少し前

『お姉ちゃん、誰?』

『え? ああ、私のこと?』

『ここには私とお姉ちゃんしかいないよ?』

『そうね。そうだったね』

『お姉ちゃん?』

『う~ん。あなた、自分がだれだかわからないでしょう?』

『え、どうしてわかるんですか?』

『ふふ……どうしてだろうね。……でも、私はあなたのことを知っているよ』

『本当?』

『嘘はついてないよ。……あなたが誰か教えて欲しい?』

『うん!』

『それじゃあ教えてあげる。あなたはね……』



憂「……母体。……か、どういう意味なんだろう」

和「……」

憂「うん。あんまり気にしてないよ。でも、さっきの人ッて一体誰だったんだろう」

和「……」

憂「うん、そうだね。早いところお姉ちゃんを探さないと」

和「ユ……」

憂「? ……喋れるの?」

和「……」

憂「変なの……」



唯「……ねぇ、まだつかないの~?」

梓「も、もうちょっと待ってください。多分ここら辺にいるはずです」

唯「うう、その言葉もう四回くらい聞いたよう」

梓「ゆ、唯先輩が何回も聞くからです!」

唯「はぁ、りっちゃん大丈夫かな」

梓「う……」

唯「大丈夫。りっちゃんは強いから、消化器で殴られたくらいじゃビクともしないよ」

梓「いや、それは流石に……」

律「流石の私でもそれは死んじゃうかなぁ」


『り、りっちゃん(先輩)!』


律「よー。何だ、お前らふたりだけか?」

梓「そ、そんな。うそです。だって私があったときには……」

唯「り、りっちゃん隊員……! よ、よくご無事で……!」

律「お、おいおい。そんなに泣くことじゃないだろう」

梓「待ってください! おかしいですよこれ」

唯「あずにゃん?」

梓「私は見ました、朧気ながらですが、律先輩がゾンビになってたところを」

律「おー」

唯「で、でもだったらどうしてりっちゃんは無事なの?」

梓「それは……」

律「ん~、そうだ。唯だけにこっそり教えてやるよ。その前にこの縄解いてくれ」

唯「あ、うん。……それにしても、どうして縛られてるの?」

律「うーん、わからん。気がついたら縛られてたから」

唯「ふーん。あ、解けたよ」

律「おー、ありがとうな。唯。これはお礼だ」

グォン!

梓「唯先輩、危ない!」バッ

ゴンッ!

唯「あずにゃん!? り、りっちゃん!?」

律「先に梓か……。まぁどっちも殺す気だったし、順番は関係ないな」

唯「りりり」

律「いや~唯が解いてくれて助かった。皆を殺しに行こうにも縛られてて動けなかったからな~」

唯「な、なんで」

律「……梓」

梓「げほっっ……、唯、先輩……私と同じ……で」

唯「あずにゃん!」

律「まぁそういうことだ。さて、と」

梓「いっつ……」

律「唯、そこから動いたら梓の首の骨おるから」

唯「な、ななな!」

律「だってお前、それ持ってるじゃん。それやっかいなんだよねぇ」

唯「それ?」

梓「……多分、その、石のことだと」

律「そ。それがあると私たちにとってよくないんだよ」

唯「う……」

律「ま、そういうことで。それを壊してもらっていいか?」

唯「で、でも!」

律「そうしないと、梓がどうなるかわかるよな?」

梓「ぅあ……」

唯「あずにゃん!」

律「そういうわけだ」

唯「……!」

梓「わ、私のことはいいですから……!」

唯「で、でも……」

梓「お願いです! 唯先輩!」

律「梓はこう言ってるけど、どうする?」

唯「うう……」

律「どうする?」

唯「り、りっちゃん……こそ」

唯「りっちゃんこそ! これで攻撃されたくなかったたあずにゃんを離せ~!」

律「なにい!? そう来たか!」

梓「えぇ~……」

唯「さぁ」

律「う……」

唯「さぁさぁ」

律「うう……」

唯「さぁさぁさぁ!」

律「ううう……」

梓「あの、さっさと発動させればいいんじゃないですか?」

律「あ」

唯「あ」


『……』


唯「えい」ポチ

律「なんか、私の扱いがぞんざいじゃないか」

唯「そうかな」

律「なんかもっとこう、バーンって感じで格好良くなりたかったのに」

梓「元に戻るシーンを省略された感じは有りますね」

律「だろ!? 感動的なシーンなのになんか納得いかねー」

唯「でも、あずにゃんので一回経験しちゃったから」

律「ってことは梓のせいか。この~」グリグリ

梓「や、やめて下さい!」

唯「あはは~。……でも、元に戻ってよかったよ、りっちゃん」

律「ん。ま、なんていうか。……ありがとな、唯。それと、ごめん、梓」

梓「い、いえ。私も、ゾンビの時の律先輩にヒドイことしちゃいましたし、お、おあいこです」

律「そうかー。よし、それじゃあこの私が正気に戻ったからには、ゾンビなんてひとひねりだぜー!」

唯「おおー、流石りっちゃん隊員! 頼もしい!」

律「任せろー!」

梓「はぁ……不安だ」



紬「あれからゾンビは見かけないね」

澪「ああ。……地上にいたときは沢山いたんだけど」

紬「もしかして、他の皆が倒してくれた、とか」

澪「ありそうな話だな。ともかく、私たちは私たちで皆を……ん?」

紬「あれ、あれは憂ちゃんね」

澪「それに和もいるな。おーい、ふたりとも~!」


憂「……」

和「……」


澪「あれ? ふたりとも気がつかないで行っちゃったぞ」

紬「聞こえなかったのかしら」

澪「憂ちゃんはともかく、和なら聞こえてると思ったんだが」

紬「とりあえず追いかけましょう」

澪「うん」

澪「たしかあの角を曲がっていったな」

紬「そうね。大して距離もなかったから、すぐに追いつくと思うけど」

澪「けど?」

紬「何だか、嫌な予感がするのよ」

澪「……奇遇、だな。私も」

紬「澪ちゃんも?」

澪「ああ。っと、この角を曲がれば」



『アオオオオオ』『キイイィィイアア』『キュララアアア』



澪「……冗談、だろ」

紬「まだ、こんなに沢山、いたなんて……」

澪「あ、あそこにいるの憂ちゃんじゃないのか!?」

紬「本当! ふたりとも、危ないからこっちへ来て!」

憂「……?」

澪「いや、首をかしげてないで」

紬「澪ちゃん、なんだか様子が変だわ」

澪「え?」

『アオオオオ!』『キイイイィィイィ!』

憂「うるさい……少し黙って」

『……』

澪「え?」

紬「ねえ、憂ちゃん。あなたは本当に憂ちゃんなの?」

憂「うい……?」

和「……」

澪「え、えっと?」

紬「それに、和ちゃんも様子が変。……何があったの?」

憂「……あの」

和「……!」カチャ

澪「え?」ヒュン!

澪「うわぁ、ななななな」

紬「っ、和ちゃん! もしかしてまた正気を失ったの!?」

澪「なんだって!」

憂「……あの人達、私のこと知ってるのかな」

和「……」

憂「敵? 敵なの? あの人達」

和「……」

憂「そうなんだ。わかった」

澪「な、何を言って」

律「澪ちゃん来るわ!」

憂「敵なら、倒してもいいよね」

和「……」

『アアアオアオオアアアオ!』『キイイィイイィイィ!』

澪「ひぃ!」

紬「澪ちゃん! ここは一旦逃げるわよ!」



唯「……ところで、私たちはいまどこに向かってるの?」

律「そりゃあ、他の皆のところだろう」

唯「皆がどこにいるかわかったの?」

律「え? 梓が知ってるんじゃないのか?」

梓「何で私が知ってるって話になってるですか」

律「知らないのか?」

唯「知らないの?」

梓「知りませんよ!」


『……』


律「まぁ、適当に歩いてりゃそのうち見つかるだろう」

梓「そんな楽観的な……」

唯「でも、私はそうやってあずにゃんを見つけたからね」

梓「それは……そうですけど」

律「ま、ゆっくり探すとしようぜ。そうしてりゃどのうち」   ダダダダダ

唯「な、何の音!?」

律「銃声だ!」

梓「この音から察するに、ムギ先輩!?」

唯「そ、そうなの?」

律「知らん! けど、急ぐぞ!」

唯「うん!」


ダッダッダッダ


澪「うわあぁぁ!」

紬「大丈夫、澪ちゃん!」

澪「だ、大丈夫……ちょっとびっくりしただけだから」タンッタンッ

紬「それなら……よくないわね……数が多すぎて、このままじゃとても」

澪「ふたりだけじゃ、あの数を凌ぎきれない……」

紬「……せめて、唯ちゃん達がいてくれたら」

澪「律……私に、力を貸してくれ……!」


律「その願い!」

唯「叶えてしんぜよー!」

梓「ゼヨー…ゼヨー…ヨー」


紬「ゆ、唯ちゃん! それに……」

澪「律!」


梓「あの、私もいます」

紬「あ、梓ちゃんも……! ごめんなさい、名乗りがよく聞こえなかったものだから」

梓「どうして私はエコー役なんですか……」

律「私の引き立て役だからな!」

梓「律先輩は勝手です!」

律「わ、わるい。そんな怒らなくても」

澪「律! お、お前どうして……」

律「ふっふ~ん。この田井中律様は、地獄より舞い戻ってきたのだ~!」

唯「英語で言うと~!……」  梓「インフェエルノですね」

唯「いんふぇるの~!」

澪「そ、その……本当に律なのか?」

律「このおでこが目に入らぬか~!」ペカー

紬「あらあら」

唯「おお、この輝きは本物のりっちゃん!」

梓「そんなので判別つくんですか!?」

澪「律……本当に律なんだな……!」

梓「判別ついた!?」

律「おお、ドラマーで部長で皆のまとめ役の頼りになる田井中律様だよ」

澪「律……りつぅ!」ギュウ

律「おわ……きゅ、急に抱きつくなって!」

澪「りつ……りつ!」

律「まったく、いつまで立ってもお前は私がいないとだめなんだな」

澪「ああ、そうだよ。私には律がいないとダメなんだ。だから……」

律「……おう。もうどこにも行かないよ」

澪「ん……」

紬「ああ、一時期離れ離れになってしまった二人が再び会い塗れる」

唯「ムギちゃん? 鼻血出てるけどどこか怪我したの?」

梓「あと微妙に言い回しが違うような……って、それよりも」


『アオアアオオオ!』『キイイィイィイイィ!』


梓「今まで空気を読んでいたかのようにゾンビ達が!」

唯「わぁ、そういえば沢山いたんだね!」

紬「澪ちゃん、りっちゃん!」

律「澪、感動の再会シーンはここで終わりだ」

澪「ああ、そしてここからは」


『私たちの大逆転劇!』


唯「私たちの戦いはこれからだー!」

梓「唯先輩、それ打ち切りフラグです!」

紬「さぁ、一気に行くわよ!」

梓「……あ、そうだ。律先輩。……これ」

澪「私も、律」

律「ん? おお、そういえば私の銃がなくなってたんだっけ」

梓「気がついてなかったんですか?」

律「うん。何か軽いなぁとかおもったら」

澪「じゃ、じゃあ今からどうするつもりだったんだ?」

律「いや、素手で立ち向かおうかと」

澪「無理があるだろう。流石に」


紬「あの~、早く加勢してくれると嬉しいんだけど……」ダダダダ

唯「て、敵の数が多すぎるよ~」タンタン

澪「あ、ごめん。今行く!」

梓「それじゃあ律先輩」

律「いや、私は澪から貰ったこれだけで充分だよ」

梓「え?」

律「梓は爆弾しか持ってないんだろう。だったら私の……と言ってももともとムギのだが、その銃を貸すよ」

梓「律先輩……」

律「さ、加勢しに行こうぜ。私がいなきゃ始まらないからな」

梓「……まったく、律先輩はずぼらです!」


11
最終更新:2010年01月31日 00:11