憂『ちょ、ちょっと待って! そんな事になったら、私たちは永遠に同じことを繰り返さなくちゃいけなくなるんだよ!』

唯「そもそも、事の始まりって何なの?」

憂【えぇと。……えぇと?】

唯【憂が考えてわからないんだったら、私もわかんないよ】


憂『この世界はループしている。私が計画を立てて、それを実行して、それを止めて。自殺して、過去に戻って。計画を立てて……』

唯「そ、それじゃあ、元に戻しようがないよ!」


憂『……』チラッ

憂【……】コク


憂『ねぇ、お姉ちゃん、それに憂ちゃん。一つ、聞いて欲しいことがあるの』

憂【私たちはね、お姉ちゃんに会えただけで幸せなんだ。……それ以上のことは望まないよ】

憂『お姉ちゃんより歳を取ってるのは少し悲しいけど』

憂【それでも、お姉ちゃんに会えた事に比べればささいなことだよ】


唯「えっと、つまりどういうこと?」

憂「もしかして……」

憂『うん。私たちは、もうこのままでいいよ』

憂【これだけで、私たちは幸せだから】

憂「で、でも。……お姉ちゃん達は、それでいいんですか?」

唯『私は、憂がいいって言うなら、不満はないよ』

唯【私たち自身は、あんまり変わってないからね。……憂がこのままでいいって言うなら、大丈夫】


唯「……それじゃあ、これで終わりなの?」

憂『ううん。確かに、これで終わりのように見えるけど。……多分、まだ終わってない』

唯『……私たちはね、騒動が終わった後、突然光に包まれて終わったんだ』

憂【そして、その光が消えた後、私たちはこの騒動の記憶を失っていたんだよ】

唯【……そして、その光はこのピラミッドから出てきたんだ】


憂『ループの起因。それらをなくして、ピラミッドを壊せば、多分全部終わると思う』


唯「ループのきいん?」

憂【うん。……ずっと昔から使いまわされてきた、というか。そういうものがあるでしょう?】

唯「えぇと、ずっと昔からあるものといえば……」

憂「ういえん……」

唯「おお、石太!」

憂『それと、焔眞鍋もだね……。これら二つをこの世界からなくし、ピラミッドも壊せば、多分』

憂【今後、この事件が起こることはなくなる。……と、思う】


憂「それに、私たちの体に流れてる、母体としての血も消さないと」

唯『それは多分、ういえんでなんとかなると思う』

唯「ういえんって凄いねぇ」

憂【ういえんというのは元々別の物だったのですが、それを紬さんのお父さんが人間でも扱えるように改造したものなんです】

憂『そして、その効力は、ゾンビとしての血だけを消すことができる。……そういうものなんです』

憂「そうだったんですか」

憂『最初に見つけたときは、あちこち壊れていたんですけど、紬さんのお父さんが直してくれて』

憂【自分でも不思議なくらい簡単に直せた。……って言ってましたね】


唯「それじゃあ、早速これを憂達に向けて撃てばいいんだね」

唯『三つあるから、それぞれ自分の妹に向けて撃てばいいと思う』

唯【よぉし、それじゃあ行くよ~!】


『それ!』カチッ


シュゴオオオオオオォォォォォォォ……


憂「こ、これで、元に戻ったのかな。……よくわからないけど」

憂『でも、なんとなく。心の鎖が解かれた感じはすす……』

憂【そうだね】


唯「おかえり! 憂」

憂「ただいま、お姉ちゃん。……別に何処に言ってたわけでもないけど」

唯「心境としては、きっとそんな感じだから」

憂「そう……だね。ありがとう、お姉ちゃん」



唯【そういえば。……さっきからピラミッドが振動してるんだけど】

唯『それは……早くピラミッドを壊さないと駄目みたいだね……』

唯「でも、どうやって壊せばいいんだろう」


憂「お姉ちゃん、焔眞鍋貸してもらっていいかな」

唯「うん。いいけど。……それで壊せるの?」


憂「皆さん、離れていた方がいいと思います」

憂『えぇと、大丈夫なの?』

憂「はい。……多分、穴をあけるくらいは大丈夫だと思いますから」

唯【でも、穴をあけるだけじゃ……】

唯「大丈夫。憂を信じよう」


憂「……」スウゥゥゥ


憂「えーい!」ガズッ


ピキピキ……パキン


唯「おお、ちゃんと穴が開いたよ!」

憂【でも小さい。……何度かやれば壊れるだろうけど、その前に焔眞鍋が壊れちゃう】

憂『本当だ。これだけで刀身にひびが入ってる……』


憂「いえ、これでいいんです。……後は……」

カチッ

憂「……」スタスタ

唯「ええと、憂。何をするつもりなの?」

憂「うん。後は、この焔真鍋をあそこの隙間に投げればオッケーだよ、お姉ちゃん」

唯『でも、あんな小さな隙間に投げられるの?』

憂「……この作戦の唯一の懸念はそこですけど、何回もやればなんとかなるかなって」

憂『あの隙間に、何かを埋めていたよね。何を埋めたの?』

憂「それは……後々になればきっとわかります」


唯「よーし、トップバッターは私だよ!」

憂「お姉ちゃん。投げる側だからバッターとは言わないよ」

唯「あ、そうか。それじゃトップピッチャーは私!」

憂【なんだかゲームしてるみたいだね】

憂『緊張感なんていらないんだと思う。……それがお姉ちゃんの自然体だから』

唯「それじゃ、平沢唯選手、……振りかぶって……、投げたー!」


ガチッ!


ドオオオオオオォォォォォォォォン!



憂「い……一発で」

唯「入っちゃった……」

憂『というより爆発した!? 何で!?』

唯【焔真鍋って、狭いところに入ると爆発するんだ……】

憂【間違いなくそんなことはないと思うよ!】


憂「ありがとう、梓ちゃん」

唯「……あ、もしかして!」

憂「うん。梓ちゃんから貰った爆弾だよ。……まさかこんな形で使用するとは思わなかったけど」

唯「お~、あずにゃん大活躍だね」


唯【……ピラミッドが】

唯『完全に、壊れちゃった、ね』


唯「すごいよ憂!」

憂「え? で、でも。壊したのは事実上お姉ちゃんだから!」

憂『いやいや、アイデアを出したのは憂ちゃんなんだから。ここは憂ちゃんが誇るべきだよ』

唯【私たちの妹はこうして成長して行くんだねぇ】

唯『将来安泰だね』


唯「よーし、憂。今なら何でもお願いを聞いてあげるよ!」

憂「な、な、な、何でも!?」

唯「うん。だって憂、頑張ったから!」

憂「な、なんでもいうことを聞いてくれる! お、お姉ちゃんが何でもいうことを……!」

憂『私はこうして成長して行くんだね』

憂【将来有望だね】


憂「だ、抱っこがいいかな? で、でも。せっかくなんだから、ここはもっといいのを……!」


唯『あとは、ういえんを壊すだけなんだけど』

唯【焔眞鍋は爆発に巻き込まれてばらばらになったしね】

憂『これを壊せば。全部終わる』

憂【うん。……思えば、何だかんだで長かったなぁ】

唯「一週間以上かかった気がするよね!」

憂「え?」


唯「……そして、例に漏れず。ういえんが光ってるね」

唯『私のも光ってるよ』

唯【私のもだ。……今が使うときなんだね】


憂「でも、どの方向に向かって撃つんだろう」

唯「……なんとなくだけど、こう、かな」

唯『うん。私もこうだと思う』

唯【やっぱり皆そうなんだね】


憂「縦一列にういえんを並べて、どうするの?」

唯「こうするの」カチッ

唯『こうするの』カチッ

唯【こうするんだって】

シュゴオオオオオオォォォォォォ
シュゴオオオオオオォォォォォオ

バシュッ

シュゴオオオオォォォォォ
シュゴオオオオォォォォォ


憂「梓ちゃんいないから私が言うけど。最初に左右からういえんを真ん中のういえんに撃ったんだ」

憂『そうしたら、真ん中のういえんが光って左右のういえんに火を反射したみたい』

憂【……火が収まったら、そこには何もなくなっちゃったね】


唯「おお、なんというわかりやすい解説!」

唯『まぁ、それはともかく。これでループのきいんは全部消したね』

唯【それで。……これが終わったら何が起こるんだろう。……ん?】

唯「あ、あの~。何か物音がするんだけど~……」


ドォォォォォォ


憂「ま、まさか。またこの世界が崩れるんじゃ!?」

唯『わからないけど、皆捕まった方がいいと思う!』

憂【お姉ちゃん!】

唯【憂!】


ドォォォォォオオオオ


唯「あ……あれみて!」

憂「津波……そ、それも凄く高いよ!」


ドオオオオオオオオオオオオオ!


唯『赤い……』

憂『お姉ちゃん、しっかり捕まっててね!』


ドオオオオオオオオオオ!


唯「この色って、あの場所のだよね」

憂「う、うん。……でも、どうしてここに津波が」

唯『わからないけど、とにかくお互い抱き合って話さないように!』

唯【憂、大丈夫? 苦しくない?】

憂『……お姉ちゃんに抱きつかれてるよ~』

憂【お姉ちゃんの匂いがするよ~】


唯「来るよ!」

憂「!」


ドオオオオオオオオオオオオ!

ザッパアアアアアアアアアアアアン……!


唯(……う、うい! ……ダイジョウブみたい。ちゃんと私に抱きしめられてるから)

唯(……うう、息が続かない。……)

唯「……がばごぼ」

唯(……しゃ、しゃべれないけど、息はできるみたい。……ふ、不思議なところだなぁ)

唯(そうだ、唯ちゃんや憂は!?)


唯【……】

憂【……】

唯『……』

憂『……』


唯(よかった。みんなちゃんと抱き合ってて離さないようにしてるんだね)

唯(……あれ、唯ちゃんが私に何かを伝えようとしてる?)

唯『 り   』

唯【  事       げ 】


唯(何を言ってるか聞こえないけど。……でも、何が言いたいかは大体わかったよ)

唯(……なんだか、眠くなってきちゃったなぁ)

憂「お   ん」

唯(うい……)


憂「おやすみなさい」

唯「うん。おやすみ」







ザザザザ……


……

澪「……」

律「……んぅ」

梓「……せ、せんぱい……」

紬「おとうさま……かいじょ……」

澪「……ん、んん」

律「……ぉ。……ふわ~ぁ。よく寝た~……気がする」


律「ん? おい、澪。起きろ!」

澪「まだ……あと何分か……」

律「いいから! 早く起きろって。澪! 澪ちゃん! みおみお!」

澪「……すぅ……」


律「……怨念」

澪「うわぁ! ……び、びっくりした。……ってあれ、律?」

律「おはよう、よく眠れたか……」ヒリヒリ

澪「……何で額をさすってるんだ?」

律「お前が勢い良く起きたからだよ」

澪「……? そ、それより、他の皆は!?」

律「そこで寝てるだろう。……起こさないと」



律「ムギ~、起きろ~。部活始めるぞ~」

紬「う~ん……ぶかつ……。ふぁ、おはようりっちゃん」

律「おう、起きたか」

澪「梓! 起きろ! 早くしないと……えぇと、何か怖いものが追っかけてくるぞ!」

律「子供を起こすんじゃないんだから……」

澪「う、うるさい!」

梓「……ん、んん~! はぁ。よく寝ました」


律「よし、皆起きたか」

澪「ああ。……それにしても、ここって」

紬「私たちの、部室よね……」

澪「そうだ、和は何処にいるんだ!?」

梓「それに、先生も何処にいるか気になります……」

紬「……そもそも、私たち、何がどうなってここに……」

律「覚えてる限りだと……ムギのお父さんを説得して、さわちゃんも何とか説得して……」

澪「タイムマシンにのって、帰る最中に……」

梓「タイムマシンのトラブルが起こって……気がついたらなんだか周りが赤いところにいて……」


和「目が覚めると、部室に居たのね」


紬「和ちゃん!」

澪「和! 無事だったのか」

和「ええ。……私の場合は、生徒会室で目がさめたけど……」


律「ん? ……おい和。ちょっと脱いでくれ」


澪「!?」

紬「!!」


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最終更新:2010年01月31日 12:06