人は、持っている夢の数だけ強くなる。私は他人の夢を持っていない・・・でも!」

和「力を悪用したあなたを放っておくわけにはいかない!」

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梓「」ソーッ

梓「和先輩、うまくおびき出してくれたみたい」

梓「あとは言われた通り、姫子って人のカバンを漁って」ゴソゴソ

梓「これはiPad?きっとこれが和先輩の言ってた・・・」

(和「おそらくあなたの夢はすでに誰かに売られているわ。私が姫子をおびき出すから、あなたは姫子の顧客リストを見つけて。
   絶対に売買記録を残しているはずだから」)

梓「よし、えーっと・・・帳簿のアプリ!これだ!」

梓「最新の記録は・・・ターゲット:中野梓 売却先:鈴木純 」

梓「そんな、私の夢を純に売ったの?」

梓「いや、純ならすぐに連絡できるし、かえって良かった・・・!」

カチッカチ プルルルルル カチャ

梓「もしもし、純?」

憂『梓ちゃん!私、憂だよ!』

梓「純にかけたんだけどなんで憂が?」

憂『今、純ちゃんと一緒にいるんだけど。純ちゃん、すごい汗かいて苦しそうにしてるの!」

梓「遅かったか・・・」

憂『え?何?どういうこと?』

梓「説明する時間はないから、とにかく純を学校に連れてきて!そうすれば助かるから!」

憂『わ、わかった!』

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体育館

和「『夢』は人格に大きく影響するもの・・・他人の夢を植え付けられれば、人格が不安定になり拒否反応を起こす!」

ドカッ

姫子「うん、私たちのように訓練をつんでいなければそうなるね」

バキッ

和「わかっているのならなぜそんなことを!夢商人は、本来は夢を持て余して困っている人を助けるための仕事!
  それなのに、その強力な能力に溺れ、多くの夢商人があなたのようなドリームハンターになってしまった」

ゲシッ

姫子「怖いのよ・・・自分の力を使い続けないと・・・!自分が自分じゃなくなりそうで!」

フォカッ

和「それがあなたがドリームハンターになった理由・・・!でもそれじゃあ、『あの人』の二の舞になるわ!」

姫子「っ!!私を『あの人』と一緒にしないで!私はちゃんと自制心を持ってる!」

ボキィ!

和「ぐあっ!?」

姫子「ふふっ、自分の夢しかもっていないのに、ずいぶん頑張ってくれたね。さすがは元最強の夢商人。
   だけど私は自分の夢を含めて5つの夢を持っている」

和「そうなんだ、でも十分よ・・・これだけ足止めできれば」

姫子「!?」

バンッ

梓「和先輩!夢を植え付けられたのは純でした!連れてきたから助けてあげてください!」

純「はあ、はあ」グッタリ

憂「えっと、これはどういう状況?」


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最終更新:2012年02月28日 21:29