二人と入れ替わりに保健室に入る唯。

シンとした保健室。他の生徒はおろか、先生もいない。
その中で、カーテンに遮られたベッドが一つだけ、存在感を放っていた。

唯はカーテンを回り込み、ベッドをのぞき込む。
布団から見慣れたツインテールの後頭部がひょこっと見えている。

唯「あずにゃん」

梓「…」

声をかけられ、梓はもぞもぞと身体を動かし、唯の方に向き直った。
目が合う。直後、梓は気まずそうに目を伏せた。

唯「…あずにゃん。もう、大丈夫?」

梓「…ゆい、せんぱい。…すいませんでした」

唯「ん?なにが?」

とぼけるように、そう返す唯。梓、気まずそうに顔を伏せる。

梓「…軽音部は辞めます。迷惑かけてすいませんでした」

唯「あずにゃん。早まらないで」

梓「でも、だって…ぐすっ…わ、私、あんな、おぞましい事を…ううぅ…」

唯、焦る。なにも、そこまで思い詰めなくても…

でも、梓の性格上、極端に自罰的な結論に至るのは至極最もだった。

唯「…あずにゃん。私、そんな風に思ってない。ちょっと、びっくりしたけど、それだけ。みんなも同じ」

梓「でも、でも、私、駄目なんです。あんな事言っちゃったから、私、もう皆さんに会えません。もう一緒に音楽したり、出来ません」

唯「そんな事ないよ?私、そんなの気にしない。ただの冗談でも、仮に本当の事でも、私、全然嫌じゃないよ」

梓「唯先輩、でも、でも、私…!うう…ごめんなさい。やっぱり、駄目です。こんな、気持ち悪いに決まってます。唯先輩、優しいから、私に気を遣ってくれてるんです」

そう言って、唯に背中を向ける梓。

唯「んーん?私、そんな、器用な事出来ないよ。あずにゃんが私の事を、憎からず想ってくれているのなら、それはとても嬉しい。確かにちょっと、びっくりしたけど。でも、私、全然嫌じゃないよ。あずにゃんに、そういう風に想ってもらえるの、すごく嬉しいよ」

梓「でも…でも」

唯「まだ、信じられない?…じゃあ、証拠。…ぎゅーっ」

布団越しに、梓を抱きしめる唯。
身体をぎゅうっと堅くして、何かに耐える梓。

唯「…えへ。やっぱり、あずにゃん、抱き心地がいいね。すごく、気持ちいい。もっと、近くに行ってもいい?」

靴を脱いで、ベッドに上がり、布団を開けて、同衾する。
そして、後ろからぎゅうっと抱きしめる。

梓のぬくもりが、唯の腕の中にすっぽりと収まる。急速にこみあげる、愛おしい、という感情。

真面目で、ちょっと不器用で、いつも一生懸命で。
可愛くて頼もしい、私の、大事な大事な後輩。

小さな背中。小さな身体。その身体を、唯は愛おしそうに抱きしめ続ける。

唯「あずにゃん。まだ、信じられない?」

梓「…」

ふるふる、と、首を振って否定する梓。

梓「唯先輩。そんな風に優しくされると、私、勘違いしちゃいます。…いつも、こんな風に優しいから…私、ちょっと、勘違いしちゃってるんです」

唯「ん?勘違いって、なあに?」

梓「…」

もぞもぞ、と、顔を隠すように、布団の中で丸くなる梓。唯、梓の身体が、かあっと熱くなっていくのが分かって、なんだか嬉しくなる。

唯「ん?ほら、言ってごらん?」

後ろからぎゅうっと抱きしめながら、耳元に囁きかける。

唯「ん?」

ドクドク、と、心臓の鼓動が聞こえる。心臓の音って、こんなに大きい物なのか、と、感心した。

梓「…す、すいません、私…は、恥ずかしくて、今は言えません…。もっと、気持ちが落ち着いたら、もう一度、ゆっくりお話させてもらえますか…?」

唯「ん。いいよ。じゃあ、そろそろもどろっか」

空気が弛緩して行くのが分かる。多分もう、大丈夫。

梓の性格上、しばらくは引きずるだろうが、周りのフォローも期待できる。皆、不必要に梓の感情を逆撫でする様なことは、間違ってもしないだろう。その点について、唯は絶対の信頼を置いていた。

梓「…はい。…で、でも、少し、不安で…」

唯「大丈夫だよ。ホントにみんな、そんなに気にしてないからね。それより、あずにゃんがそんな風に気に病んでる方が、私たち辛くなっちゃう」

唯、梓、連れだって部室に戻る。
梓、唯の裾をつまんで、後ろに隠れるようにして入室。

唯「ただいまー」

梓「た、ただいまです…」

律「おー、おつかれ。だいじょぶ?」

みんなが、梓を適度に案じているのが分かる。完全に、何もなかったかのように振る舞うわけでもなく、かといって大げさに騒ぎ立てることもなく。
あくまでフラットに受け入れる。まるで大した事は何もなかったかのように。

そう、これは全く、大した事じゃなかったのだ。みんなそう納得していた。
そんな空気が伝わったのか、梓の空気も明らかに弛緩して行くのが分かる。

梓「は、はい、なんとか…すいませんでした。あ、ムギ先輩も、すいませんでした」

紬「いいのよ~。あ、お茶いれようか?」

梓「あ、すいません、いただきます。ありがとうございます」

唯「あ、ムギちゃん、私も!」

紬「は~い」

唯「ムギちゃんありがとー!」

結局そのまま、いつものようにお茶と雑談で時間をつぶし、下校までには、ほぼいつも通りの感じに落ち着いていた。

下校。みんなと別れて家路についた。

しかし、今日の一件は非常にまずかった。唯はそう反省していた。
今後は基本的に、人がいる所では使わないようにすべきだろう。

基本的には、一対一のときに限定。更に言うなら、相手が眠っているとベストだろう。
そんな風に、思案しながら自宅への道のりを急いだ。


帰宅。

唯「ただいまー」

憂「お姉ちゃん、お帰りなさい」

憂、出迎え。もじもじしてる。
早く自分に会いたくて、ずっと、そわそわしていたに違いない。唯は嬉しくなった。

唯「…おいで?」

憂「…お姉ちゃ~ん!」

ぎゅー!


夕食を終え、リビングでくつろぐ。

憂、家事を終えて唯の隣に腰掛ける。遠慮がちに、もっと近くに座り直す。
いつもよりだいぶ近い位置。肩が触れ合う位の。

どちらからともなく、昨日の話蒸し返す。

憂「あの…昨日は、ごめんなさい」

唯「ん~。あやまらないで、憂。憂も、高校生だもんね。そういう事も、興味あるよね」

憂「う~…うん…」

憂は、知らない。唯が、憂の想いを知っていることを、知らない。
唯は、その事に心理的な余裕を取り戻していた。

徐々に、首を擡げる、嗜虐心。

憂を、困らせたい。恥ずかしがらせたい。
そんな、小学生の男子が好きな子をいじめたくなるような欲求がわき上がり…唯は自らに芽生えた感情に驚いていた。

唯「…してあげようか?」

思わず、そう言っていた。

憂「え、えと…。な、何を…?」

真っ赤になって、そっぽを向いてとぼける憂。

唯「えへへ。憂の、おしりオナニーの、お手伝い」

憂「お、お姉ちゃん!」

憂、さらに顔を赤くして、唯の口を遮るように、ぎゅうっと両手で押さえた。唯、やんわりとその手を下ろさせる。

唯「でも、私、興味あるな。あれ、どういう風にやるのか、すごく気になる。ね、お姉ちゃんがしてあげるから、私にも教えて?」

憂「…うう~…」

唯「どうするの?ここでするの?ん?」

憂「お、お姉ちゃん、本当にするの…?」

唯「うん。どうする?お洋服、脱がせてあげようか?」

部屋着の裾に手をかけると、憂、慌てたようにその手を押さえる。

憂「わ、わ!わかったから!…あ、あのね、お布団の方がいい…」

唯「ん。じゃあ行こっか」

憂の手をとって、部屋へ向かおうとする。

憂「あ、あのね、ちょっと、準備がいるから。…先に、お部屋で待ってて…」


唯、待機。わくわく。

憂、20分位して登場。タオルとコップと、もろもろ抱えて来た。

唯「結構、準備、時間かかるんだね。どういう準備、するの?」

憂「あ、あのね…。お湯、沸かして、それから…コップとか用意して…。それから…」

かああぁ、と、真っ赤になる憂。

唯「…おなかの中、きれいにしてきたの?」

憂「う~…うん…」

唯「…棚の奥に隠してあった浣腸、使ってたの、憂?」

憂「お、お姉ちゃん!」

唯「あんまり、使わない方が良いんだって。便秘が慢性化しちゃって、浣腸依存症になっちゃうんだよ」

憂「お、お姉ちゃん、もう許して…」

真っ赤な顔で、涙目になりながら、唯を諫める憂。

…憂をこうして、いじめると、正直とても…楽しい。

普段は、家事も勉強も運動も、そつなくこなす、絵に描いたような優等生。
品行方正。才色兼備。誰もがうらやむような、才能に満ちあふれた、優秀な女の子。

その憂が。
私にはこうして、無防備に弱点をさらけだして…ちょっと、つっついてあげるだけで、こんなにもかわいらしい反応を示してくれる。

そして、その憂が。こうして、私にいじめられる事に…恐らく、性的な興奮を覚えているのだ。

唯「じゃあ、憂。お布団に横になって?見ててあげるからね。最初、一人でやってごらん?」

もじもじと、決心がつきかねるように、ベッドの横で動かなくなる憂。荷物をサイドボードに置いて、両手でスウェットの裾をつまんでもじもじ。
躊躇いながらも、しかし、性的な好奇心がありありと覗える、憂の女の子の表情。めっちゃエロい。

私は、辛抱堪らず、憂を押し倒すようにベッドに横たえさせる。

唯「どーん」

憂「わ、わ」

ぽふん、と、憂のふかふかの身体が、私の為すがままにベッドに沈み込む。
抱きしめたまま、私も、憂の上に覆い被さるようにベッドに倒れ込む。

お互いの、柔らかくて、暖かくて、瑞々しい身体。
その身体が、押しつけられ合い、押しつぶされ合い、必然的に、ぎゅうっと抱き合うようにして、二人でベッドに横たわる。

しばらく無言で、そのまま抱き合う。

抱きしめるほどに、お互いの熱が高まり、その高まりが吐息となって、お互いの身体をくすぐり合う。

全身が気持ちいい。初めての感覚だった。きっと、憂も、同じように感じている。

心臓の鼓動。
憂の、切なそうな表情。

私は今、どんな顔をしているだろう?

妹を慈しむ、慈愛に満ちた表情だろうか?
それとも、妹の身体を弄ぶことに、興奮を隠しきれない、嗜虐に満ちた、邪な表情を浮かべているのだろうか?

多分、両方。
その両方が混ざった、見たこともない表情を浮かべているのだろう。私は。

かつてないほどの、興奮。性的興奮。
多分、初めてエッチする時の男の子って、こんな感じなんだろう。

いや、正に今。
ここまで考えて、私はようやく、理解した。

正に今、私は、妹を相手に、初めてのエッチをしようとしているのだ。

唯「憂。好き。ちゅーして良い?」

憂「うん。お姉ちゃん、私も、好き。ちゅーして」

憂の返事を聞くや否や、私は憂の唇を塞いでいた。

憂の唇。柔らかい。
吐息が顔にかかる。
憂の存在を、こんなにも近くに感じる。

気持ちいい。

もっと、小さい頃、憂や和ちゃんとちゅーした事があったと思うが、思春期を迎えてからは初めてのキスだった。
多分憂も同じ。いや、絶対そう。

映画のような、大人のするキスをしたかったけど、やり方がよく分からず、唇をすりすりと擦りあうだけのキスを、長らく交わした。

唯「…ぷあっ。…はあっ…」

憂「ふあ…。はあ…はあ…」

とろんとした表情の憂。唯、ようやく憂から身体を離し、憂を見下ろすようにして言った。

唯「憂。そろそろ、はじめよっか」

憂「ん…うん…」

憂、ズボンに手をかけるが、下ろすのを躊躇う。

唯「…脱がせてあげよっか?」

憂「…うう…だ、大丈夫、自分で脱ぐから…」

スルスルと、ズボンを膝まで下ろす。
隙間から、装飾の少ない可愛らしい下着と、しっとりとした太ももが覗く。

唯は、憂の膝からズボンをずり下ろし、下着も下ろすように促した。

唯「…ほら。早く」

憂「うう…あ、あの、明かり、暗くして…」

唯「…んー、じゃあ、こっちの蛍光灯点けるね」

部屋の電灯をリモコンで消し、代わりにベッドの蛍光灯を点けた。
間接照明の光が、憂の身体をより柔らかく、扇情的に照らし出した。

唯「これでいい?早く、早く」

憂「う~…」

憂は、強引に促され、躊躇いながらも下着をずり下ろした。
唯は、ズボンと同じように、膝から下に下着をずり下ろし、ズボンと下着を足から引き抜いた。

露わになった憂の下半身。

流石に恥ずかしいのだろう。
足はぴったりと閉じられ、唯の視線から性器を遮るようにちょっと足を曲げているため、その秘部は隠れて見えない。

しかし、その仕草が却って生々しく、唯の興奮は更に高められて行った。


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最終更新:2012年05月06日 23:30