澪「いたっ……い、いくらなんでも私を投げるなんて無茶しすぎだ律! それより、律も早く逃げないと!」
紬「りっちゃん!」
律「ムギ、澪を受け止めてくれてありがとうな」
紬「そ、そんなことよりも早く避けて!」
律「いやー、さっき澪を投げたら体力使い果たしたみたいで、体が動かないんだよね~、なんて」
澪「り、律!」グラッ
律「無理すんなって。ま、喋るくらいの猶予があったから私としては満足、かな。」
澪「律!」
律「そんじゃ、後は任せたぞ、ムギ、澪。絶対この騒動の犯人を……」
ガシャアアアアン!
澪「律うううう!!」
紬「りっちゃん!」
……
澪「じょ、冗談だよな? いつもの質の悪い冗談なんだろ? 実は穴をほってたとか、そういうのなんだろう!?」
……
澪「返事しろ! 律!」
紬「りっちゃん……。! 澪ちゃん! またあいつが物を投げてくるわ! 私が背負うから、早く捕まって!」
澪「い、いやだ! だってまだあそこには律がいるんだぞ!」
紬「でも!」
澪「嫌といったら嫌なんだ! 律がいようがいまいが、私は此処に残って、律と一緒に!」
『ゴオオォォオオォォ!』
紬「もう! 本当にもう! 私だってここにいたい気持ちでいっぱいなのに! せっかくのりっちゃんがすくってくれた命なんだから! 引っ張ってでも連れて行くから!」
澪「は、離せムギ! 私はここに残るんだ!」ズザザザザザ!
紬「四の五のいってる場合じゃないの!」
澪「ならせめて手に持ってくれ! 引きずられると痛い痛い!」
森の中
憂「はぁっはぁっ!」
唯「憂、大丈夫? 苦しそうだよ?」
憂「だいじょう、ぶ、だから」
和「急いでるということは、梓が危ないのね?」
憂「はい!」
唯「じゃあ急がなくちゃ! 全力疾走ー!」
憂「お姉ちゃんそっちじゃない!」
唯「あれ?」
和「仕方が無いわね」ヒョィ
憂「うわわ」
和「担いであげるから、場所だけ提示してくれるかしら?」
憂「はい!」
唯「わぁ、憂バブルス君みたいだね!」
和「唯、意外と古いゲーム知ってるのね……」
憂「ここらへんに、いるはずですけど」
和「ねぇ、ここ森の中よね」
唯「そうだね」
和「森の中に一軒家って怪しいと思わない?」
唯「そうだね~」
和「憂ちゃん、この中にいるの?」
憂「……」
和「憂ちゃん?」
憂「え? あ、多分そうだと思います」
和「そう。それなら入るわよ、唯」
唯「うん。十分に注意しなくちゃね」
和「そうね、よくわかってるじゃない」カチャ
唯「よし、それじゃこそっといかないとね」カチャ
憂「……」
唯「憂?」
憂(律さん……そんな……)
唯「うーいー?」
憂「あ、な、何? お姉ちゃん」
唯「いや~、なんだかボーっとしてたから大丈夫かなぁって」
憂「う、うん。大丈夫だよ」
唯「そう、ならいいんだけどね」
和「! ふたりとも、少し静かにして、壁に耳を当ててみて?」
唯「お~スパイみたい」
憂「……?」
『……ち……なです……』
唯「この声は!」
和「梓の声ね。急ぐわよ」
憂「あ、ちょっと待ってください!」
和「どうしたの?」
憂「この家の奥、向こう側に、司令塔がいます」
和「……そう。ならここでも二手に分かれましょう」
唯「私はあずにゃんを助けに行くよ」
和「えぇ、わかったわ。それじゃ私は司令塔を叩きに行くから」
憂「私は……お姉ちゃんについていきます」
和「ええ。それじゃあ唯。無事を祈ってるわ」
唯「和ちゃんこそ! 生きて帰ってきてね」
和「もう死んでるからその心配はいらないかな……」
唯「さぁ、あずにゃんを助けに行こう!」
憂「う、うん。まずは扉を開けて……」
ギギギギギ……
唯「さぁ、あずにゃん! たすけにき……」
憂「梓……ちゃん?」
梓「唯、先輩?」
和「……なんとなくだけどここら辺にいそうね」
和「同族レーダー、みたいなものかしら。さて、と」
和「初めまして。あなたが私たちに喧嘩売ってた人かしら?」
『……』
和「みたいね。……気持ち悪いわ、私がいうのもなんだけど」
和「頭から蛸の足みたいなのがはえてるのって不気味な光景よね」
和「さて、私は今からあなたを倒すわけだけど。なにかいうことは?」
『……』
和「無い、みたいね。それじゃあ遠慮なく」
『キュラアアアアアアアア!』
和「言う事はなくても反撃する気はあるみたいね。いいわ、かかってきなさい」
『キュラララアアアア!』
和「その手に持った鉄は何? それで私を倒すつもり? 面白いじょうだんね」
和「いっておくけれど、私今怒っているのよね、大切は友人を危険な目に合わせたあなたに対して」
和「覚悟は、いいかしら?」
『キュラアアララアアア!』
和「踏み込みが甘い! なんて」タンタン!
『アアアキュラアアア!』
和「この程度で悲鳴を上げるの? この程度で逃げ出そうとするの?」
和「冗談じゃないわ。この程度なんかじゃ足りない。私の友達を危険な目にあわせた罪はあなたの右腕だけじゃ足りないわ」
『キュラアアアア!』
和「まずは四肢ね」タンタンタンタン!
『アグラアアゥッヤアア』
和「動けない? 動けなくなった? それはよかったわ。私としても逃げられるのは嫌だもの。探すのとか面倒じゃない」
和「その触手みたいなの。抜いたら痛いのかしらね」ブチッ!
『キュウウウアアアアア!』
和「一本ずつ抜いていこうかしら。それともまとめて抜いた方が痛い? どうしてほしいの?」
『キュアアアララアアアア!』
和「叫ぶだけじゃわからないわよ」タンッ
『アガアアアア!』
和「さ、て」
和「動かなくなったわね。死んだのかしら?」
和「いや、元から死んでるわけだから……二度死んだ?」
和「さて、一応もうしないようにと釘刺しとくべきね」
和「文字通り」
ドスッ! カーーン!
和「これでよし、と」
和「あとは唯達と合流するだけだけど。無事かしら」
和「なんとなく嫌な予感がするのよね……。急がないと」
『キュラア……』
少し前、トンネル内
梓「はぁ、みんな頑張ってるなか、私だけ見てるのもなぁ」
梓「確かに設置型だから使いどころを上手くやれば強いんだろうけど」
梓「……あれ?」
梓「今、トンネルの入口の方に人影が……誰だろう」
梓「唯先輩、ちょっと人影みたいなのが」
唯「戦場の絆!」
憂「お姉ちゃん、今はそこに反応するところじゃなくて」
梓「聞いてないですね……。まぁ、行って戻ってくるだけだから大丈夫、かな」
梓「少し様子を見てくるだけ……」
梓「ふぅ。久しぶりの太陽の光を浴びたよう」
梓「……あれ? 人影が見当たらない。やっぱり気のせいだったのかな」
『梓ちゃん』
梓「にゃ?」
ドスッ
梓「だ、誰……。私に何を……?」
『……』
『シュイイイアアアア!』
梓「ひっ」
『それじゃ、あとは任せたから』
『シュアアアアア!』
梓「きゃあああああ!」
『あずにゃん!?』
『あずさちゃん!?』
『あずさ!?』
『当たった!?』
『シュアアアアア……』
梓「ん……ここは?」
梓「周りが一面木、ということはトンネルの外に」
梓「そうだ、思い出した。空を飛んだゾンビみたいなのに連れさらわれて……」
梓「いたっ……。なんなんですか、もう」
梓「? 首筋のところに何か穴が開いてる。……なんだろう。蚊に刺されたのかな」
梓「とにかく、唯先輩たちと合流しないと……」
ガサガサッ
梓「誰!?」
『……』
梓「ひっ……! こっちくるなです~!」タッタッタッタッタ
梓「はぁ、はぁ。それにしても、さっきの変な髪型のゾンビは一体……」
梓「それに、逃げてる最中に見つけた家におじゃましちゃったけど、ここは一体誰の家何ですか」
梓「……? なんだろう。こっちに何かある気がする」
梓「書斎?」
梓「机の上に一冊だけ放置してあるのは……日記?」
梓「……誰もいないし。せっかくだから読んじゃってもいいよね」
梓「ええと、日付が書いてない?」
『信じられないことが起きた。どうやら私は本当に完成させることができたらしい
この嬉しい知らせを誰に伝えよう!』
『この日記に日付を入れようかと思ったがやめた。日付など意味がない』
『今日やっと望みがかなった。彼は私のことを見てくれた。今の私に魅力を感じたんだそうだ。うれしい』
『感動を分かち合おうとあの娘を呼んだ。どうやら子供の頃の●に会いに行きたいらしい。本当に●●●だと思う』
『……大変なことが起きてしまった。あの娘が過去に行ったのを最後に動かなくなってしまった
このままでは彼に会えない。それだけは駄目だ。なんとかしなくては』
『原因が判明した。やはりというべきか。彼女が●●●●だったのが原因だったようださっそく』
梓「何の事を言ってるんだろう……。それに、ここからはずっと白紙……あ、こんなところに最後の日記が」
『これを読んでいる人へ。なんとかしなくてはならない。お願いです。あの娘をどうにかして止めてください
誰かが隣にいてあげれば優しい子になるはずだから』
梓「……日記はここで終わってる」
梓「いったい何のことを言ってたんだろう。それに誰かを助けを求める感じだったし」
梓「う~ん。考えてもよく分からないや。ひとまず、ここを離れて……」
バタン!
梓「だ、誰かきた?」
梓「唯先輩……じゃないよね。開け方が乱暴だったから」
梓「こっそりと扉の隙間から……やっぱり、ゾンビだ」
梓「ここは近づかないように離れ……!?」
梓「なん……だろ……急に、目眩が……」
梓「……」
『オオオ?』
梓「……」
『アアオオオオオ!』
梓「……」
ドシュ!
唯「あずにゃん! だいじょう、ぶ?」
憂「あ、あずさ、ちゃん?」
梓「……」
梓「……ゆ、唯先輩?」
唯「あずにゃん、体真っ赤だけど、大丈夫なの?」
梓「え? き、きゃああ、何なんですかこれ!?」
憂「じ、自分でも分からないの?」
梓「う、うん。ってうわあ、足元にゾンビが倒れてる!」
唯「あずにゃんが倒したんじゃないの?」
梓「え、っと。……だ、ダメですよく思い出せません」
唯「そうなんだ。とりあえず、みんなのところに戻ろう」
梓「はい!」
憂(なんだろう、梓ちゃんから嫌な気配がする。……でも、私はこれを知ってる、のかな?)
唯「うーいー?」
憂「あ、今いくよ、お姉ちゃん」
和「あら、唯。ちゃんと梓を救出できたみたいね」
唯「う、うん。なんか私あまり活躍しなかったけど」
梓「そんなこと無いです! 唯先輩が助けに来てくれただけで嬉しいです!」
憂「とにかく、戻りましょう。……あまり、もどりたくないですけど」
和「どうしたの?」
憂「いえ! 何でも無いです!」
唯「さぁ戻ろう。きっとりっちゃん隊員ご立腹だろうなぁ。あずにゃんが単独行動したから」
梓「ええ!? 私のせいですか!? だいいち私はちゃんと唯先輩に……!」
和「はいはい、いいから戻るわよ~。帰り道にゾンビがいるかもしれないから一応気をつけてね」
憂(律……さん)
唯「ただいま~。あずにゃんを取り戻して……あれ?」
澪「グスッ……律……」
和「……何があったの?」
紬「りっちゃんがね……りっちゃんが……グスッ」
唯「りっちゃんが、どうしたの? ねぇ!」
澪「私が……私が足を引っ張ったから……」
唯「どうな……たの?」
スッ
唯「や、やだなぁ。澪ちゃん。指さした方向にはガラガラに崩れたトンネルしか無いよ?」
澪「その、中に」
和「……そう、なの」
唯「……りっちゃん?」
澪「私の所為なんだ! 私があそこで動けていたらこんなことにはならなかったんだ!」
和「澪……」
紬「私が……あいつを倒せていたら、あれを銃で壊せていたら……」
和「っ……。みんな色々思いつめる理由もわかるわ。自分が悪いと思うことは簡単だもの。でもね いつまでもうじうじしていたら、友達を助けて散った律の気持ちはどうなるのよ」
唯「和ちゃん……」
和「私は前に進むわ。あの時残っていればよかった、なんて考えるのは簡単だけどね」
紬「和さん……」
憂「私も和さんに賛成です。ここで立ち止まっているよりも、先に進まなくちゃ」
梓「私も。私も先に進みます!」
紬「……そうね、いつまでもうじうじしていたら、りっちゃんに怒られちゃうものね」
唯「そうだよ。りっちゃんに私たちが見せるべき姿は、かっこいい私たちだよ!」
和「さぁ、私たちは立ち上がることを決意したわ。澪、あなたはどうするの? いつまでもそこでウジウジと泣きはらすの?」
最終更新:2010年01月31日 00:07