3月某日 部室


梓(ついに来てしまった…!)

梓(ホワイトデー…っ!)


紬「はい、梓ちゃんどうぞ」

澪「開けてみてくれるか?」

梓「は、はい!」

パカッ

梓「わあ!」

律「色々考えたけどさ、お返しもやっぱり手作りがいいんじゃないかって」

紬「みんなでクッキー焼いたのよ」

梓「ありがとうございます!色んな形がありますね……」

澪「何の形かわかる?」

梓「えっと…あっ、これ楽器ですか!?」

紬「私たちの使ってる楽器の形にしてみたの!」

律「軽音部だからなー」

梓「なるほど……」

梓(あ、ギターもある…これは唯先輩が作った分…だよね?) パクッ

梓「おいしい…」

紬「よかったー!」

澪「喜んでもらえて何よりだよ」

梓(さて…)

梓(……実は今日はまだ一度も唯先輩と話すどころか

  一度も唯先輩の方を見てすらいない私です……)

梓(べ、別に意識してるとかそんなんじゃないんだから!!) ブンブン

梓(て言うか唯先輩の方から喋りかけてこないはなんで…?
  いつもは向こうから嫌がっていても抱きついてくるのに…なんで今日に限って…)

梓(か、構って欲しいとかそんなんじゃないから!!!)ブンブン

梓「…」 チラッ

唯梓「!!!」

梓「…」 サッ

梓(め、目が合った!ななな、なんで?!ずっとこっち見てたの?!) ドキドキ


律「唯と梓の様子がおかしい」

澪「それは見てたらわかるけど…」

紬「うふふ、二人にも色々あるみたい」 ニコニコ


3月某日 帰り道


梓(まずい…結局ここまで唯先輩とまともに話すらしてない……)



澪「それじゃあ私たちはここで」

律「よくわからないけど二人ともしっかりしろよ」

紬「唯ちゃん、梓ちゃんファイト!」


梓「えっ、あれ?」

唯「…あっ」

梓「…」

唯「…えっと」

梓「はい…」

唯「ふ、二人っきりだね!」

梓「そ、そうですね!」

唯「…」

梓「…」


梓(気まずい…)

唯「…」

梓(どうしてこうなった……)

梓(今更嘆いても仕方ない……とにかくせっかく憂に手伝ってもらったんだから…ちゃんとお返し渡さないと…)

梓「あ…

唯梓「「あのっ!」」

唯梓「!!」

唯「え、えとあずにゃんからどうぞ!」

梓「い、いえいえ唯先輩から!」

唯「そ、そう、じゃあ…あのね…」

梓「…」 ゴクリ

唯「きょ、今日は…」


梓(な、なに…この雰囲気!ま、まさか…) ドキドキ


唯「今日はいい天気だね!!」

梓「…」

唯「…あ…えと…」

梓「…そ、そうですね……」

唯「…」

梓「…」

唯「帰ろうか…」

梓「……はい」

梓(はぁ…何期待してるんだろ……私)

梓(そんなはずないじゃん……)

梓(あめ玉とクッキー…唯先輩からはもう2つも貰ってるのに……)

梓(……それなのに)

梓(まだこんなの渡して気をひきたがってる…)

梓(……)

梓(純、いやしいのは私の方だったみたい…)

梓(だって…2つだけじゃ足りなかったから……)

唯「…」

梓「…」

唯「もうすぐ分かれ道だね…」

梓「はい…」


梓(これ渡すのはもうあきらめようかな…)


ヒューッ コツンッ

梓(?)


梓(頭に何か当たって…紙くず?) ヒョイッ

梓(…?) ガサゴソ

『がんばれ』

梓「えっ」 クルッ

唯「?」


純憂 コソコソ


梓「…」

梓「ふふっ」 クスッ

唯「あずにゃん、どうしたの?後ろに何かあった?」

梓「いえ、別に何でもないです」

唯「…そう?それじゃあ…」


梓「唯先輩!!」

唯「ふぇっ!?」

梓「あ、あの!これ、どうぞ!!」

唯「あずにゃん、これ…もしかして」

梓「えっと…あの!今日はホワイトデーですから!」

唯「で、でも私バレンタイン何にも…」

梓「あめ玉!あめ玉貰いました!」

唯「あ、アレで!?」

梓「は、はい!!だから受け取ってください!!」

唯「…」

梓「…」

唯「あずにゃん…」 ウルッ

梓「!?」

唯「ありがとぉお!!」 ギューッ

梓「にゃっ?!!!」

唯「もう!あずにゃんは可愛いなー!」 スリスリ

梓「や、やめっ!はっ…離してください!」

唯「ダメだよ!今日はあずにゃん分が危うく足りなくなるところだったんだからねっ!!」 ギューッ

梓「なんですかそれっ!!」

唯「良かったよー!あずにゃん今日はなかなか目も合わせてくれないし
  喋りかけてもくれなかったから嫌われたのかと思っちゃったよ」 ギューッ

梓「嫌いになんてなるわけないです…」

唯「うん!」

梓「むしろ唯先輩のこと…」 ドキドキ

唯「うん」

梓「す…」 ドキドキ

唯「?」


梓「好き…とかそう言うのじゃないですからっ!!」

唯「えっ、あれっ」

梓(やっちゃったぁあ!!) ナミダメ

純憂(やっちゃった…)

梓(ダメダメすぎる私…なぜこのタイミングで素直になれないっ) ガクッ

梓(こんなこと言ったら唯先輩に嫌われ…)

唯「んもう、照れちゃって~!」 ギュギューッ

梓「にゃにゃっ?!にゃんでっ!?」

唯「ちゃんと届いたからね、あずにゃんの気持ち」

梓「なっ!!ななっ…」 カーッ

唯「ありがと、あずにゃん」 ニコッ

梓「べ、べべ別に本当に好きとかじゃ…」

唯「ん?」

梓「……はい」

唯「えへへー」 ニコニコ

梓「…もう」

唯「……実は私もね、あずにゃんに渡したい物があったんだ」 ゴソゴソ

梓「! それって」

唯「うん、ホワイトデーのお返し!受け取って!あずにゃん!」

梓「あ…ありがとです…」

唯「はー!受け取ってもらえてよかったー!今日はずっと緊張してたからすっきりしたよ」

梓(あ、それで……なんだ、唯先輩も私と同じだったんだ)

梓「ふふっ」 クスッ

唯「どうしたの?」

梓「唯先輩でも緊張とかしたりするんですね」 クスクス

唯「ななっ、あずにゃんひっどーい!」 プンプン

梓「でも安心しました…これ、開けてみていいですか?」

唯「どうぞ~!私もあずにゃんの開けるね!」

ガサゴソ

唯「ましゅまろ!可愛い!!」 モグモグ

梓(食べるの早い!!)

唯「おいしい!! あずにゃんはやっぱり天才だね!」

梓「あ、ありがとございます…」

梓(喜んでもらえて良かった)

梓「え、えっと、こっちは……」

梓「…あ、マフラー」

唯「ふふん、手編みの自信作です!」

梓「あ、あの…」

唯「これがあれば寒い冬もへっちゃらだよ」

梓「唯先輩…」

唯「?」

梓「もう春です」

唯「えっ、あっ…」

梓「…」

唯「…あの…その」

梓「ふふっ」

唯「!」

梓「唯先輩らしいです」 ニコッ

唯「ご、ごめんね!」

梓「大丈夫です、唯先輩
  ちゃんと届きましたから!唯先輩の気持ち」

唯「あずにゃん…!あずにゃんっ!!」 ギュギューッ

梓「にゃぁっ!!!」


憂「渡せたみたいだね」

純「て言うか…憂、どっちも手伝ってるんじゃない
  うまく行くってわかってたんでしょ」

憂「えへへー、なんのことやらさっぱり」

純「とぼけちゃって」


純「でもマフラー作るのは止めたほうが良かったんじゃない?」

憂「私も悩んだけどお姉ちゃん一生懸命だったし…」


( 唯「ういー、ここってどうやればいいのかな?」 )

( 唯「なるほど!ありがとね!憂!」 )

( 唯「あずにゃん、喜んでくれるかなあ」 )


憂「やっぱり大切なのは渡したい気持ちだと思ったから」

純「そっか」

憂「うん!」 ニコッ


唯「うふふー」 ニコニコ

梓「もういい加減離してくださいよ…」

唯「えぇっー、いけずーっ」

梓「ダメです!」

唯「……あずにゃん私の事好きじゃないの?」

梓「…」

唯「…」

梓「別に好きとかそう言うのじゃないです」

唯「えっ!」

憂純(えっ)

梓「好きとかじゃなくて……」

唯「じゃ、じゃなくて…?」 ソワソワ


梓「大好きですからね、唯先輩!」 ギュッ


                  おわり


はーい、おしまーい
次どぞどぞー



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最終更新:2012年03月28日 20:52