律視点


律「は?」

澪「だから、明日一日お試ししてみてって」

律「何を?」

澪「私を///」

律「いやいや」

澪「いやいやいや」

律「いやいやいやいや!」

澪「いやいやいやいやいや!!」

律「いやいやいや……あいたっ!」ゴチン!

澪「しつこいっ!!」

律「ぶーぶー」

澪「とにかく、明日一日だからな!///」


そう言うと澪は走り去って行った。
数日前からそわそわしていると思ったら、
これを言う為だったとはさすがのりっちゃんでも分からなかったぜ。


しかし困ったな。
帰り道。
私の家の前まできたら突然、

澪「律! 明日一日、私と、こここ恋人にならないか?」

だもんな。
澪が言うには、

澪「親友で幼馴染の女の子に突然告白されたら、律困っちゃうだろ?」

澪「だから、明日は一日、こここ恋人お試し期間だ///」

澪「その日の終わりに改めて告白するから、その時に返事を聞かせてくれないか?」

だそうだ。
うーん、お試しも何も、私も澪のこと好きなんだけど。
あいつ全然気が付いてなかったんだな。


その日の夜

あぁ! 明日は澪とデートかぁ!
楽しみだなぁ。一日のお試しとはいえ恋人なんだろ?
どこまでヤッていいのかな?

手は……繋ぐだろ。
キスは……ギリギリOK?
舌突っ込むのは……ギリギリOUT?……OKでいいかwwwwww
だって恋人だもんな!

そういやどこに行くんだろ。
さっき来たメールには、明日10時に迎えに来るって書いてあったけど。
動物園かな?
いや、春とはいえまだ寒いから水族館かな。
まぁ、澪と一緒ならどこでもいいか。
どんな所でも澪を楽しませる自信あるし。

そういや、澪はその日の終わりに改めて告白するって言ってたけど、
どんな告白すんだろ。
きっとメルヘンで痒くなるような言葉考えてんだろーな。
詩とか朗読したりしてwwwwww

あぁ、楽しみすぎて眠れないや。
澪でも数えるか。

澪が一人。
澪が二人。
澪が三人。
澪が四人。
澪が五に……

あいたー!!

はあー、ちょっとウトウトしたら、夢の中で五人の澪にゲンコツくらったwwwwww
痛いwwwwwwけど幸せwwwwww

だめだ、余計に興奮して眠れないや。
梓でも数えるか。

梓が一人。
梓がふた……。
あれ?
梓ってどんな顔してたっけ?
たしか目が二つに、鼻の穴が二つで、口が……ZZZZZZZZZ


翌日

10時になっても澪は迎えに来なかった。
変わりに来たのは「ごめん、ちょっと遅れる」と書かれたメール。
澪が遅刻するなんて滅多に無いことだ。
きっと澪も、興奮して眠れなかったに違いない。
かわいいヤツめ。

しかし30分待っても澪は来なかった。
さすがに心配になってきたな。電話でもするか。

コール音。

コール音。

コール音。

そして留守電のメッセージが流れた。

あれ。うんこ中かな。
もう一度かけてみよ。
やっぱし出ないな。
メールしてみるか。
いや、電話に出られないならメールも返って来ないか。

よし、迎えに行こう!
歩いている間に澪に会うかもしれないしな。

家を出て、ゆっくり歩く。
会ったら何て言おうかな。
「うんこ、時間かかったな! 止まらなかったのか?」
イマイチだな。
「りっちゃん様とのデートが楽しみ過ぎて眠れなかったのか?」
いきなり本当のこと言ったらマズイか。

いつもの角。
ここを曲がったら後は一本道だ。
きっとここを曲がったら澪がいる。
ちょっと小走りしながら顔を紅潮させた澪がいる。
そんな気がした。
りっちゃん様は澪のことならなんでも分かるんだぜ!

そしていつもの角を曲がった。

澪はいなかった。

気のせいだったwwwwww


まだ家にいるのかな?
あぁ、なにも迎えに来なくても家電にかければ良かったのか。

家電にかける。

コール音。

コール音。

コール音。

……。

誰も出ねぇ。

何かあったのかな?
不安が腹の奥底から湧き出して、じわじわと全身に広がって行くような気がした。
弾かれたように走り出す。

澪。澪。澪おおおおおおおおおおおおおおおおおう!!!


澪ん家の玄関。
インターフォンを押す。
一応押したから開けてもいいよね?
私はインターフォンを押してすぐにドアを開けた。

律「みいいいいいいおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」
澪「うるさい!!」

ゴチンッ!!

律「あいたっ!!」

澪「あ、ごめん。つい反射で……」


ドアを開けたら澪が立っていた。
そんで、いきなりゲンゴツをくらった。
心配して走ってきたってのに、愛が痛いぜ澪しゃん……。
頭をさすりながら目線を上げる。
そこには、普段着ないスカート姿の澪がいた。


澪「えっと……遅れてごめん。その、すぐ出るから、ちょっと待ってて!」


そう喋りながらだんだん顔が赤くなった澪は、
言い終わる前に自室へ走って行ってしまった。

ヤベエエエエエエエエエエエエエエエエエエ!!
澪しゃんかわいすぎだろおおおおおおおおお!!
これが漫画やアニメだったら、私、ここで間違い無く鼻血出てるぅwwwwww

澪「律! お待たせ……って、きゃあ! 律! 律! 鼻血出てるぞ!」

律「 」


リビングで30分ほど休ませてもらって、やっと澪ん家を出る。
ありゃりゃ、もう11時になっちゃってるよ。


駅まで10分ほどの道のりを二人で並んで歩く。
澪しゃんのバッグがやけに大きくて重そうだ。


律「澪。持つよ」

手を差し出した。

澪「ありがとう。でも、大丈夫だから」

それでも私は出した手をひっこめない。
だってさ、

律「作ってくれたんだろ? お弁当」


澪がちょっとびっくりしたように眼を開いた。
でも、すぐに顔を赤らめて笑いながら頷いた。
りっちゃん様には何でもお見通しなんだぜ。


律「お礼に、私が持つよ」


澪のバッグを掴んで引き寄せる。澪は抵抗せずに渡してくれた。
その時に手が一瞬触れて私も顔が熱くなっていくのが分かったから、


律「よーし、駅まで競争だぁー!!」

澪「お弁当がぐちゃぐちゃになっちゃうだろ!」


二人で笑ってごまかした。


電車に乗る。
車内は空いていたので、座ることにした。
先に座った私のとなりに澪が座る。
いつものことなんだけど、
いつもよりちょっと近くに座ってきた澪にドキドキした。
早く着かないかな。でももっとこうしていたいから、
やっぱりまだ着かなくていいや。


そんで。
はい、着きました。
水族館でございます。
りっちゃん当たったwwwwww


律「腹減ったな。見る前に食べよーぜ!」

澪「あぁ、そうだな。じゃあ、外のベンチに行こうか」


澪のバッグから、小さな丸いテーブルにお弁当箱が並べられた。


澪「えっと……口に合うか分からないけど……」

澪「め、め、召し上がれえええええええっ!!!///」


ものすごい勢いでの「召し上がれ」にちょっと笑いそうになったが、
怒られそうなんで我慢。

中身は私の好きな食べ物ばかりだった。
かわいく、彩りよく並べられている。澪らしいや。
澪しゃんの手作り弁当……。

律「いっただっきまーす!! うめぇっ!!!」


遠慮なくガッツくwwwwww
朝から走ったから腹ペコだものwwwwww


澪「あ! コラ! 私の分まで食べるな!」


律「御馳走様でした……げふっ。動けない……」

澪「私の分まで手を出すからだ」

律「だって美味しかったんだもーん……げふっ」

澪「///」テレテレ

あ、澪が照れてる。
かわいいなぁ……げふっ。

結局、さらに一時間休憩。
どんどん時間が少なくなっていくな。


澪「律! 律! 見て見て! マンボウだよ!」

律「あぁ、マンボウだな」

澪「あ! あっちのお魚、キレイ!! 律! 律! あっち行こう!」


振り回されながらも、それが心地良かった。
楽しそうな澪を見てるとさ、こっちまで楽しくなるんだもん。


最後に、イルカのショーを見ることにした。
本日ラストのショーはすっごく混んでいて、
一番後ろになんとか座ることができた。
一番前で見せてあげたかったな。
そんなことを思いながら澪の横顔を盗み見する。
期待で潤んだ瞳に照明がキラキラと反射して、素直にキレイだなって思う。
本当にキレイだよ、澪。

澪「律! イルカだぞ!」

律「あぁ、丸々して美味そうだな」

澪「りいいいつううう!」

律「冗談だってばwwwwww」


ショーが始まると、イルカの動きに合わせて歓声が上がった。
ふと見ると、椅子に手をついている澪の左手が見えた。
あら、無防備だこと。
握っちゃおうかな。
でも澪しゃんってば恥ずかしがり屋だから、
人前でこういうことしたら怒るかな。
でもでも! 恋人なんだし、いいよね?

右手を、澪の左手に重ね……

澪「律! 律! 今のジャンプ凄かったな!」

律「へ!? あぁ、そうだな!!」


急に話しかけてくんなwwwwww
ビックリすんじゃねえかwwwwww

だめだ、緊張してきた。
そっと手を重ねる代わりに、そっと手を横に並べる。
小指だけが重った。
ヘタレりちゃんにはこれが精いっぱいだった。
だってさ、これなら澪が「人前でやめろ!」って言っても、
「誤解だ! 澪しゃんの小指は大きいから椅子のフチだと思ったんだよ!」
なんて言い訳できるし。

視界の端で澪が振り向いたのが分かったけど、
私は、澪に気が付かないふりをしてイルカに集中した。
澪は何も言わずまた正面を向いた。
良かった。どうやら拒否はされないらしい。

と思ったら、そっと左手を引き抜かれた。
ぎゃーーー!!! やっぱり拒否されたああああああ!!!

そして、右手がそっと温もりで包まれた。
右手を見る。
そこには確かに、確かに澪の左手が重なっている。

しっかりと横を向き澪を見ると、
顔を真っ赤にしながらイルカのショーに熱中しているふりをしていた。
今日の澪しゃん、大胆wwwwww
嬉し過ぎるwwwwww
キスしたいです!
君のその綺麗な横顔に、キスをしたいです!


澪「あんまりジロジロ見るなぁ///」カァ


もう押し倒したいです!
今すぐ押し倒したいです!

押し倒せない代わりに澪の指に自分の指を絡めてぎゅっと握ってやると、
澪は幸せそうに笑ってくれた。

やっぱり押し倒したいwwwwww


帰り道。

電車の椅子に並んで座る。
弁当が入っていたバッグを膝の上に抱えた。バッグの下から手探りで澪の手を握る。
一瞬ビクッってなる澪しゃんは本当にかわいい。
顔真っ赤にしながら周りの乗客に気付かれないように自然と喋ろうとするんだけど、
必死なのバレバレな澪しゃんはもっとかわいい。


澪「律」

律「なに?」

澪「律、顔真っ赤だぞ」


私も真っ赤だったwwwwww
必死に余裕な振りしてたけどバレバレwwwwww


澪「律……」

小声で澪が話すから、耳を澪の口元に近づけた。

澪「律、かわいい……」

律「んなっ!?」

やめろおおおおおおおおおおおおおお!!!!
照れるうううううううううううううう!!!!


電車を降り、並んで歩く。

律「腹減ったあー! 澪! コンビニ寄ってくぞ」

澪「はいはい。でもあんまりたくさん買うなよ? 夕飯入らなくなるからな」


夕飯の心配までしてくれるなんてさ、私の嫁かっつーの。
全く、澪は良い嫁になれるよ、うん。
きっと、上手くやっていけると思う。

コンビニでからあげ君買った。
歩きながら食べようかと思ったけど、
小さい頃よく澪と遊んでいた公園が見えたんで公園へ。

ベンチに座ると、当たり前のようにいつもより近くなった距離で澪が座ってきた。
あぁもう! いちいちかわいいwwwwww


律「はい、あーん」

そんな澪にからあげ君おすそわけ。
でも、つまようじに差したからあげを手でつまんで食べちゃった。
あーんしてくれなかった……。

さてと。
からあげ君食べたし、本題に入りますか。

律「なぁ、澪?」

澪「ん?」

律「ちゅーしていい?」

澪「な…な…なーーーっ!!!」チーン

ありゃりゃ、気絶しちゃったよ。

律「澪!! 澪!! 戻ってこおーい!」

澪「はっ! 駅か? 降りなきゃ!」

律「ちょっ!! コラ! どこ行くんだよ!! 駅じゃない! ここは公園だ!」

澪「あ、あぁ、律。おはよ」

律「そんなんでこれから先、大丈夫か?」

澪「……相手が律なら、律なら大丈夫……」

律「大丈夫じゃなかったじゃんwwwwww」

澪「きゅ、急に言うからだっ!」

律「なんだよ。じゃあ、昨日のうちにメールで言っといた方が良かったのか?」

澪「それはムードが無い!」

律「じゃあ、どーすりゃいいんだよ!」

澪「二人きりで、見つめ合って、なんとなくそんな雰囲気になって……」チーン

律「おーい、澪しゃーん。妄想で気絶すんの止めてもらえます?」

澪「はっ! 駅か? 降りなきゃ!」

律「またそこから!?」


2
最終更新:2012年04月12日 13:35