唯「そ、そうなんだ。じゃ、じゃあ、コッチの方の憂もそうなのかな」

さわ子「あなたがここに現れたことで、今憂ちゃんが自殺することは無くなったかもしれないけど」

さわ子「結局同じこと、いつかきっと、自殺しようとするわよ」

『そんな。……それじゃ、私の努力は……』

さわ子「まぁ、無駄だったってことかしらね」

憂『そんな言い方ないじゃないですか!』

さわ子「じゃあどうしろって言うのよ! 唯ちゃんは助けられない憂ちゃんも助けられない! その状況下で何をすればいいのよ!」


憂「……私が、何とかすればいいんだと思います」


唯「憂! もう立って大丈夫なの!?」

憂「うん。……さわ子先生のおかげで、なんとか」

さわ子「そうは言っても、結構強く打ち付けられてたから、そんなにすぐすぐ治らないはずだけど」

憂「でも……こんな状況で、私一人眠ってなんていられないから」


『さわちゃん先生まで!』

さわ子「さっきも言ったけど、憂ちゃんは定期的にお姉ちゃん分を補給しないと生きていけない体なのよ」

憂『……』

唯「否定しないんだ!?」

憂『本当のことだから』

憂『……凄い、私の時は、ずっと眠ったままだったのに』

さわ子「何かが変わり始めたのかもしれないわ。……唯ちゃんの行動のおかげで」


憂「……私の血には、母体としての特殊なものが入ってるんですよね?」

さわ子「ええ、あなたに定期的に飲ませた薬が、その母体としての血を作るためのものだったから」

唯「薬?」

憂「多分、風邪薬のことだよ。……そうか、私の中でそういうことがおきてたから、風邪みたいな症状が出たんだね」

唯「へぇ~。……じゃあ風邪じゃなかったんだね! よかったぁ」

さわ子「いや、あんまりよくはないと思うけど」

憂「それで先生。私の血をここに居るお姉ちゃんにかければ、なんとかなるんですか?」

さわ子「いや、どうかしら。……正直、関係性が全く無いから、やっても無駄だと思うけど」

憂「でも、全くの無駄でもないんですね?」


憂『そういえば、人柱の理由は、その血を捧げる事が目的だったと、聞いたはずです』

さわ子「誰から?」

憂『外国の求導師さんが、そう言ってた気がします』

『私が見た本にも、そんなことが書いてあった気がする。でも、ある時だけは失敗したって書いてあったよ』

唯「ある時?」

『うん。……その人の血を、別の人に分け与えたときには、失敗したって……』

憂「……今のを聞いてみて、やっぱり、無駄じゃないみたいですね」

さわ子「で、でも……それでいいの? 可能性が無いとは云いきれないけど、薄い可能性に、あなたは自らを危険に晒すことができるの!?」


憂「できます。……だって、今から私が助ける人も、私のお姉ちゃんだから」


憂『憂ちゃん……』

『憂……』


唯「よーし、私の血も中の人にかけてあげるよ!」

さわ子「さ、流石に唯ちゃんの血は意味がないかなぁ。……って、あら」

唯「……石太が光ってる?」

『ういえん。……どうして今光ってるんだろう』

憂「そういえば、これ、って何なんですか? 敵を倒したりアンムギを武器にしたり……」

さわ子「これは。焔眞鍋と同じく、ずっと昔から私たちの手に渡ってきたものなの」

唯「ずっと昔から?」

さわ子「ループする世界にはかならずこれがある。……私も、内部構造を見ようと、頑張ってみたけど、詳しいことはわからなかった」

唯「よくわかんないけど、でも、これが今光ってるってことは!」

憂「これで何かをするってことだよね。……何をすればいいんだろう」

唯「よぉし、とりあえずボタンを押して……あれ? 押せない」

さわ子「ういえんは、必要な時、場所に応じて押せる押せないが変わるのよ。だから、押せないと言うことは、そこに向かって押すべきではないということね」

唯「そうなんだ。……それじゃあ、色々試してみよう。えいっ。えいっええぃ!」

憂「私に向かってでも、中のお姉ちゃんに向かってでもないね……」

唯「う~ん。それじゃあ、えいっ!」カチッ


シュゴオオオオオオオオオオォォォォォォウ!


唯「うわああああ!」

憂「お、お姉ちゃんに火が当たっちゃったよ!」

さわ子「おおお、落ち着きなさい! そもそもういえんは普通の人には特に意味が無いものだからきっとだだいじょうぼ」

憂『先生こそ落ち着いて下さい。……今ここで慌てても何も解決しません』

『憂、足がそわそわしてるよ』

憂『お姉ちゃんこそ、両手がそわそわしてるくせに』

憂「そんなことより! お、お姉ちゃん~!」

シュウウゥゥゥ


唯「うう……死んじゃったこと思った~」

憂「お、お姉ちゃん! 大丈夫!?」

唯「うん。……でも、なんでこんなことになったんだろう。……あれ?」

憂「どうしたの? お姉ちゃん」

唯「……こ、これから何をすればいいかが、なんとなくわかった気がする」

憂「本当!?」

唯「うん! 憂、協力してくれるよね!」

憂「勿論! お姉ちゃんのためなら、何でもするよ!」

唯「まず。……えっと、憂の血を中の人にかけてあげるんだけど」

憂「それぐらいなら大丈夫だよ」

さわ子「ちょ、ちょっと、本当にいいの!?

憂「お姉ちゃんが、そういう風にしようっていいましたから」

憂『なら、私も頑張らないとね』

さわ子「憂ちゃんはダメよ! さっきいった通り血を流しすぎてるじゃない」

憂『どっちの憂ちゃん?』

さわ子「聞かなくてもわかるでしょう?」

憂『……でも、私のお姉ちゃんを助けるのに、私だけ何もしないで見てるだけなんて嫌だから』

さわ子「……あぁもう、そこまでいうなら私も手伝うわよ」

唯「あ、さわちゃんの血はいらないって」

さわ子「より好みしないの~!」


唯「……さぁ、皆。刃物は持った?」

憂『うん。……持ったよ』

憂「持ったけど、……ちょっと怖い、かな。やっぱり」

『……でも、本当にいいの? 私は、別にこのままでもいいから』

唯「このままピラミッドの中で生活なんてしてたらミイラになっちゃうよ!」

『いや、ミイラにはならないけど……』

唯「それに、ういえんの火が私に当たったんだから、多分こうしろってことなんだよきっと!」

『憂や、憂はいいの?』

憂『なんだかややこしいけれど、私はお姉ちゃんを助けたいから、そのためなら、どんなことでもするよ』

憂「私も、お姉ちゃんを救うためにお姉ちゃんがすることだから、気にしてないよ」

さわ子「なんて面倒くさい会話なの……。唯Aとか憂Bとかつければわかりやすいのかしら」


憂『ところで、私たちの血をお姉ちゃんにかけたらどうなるの?』

さわ子「今いったお姉ちゃんはピラミッド内のお姉ちゃんね」

唯「そしたら、私が中の人と同じかっこうで重なるんだって」

憂「って、ことは。……私の血が、結果的にお姉ちゃんにもかかるってこと……!」

さわ子「今のお姉ちゃんは、ういえんを持ってる唯ちゃんのことね」

憂『……さわ子先生』

さわ子「だってこうでもしないと、自分自身でもどっちがどっちだかわからなくなってきちゃったのよ!」


唯「ともかく。早くしないと決心が鈍っちゃうからね」

憂「でも、血を出すっていっても、どこから出せばいいんだろう」

憂『よくありがちな、腕からとかかな』

唯「い、痛そう……」

憂「で、でも、注射の要領でやれば何とか……」

唯「注射……!」

憂「あ、ご、ごめんね! 注射苦手だったよね!」

さわ子「今から体を切りますっていうのに注射ごときでまごまごしてちゃ先が思いやられるでしょ」


『そういえば、私はどんなポーズでいればいいんだろう。……同じかっこうで重ならないとダメなんだよね』

唯「うん。そうしないといけない気がするから」

『う~ん。せくしーぽーずとか?』

唯「あ、いいかもしれない。……こう、腕を頭に回して……」

『膝を折って……』

憂憂『可愛いよ! お姉ちゃん!』

さわ子「いいからやるなら早くやりなさいよ!」

唯「それじゃ、せーのでやるよ」

憂「うん」

憂『わかったよ、お姉ちゃん』

『それじゃ、私は普通の立ちポーズでいるね』



『せーのっ』


スパッ……!


唯「痛っ!」

憂『……っ!』

憂「うう、でも、まだ何とか……」


ダラ……


憂『……まだなの?』

唯「まだ、……私たちの血が中の人を完全に覆うくらいに!」


憂『……』フラッ

唯「! さわちゃん先生!」

さわ子「わかってるわ! ……顔が青くなってる、もう限界ね」

憂『まだ……』

さわ子「ここまで血を流して喋ってるのがびっくりするくらいなの。後はあの二人に任せなさい」


唯「うう、今度から献血はやりたくないよ」

憂「あ……はは。お姉ちゃん、らしいや」

唯「憂、大丈夫?」

憂「うん。お姉ちゃんこそ、大丈夫?」

唯「大丈夫。……もう少しだから」

ダラダラ……

唯「うん、こんなところで大丈夫だよ、憂。……後は離れてて」

憂「うん。……お、お姉ちゃんが、私の血で体中が塗れて……」


さわ子「おーい、憂ちゃん。間違っても鼻からは出さないでね~」

唯「行くよ、中の人!」

『うん、外の人!』

『えぇーい!』


ガベチョッ



さわ子「……何と言うか、シュールな図ね」

憂「ピラミッドなので、表面が斜めになってますからね……」

さわ子「その血溜まりにへばりつく唯ちゃん。……シュールすぎるわね」

憂「お姉ちゃんが、私の血で一杯に」

さわ子「間違っても変な趣味に目覚めないでね、憂ちゃん」

憂『……あれ、何か、光ってません、か?』

憂「あ、本当だ。お姉ちゃんが光ってます!」

さわ子「というより、あのピラミット事態が光ってるわね。……も、もしかして、あの光を受けたら記憶を失うんじゃ!?」

憂『!? お、お姉ちゃん!』


唯「……ダジョ……コレカ……」


さわ子「何かもごもごいってるわよ!?」

憂「お、お姉ちゃん、間違って血を飲まないように気をつけてね!」

シュゥゥゥゥゥゥウウウウウ!


憂『光が強くなった!』

さわ子「なんだかよくわからないけど、なるようになりなさいもう!」


シュウウウウウウウウウウウウウウウ!




さわ子「……ど、どうなったの?」

憂「分かりません、まだ目がチカチカして……」

憂『あ、あれ……影が、二つ……?』


唯「もーいーよ!」

さわ子「あ……」

憂『お、……お姉ちゃん!』

唯『えぇと。……憂、なんとか、この世界に戻ってこられたけど。えぇと……』


憂『おかえり……お姉ちゃん』

唯『……うん。ただいま、憂』



さわ子「……なんだかよく分からないけど、唯ちゃんはちゃんとこの世界に戻ってこられたのね」

憂「……きっと、それも。皆のおかげなんですよ。ね、お姉ちゃん」


唯「うん!」



憂「お、お姉ちゃん! 血がべっとりついてるうう!?」

さわ子「血はつきっぱなしなの!? せっかくの感動の再会なのに台無しよ唯ちゃん!」

唯「お風呂入りたい……」

唯『なんか、ういえんだとか憂の血だとかご都合展開だとかで戻ってくることができました』

さわ子「うん。最後のは言わなくてよかったかなぁ」

憂『お姉ちゃん!』

唯『妹~!』


唯「……変わった姉妹だね」

憂「え?」

唯「でも、とっても仲が良さそうだね」

憂「……うん!」


さわ子「さぁさぁ。やるべき事をやったんだから、後はここを出るだけね。……さぁ、さっさとこんな場所から……」



ガラ、ガラララガラララララ!


憂「あ、あの! なんだか凄い嫌な音がするんですけど!」

さわ子「やばっ! 皆、早くここから脱出するわよ! じゃないと崩れるこの世界に巻き込まれるわよ!」


上空

さわ子「さて、皆にはこれからやって欲しいことがあるの」

和「やって欲しいこと?」

さわ子「ええ。……実は今、ムギちゃんのお家にはタイムマシンがあるわ」

澪「え? でも、それって壊れてて使えないんじゃ」

さわ子「私が、最初何もしてなかったのは、実はそれを修理するため。……つまり」

律「おー、それじゃ、使えるようになったんだな」

さわ子「まぁ、多分」

澪「多分?」

さわ子「いや、色々な勉強してからというもの、絶対という言葉をあまり軽々しく使えなくなっちゃったのよね」

律「それ、聞かされてるがわからしてみると結構怖いんだけど」

さわ子「まぁ多分大丈夫よ。……それで、それを使ってして欲しいことがあるの」

梓「なんですか?」


さわ子「過去に行って、この事件を起こさないようにして欲しいの」

和「……そんなことしていいの? というより可能なの?」

さわ子「今回の事件を起こそうとしたのは憂ちゃんだけど、鍵となる存在はムギちゃんのお父さんよ」

紬「!」

さわ子「あとは、……そうね、私の彼を助け出したら私もきっと手助けすると思うから」

澪「そ、それを私たちがやるのか?」

律「そういうことだろ、まったく、難しいことをさらっといってくれるなぁ」

梓「先生は、いかないんですか?」

さわ子「私は、別にやることがあるから」

和「……それは、唯に関係あること?」

さわ子「勿論」

和「そう、ならいいわ」


斉藤「お嬢様方、屋敷につきました」

紬「わかったわ」

さわ子「タイムマシンはムギちゃんのお父さんの部屋の本棚の隠し扉の……」

和「間怠っこしいわね、後で屋敷の人に聞くから、あなたはさっさと自分のやるべき事をやりなさい」

さわ子「なんだろう。私今後和ちゃんに弄られっぱなしな気がする」

和「……まぁいいわ。それじゃ、私たちはさっさといくわよ」

澪「え、ほ、本当に行くのか!? もし、戻れなくなったら……」

律「その時は私がずっと側にいるから、それで満足しろ!」

澪「律……」

紬「大満足!」

梓「え、な、何がですか!?」


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最終更新:2010年01月31日 11:59