梓「あれ、今日は唯先輩お休みですか?」

澪「ああ、用事があるんだって」

梓「そうですか……」

律「寂しい?」

梓「寂しくないですっ」

律「素直じゃないなー」

梓「寂しくないって言ってるじゃないですか!」

紬「素直になるのって難しいよね」

梓「ああもうっ!」


――――――――

――――

梓「まったく律先輩はすぐそういう事言うんだから」

梓「ムギ先輩まで」

梓「ちょっと張り合いがないだけで別に寂しくなんか……」

梓「ないし……」

梓「……」

梓「zzz……」


翌朝

梓「おはよ……」

母「おはよう。あら? パジャマから何かはみ出てるわよ?」

梓「ふえ? どこ?」

母「後ろの腰の所」

梓「んぅ……?」

もふもふわふわ

梓「へっ? ナニコレ?」

梓「しっぽ……? なんでこんな」むんず

梓「ひゃう!?」

梓「え、何、何で触られた感触があるの?」

梓「んっ」ぎゅうう

梓「取れない……それにちょっと痛い」

梓「え、ええ……!? お母さんこれ取れないよぉ……!」

母「ええ? それより早く学校行かないと遅刻するわよ」

梓「ふええん、だってえぇ」


学校

梓「……」

梓(結局しっぽつけたまま学校に来ちゃった)

梓(気を抜くとスカートから出てきちゃうよ……)

梓(カバンで隠しながら登校したからばれてないと思うけど、どうしようこれ)

梓「ううん……」ピク ピク

憂「梓ちゃんおはよー。あれ?」

純「何それ? また軽音部絡み?」むんず

梓「ひゃう!? ばれてるー!?」

梓「実は……」

純「はい? 尻尾が生えた?」

梓「うん……」

純「……ん?」

憂「んー?」

純「そういう設定なの?」

梓「違うよ!」

純「ひっぱってもいい?」

梓「あっダメ――」

ぐぐぐ

梓「あひゃぁぁぁああっ!?」ビクビク

純「ちょっ!?」

ざわざわ……

梓「す、すっごく敏感だから……しゃわらないで……」ヒクヒク

純「マジか……」

憂「でもかわいいよ」

梓「そういう問題じゃなーい!」

梓「あうう……こんなのが先輩達に見つかったら……」


放課後

唯「やっほー」

律「おい唯! 梓にねこしっぽが生えてるぞ!」

唯「何ですとっ!?」

澪「かっ……かわいいな……!」

紬「ふわぁ~、もふもふ」

梓「うう……ぐすっ」

律「――つまり、朝起きたら生えていたと」

梓「そうなんです……ふにゃ!? 触らないで下さいよ!」

唯「だあって~可愛すぎるよ~」

梓「んもう!」ピリピリ

澪「尻尾の毛が逆立ってる」

紬「威嚇してるのね」

唯「可愛いからこのままでもいいんじゃない?」ぎゅっ

梓「ちょっ、抱き付かないで下さいよ!」フーリフーリ

律「あれは?」

澪「ゆっくり振ってるから……嬉しいのかな?」

紬「口ではああ言ってるけど尻尾は正直ね!」

梓「か、勝手な事言わないで下さい!」

唯「ふおおおぉ……! あ、あずにゃーーーん!!」ぎゅうううう

梓「ぐえぇぇ!」

律「ふむ……唯、ちょっと梓貸して」

唯「ええーちょっとだけだよ」

梓「物扱いしないでください」

律「デコピーン」ベチンッ!

梓「あでっ!? いったぁぁ何するんですか!」バタバタバタバタ

律「すまん」

唯「可哀想だよりっちゃん! おーよしよし痛くないよ~」ナデナデ

梓「わっ、大丈夫ですからいいですよ……」フーリフーリ

律「……うん。これはやっぱあれだな」

紬「そうね」

梓「へ?」

律「梓の素直じゃない性格の所為で本心がはみ出て来たんじゃないの?」

紬「うんうん。だからとっても敏感なのよ」

澪「なるほどな」

梓「澪先輩まで納得しないで下さいよ」

律「じゃなかったら何なんだよこれ」

梓「それは……猫の霊に憑りつかれたり」

澪「うううああああああああ!?」

梓「あっあっ! やっぱり私の本心でしたあ!」

律「だろん?」

梓「もうそれでいいです……」ヘナヘナヘナ

唯(わかりやすい)

律「さて、原因もわかった事だし帰るか」

梓「解決方法がわからないと意味が……それに私の所為だけど練習してない……」

唯「あずにゃん早く帰ろ~」

梓「ふぅ。今行きまーす」

梓「……」チラ

梓「……」チラチラ

唯「どしたの?」

梓「あ……スカートから尻尾がはみ出てないか心配で」

唯「自分で動かせないの?」

梓「少しは出来るんですけど気を抜くとすぐ勝手に動き出すんです」

唯「そっかぁ」

梓「あんまり押さえつけてもなんだか落ち着かないし不便だな」

唯「うーん、可愛いんだけどそれは困るね」

梓「はい……」


唯「ねえみんな! アイス食べに行かない?」

律「おーいいねえ。どっか店はいる?」

梓「あの、私は……」

唯「んーん、買って公園で食べようよ。あそこなら人もいないしあずにゃんもしっぽ気にしなくていいと思うんだ」

梓「あっ……」

澪「そうだな」

唯「あずにゃんの分は私が買ってきてあげるっ! 何がいい?」

梓「……ありがとうございます。じゃあ……ストロベリーで」ピンッ

唯「わっあずにゃんしっぽ立っちゃってるよ! スカートめくれてる!」

梓「へっ? うわーー!?」

紬「これはご飯の催促ね」

澪「いや嬉しかったんだろ」


公園

唯「お待たせ~」

梓「すみません」

唯「いいよ~。はいストロベリー」

梓「どもです」

梓「ぺろ……おいし」

律「ここの公園いつ来ても誰もいないな」

唯「だからいいんだよ~。昔ここで和ちゃんとかくれんぼした時に誰にもみつからないようにしてたらさー」

澪「そのまま寝ちゃって夜になっちゃったとか? なんて――」

唯「すごいっ! よくわかったね! 捨てられた冷蔵庫に入ったら開かなくなって……」

澪「当りかよっ、ってやめろおおおお……!」

梓「ふふ、あはははっ」フーリフーリ

紬「あら、もうこんな時間」

澪「行くか?」

律「そうだな」

梓「それじゃあ私はここで失礼します」

唯「私あずにゃんについて行こうかなー」

梓「いえ、ここから家はすぐですから」

唯「そっか。大丈夫だよあずにゃん、もし見られてもしっぽすごくかわいいから♪」

梓「くす、そうですねっ」


自宅

梓「ただいまー」

母「おかえり。尻尾とれた?」

梓「取れないよ」

母「うーん、お医者さん行く?」

梓「……もう少し様子見てみる。寝たら治るかもしれないし」


翌日

梓「治らない……うう……」

唯「あずにゃん元気出して、ね?」

律「今日は練習を中止して梓の尻尾対策会議をするぞ」

梓「うう……昨日も練習してないです……」

澪「病院には行ったのか?」

梓「実はまだ……切られる事になったらと思うと怖くて」

唯「でもあずにゃんの気持ちがわかって嬉しいけどな」

梓「……私はいやですよ……昨日だって私の気持ちばればれで……いやですよ……ぐすっ」

唯「あっあっごめんあずにゃん! そうだよね……」

澪「……やっぱり病院で」

梓「それだけはっ! これを切り離すのは何故かダメな気がするんです……すみませんわがまま言って」

紬「でもどうしたら……」

さわ子「はみ出てきたんなら押し戻せばいいんじゃない?」

律「んな無茶な」

さわ子「梓ちゃんが素直にならないからはみ出てきたのなら梓ちゃんが素直になれば自然と戻るんじゃない?」

みんな「……」

さわ子「なんちゃって――」

唯「それだよ!!」

さわ子「え、ええっ?」

紬「梓ちゃんが素直に……」

律「梓が今やりたい事をするとか?」

澪「梓、何か我慢してる事とかないか? あ……言いたくなければいいんだけど」

梓「いえ、大丈夫ですけど……我慢してる事……あるかなぁ」

紬「そうだ! 梓ちゃんの尻尾が喜んだ時の事を思い返してみればいいんじゃないかしら」

澪「なるほど」

律「えっと、昨日梓の尻尾がご機嫌だった時は……」

澪「唯に抱き付かれた時に尻尾振ってたな」

梓「えっ」

紬「唯ちゃんに撫でられてた時も」

梓「ちょおっ……」

律「公園でアイス食べてる時……あれも元を正せば唯になるな」

梓「ゆ、唯先輩は関係ないですよ!」フーリフーリ

律「決まりだな」

唯「あずにゃぁん……!!」

梓「うわっ、ちが、違いますってば!」フーリフーリ

さわ子「んじゃ解決策も出たみたいだし私職員室に戻るわね」

律「えー見ていかないの?」

さわ子「遠慮するわ」

澪「行っちゃった」

律「んでどうするよ」


2
最終更新:2012年03月26日 03:21