それは、全く予想して無かった事だった。

私達放課後ティータイムは、来月ライブハウスでライブを行うことになっていた。

そのライブの打ち合わせで、驚くべき提案がされた。


唯「うん」

梓「何でですか?いつもみたいに唯先輩と澪先輩で良いじゃないですか?」

律「来年、梓がボーカルやらなくちゃいけなくなるかも知れないんだぞ?」

澪「来年入ってくる部員が、ボーカル希望するとは限らないだろ?」

梓「あ!言われてみればそうですね」

唯「だから、みんなで話し合って決めたんだよ」

紬「良い機会だから、一回くらいボーカルやっておいた方が良いわよ」

梓「でも私、あんまり歌に自信が…」

唯「大丈夫だよ、特訓すれば」

律「そうだ。それに全曲歌えって訳じゃない。六曲のうち二曲だ」

梓「あ、それなら何とか」

澪「じゃあ決定だな」

こうしてライブで歌う予定の六曲中、唯先輩が二曲、澪先輩が二曲、私が二曲歌うことになった。

紬「ちょっと気が早いかも知れないけど、歌ってみたい曲とかある?」

梓「そうですね…」

私が歌ってみたい曲と言われて真っ先に思いついたのは「ふわふわ時間」

HTTの代名詞とも言える曲だからかな?

梓「ふわふわ歌ってみたいです」

唯「ちょっと歌ってみる?」

梓「え?」

律「歌詞分かるだろ?」

梓「大丈夫ですけど」

澪「ギターは良いよ。取りあえずボーカルだけ」

紬「聴いてるの私達しか居ないから平気よ」

梓「はい」

律「じゃ、行くぞ」

律「1・2」

梓「君を見てると いつもハートドキドキ♪」

……

梓「ふわふわターイム♪」

ジャーン♪

律(梓…)

澪(これは…)

紬(何と…)

唯(あずにゃん…)

梓「ど、どうでした?」

澪「まあ、初めてのボーカルってのもあったし」

律「ライブは来月だから、特訓だ」

紬「そうよ、特訓あるのみ」

唯「特訓だよ!あずにゃん」

梓「…はい」

いきなり特訓の話って。

私の今の歌唱力じゃ駄目駄目って事か…


次の日

梓「あー、憂鬱だ」ぐだぐだ

憂「どうしたの?」

梓「今度のライブで、私がボーカルやることになっちゃって」

純「へー、そうなんだ」

梓「あんまり歌に自信がないから、正直やりたくないんだよね」

純(そういや梓とカラオケ行った事あるけど、今イチだったな)

梓「ああ、部活ってこんなに憂鬱だったのか」

梓「恐怖の部活が始まる」ずるずる

憂「部活を嫌がる梓ちゃん初めて見たね」


部室

律「さあ、梓ボーカルでいっちょ練習するか!」

澪「そうだな」

唯「うん、やろう」

紬「梓ちゃん、準備は良い?」

梓「練習の前に、お茶にしません?」

律「おおぉい!!」

唯「お茶にしよ、私もケーキ食べたい」

澪「梓が自分からお茶にしようなんて、珍しいな」

紬「そうね」

お茶なんてしてる場合じゃないのは分かってるんだけど。

つい、逃げてしまった。

……

律「お茶も終わったし、練習しますか」

梓「私ちょっとトイレ行ってきます」

バタン

澪「なんか、梓あんまり乗り気じゃないみたいだな」

紬「ボーカルに、乗り気じゃないみたいね」

律「よし、こうなったら馬にニンジン作戦だ」

唯「馬にニンジン作戦?」

律「子供の時、『テストで良い点数獲ったらご褒美ね』って、おもちゃ買って貰ったりしたろ?」

唯「うん」

律「それと同じで、ライブが成功したらご褒美って言う約束をするんだ」

唯「なるほど。それであずにゃんに、やる気を出させるんだね」

――

律「…と言う訳だ。ライブが成功したら、ご褒美で梓のお願いを聞いてやる」

梓「お願いって何でも良いんですか?」

唯「何でも良いよ」

紬「Hなのは駄目よ」

梓「そんな事お願いしません///」

律「地球にやってくるサイヤ人を倒して欲しい。とかも無理だぞ?」

梓「シェンロンを超える力ですからね」

澪「お前ら、ドラゴンボールと化物語の見過ぎだ」

紬「もっと現実的なお願いね」

紬「大きなケーキが食べたいとか」

唯「トンちゃんを、もう1匹飼いたいとか」

澪「律をパシリにしたいとか」

律「おい」

律「澪のパンツが見たいとか」

澪「おい///」

梓 ///

唯「今すぐ決めなくても良いよ。ライブが終わってからでも」

梓「分かりました。何か考えておきます」

律「ライブまで日にちも無いし、猛特訓が必要だな」

唯「さわちゃんに特訓してもらえば大丈夫だよ!」

紬「さわ子先生の特訓で、唯ちゃん喉枯らしちゃったじゃない」

律「澪、お前が特訓してやってくれ」

澪「え?私?」

澪「唯は?」

律「唯だと、お菓子の時間ばっかりになる」

唯「ブー!」

澪「分かったよ。私がやるよ」

梓「澪先輩、よろしくお願いします」

澪「えーと、じゃあ基本からやっていこうか」

梓「はい」

澪「まずは、腹式呼吸の練習からだ」

梓「腹式呼吸」

澪「鼻から息を吸い込んで、お腹に空気を入れるのを意識して呼吸してみて」

梓「はい。スーハー、スーハー」

澪「何か肩に力入ってるな?」

梓「そうですか?」

澪 肩もみもみ

梓「にゃぁっ///」

澪「もっとリラックスして」

梓「はい///」

澪「力が入ってると上手くいかないからな」

梓「そうなんですか?」

澪「良し、大分力が抜けたな」

澪「ちょっと良いか?」

梓「え?」

なでなで

梓「うひゃっ///」

澪先輩が私のお腹に手を当て撫でてきたので思わず妙な声を出してしまう。

梓「あの///」

澪「私がお腹に手を当ててるから、さっきの要領で呼吸してみて?」

梓「はい、すーはー///」

澪「もっとお腹に空気入れる感じで」

梓「はい、すーはー、すーはー///」

澪「そうそう、良い感じだ」

梓「何かコツが掴めた気がします///」

唯「あずにゃんの顔が真っ赤だね」

紬「ガチにゃんになってるわね」

律「澪は、教えるのも上手いし面倒見も良いからな」

紬「澪ちゃんに任せておけば大丈夫そうね」

紬「うふふ」


翌日

梓「うきうき」

純「今日はご機嫌だ」

梓「ああ、部活はこんなに楽しかったのか」るんるん

憂「昨日まで、あんなに嫌がってたのにどうしたの?」

梓「嫌がる?バカ言っちゃいけないよ憂」

梓「部活は青春だよ、青春!」

梓「スキップしちゃおう」スキップスキップ

純「梓がアホの子になってる」

憂「よっぽど嬉しいことがあったんだね」

―――――

律「今日、部活休みの日なのに練習してくのか?」

澪「ああ、梓がどうしてもって言うから」

唯「あずにゃんが遂にやる気を出したね」

澪「馬にニンジン作戦が功を奏したな」

紬「じゃあ二人とも頑張ってね」

澪「うん」

唯「バイバイ」

律「梓の事、頼んだぞ」

紬「澪ちゃんと梓ちゃん、二人きりの部室」

律「澪と梓を部室に、二人きりにしたら何か…」

唯「へ?」

律「普段真面目な二人だけにさ、暴走してナニしちゃったり」

紬「ナニ!」

唯「何って、何?」

律「ナニはナニだ///」

紬「ナニはナニよ!」

……

澪「ボーカルの特訓は、この位にして今日は別の特訓をしよう」

梓「別の特訓?」

澪「そうだ、大人の特訓だ」

梓「あっ、駄目ですよ澪先輩」

澪「良いじゃないか梓」

梓「あんっ、そこは」

澪「梓のここは、もうこんなになってるぞ?」

……

律「おいムギ、鼻血出てるぞ」

紬「ハッ!つい妄想してしまったわ」

紬「個人レッスンをする、先輩後輩と言うシチュが良すぎて」拭き拭き

律「ってゆーかさ、梓って澪のこと好きだろ?」

紬「あ、律ちゃんも気付いてた?」拭き拭き

唯「えっ、そうなの?」

律「ああ、態度でバレバレだよ」

唯「じゃあ、牛にピーマン作戦でやる気を出したんじゃなくて?」

律「馬にニンジンだ」

紬「そう、澪ちゃんと特訓できるのが嬉しくてやる気出したのよ」

律「澪は、ニブチンだから気付いてないだろうけどな」



部室

澪「私が出す音に合わせて声出してみて」

梓「はい」

澪「♪」

梓「アー」

澪「ちょっと低いな。もう一回」

澪「♪」

梓「アー」

澪「今度は良い感じだな」

梓「ありがとうございます」

澪「頑張ってるな梓」なでなで

梓「はい」にこにこ

澪「ちょっと休憩してお茶にしよっか?」

梓「はい」

梓「あ痛っ!」

澪「どうしたんだ?」

梓「楽譜のふしで指切っちゃったみたいで」

澪「うわ、痛そうだな。大丈夫か?」

梓「ちょっと血が出てます」

澪「本当は血、見るの苦手なんだけどな。ちょっと見せて」

梓「はい」

澪先輩は私の前に跪くと、切った指をこわごわと見つめてたかと思うと

澪「これくらいなら…」ぱくっ

梓「ええ?///」

温かい口の中で、柔らかい舌で指が舐められる。

澪「いふぁくなひか?」訳:痛くないか?

梓「あの、痛くないですけど、くすぐったいです///」

澪「ふぇ?ふすくっふぁい?」訳:え?くすぐったい?

梓「あふっ///」

澪「ほうひたんら?」訳:どうしたんだ?

梓「あっ、指をくわえたまま喋ると///」

澪「ゆひをふわへたまたひゃへると?」訳:指をくわえたまま喋ると?

梓(これは天然でやってるのでしょうか?///)

梓「あの、もう大丈夫です///」

澪「ほうか?」訳:そうか?

澪「絆創膏持ってくるな」

梓「はい///」

澪先輩の温もりが残ったままの指をしばし、ボーッと見つめる。

梓「澪先輩、意外に大胆な事するんだな///」

澪「お待たせ、手出して」

澪先輩は私の手を取り、絆創膏を貼ってくれた。

澪「これでよし」

梓「ありがとうございました」


部活後

梓「今日は部活休みなのに、練習付き合ってくれてありがとうございました」

澪「せっかく梓がやる気出してくれたんだし、喜んで付き合うよ」

澪「ライブ、成功すると良いな」

梓「はい」

澪「指、大丈夫か?」

梓「お陰様で」

澪「じゃあな、気をつけて帰れよ」

梓「はい」


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最終更新:2012年05月03日 20:21