和「もう終わってます。これ以上は弾の無駄なんですからね」
さわ子「うう……」
和「……あの、私はさわ子先生も綺麗だと思いますよ」
さわ子「どうせこころの中では「年増~」とか思ってるんでしょう?」
和「いや、そんなことは」
さわ子「どうせ私はあなた達の知ってる
山中さわ子より三才年取ってるわよお……」
澪「ああ、私今日の夜は眠れない気がする」
梓「私もです……」
律「あ、おーい。二人とも無事だった……」
澪「……」
梓「……」
律「……何、やってるんだ? 二人して」
和「ち、違うわよ!? 私は別に着たくて着たんじゃ」
さわ子「和ちゃんの魅力であいつらをメロメロにしてたのよ」
和「せ、先生! 嘘……と言うわけでもないけど、誤解させるようなこと言わないでください!」
律「そ、そうか。……やっぱり、ゾンビは好きな相手とか……ゾンビなのか」
和「な、ち、違うわよ! 何を言ってるのあなたは!」
澪「い、いくらゾンビとはいえ、求婚する相手くらい選んだ方が」
和「ああもう! 哀れみの入った目でみないで頂戴!」
梓「……」
和「唯一の良心であるあなたにそんな目をされたら、私はどうしたらいいのよ……」
和「着替終わったし。あとはムギを助けに行くだけね」
さわ子「え~、そのままでよかったのに」
和「あんな恥ずかしいかっこうして行きたくないわよ」
澪「しかし、裸の和をこんなところでみるとは……」
和「……色が悪くなってたでしょう?」
律「いや、一部のマニアには受けるんじゃないか」
和「受けたくないわよ……」
梓「それよりも……!」
さわ子「ええ、早くムギちゃんを追いかけに行きましょう!」
『おー!』
憂『ふーん。やっとくるんだ。……楽しみだなぁ』
…
唯「……憂」
さわ子「ごめんなさい! 私が、私が軽率なことをしなければ!」
唯「……さわちゃん先生は悪くないよ。……悪いのは、私だから」
梓「そんな! 唯先輩は悪く無いです!」
唯「ううん。……こうなるってわかってたはずなのに。わかってたはずなのに!」
唯「どうして止めることができなかったんだろう! ずっと、ずっと側にいてあげるって言ったのに!」
梓「……唯先輩」
澪「あれから3年。……やっと復旧したっていうのに」
律「またあの時代で、同じことが起こるのか……」
梓「きっと、私たちの前の人も、その前の人も……同じことを……」
唯「終わらせないと。私で終わらせないと! じゃないと……じゃないと」
唯「なんとかならないの? もう元には戻らないの?」
さわ子「今、ムギちゃんが一生懸命頑張ってくれてるけど……」
唯「憂……」
…
唯「……ほぇ」
憂「どうしたの、お姉ちゃん」
唯「なんだろう。なんだか、夢を見ていた気がする」
憂「夢?」
唯「うん。……でも何か本物っぽい夢だったよ」
憂「……もしかして、予知夢なのかな……」
唯「そうだったとしたら。……私。がんばらなきゃ」
憂「何を?」
唯「憂を守ってあげるのを!」
憂「お姉ちゃん……。ありがとう」
唯「うん。……それにしても、ここはどこなんだろうね」
憂「周りを見渡しても何も無い場所だね」
唯「少なくとも、あの時見た海じゃないよね」
憂「うん。ちがうと思う」
唯「う~ん」
憂「あ、あれ見てお姉ちゃん。あそこに何かあるよ!」
唯「本当だ……!」
憂「行ってみようよ」
唯「うん!」
唯「なんだろうこれ。ピラミッドみたいだね」
憂「本当だ。……これ何に使うんだろう?」
憂『あれ、そっちの方が先に来ちゃったんだ』
唯「! 憂!」
憂「憂、さん」
憂『ふーん。仲直りできたんだ。……それにしても、どうやってここまで来たの?』
唯「よくわからないけど、演奏したらここに来たんだよ!」
憂「間違ってないけど。……それだけじゃよくわからないと思うよ、お姉ちゃん」
唯「と、とにかく。同じ憂なのにどうしてこんなことをするの!」
憂『その話は前に憂ちゃんにした気がするんだけど』
唯「そうなの?」
憂「……うん。その人は、さわ子先生のタイムマシンで過去に行ったんだよ」
憂「……でも、そのタイムマシンが何故か故障しちゃって、それでずっと元の時代に戻れなくなってしまった」
唯「過去に行ったってことは……もしかして」
憂『うん。ずっとお姉ちゃん達を見続けてきたよ。お姉ちゃん達の成長過程も、ね』
唯「えへへ、なんだか照れるな~」
憂「お、お姉ちゃん。照れてる場合じゃないよ」
唯「そう? でも私の色々なところみられちゃったから、ちょっと恥ずかしいなぁ」
憂「もう、お姉ちゃんたら」
憂『……』
憂『本当に、イライラするなぁ』
憂『私はもうお姉ちゃんに甘えることができないっていうのに、私の前でイチャイチャして……』
憂『イライラする。……イライラするよ……!』
唯「う、うい……?」
憂『憂ちゃんにも言ったけど。私ね、もうこの世のすべてが嫌いになったんだ』
憂『律さんも澪さんも紬さんも梓ちゃんも純ちゃんもさわ子先生も和さんも憂ちゃんもお父さんもお母さんもお姉ちゃんも!』
憂『誰も私を助けてくれなかった! 誰も私をみてくれなかった!』
唯「憂……」
憂「憂、さん……」
憂『特に、今私の目の前で見せつけてくれるあなた達は一番嫌いだよ』
唯「う……うい」
憂「だから、なるべく苦しんで死んで欲しいんだ。……それでね」
憂『一体どんなのが、お姉ちゃん達にとって一番苦しい死に方なのか、私一生懸命考えたんだよ』
憂『一番最初に考えついたのが、憂ちゃんに殺される。またはお姉ちゃんに殺されるって言う展開』
憂『でも、二人はそんな私の策を破ってきちゃったから、これは無し』
憂『それじゃあ、その次に苦しい死に方って? なんだか分かる?』
憂「……」
憂『……やっぱり、同じけいおん部の人に殺されることかな。ってね?』
紬「……」
唯「ム、ムギちゃん!」
憂「紬さん!? い、一体何を!?」
憂『お姉ちゃんなら経験があるでしょう? 梓ちゃんや律さんがおかしくなった時のこと』
唯「う、うん。急に私たちを倒そうとしてきて……」
憂『あれね、私の血を二人の中に注入したからなの。……ゾンビの統率者がそれぞれのゾンビを統率できるように』
憂『私も、私の血が流れてる人間を操ることができるんだ。……だから、梓ちゃんや律さんがお姉ちゃんを殺そうとしたんだよ』
憂『そして、今度は紬さん。……それに、今度は持ってる武器が機関銃だよ』
憂『さぁ、紬さん。お姉ちゃん達を蜂の巣にしてあげてね』
憂『私のことは気にしなくていいから。ちゃんと殺してあげて、ね?』
紬「了解、射殺します……」
…
澪「しかし、なんなんだここは」
和「あの光ってたところから出たらすぐ外だと思ったけれど」
さわ子「なんか螺旋階段になってるわねえ」
律「それはいいんだが、降りていくってのがどうにもな」
梓「少し怖い気がします」
澪「そうだな。……お、底がみえてきたぞ」
律「はあ、やっとか。長かったなぁ」
和「そうね。でもこれからが本番よ。気を引き締めていかないと」
梓「ムギ先輩、無事でしょうか」
さわ子「なぁに。ムギちゃんのことだから心配はいらないと思うわよ」
澪「……そうだな。なんたってこんな時までお茶とお菓子を持ってくるくらいだからな」
律「おーし。それじゃあ早い所助けにいこうぜ」
和(……唯。貴方は今どこにいるの?)
さわ子「……きっと、大丈夫よ、ね」
澪「ふぅ、ついた。……な、なんだここ!?」
律「どこを見ても同じ景色ばっかりだな~」
梓「それに、なんだか空が変です」
和「……しっ! ……どこからか銃声が聞こえるわ」
澪「なんだって!? む、ムギが危ない!」
律「どの方向から聞こえてくるんだ?」
和「……あっちの方向からね」
さわ子「あっち? ……その方向に、変なものが見えるわよ」
律「決まりだな! その方向に向かって行こう」
澪「……ムギ、無事だといいな」
さわ子「きっと大丈夫よ」
和「……感じるわ」
梓「何をですか?」
和「その方向に憂ちゃんがいる。……多分、唯もいるわ」
澪「本当か!?」
梓「あれ、何か変なものが見えてきましたよ」
澪「本当だ。……なんだあれ」
律「ピラミッドみたいだな。……まさか、あれはミイラの墓!」
澪「や、やめろよ。ミイラなんている訳ないだろ!」
和「……」
さわ子「和ちゃんが何か言いたそうに澪ちゃんを見ている……」
和「いや、別に何でも無いけど……」
澪「……あ」
律「どうし……この音は!」
梓「和さんの言ったとおりです! これは銃声ですね」
さわ子「……それにこれはムギちゃんのマシンガンの音ね。……そうすると堕辰憂と戦ってるのかしら」
和「でも、堕辰憂の姿が見えません。……私たちには見えないだけなの?」
澪「ここからじゃまだよく分からない……もっと近づいてみないと」
律「そうだな。皆、急ぐぞ!」
澪「……な、何か様子がおかしくないか?」
律「確かに……やっぱりあのでっかいタツノオトシゴっぽいやつの姿は見えないしな」
さわ子「あら、あそこにいるの唯ちゃん達じゃない?」
梓「ほ、本当だ! よかった、無事だったんですね」
和「いや……待って、何か変よ」
澪「だから様子がおかしいって私が言ったじゃないか」
和「そう。おかしいのよ。……どうして」
和「どうしてムギが唯達に向けて発砲しているの?」
律「な……!」
梓「ま、まさか」
さわ子「暫く足止めしていたのはこういう理由があったのね。……皆、今すぐ加勢しに行くわよ」
澪「加勢って……何をすれば」
さわ子「とりあえず憂ちゃんをとっちめればなんとかなるでしょ!」
和「安易な……と言いたいところだけど、それが一番良さそうね……!」
……
唯「うわぁ!」
憂「お姉ちゃん!」
唯「憂、手をはなさないでね!」
憂「う、うん!」
ダダダダダダダ
唯「と、とりあえずこのピラミッドの反対側に回らないと」
憂「う、うん。……でも、これからどうするの?」
唯「ど、どうするって言っても。……そうだ、あずにゃん達を元に戻したのはたしか石太のおかげだったよ!」
憂「じゃ、じゃあそれを紬さんにあてれば……!」
憂「……! お姉ちゃん、そっちに行って!」
唯「え?」
ダダダダダ
唯「あ、危なかった~……憂が教えてくれなかったら……」
憂「……やっぱり、私なら紬さんが何処にいるか大体分かるみたい」
唯「そ、そうなの?」
憂「うん。……とりあえず、暫くはそうやって何とかかわしていけると思うけど……」
唯「その間に、何かいい方法を考えなくちゃいけないんだね……」
憂「うん。……今のところは、やっぱりその……えぇと」
唯「石太!」
憂「……を使うことが重要だと思うけれど」
唯「そうだね。……それじゃあ、タイミングが大事だね……」
憂「うん。何とかして……。お姉ちゃん! 右から来てる!」
唯「わ、わかった!」タタタタ
紬「……」
唯「ム、ムギちゃんが怖い……」
…
澪「あれは!」
律「ム、ムギ!」
和「……どうやら、憂に操られてるみたいね」
さわ子「このままじゃお茶とお菓子が食べられないわ」
梓「そんなこと言ってる場合じゃ……」
憂『あ、やっときたんだ。……もう、待ちくたびれちゃったよ』
和「そう。それは悪かったわ。お詫びに一思いで終わらせてあげる」
さわ子「そして早くムギちゃんを元に戻してもらうわよ」
和「……そうね。ムギが今狙ってるのはあいては……大方予想がつくけど」
憂『はい、お姉ちゃんと憂ちゃんを殺すようにいいました』
梓「なっ!」
律「やっぱり、ムギも私たちと同じようなことしたんだな」
澪「同じようなこと……?」
憂『……まぁ、積もる話もあるでしょうけど。そんなに話してる時間もないでしょう?』
和「当たり前じゃない。……さっさとそこをどきなさい」
憂『いいですよ。私はどいてあげます。……私はね』
梓「あれ、どいちゃいましたけど……」
和「……そうね」
さわ子「あの変なでかいのを出してくるんでしょう? まったく意地が悪いと言うか」
律「と、とにかく。さっさと倒してムギを元に戻して」
澪「後は唯達を助けるだけだな」
憂『そうですね。それでは頑張って下さい』
『ゥゥゥゥゥゥゥゥウウウウウウウウウウウウウ!』
『ィィィィィィィィイイイイイイイイイイイイイ!』
憂『堕辰憂と蚕子相手に、ね』
律「にぃっ……!?」
澪「二匹いいい!?」
最終更新:2010年01月31日 00:48