唯「見て見てあずにゃん!でっかいお魚さんがいるよ!」キラキラ
梓「はしゃぎすぎですよ唯先輩」
唯「うわ~!こっちにはカニがいるよ!おいしそ~!」
梓「周りの視線が痛いですからやめてください!」
梓(本当にこの人は…かわいいなあ)
唯「なんかイルカショーがやるんだって!行ってみよう?」
梓「はい!」
唯「でもイルカなんて初めて見るな~。どんな感じなの?」
梓「えっ?見たことないんですか?」
唯「うん。憂の看病で忙しかったからね」
梓「…そうなんですか」
唯「あ~楽しみだな!早く行こうよ」
梓「はい…」
唯「うっわ~~!!かわいいよお!!」キラキラ
梓「はい!すっごくかわいいです!」
イルカ「キュイ!」ピョン
唯「とんだ~~~!?」
ザッパーーン
唯「うわっ!?水が…」
梓「あっちゃーびしょ濡れですね。大丈夫ですか?唯先輩」
唯「うん、結構ぬれちゃったけど…」ビチャビチャ
梓「!」ドキッ
唯「? どうしたのあずにゃん?」
梓(濡れた唯先輩、すごく色っぽい…///)
梓「なんでも…ないでふ」ポタポタ
唯「あずにゃん!?鼻血出てるよ!?」
唯「今日は楽しかったね~あずにゃん!」
梓「そうですね」
梓(律先輩が言っていた告白すると大体成功する景色の奇麗なスポットに来たぞ!)
梓(あっちょっと説明っぽくなった)
唯「ここってすごく景色がきれいだね!」
梓「はい!ここって結構有名な場所らしいですよ?」
唯「そうなんだ」
梓(やっぱり横顔もかわいいな。見とれてしまいそう…)
梓「……」
梓(どうしよう…なんだか気まずい…)
唯「あずにゃん」
梓「は、はい!?」
唯「今日はありがとうね。こんなに楽しかったのすごく久しぶりだったよ!」
梓「こちらこそ、とっても楽しかったですよ」
唯「…また来ようね?」
梓「はい!」
唯「……」
梓「……」
梓(うっ…また沈黙が…)
梓(いや!覚悟を決めろ梓!ここでしなきゃいつやるんだ!)
梓(……よし!)
梓「唯先輩!」
唯「ほい?」
梓「わたしは最初、唯先輩があまりにも完璧超人すぎてとっつきにくい先輩なのかなと思っていました」
唯「…うん」
梓「でもそんなことなくて…こんなわたしにもとても優しく接してくれるし、ほんわかしててあたたかくて…ギターもうまくて…」
唯「……」
梓「そしていつの間にか…唯先輩のことが好きになってました」
唯「……」
梓「もしこんなわたしでよかったら…唯先輩の傍にいてもいいなら…どうかお付き合いしてください!」
唯「……」
梓「~~~~~!!」ブルブル
唯「…顔あげて?あずにゃん」
梓「は、はい」
唯「わたしもね、あずにゃんを最初見たときかわいい子だなあって思ったんだ」
梓「…はい」
唯「それにとても真面目で自分に厳しくて…でもちゃっかりティータイムには顔出したりしてたけどね」
梓「うっ…」
唯「それでね、返事なんだけど…ごめん」
梓「!」
唯「わたしじゃあずにゃんの気持ちにこたえられないよ…だから付き合えない」
梓「…どうしてですか、わたしの何がいけなかったんですか?」
唯「あずにゃんは何も悪くないの。ただわたしが…」
梓「やっぱり妹さんのことですか?」
唯「!!!」
梓「…そうでしたか。唯先輩はわたしより妹の方がいいんですよね?」
唯「それはちがうよ!ちがうんだよあずにゃ…」
梓「違わないです!」
唯「!」ビクッ
梓「今日だって唯先輩は言ってました。イルカを見るのが初めてだって。妹の看病が忙しくって見れなかったんだって」
唯「……」
梓「あんなに楽しそうにしてたのに…唯先輩は妹さんにとらわれてるんです!少しは自由にしてもいいじゃないですか?」
唯「あの子の面倒を見れるのは私だけなの!あずにゃんは関係ない!」
梓「関係あります!唯先輩に迷惑をかける妹なんて…いない方がましです!」
唯「!」
バシッ
梓「…!?」
唯「…何もわからないくせに…わたしたちに口出ししないで!!」
梓「あ…」
唯「…ごめんね、ぶっちゃって。じゃあね…」タタタ
梓「あっ…ゆいせんぱ…」
梓「……」
梓「…わたし…取り返しのつかないことを…」
梓「わたし…最低だな…ヒクッ」
梓「どうしよう…唯先輩に…ヒクッ、嫌われちゃった…グス」
梓「うわああああああああああああん!」
――翌日
梓(今日は部活に行けないや。行っても気まずいだけだし…)
梓(唯先輩に迷惑かけちゃったし…あやまっても許してもらえないだろうな…)
梓「これからどうしよう…」ハア
和「あら?梓じゃない」
梓「あ、和先輩…」
和「どうしたの?もう部活が始まってる時間よ?」
梓「えと、その…」
和「…なにかあったの?」
梓「いえいえ!なんでもないです!」ブンブン
和「ウソでしょ」
梓「うっ…」
和「さあ、わたしに話してみなさい。楽になるはずよ」
…
和「…そう…それは言っちゃいけないわね」
梓「はい…もう唯先輩に会わせる顔がないです…」
和「さすがの唯でも憂の話になると性格が変わっちゃうの」
梓「そうなんですか…」
和「昔の話をしてあげようかしら」
梓「お願いします」
和「昔の唯はね、今とは全く正反対だったの」
梓「そうなんですか?」
和「うん。一言でいえばなまけもの。いっつもダラーンとしててわたしと憂で世話してたの」
梓「あの唯先輩が…」
和「でも、たしか小学生だったかな。憂が突然倒れたの。心臓の病気で入院することになって…」
梓「……」
和「唯の家は両親が海外に行ったりしててお家にいないことが多かったの。その代わりわたしの両親が面倒見たりしてたんだけど…どうしても見れないときは憂が家の掃除とか料理とかしてたわ」
梓「その憂ちゃんが倒れたってことは…」
和「そう。唯はお家にひとりっきりでいることが多くなった。そんなときわたしの両親にこう言ったの。『わたしに家事を教えてください!』って」
梓「……」
和「それからは梓も知っての通り、家事全般ができる唯になったの」
梓「そうだったんですか…」
和「そして憂のことなんだけど…入院してて学校に行くこともできなくなって…だんだん暗くなっていったの」
梓「はい…」
和「そこで唯やわたしが憂が寂しくならないようにってほぼ毎日お見舞いに行ったの」
梓「……」
和「それから唯は憂につきっきりで…そんなもんだから学校での友達もどんどん減っていった」
和「その事情を知った憂は唯に負担をかけまいと、もうお見舞いに来ないでって言ったの」
梓「……」ゴクリ
和「そしたら唯は『友達なんかよりういの方が大事なの!』ってケンカを始めちゃって」
和「そのとき憂が突然発作を起こしちゃってね。一時は本当に危ないってところまでいったらしいわ」
梓「……」
和「そんな憂をみた唯は『もうこれ以上憂に悲しい思いをさせたくない』って思って、今まで以上に憂につきっきりになった。憂ももう反対できなかったらしいわ」
和「それからの唯は…学校もついでみたいな感じで、勉強はできるんだけど行事に参加しなくなったりして…クラスでも唯の存在が忘れかけられるほどだったの」
梓「そんな…」
和「中学校の卒アルに写ってる唯なんて笑顔がひとつも無かったわ」
梓「唯先輩…」
和「そんな唯を見かねたわたしは、高校に入ったら何でもいいから部活に入りなさいって言ったんだけど、唯は一向に入ろうとしなかったわ」
和「それで無理やり廃部の危機にあった軽音部に入れたの」
梓「そんな理由で入ったんですか…知らなかったです」
和「唯は最初は嫌々だったんだけど、軽音部のみんなが唯を引っ張ってあげて…そしたら唯にも次第に笑顔が増えていって…唯はギターにはまってのめり込んでいったわ」
和「いままでの会話の中心は憂のことだったけど、3対1の割合で軽音部の話も混ざるようになったの」
和「あんなに暗かった唯をあそこまで明るくさせた軽音部には感謝しきれないわ」
梓「そうだったんですか…なんか話を聞くとあんなことを言ったわたしが本当に情けないです…」
和「…でもね、梓。あなたが入ってからは1対1の割合で…憂と同じくらいの割合で軽音部のことを話すようになったの。もちろん、あなた中心でね」
梓「!」
和「唯はあなたのことが本当に好きよ。何年も幼馴染してるこのわたしが言うんだから間違いないわ!」
梓「和先輩…でも、あんなこと言っちゃって、もう唯先輩にあわす顔が…」
和「だから大丈夫だってば。唯もきっと許してくれる」
梓「……」
和「だからきちんと謝ってきなさい!」
梓「…はい!」
和「よし!行ってきなさい!」バチン
梓「あうっ!今日はありがとうございました!では行ってきます!」タタタ
和「ふう…世話が焼けるんだから…」
……
律「なあ、唯。昨日はその…」
唯「……」ボー
澪(おい律!あんまり深追いするな!)
律(だ、だって!気になるじゃんかよ~)
紬(ふふふ…きっと梓ちゃんのことが待ちきれないのね!)
唯(昨日はやっちゃったなあ。もうあずにゃんとはあわせる顔が…)
最終更新:2010年01月30日 01:06