梓「とりあえずまずは音楽室に……!」

ゾ「うあぁああ……ああぁあぁああ」

梓「気づかれないようにそーっとそーっと……」

パキッ

ゾ「ぅあ?」

梓「ま、まずいです……」

ゾ「ぅあああああぁぁああっ! ああぁあぁあぁああああ!」

梓「ひっ!に、逃げるですっ!」

梓「はぁ、はぁ、はぁ」

梓(いったい、いったいどうしてこんなことに――!)



数時間前

梓「ふぅ……」

梓(授業退屈だなー。早く放課後になればいいのに)

梓「ん……?あれはいったい……」

梓(ヘリコプターがこっちに……なにか落としていった?)

梓「避難訓練でもやるのかな?」

教師「なんだ?今のは」

教師「ちょっと職員室に行って聞いてくるからまってなさい」

梓(先生も知らないんだ)

梓「事故とかじゃなければいいけど」

クラスメイト1「なんかおもしろそうなことになりそうだな」

クラスメイト2「このまま休講とかになんねーかなw」

梓(そうなったらさっさと音楽室で先輩方と練習できるなー)

教師「……………」

梓(あ、先生帰ってきた)

クラスメイト「せんせー!さっきのは結局なんだったんですか?」

教師「……………」

クラスメイト「先生……?」

教師「……………うがあああああああぁぁっあああ!」

クラスメイト「……ぅひっ!?うぎゃああぁぁあああぁあ!!」

梓「――?」

梓(え?何?先生がいきなり……噛みついた!?)

クラスメイト「うあああああぁああっ!痛い!痛い!先生やめてえええええぇぇえっ!」

梓「……ぅえっ!」

梓(血、血が! それにあれは――)

梓「おぇぇええっ!!」

梓(なんなの!?なんなのこれ!?)

教師「あがああぁあぁああ! ううぅあああああああ!!」

クラスメイト「痛い痛い痛い!!私の首が!血が!肉が! やだよ!食べないでよぉぉおおお!!」

クラスメイト「ああぁぁぁぁ……………」

クラスメイト「…………………………」

梓「も、もしかして」

梓(死んじゃった……の?)

クラスメイト2「ちょ、ちょっと先生どうしたの!?悪ふざけってレベルじゃないよ!?」

教師「うぁああああ……あああああぁああっ!」

クラスメイト2「――え?……………ぅっぎゃああああああああああああ!!!」

梓「ぃや、いやあああっ!」

梓(嘘だ!嘘だよ!こんなの現実なわけない!)

梓(いきなりヘリがきて、そしたら先生が友達を食べ始めて――)

梓「訳わかんないよぉっ!」

クラスメイト3「ね、ねぇ!誰でもいいから警察と救急車呼んで!」

クラスメイト4「あ、あたし携帯持ってる!今すぐ電話する!」

クラスメイト2「あああぁあぁああ……骨がゴリゴリ囓られて……あっひゃひゃひゃ!」

クラスメイト4「え?え?なに?繋がんない!嘘!やだ!なんで!?」

クラスメイト3「貸して!……ほんとに繋がらない!?」

梓(警察に繋がらない?そんなこと)

クラスメイト「…………ぁあ」

梓(あれ、今確かに○○さんの声が……)

梓「あ、もしかして生きて――」

クラスメイト「うぁあああぁああ!! あがあああぁあぁっっ!!」

梓「きゃっ!!」

梓(な、何?今、噛みつこうとした?私に!?)

クラスメイト3「ど、どうなっての!?」

梓(さっき先生に噛まれて、それで……死んじゃったかと思った)

梓(でも、声が聞こえてきたからてっきり生きてると思って――でも)

梓「まさか○○さんまで先生みたいに……?」

クラスメイト3「と、とにかく今は逃げようみんな! 先生たちから離れなくちゃ!」

梓「う、うん!」

ガララッ

梓「ほかのクラスに助けを――え?」

「うわああああぁあぁああっ!!!」

「っぎゃああぁあああああああぁぁあああっ!」

「くゅあああぁあぁあっ!?」

梓「う……そ……」

梓(ほかのクラスの人も――)

梓「もしかして学校中が……?」

クラスメイト3「も、もうやだぁ!私帰る!」

梓「あ、ちょ……」

梓(一人で行動したら危なくないのかな?)

ゾ「うあああああああああぁあぁあああ!!」

梓「っ!い、今は考え事してる場合じゃない!」

梓「とりあえず逃げて知ってる人と合流しないと」

梓(もしかしたらみんな音楽室に集まってるかも……)

梓「まずは音楽室を目指すです!」


梓(でも、こんな状況で手ぶらだと音楽室までたどり着けるかどうか……)

梓「何か、武器を」

梓(……できるの?わたしに?)

梓(武器を持つってことはつまり――)

梓「もし襲われたら相手を……」

梓(ううん! 今は迷ってる場合じゃない!)

梓「何が何でもまずは音楽室に……!」

梓「できるだけ見つからないようにしないと――」

梓「ん……」

梓(消火器……)

梓「少し重いけどこれぐらいなら」

梓「こ、これでガツンと――」

ゾ「ぁああぁああああっ!!」

梓「ひゃっ!?」

ガッン!!

ゾ「ぅああぁぁぁぁ……………」

梓「い、意外になんとかなるものですね……」

梓(思ったより罪悪感も感じないかも)

梓「ハクジョーな人間なのかな?わたしって……」

梓「こ、この階段を上がれば音楽室です」

梓「このあたりはまだあまり騒がしくないなぁ……」

梓(これならみなさん無事かも)

梓「澪先輩、唯先輩、ムギ先輩……待っててください」


?「うおおぉぉああああ!?」

梓「い、今の声は?」

律「ぉぉおおおぉ……!」

ゾ「あぁあああああ!」

律「おわっ!き、汚いよだれ飛ばすなー!」

梓「り、律先輩!?」

律「あ、梓!ちょうどよかった!助けてくれー!」

梓「は、はいっ!」

梓(狙いをピンポイントに集中して……)

梓「えいっ!!」

ガンッ!

ゾ「ぅおああぁっ! ああぁあぁぁぁぁ……………」

梓「や、やったです……」

律「ふいー、いやー助かったぞ梓!」

梓「律先輩こそ、よくご無事で……」


律「いや、それにしてもなんだこの騒ぎは?」

梓「何って……ゾンビですよゾンビ!」

律「ゾンビ?梓なに言ってんだ?」

梓「何って……律先輩だってみんなが殺し合って食い合ってるの見てますよね!?」

梓「ああいうのってまさにゾンビじゃないですか!」

律「……もしかしてさっきあたしを襲ってきたのも?」

梓「そうじゃなければ何だと言うんですか!」

律「……うおっ!?マジで!?やべー! あたしももう少しでゾンビになっちまうとこだったのか……」

梓「律先輩?なんだか今初めて知ったようなリアクションですね?」

律「あ、あははー……」

梓「ということは音楽室でサボっていたというわけですか」

律「いやー良い天気だったもんでつい」

梓「はぁ……」

梓(そのおかげで難を逃れたと思えばいいのかな?)

梓「ところでほかの先輩方は?」

律「そんなのみんなとっくに教室に――って!」

梓「大変です!」

律「ああ……澪、唯、ムギ……もうあいつらに会えないのか」


澪「待てぇぇぇい!勝手に殺すなぁ」

唯「そうだよーりっちゃんひどいよー」

紬「そうよー、私は殺されても死なないわー」

梓「先輩……」


律「おまえら……!生きてるって信じてたぞー!」

澪「嘘つけっ!」


唯「とにかくみんな無事で良かったねー」

紬「そうね」

澪「ムギの判断力に救われた部分が大きいけどな」

梓「ムギ先輩が?」

律「どういうこっちゃ」

唯「ムギちゃん凄いんだよー?どこからか武器は見つけてくるわ、ゾンビさんがいないルートをすぐに判断するわで」

澪「正直かなり驚いたよ」

紬「やだわー。そんなにたいしたことはしてないのよ?」

梓(ムギ先輩っていったい何者……?)

澪「さて、これからどうするか話し合わないと」

梓「ここにもいつゾンビたちが押し寄せてくるかわからないです」

紬「そうね……なにか考えないと」

唯「……………」

律「とは言ってもなー警察も当てになんないんだろ?」

梓「はい、警察には繋がりませんでした」

梓「恐らくゾンビは学校内だけでなく、街の中にも――」

澪「それが本当だとしたら……」


唯「あ、あのっ!」

紬「唯ちゃん?」


唯「わ、わたし家に帰らないと!」

律「おまえなぁ……この状況で易々と家に帰れるわけないだろ?」

唯「だ、だって……」

梓「――憂ちゃん、ですか?」

唯「……うん」

唯「憂が今日珍しく風邪ひいてて……それで学校休んでて」

唯「わたし心配だよぉ……今頃憂は一人で震えてるかもしれないんだよ?」

澪「……………」

律「……………」

紬「……………」


梓「……行きましょう、唯先輩の家に」

唯「……あずにゃん?」


梓「彼女は私の大事な友達でクラスメイトです。放ってはおけないです!」

唯「あずにゃああん!ありがとぉぉ!」

澪「やれやれ……」

紬「あらあら」

律「行くっきゃねーか!」

唯「みんな、ありがとー……!」

律「ばーか!泣くなって!」


……

唯「憂、大丈夫かな……」

梓「きっと大丈夫です。だって憂はクラスでも頼りになる人でしたから」

律「安心しろって。憂ちゃんは唯の面倒見てくれてるしっかりした子じゃないか」

唯「でも……」

澪「戸締まりはしっかりしてきたんだろ?」

唯「う、うん。憂が風邪引いてたから、せめて今日はちゃんとしようと思って。戸締まりとかはしっかりしてきたよ!」

律「いつもはちゃんとしてないのか……」

澪「ともかく。そこまでしっかりしてるならきっと大丈夫だ。ちゃんと信じよう」

律「むしろ澪の方がちゃんとしないとな。さっきから足が震えっぱなしだぞ」

澪「う、うるさい! 怖いものは怖いんだからしょうがないだろ……」

紬「みんな、あれを見て!」

唯「! わ、私の家の周りに沢山いる!」

澪「ひいいぃぃ」

律「澪! あたしにしがみつくな!」

梓「でも、このままじゃ……」

唯「憂が!」

律「唯も落ち着け! いま出ていったら間違いなく危険だろ!」

唯「でも……!」

梓「落ち着いてください先輩! 見たところあのゾンビは正面の方には沢山いますが裏口の方には見当たりません!」

紬「言われてみればそうね。唯ちゃん裏口から入れないかしら?」

唯「えぇと、えぇと……」

紬「焦らなくても大丈夫だから」

唯「う、うん」

律「鍵は見つかったのか?」

唯「ま、まだだよ」

梓「焦らないとはいいと言いましたけど。でも早くしないと」

澪「ま、まぁ梓。とりあえずそう急かしたら唯もパニックおこしちゃんだろうからな」

律「だから、しがみつくなって」

澪「だ、だって」

唯「あった! ……開いたよ! 憂!」

律「ちょ、ちょっと待てって唯! ……あぁもう。いくら家の中とはいえ安全とはいいきれないんだぞ」

梓「唯先輩!」ダッ

澪「お、追いかけないと」

律「そう思うんならいい加減離れろ」


梓「家の中は静か……」

ダンッダンッ

梓「でもなかったですね」

澪「な、何の音だ……?」

律「多分玄関をあいつらが叩いてる音だろ」

澪「ひぃ!」

律「大丈夫だって。いくら何でも鍵がかかった玄関を壊すなんてことはできないだろ」

紬「最近の家のセキュリティはすごいって聞くから、多分大丈夫だと思うけど」

梓「それよりも、唯先輩は?」

律「あいつ一人で突っ走っちゃったからなぁ。とりあえず唯の部屋に行ってみる」


唯「憂!?」


梓「唯先輩の声です!」

律「あっちから聞こえたな。急ぐぞ!」

澪「ちょ、ちょっと待って……!」


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最終更新:2010年01月31日 00:01