唯「の、和ちゃん!」

澪「すごい、あいつらを簡単に斬った……!」

律「おお、あの刀はリッちゃんパンチと同じくらいの威力なのか!」

梓「それよりも強いですよ……」

和「さ、この刀があれば後は……!」


紬「よそ見している場合じゃないわ!」ダダダダダ!


『フウウアウアアアアア!』


澪「な、銃が効いた!?」

紬「やっぱり、後ろから攻撃すれば大丈夫みたいよ!」

律「それなら」  梓「ちゃんと銃で攻撃してくださいね」

和「そっちばっかり向いていていいのかしら?」

ザシュッ!

紬「あらあら、そっちに集中しちゃう? 駄目じゃないこっちもみなきゃ」

ダダダダダ

梓「……なんか、このふたりだけで勝てる気がします」


澪「律!」

律「おう!」

『挟み撃ちだ!』


唯「澪ちゃんとりっちゃんのコンビネーションがすごいね」

梓「私も……! 唯先輩」

唯「うん。……」

梓「あ、や、やっぱりいいです」

唯「ごめん。ね」


和「はっ!」

梓「……そうして、殆ど片付いたのでした」

紬「説明ありがとう。……でも弾数が結構減っちゃったみたい」

和「そうね。……それにしても、この刀。誰が……」

澪「唯、大丈夫か?」

唯「うん。大丈夫だよ」

律「……とてもそうは見えねぇぞ」


紬「憂ちゃんがああなったのには何か理由があるはずよ」

和「ええ、早く追いかけましょう」

唯「でも」

梓「唯先輩! もしも憂が何かされていたのだとしたら、目をさますことができるのは唯先輩だけなんですよ!」

唯「あずにゃん……」

和「そうね、唯ならきっと出来るわ」

澪「それなのに、お前がそんな様子ならできるものもできなくなるだろう?」

唯「みんな……」


律「こっちの方に来たよな?」

和「そもそも道がひとつしかなかったでしょう?」

梓「唯先輩、だいじょう……ぶ」

唯「私ならやれる。きっとやれる。大丈夫負けない。がんばれる人に」

澪「精神統一中みたいだな」

和「唯らしいわね」


梓「……あれ?」

和「扉があるわね」

律「洞窟の中なのにか?」

唯「ほえ、また扉?」

澪「またって、前にも見つけたのか?」

唯「うん」

梓「そういえば、見た気もします……」

律「おーし。それじゃあくぐってみようぜ!」

澪「誰が開けるんだ?」


『……』


梓「ここはけいおん部の一番偉い人と言うことで」

紬「がんばって、りっちゃん」

律「お前ら……いや扉開けるだけだろ? なら」

澪「律……死ぬなよ」

律「だから、扉開けるだけなんだろ!?」

唯「り、りっちゃん隊員……!」

律「だーかーらー!」



ギイイイィィィ



和「開けたわよ」   『えー!?』

和「……ここも結構広いわね

澪「あそこにいるのは」

唯「……憂!」


憂「お姉ちゃん。なんだ、生きてたんだ」


律「けいおん部を、舐めるなよ」

梓「憂……」

和「……そこにいるのは誰?」

澪「え?」


『……はぁ、やっぱり和さんにはばれちゃいますか』


澪「!?」

律「こ……この声ってまさか」

紬「少し大人びたような声になってるけど。……この声の主は」

憂「……何のようですか」

『う~ん。私もそろそろ隠れているだけじゃ暇になって来たからね』

唯「……な、なんで」


唯「なんで憂が二人いるの!?」


憂『あ、私も憂だって認めてくれるんだ』


澪「こ、これはどういう事だ……?」

律「私に聞くな!」

紬「こ、これは。3人で……!」

梓「ムギ先輩!? 変なこと考えないでください!」


唯「これは、どういう」

和「……つまり、憂ちゃんが変になった原因は」

律「あの憂ちゃんだってことか!」

澪「憂ちゃんが変になったのは憂ちゃんが原因で。あれ憂ちゃんが……憂ちゃん?」

唯「憂!」

憂「しゃべらないでって言ったのに。もう忘れてるんだ」

唯「ううん。忘れてないよ。でもね、憂の事を助けたいんだ」

憂「助けたいのなら私の言うことを聞いてればいいんだよ」

唯「違うよ! 憂、聞いて!」


唯「私、いつも憂に迷惑ばかりかけてきた。でも、私はそれを当然だと思って改善しようとしなかった」

唯「でもね、だからこそ。今がその迷惑分を返上する時なんだって!」

唯「だから、憂。今助けてあげるね!」


憂「……お姉ちゃん」

憂『うんうん。姉妹愛って言うのは素晴らしいね』

和「茶化さないで。せっかく唯が一生懸命に話してるのよ」

憂『うん。そうだね。だけど』

憂『イライラするんだよねぇ……』

和「何が……?」

憂『ねぇ憂ちゃん。あんなこと言われたけど。まさか納得したわけじゃないよね』

憂「え?」

憂『納得したわけじゃ、ない、よ、ね?』

憂「……! ぁ」

和「! あなた、憂に何をしたの!?」

憂『何が? 私は特に何もしてないよ』

和「嘘をついてるんじゃ!」


憂「お姉ちゃん……やっぱり、許せない、よね」

唯「憂!?」


澪「憂ちゃん!」

律「なにが起こってるんだ!」

和「多分憂のせいで憂ちゃんがおかしくさせられたのよ」

梓「だから、よくわからないです……」

紬「つまり、あっちの憂ちゃんを倒せばなんとかなる、ってことね」

憂『でも、その前に、ね』

唯「な、何?」

憂『憂ちゃん。お姉ちゃんが嫌い?』

憂「はい。だいっきらいです」

唯「!」

憂『そう。それじゃお姉ちゃんを殺したい?』

憂「勿論です」

唯「う、うい……!」

憂『それじゃあ、お誂えの場所を用意してあげるね』


ゴゴゴゴゴゴゴ


和「な、何の音なの!?」

梓「み、見てください! 唯先輩と憂の姿が!」


唯「か、体が……」

憂「消えていく……?」

和「な……」

紬「ふ、ふたりとも!」


唯「……」

憂「……」


シュンッ



梓「二人が、消えちゃいました……」

澪「ど、どういうことだ!?」

律「お、おい。一体何を」

和「一体何をしたの! 二人は何処に行ったの!」

律「私のセリフとらないでくれ」


憂『う~ん。何処って言われてもね。別の場所としか言いようが無いんだけど』

和「それが何処かと聞いているの。そして何であのふたりだけ……!」

憂『憂ちゃんはね、お姉ちゃんを殺すことを誰にも邪魔されたくなかったのよ』

和「……だから何処かへ飛ばしたと言うの」

憂『はい』

和「何処に飛ばしたの!」

憂『教えてもいいですけど。あなた達では絶対いけないので教える必要はないですね』


澪「……ひぃ」

律「な……またこいつら……!」

憂『さぁ、あなた達にはここで死んでもらいますね。これだけ数があれば充分かな』

和「……死にはしないわ。私は唯を守るんだから!」

梓「……」ググ

紬「よく耐えたわ、梓ちゃん!」


憂『さぁ、せいぜい頑張ってくださいね、先輩方』

憂『そして、お姉ちゃん、憂ちゃん』


憂『あなた達のいる、特異点から、果たして戻ってこれるかな?』



特異点

唯「う、ううん……あれ? ここどこだろう」

唯「たしか、あの洞窟で体が透けて……そして」

唯「そうだ、憂!?」

唯「うーいー!」


憂「……聞こえてるよ」

唯「おお、よかった。無事だったんだね」

憂「ねぇ、お姉ちゃん。私、お姉ちゃんのこと嫌いだよ」

唯「……」

憂「だから憂さんは気をきかせてここに呼んでくれたんだよ」

唯「……憂」

憂「お膳立てしてくれたんだ。お姉ちゃん。ここでちゃあんと殺してあげるね」

唯「……そんなことさせないよ。憂は、いつまでも憂でいて欲しいから!」

憂「いいよ、かかっておいで、お姉ちゃん!」


唯「かかっておいでと言われましても~……武器がひとつも無いんだけど」

唯「こ、これはもしや。川原で殴り合って友情を確かめるかんじで」

憂「そうそう、いい忘れてた。実はここ二人っきりじゃないんだよね」

唯「友情が……え?」

憂「紹介するね、私のお友達なんだ」

憂「おいで、純ちゃん」


『ホオオオオオオオオ!!』


唯「ひっ、な何誰?!」

憂「だから、私の友達の純ちゃんだよ。すごいでしょう、体が人魚みたいで」

唯「い、いくら体が人魚だからって、顔が人間だったら不気味だよ!」

『ホオオオオオオオオ!』

憂「あーあ、お姉ちゃんがそんなこと言うから。純ちゃん怒っちゃったじゃない」

憂「私は上のほうで見物してるから。お姉ちゃんは暫く純ちゃんと遊んでてね」

唯「あ、憂!」


唯「純ちゃん、っていうんだ……随分、その、個性的なお友達ですね」

『ホオオオオオオオオ!』

唯「ひぃ! お、怒ってるのかな、ま、待って! 謝るから、きゃあ!」

『ホオオオオオオオ!』グオン!


唯「い、痛い……体当たりなんて……」

唯「何か、武器になるものはないの……?」


憂「大丈夫? お姉ちゃん。まだ死んでないよね?」

唯「う、憂……どうやってそこに登ったの?」

憂「頑張って登ったんだよ。それよりも。純ちゃんにいたぶられるのはいいけど、死んじゃだめだよ。止めは私が刺すんだから」

唯「う、うい!」

憂「ほら、よそ見していていいの?」

『ホオオオオ!』

唯「きゃあ!」


唯「はぁ、はぁ……」

憂「お姉ちゃんさっきから逃げ回ってるだけじゃない。少しは立ち向かわないと」

唯「そ、そんなこと言ったって……」

『ホオオオオ!』

唯「わっ」ヒョイ

唯「はぁ、はぁ。どうしよう……何か、何か無いの?」

憂「ポケットの中探ったところで、何か見つかるわけも無いと思うけどな」

唯「うう、包帯を解いたら何かが……あった!?」

憂「?」


唯「えっと、ムギちゃんからのメモだ。……何々」

『唯ちゃんへ、もしもの時のためにこれを渡しておきます』

唯「なんだろう……こ、これは!」

憂「何? 何があったの?」

唯「これは! ムギちゃんが私たちけいおん部のためだけに作ってくれたおいしいお菓子」

唯「その名も『アンムギ』!」

唯「細長い形状をしてるし、中にアンコがたっぷり詰まってるから美味しく食べられるんだよね~」

唯「……って」

唯「これじゃただ私のお腹が膨らむだけだよ~!」

『ホオオオオオオオオ!』

唯「きゃあ!」


憂「何か見つけてご機嫌みたいだけど」

憂「結局何も変わってないみたいだね……」

唯「うう、どうすれば……。あれ?」

唯「石太! あれ、今までポケット探しても見つからなかったのに」

唯「それよりも、石太が光ってる……。アンムギもだ……」

唯「これは、もしかして……!」

『ホオオオオ!』

唯「こうなったら、やれるところまでとことんやっちゃうよ!」

『ホオオオオオ!』

唯「くらえ、必殺アンムギ投げ!」


ポニャン!


憂「そんなお菓子投げたくらいじゃ純ちゃんには掠り傷ひとつも……」

唯「そして、石太の援護射撃!」ポチ


シュゴオオオオオ!


『ホオオオオオアアアア!』

憂「!? な、効いてる!」

『ホオオオオ……!』

憂「でも、致命傷には至らなかったみたい。……でもあの石は危険みたい」

憂「純ちゃん。その石を警戒しつつ攻撃してね」

『ホオオオオオ!』

唯「そう、石太の攻撃は強い。でも今回の目的はそれじゃない!」

唯「石太が光ってた原因は分からないけど。でもアンムギも一緒に光ってたってことは!」

シュゴオオオ……

唯「きっと、何かが起こるはず!」


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最終更新:2010年01月31日 00:14