律「ーーよっしゃぁ!」

澪「ふうー、良い演奏だったな!」

唯「楽しかったねーっ」

紬「最高~♪」

演奏が終わり、皆さんが口々に言います。

確かに、こう、身体が熱くなる素晴らしい時間でした。

やっぱり……この人たちは凄い。

こうやって一つになった時は、この一体感だけでなく個々の実力も明らかに上がっている感じがする。

その実力とは、テクニックの事だけでなく……

もちろんそんな事はありえないので、これこそが皆さんの本当の実力なのだろう。

これを毎回やってくれれば……と思わないでもないが、これこそがHTTの魅力なんだろう。今は素直にそう思う。

もちろん練習をせずにだらけすぎるのは良くないので、私はこれからも口うるさい後輩として頑張っていきますけどね。

律「つーか皆凄かったが、特に梓のソロが良い感じだったな」

澪「うん。
私は梓の持ち味は、確かな技術とそれにともなう安定感だと思ってるんだけど、あのソロはその安定感の中でも弾けていたな」

紬「なんて言うのかな、安心して盛り上がれたわね♪」

唯「あずにゃんすごーいっ!」ダキッ

梓「ぅわっ!///」

ふにゃっふ///

まあこれも、百合☆ひろ。

あっ、間違えました。百合にゃん間違えました。

どんまい♪

ーーまあこれも、百合☆パワーのおかげなのですが。

……っていうかさっきから……ちと百合にゃんピンチかもです。

唯「むふー、あずにゃんよしよーし」ナデナデ

律「部長様も褒めてやろうー」ナデナデ

梓「ああもう! やめて下さい子供扱いしないで下さいっ」

そんな事されたらガチにゃん降臨しちまうです。

唯「ちぇー」

律「ちぇー」

澪「ほらほら、梓が嫌がってるからこれ位にしとけ」

紬「うふふ♪
じゃあ、そろそろお茶にしましょうか~」

梓(……あ、ピンチどころかマジやべぇです)

唯「わーいっ♪」

律「よっしゃぁ☆」

梓「私ちょっとトイレ行ってきます」



放課後、下校中。

律「ふぅー、今日も食った食ったぁ!」ポンポン

ホント『ふぅー』でした。

やっぱりさしもの高性能ライナーさんも、二回は耐え切れなかった様です。

あの時に横漏れし始め……

こりゃ外からモロ見えな位垂れて来た! と言う時に何とかトイレの個室に着いたので、本当ギリギリセーフという奴でした。

澪「おい律、お腹を叩くな。はしたない」

紬「まあまあうふふ♪」

唯「でもホント美味しかったなぁ~。
いつもありがとねっ、ムギちゃん」

紬「まあまあうふふ///」

歩きながらムギ先輩の肩に頭を乗せる唯先輩。

まったく、けしからんですね。


もっとやるです!


律「あら澪ちゃん。はしたないって、唯ちゃんとムギちゃんにも注意するべきではござりません事?」

澪「うんっ、無理! 水をさせないっ」


からかうような律先輩の言葉に、澪先輩はキッパリ答えました。

律「うんっ、同感!」

それに律先輩もハッキリ返し、澪先輩と笑い合います。

……幸せだなあ。

私は思います。

こういう景色と言うか、素敵な様子をいつも真近で見られるんですもん。

当たり前すぎてつい忘れがちですが、百合と言い先輩方や友達などの人間関係と言い、音楽と言いーー

私は、とても恵まれた環境に立たせて貰っていますね。

そしてその中でも百合関連でもの凄く助けて貰ってるのは、やっぱりムギ先輩でしょう。 

自身が百合好きだとほぼ公言しているみたいなもので、かつこれは私の妄想ではなく、唯先輩と明らかに怪しーいたまらーん感じのムギ先輩。

この方が居てくれる事で、私が究極の百合にゃんである事を隠せているんだと思います。

そりゃ上手く演技はしているつもりですが、私も人間。

今日、朝の授業中みたいにちょっと気を抜くとうっかりミスだって出て来ますから。

なんか盾にしているみたいで申し訳ないとは思うのですが、本当に感謝し、とても大切で尊敬している素敵な先輩の一人です。

もちろん百合を抜きにしても、ですけどね。

むしろ私が知ってる人の中で、人間として、女性として一番憧れている人はムギ先輩かもしれません。

そりゃあ他の先輩方を始め、素敵な人は沢山居ますけど……

美人で優しくて器も大きく、楽器だって上手くて曲作りも凄い。

一つしか歳の違わない方にこういうのはアレですが、大人になったらこんな女性になりたいなって、そう思います。

唯「はい、ムギちゃん飴ちゃんだよ。
あ~んっ」

紬「あら、ありがとう唯ちゃん♪
……あららっ? ぴゅ」ポォン

梓「もご。
わみゅ」テッテレー

唯先輩から飴ちゃんを頂こうとして横を向いた時に、脚が絡まったか何かしたんでしょうか。

ムギ先輩がつまずき、私へダイブ。

まず、ムギ先輩が唯先輩から食べさせて貰った飴ちゃんが空中浮遊し、私のお口の中へドライブ・シュート。

そしてたゆんたゆんなムギ乳さんが、百合にゃんのお顔にゴール・イン!

梓(こ、これは…… !)

紬「あ、梓ちゃんゴメンね? 私、こけそうになっちゃった」

申し訳なさそうなムギ先輩の声が、頭上から響いて来ます。

くふふ♪ だからムギ先輩みたいな天然さんな方はだいすきなんですよ。

なんたって……

律「おいおい大丈夫だったか?
つかムギ、離れてやらないと梓が息出来ないんじゃないか?」

シャァァァァッ! 律先輩余計な事言っちゃダメですっ。

紬「あらっ、そうねっ。
私ったら気が付かないで……」

ああっ、離れて行く。百合の女神を体現した様なお方と空間が……

これほどまでの百合ヘブン、ムギ先輩味の飴ちゃんと、ムギ先輩自身が合わさったからこそ産まれたこの世の楽園なのに。

それぞれが、単体でもビッグバン並で特筆もののパワーがあるとは言え、この差はデカイです。

しかも、ムギエキスのあまりの百合美味さに私の舌が大活躍し、今や飴ちゃんの九割は私のお腹の中。

残り一割も、もはや私の唾液がほぼ侵食している為ーー

飴ちゃん一つ取っても、全盛期と比べて『ユリ・ソノモノ』と『マルデ・ユリ』位の差は否めません。

唯「もー、ムギちゃんばっかりズレいよっ!」

紬「あらっ♪」

梓「むぎゅう///」

☆百合の女神は、ここにも居ました☆

ムギ先輩が私の身体から完全に離れかけた時、唯先輩が横から抱きついてきたのです。

私のみならず、ムギ先輩ごと。

再びこんにちは、ムギ乳さん♪ そして私の二の腕にいらっしゃいませ、唯ばすと☆

梓(ーー百合にゃぁあああああぁぁぁぁあぁあぁぁぁ・ズキャッツ !!!!!)

な、なんと心中で噛んでしまうとはっ。

ムギ先輩。
唯・計測不能。 律・計測不能。澪・計測不能。
梓・計測不能。 和・計測不能。
さわ子・計測不能……いちご………信代……………………

むむむ、あまりの夢見心地展開に、さすがの百合にゃんも混乱している様ですっ。

百合界の象徴の一つ・妄想を体現する至高技の一角、百合にゃん・スキャンが暴走するとは……っ!

まあムギ先輩は唯先輩と似た様な数値傾向なので、こんな感じにすべて横一線でも正しい数字と遠からずなのですが。

しかしそれは置いておいて、前から横から。

梓(やわらかふかふかさん♪)

女の子でも、やっぱり女の人の胸は好きです。むしろだいすきです。

ーーあ、百合にゃん変な気分になってきました。

これは、



か……

百合にゃんとガチにゃん、夢のコラボ・レーションっ!?


唯『ムギちゃん、よく頑張ったね……』

紬『うん……ありがとう、唯ちゃん』


『すぅ、すぅ……』


唯『赤ちゃん、良く寝てるね』

紬『可愛いわね……
私達の赤ちゃん……』

唯『えへへ/// 頭ナデナデしちゃぅ』ナデナデ

紬『うふふ♪』

唯『あーっ。こんなに最高のお嫁さん貰って、こんなに最高の赤ちゃん授かるなんて私はホント幸せ者だよ~』

紬『私もよ……
幸せ。もの凄く……幸せ』

唯『もうたまらないっ。赤ちゃんにちゅーしちゃう!』ムチュチュ~

紬『あっ。ダメよ唯ちゃん、赤ちゃん起きちゃう』

唯『えー。ちぇちぇっ。
じゃあムギちゃんにちゅー☆』チュ

紬『ん……
うふふ、ダメよ唯ちゃん……///』

唯『…………』ムギチャンノ、ウエヘ

紬『ーーえっ?』

唯『えへへ。ムギちゃん、だいすき』

紬『ゆ、唯ちゃん?///』

唯『仕方ないけどずっとご無沙汰だったじゃん。
だから、ね?』モゾモゾ

紬『だ、駄目よっ。赤ちゃん起きちゃったら見られちゃう……///』

唯『見せてあげようよ。
親同士が仲良くしてる所だもん。悪い事なんてないよ』

紬『そんなぁ///』

唯『どうせなら、この子に妹か弟……作ってあげようか?』

紬『///』

唯『それにさ、おっぱい。
やっぱりまずは、ママが味見しないと♪』チュパ

紬『ふぁぁっ……
唯ちゃん、唯ちゃぁん……///』

梓(ムギママ、唯ママ……)チュパ、モニ

唯「ふぉ?」

紬「きゃうっ!?
あ、梓ちゃんくすぐったいわ///」

梓(……ハッ!?)プュ、プシッ
「あ、すっ、すみません。息が出来なくて、つい腕と口を動かそうとして……」

いかぬっ。つい唯先輩とムギ先輩の赤ちゃんになりきってましたです。

さすがに自制の限界を感じた私は、多少……

嘘ですね。百合にゃん嘘つきました。

とてもとても未練を残しつつ、私はムギ先輩と唯先輩から離れました。

唯「ちぇちぇっ。抱き合いっこ、もうおしまいかぁ」

梓「な、なに勝手言ってるんですか。
ムギ先輩は事故なので仕方ないにしても、いきなり抱きついてきてっ」

……でも、唯先輩とムギ先輩の赤ちゃんか……

なんだろ、その純度100パーセントの百合ちゃん。

すっげぇすっげ、可愛いんだろうなぁ……

赤ちゃん産める幸せを身を持って実感出来るのは女子の特権ですし……

ホント、女の子同士は最高ですね☆

澪「おいおいどうしたんだ梓、顔がにやけてるぞ?」

……し、しまった!?

律「つうかムギのシャツ胸んとこがベッタリだし、超嬉しかったんじゃないのか?」

ニヨニヨしながらの言葉なのは若干ムカムカ百合にゃんですが、律先輩ナイス・フリです!

梓「な、なに言ってるんですか! そんな訳ないじゃないですかっ!」

律「んぇー? じゃあさっきのはなんなんだ?」ンフフ

梓「もう、うっさいです!
それよりすみませんムギ先輩、シャツ汚してしまいました……」

動揺してて気付きませんでしたが、改めて見ると確かに、ムギ先輩のシャツは胸の部分が私の唾液でしっとり濡れていました。

……あ。よく見たらブラが透けています。ピンクのブラが透けています。

こっそりマジマジと見てやりましょう。

紬「良いのよ~。苦しかったんだもんね。
私こそゴメンね?」

梓「そんな。ムギ先輩はなにも悪くないです」

……よ、よし。さっきのは何とかごまかせたみたいですね。

助かりました律先輩っ。

澪「でも外で抱き合うのはやめてくれよ。恥ずかしいからさ」

苦笑しながら言う澪先輩。

確かに仰る通りですね。百合は宇宙最強・最高の正義とは言え、公衆道徳は大事です。

唯「んー……
でもちょっと物足りないなぁ」

何やら思案顔の唯先輩。

唯「ねねね、律っちゃんも澪ちゃんももっと近くにきてくだせぇ」

律「ん?」

澪「どうした、唯」

唯先輩の言葉に2、3歩程離れていたお二人が、およそ1歩位の距離まで近付いて来ました。

これで私達五人は、全員がかなり近い位置に居る事になります。

唯「みんなっ、むぎゅうぅぅぅぅぅぅぅぅっ!」

紬「まぁ♪」

梓「にゃっ!?」

なんと唯先輩がいきなり、目の前の私とムギ先輩に両手を広げて抱きついて来ました!

律「おっと!」アズサヲ、ササエ

澪「わっ!?」ムギヲ、ササエ

突然の事に私もムギ先輩も少しよろめき、おそらく反射的にでしょう。

すぐ後ろに居た律先輩と澪先輩が協力し、慌てて私たちを両手で支えます。

ーー気が付くと、私たち五人は皆で抱き合う様な格好になっていました。

唯「えへへ、皆で抱き合いっこっ♪」

澪「ちょ、こんな場所で……」

紬「うふふ♪」ミオハンド、ギュ

澪「ム、ムギ!?///」

照れ臭かったのか離れようとした澪先輩を、ムギ先輩が許しませんでした。

律「いや、まあアレだ。
よし、ちょっと落ち着こうか。よし落ち着……
中野ぉ!?///」

澪先輩に習おうとした律先輩ですが、これは私が阻止。

外と言えど、別に人通りの多い道という訳でも、はたまた道のド真ん中でやってる訳でもないのです。

大丈夫ですよね☆

梓(もちろんですともっ!)

うむっ、何も問題無し。

ならば、こんな一大百合イベントを早々終わらせるのはもったいないじゃんっ!

唯「えへへー。
こうやって五人で思いっきり、ぎゅーし合ってみたかったんだぁ♪」

律「……しょうがねぇなあ///」

澪「ま、まったく……///」

まだ恥ずかしそうなお二人でしたが、唯先輩に純粋な瞳で見つめられ、離れようとするのをやめました。

紬「うふふ、楽しいねー♪」

唯「うんっ!」

律「……そうだな///」

澪「ま、まあ……悪くないな///」

梓「……はい」

最高です。

最高に幸せです。

大好きな人たちとこうしてぎゅー出来て。過ごせて。

そして、軽音部の先輩方だけでなく、家族だって、憂や純、クラスメートや和先輩、さわ子先生、トンちゃん……

大切で、大好きな人たちに囲まれた今が。

心から感謝です。


こうして、百合にゃんの一日は過ぎて行くのでした。



おしまい。



4 ※おまけ:さわ梓
最終更新:2012年04月08日 20:52