律「どうした、何があった!」

唯「どうしようりっちゃん……憂が、憂が……!」

梓「憂!?」

憂「う……梓ちゃん?」

澪「みんなどうし……って憂ちゃん!? 大丈夫? 苦しそうだけど……」

憂「立って喋る分には大丈夫です……多分」

唯「無理しないで。憂……すごい熱だよ」

紬「風邪の症状が悪化したの?」

律「わかんない、けど。しばらく安静にした方がいいと思う」

唯「憂……朝よりも熱が上がってる気がするけど、大丈夫?」

憂「大丈夫だよお姉ちゃん。心配しないで」

澪「そうは言っても辛そうだな……」

梓「安静にするって言っても……」

ダンッlダンッ

梓「この状況じゃ、とてもじゃないけどゆっくりなんてしてらんないです」


唯「でも……」

憂「私は大丈夫だよお姉ちゃん。移動するぐらいなら平気だから」

唯「うそだよ! だってこんなに熱があるのに」

憂「でも……このままじゃ」

律「今のこの状況を考えると……どうしたらいいと思う?」

唯「このまま家に閉じこもってようよ!」

澪「で、でも。いつか玄関を突破されたら……」

梓「私は唯先輩と同意見です。何より憂がこんな状態だったら満足に移動もできないと思います」

憂「私は大丈夫だよ」

梓「ひたいにびっしり汗が浮かんでるのに?」

憂「それは……」

律「私も、このまま篭城する方がいいと思う。憂ちゃんにはきつい言い方しれないけど、今の状態の憂ちゃんを連れていったらかえって足手まといになる」

紬「それに、すぐには扉は壊されないと思うから。これからどうするかの話し合いも兼ねてここにいましょう?」

澪「みんながそういうなら、そうするけど」

紬「そうと決まったら、まずはお茶が必要ね。お台所借りてもいい?」

唯「え? う、うん」

紬「みんなの分も持ってくるわね~」タッタッ

律「なんていうか、強者だな」

梓「この状況でああいう行動ができるなんて、流石ムギ先輩です……」

澪「まぁ、ムギはムギなりに考えて行動してるんだろ」

律「おお? そういう澪ちゃんはもうしがみついたりしないのかな~?」

澪「う、うるさい! 私だって何時までも震えてばかりじゃないんだからな」


律「あ、ゾンビ」

澪「ヒイイィィ!」


律「冗談だって」

澪「こ、このバカ律!」ポカ;ツ!

律「いてっ! ……ちょ、調子出てきたみたいだな」

澪「ふん!」

憂「みなさん、ありがとうございます……」

律「そうだ。憂ちゃんは今日ずっと家にいたんだろう? これまでのことを聞かせてもらってもいいかな」

憂「あ、はい。えと、お姉ちゃんが家を出たあとからでいいですか?」

律「うん。そこからでおねがい」

憂「はい。えと、あれは」

紬「みんな~、お茶と、それからお茶請けを持ってきたわよ~」

澪「お、柿の種」

唯「あ、それ私が買ってきたやつ!」

梓「唯先輩、柿の種なんて食べるんですか?」

憂「あ、それはお姉ちゃんが『私だって辛いの食べられるんだよ!』って買ってきたやつだよ」

唯「その通り!」フンス

澪「そうなのか……」

律「ま、まぁ。みんな揃ったところで。話の続き、聞かせてもらえる?」

憂「はい……。あれは、お姉ちゃんが家を出たあとのことでした」



その日の朝

唯「それじゃあ行ってくるからね……」

憂「うん。気をつけて、ゴホッゴホッ」

唯「本当に大丈夫? 憂……。私今日休もうか?」

憂「大丈夫だって。お布団で寝てれば治るから」

唯「うぅ~、心配だよぅ」

憂「ほら、お姉ちゃん。早くしないと遅刻しちゃうよ」

唯「なにかあったら、すぐ学校に連絡入れてね! すぐ駆けつけてくるから!」

憂「うん。それじゃいってらっしゃい」

唯「行ってきます」

バタン

憂「お姉ちゃんに心配書けない為に、早く寝なくちゃ。ゴホッゴホッ」

憂「それにしても、どうして風邪なんてひいたんだろう。風邪ひくようなことしてなかったのに」

憂「まぁいいか。それより、早く寝なくちゃ……」

憂「ん……」

憂「ふぁ……。今何時だろう?」

憂「12時半……そろそろお昼ごはん食べなくちゃ」



憂「お昼ごはん。お姉ちゃんの朝ごはんに作ったものの残りだけど」

憂「レンジであっためて……あれ? これは……手紙? お姉ちゃんからだ」

『憂へ。これを食べて早く元気になってね。唯とギー太より』

憂「ギー太の絵が描いてある。……お姉ちゃん」グスッ

憂「ありがとう」



憂「お皿洗いは……お姉ちゃんが帰ってきてからでいいか」

憂「お薬のんだから……眠い、や」

憂「あのお薬、変な味したけど……。薬だからしょうがない、か」

憂「眠い……」


……ラバラバラ

憂「ん……うるさいなぁ。何の音だろう」

ガラガラ

憂「ヘリコプター? でも、なんだか高度が低いような」

憂「! なにか落としたみたい。……場所は、私たちの学校だ!」

憂「な、何があったんだろう。もしかしてお姉ちゃんの身に何かが?」

憂「考えすぎ、だよね……あれ」

憂「なんだか急に、頭が痛い……ウウ……」

憂「……」

憂「おねえ……ちゃん……」


憂「そのあと、玄関の方がうるさくなって、行ってみたら……」

律「ゾンビがうようよいた、ってことか」

憂「はい。その後はずっとお姉ちゃんの無事を祈っていて。……本当は助けに行きたかったんですけど」

梓「その体だから行けなかったんだね……」

憂「うん。……本当は、立つのがやっとなの。歩こうとすると、頭がグラグラして」

唯「無理しちゃだめだよ。憂は病人なんだから」

澪「そうだぞ。安静にするのが一番だ。誰かみたく風邪ひいてるのに学校にくるような真似はしちゃだめだぞ」

唯「ほぇ? 澪ちゃん学校に来たことあるの?」

梓「唯先輩のことを言ってるんですよ……」

紬「……ねぇ、一つ気になったことがあるんだけど」

律「どうした? ムギ」

紬「憂ちゃん。玄関が騒がしくなったのは、どれくらい前?」

憂「えっと。多分一時間くらいはずっと」

唯「そんなに!? 憂がノイローゼになっちゃうよ!」

律「一時間もずっと……?」

唯「ふたりとも、どうしたの?」

紬「ねぇ、私たちが町であったゾンビたちって、どんな動きをしていたかしら?」

澪「う~ん。昔律と見たゾンビ映画みたいな動きだったな」

律「それじゃどんなんだったか伝わらないだろ……」

梓「色々なところを徘徊してるように見えましたけど」

律「そう。それじゃあ、そのゾンビは一箇所にとどまってることがあったか?」

唯「う~んとね。そんなことはなかったかな」

紬「そうね。それを踏まえて今の事態を考えてみて?」

律「さっきから玄関を叩くこの音。つまりあいつらはずっと玄関を叩いてるわけだ」

唯「うん」

梓「そうなりますね。……律先輩? もしかして」

律「ああ。おかしいだろ? なんでここのゾンビはずっとここに留まってるんだろうな」

澪「律……何が言いたいんだ?」

律「わたしにもわかんない。」

澪「ちょ、律!」

律「ただ、わかることは。外のゾンビたちだ特殊なのか……」

紬「或いは、この家の中に何かがあるのか……」

梓「この家の中に……」

唯「もしかして、ギー太!?」

澪「それはないと思うぞ」

憂「この家の中……?」

梓「何か、心当たりでもあるの?」

憂「ううん。でも……」

律「でも……?」

憂「……あ、やっぱり何でも無いです」

唯「憂?」

憂「何でも無いよ、お姉ちゃん」

律「う~ん。そうすると、家の中を探した方がいいのかなぁ」

澪「そうだな。もしかしたらそれがあいつらを倒す鍵になったりして」

梓「というより、あのゾンビたちって倒せるんですか?」

律「そういや、倒すって選択肢は思いつかなかったな」

澪「映画の中じゃ、ゾンビは不死身だった気がするし……」

唯「そうなの!?」

澪「いや、映画の話だから」

梓「謎が多いですよね。そもそもなんでこんな騒ぎになったのか、とか」

憂「ヘリコプター……?」

梓「! そうです。ヘリコプターが何かを落としたのを見ました! それから様子が変になっていって」

唯「だったら、そのヘリコプターを探そうよ!」

律「いや、ヘリコプター探したところでどうしようもないだろ。しかも空飛んでるだろ」

紬「……もしかしたら!」

澪「ムギ?」

紬「唯ちゃん、電話借りてもいい?」

唯「う、うん。いいよ」

紬「ありがとう」タッタッ


ピッピッピ

プルルルルル

紬「お願い……繋がって……!」

プルルルルル

ガチャッ

紬「! もしもし! 私です、琴吹紬です! あなたは」

『おおああああがあああああ』

紬「ひっ! ……そんな」

『アガアアアアアアオオオオオオ』バンッバン!

紬「!?」

『……はい、こちら琴吹家でございます。どちら様で』

紬「斉藤!? 生きていたのね!」

『その声は、お嬢様! 生きて……ご無事でいらっしゃったのですね!』

紬「斉藤こそ……よく、無事で……!」

『いえ、私のことなどどうでも……! それよりお嬢様。今どちらに?』

紬「今は、友達の家に避難しています」

『なんと、御学友の方もご無事で?』

紬「ええ、だけど、そのうちの一人が、風邪で高熱の状態で……」

『かしこまりました。場所をお教えいただけますでしょうか? すぐに迎えの者を出します』

紬「おねがい。……それともう一つ、頼みたいことがあります」

『なんでしょう?』

紬「この騒ぎの原因を……突き止めて欲しいの。目星は大体ついているのでしょう?」

『……隠していてもお嬢様にはわかっておられるのでしょう。大体の目星はついております』

紬「そう……やっぱりお父様が一役噛んでいるのね」

『……』

紬「大丈夫よ、わかっているから。……・あの日からお父様は変わってしまった。お父様が山で遭難したあの日から」

紬「あの廃村に、羽生蛇村に行った日から……」


唯「あ、おかえりムギちゃん。どうだった?」

紬「なんとか家に電話が通じてここまで迎えに来てもらうことになったわ」

澪「本当か!」

梓「ということは、ムギ先輩の家にお邪魔する、ってことですか?」

紬「ええ、私の家なら医療設備も整ってるし、憂ちゃんの面倒も見れると思うから」

唯「良かったね! 憂!」

憂「うん。……ありがとうございます」

紬「大丈夫よ、困ったときはお互い様だから」

律「……ムギの家に行くってことは」

澪「すごいお屋敷にいくってことだよな……」

律「ま、まぁ。少なくともここに居るよりはましかな」

唯「あ、りっちゃんひどい! 私のおうちが頼りないって言うの!?」

律「いや、流石にムギの家と比べるとなぁ」

澪「なんというか、な」

梓「ま、まぁその話は後回しです。あとは助けを待つだけですから」

紬「ただ、ひとつだけ懸念があるとすれば……この家にある何か、ね」

律「そ、そういえばそんな話もあったな」

澪「律、お前が言い出したことだろ。自分で言って忘れるな」

律「い、いや、もともとはムギが閃いたことだから、私が考えたわけじゃないよー……なんて」

澪「とう」ペシ

律「いたっ。何も叩くこと無いじゃんかよ~」

梓「ふたりとも、そんなことしてる場合じゃないです」

唯「そうだね。……でも探すって言ってもどこを?」

紬「結局行き着くところはそこなのよね……」

梓「第一、何を探せばいいのかも良く分からない状況ですし」

唯「う~ん」

憂「……」

憂(なんでだろう。何でかわからないけど、外にいるゾンビたちの捜し物……)

憂(それがわかる気がする。ううん、わかるなんてものじゃなくて。その捜し物って言うのは……)

キキーッ!

唯「な、何々!?」

紬「多分、斉藤が来た音だと思う」

澪「斉藤?」

紬「私の家の執事」

律「執事なんているのか!? さ、流石だな」

澪「そうだな……って、感心してる場合じゃないだろ」

律「そうだった。憂ちゃん大丈夫そうか?」

唯「大丈夫! 私がおんぶしていくよ!」

澪「私も手伝うよ」

律「手伝えるのか~? ゾンビにあったらビビって逃げるなよ」

澪「いくら私でもそこまで薄情じゃない!」

憂「みなさん……ごめんなさい、迷惑かけて」

唯「大丈夫! 迷惑だったら、普段の私の方が沢山かけてるしね!」

律「全くだ。さ、裏口まで行くぞ」

梓(あれ……そういえば。なんでムギ先輩の電話が通じたんだろう。私のクラスメイトが携帯を使ったら通じなかったのに)


斉藤「お嬢様! ご無事ですか!?」

紬「えぇ。……それよりも」

斉藤「! その方が先程話してらっしゃった方ですね。簡易では有りますが、救急箱をお持ちしました」

唯「あ、ありがとうございます!」

斉藤「いえ、いえ。それよりも早くその方を中に……」

澪「す、すごい車だな」

律「リムジンよりは小さいけど。それでも結構大きい……」

『! 大変です。向こうより奴らがこちらに気がついたようです!』

斉藤「む、了解した。奴らをこちらに近づけるな! いいか、決してお嬢様とご学遊様達に近づけさせるな!」

『ラジャー!』

律「ほえ~、すごい迫力だな」

澪「そ、そんなことより早く!」

律「あ、ああそうだったな。お、おじゃましまーす」


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最終更新:2010年01月31日 00:02