唯「あー、忙しい忙しい……」

純(唯先輩が頑張って働いている……)

唯「時間帯によって人の入りが全然違うよ~」

純(家では憂に頼り切りで、だらし無いと聞いていたけど)

唯「あっ、いらっしゃいませー!」

純(こんな唯先輩を見たら、憂は嬉しくて発狂するんじゃないかな?)

唯「ふう……」

純(写メって憂に送ろう)

唯「ん?」

純(ああ、唯先輩動かないで!
 ベストショットを撮らせてください!)

唯「おお、いらっしゃい!」

純(今だ!今しか撮れるタイミングは無い!)

憂「盗撮はいけないよ、純ちゃん」

純「ういょええええ!?」



第二十七話「罪には罰を」‐完‐



純「憂、いつの間に!?」

唯「さっき来たんだよね?」

憂「うん、お姉ちゃんは気づいてくれたね!」

純(音も無くカメラの前に現れたんですが)

憂「それよりも純ちゃん。
 盗撮は良くないよ、めっ!」

純「うう、ゴメンなさい」

憂「きちんと許可を取ってから撮るんだよ?」

純「わかったよ」

憂「私の」

唯・純「憂の!?」



第二十八話「肖像権の行方」‐完‐



唯「憂、普通必要なのは私の許可だよね?」

憂「普通はそうだね」

唯「でも憂は憂の許可が必要だって言ったよね」

憂「だって約束したんだもん」

唯「約束?」

憂「お姉ちゃんが」

唯「うん」

憂「私のものになるって」

唯「してないしてない、絶対してない」

憂「お姉ちゃんとはしてないよ」

唯「まず私以外とする約束じゃない」

憂「お星様としたんだよ」

唯「ましてや無生物としてはいけない」

憂「まあ、そんな冗談は別として」

唯「やっとスタート地点に戻れたね」

憂「お姉ちゃんは私のものである、という前提で話を進めるね?」

唯「スタート地点を間違えてるよ」



第二十九話「スタート以前の苦闘」‐完‐



純「憂、いい加減タチの悪い冗談は止めなよ」

憂「純ちゃんにはわからないと思うけど、このやり取りには秘密があるんだよ」

純「え?」

憂「お姉ちゃんは、こういう理解不能な状況に立ち会うと」

憂「……覚醒するんだよ!」

唯「呆れてるんだよ」

憂「この時のお姉ちゃんの受け答えがね、とってもクールでカッコイイの」

純「まあ確かにダラダラしてる唯先輩とは一味違うけど、呆れてるみたいだから」

憂「でしょでしょ?だから定期的にクールお姉ちゃんを見るために、わざとこんな冗談を言ってるんだ~」

憂「まあ、いつものお姉ちゃんも素敵だよ?
 でもクールお姉ちゃん、通称かっこ唯お姉ちゃんはいつもとは違った魅力を備えてるんだよ……!」

純「……ねえ、憂」

憂「何?」

純「唯先輩がクールを通り越して、ドン引きのフリーズドライしてるよ」

唯(高校を卒業したら一人暮らしをしよう、絶対に)



第三十話「そうだ、一人になろう」‐完‐



唯「とりあえず憂はお客さんなんだよね?
 席に案内するから、ついてきて」

憂「お仕事してるお姉ちゃん、カッコいい……!」

純「……ふぅ、やっと行ってくれたか」

純(憂のお姉ちゃん好きがここまでとは……。
 学校で散々聞いていたとはいえ、実際に見ると違うんだな~)

梓「純~!」

純「ん、何?」

梓「店長がスタッフルームに来いだってさ」

純「えっ……」

純「この店って、店長いたの!?」

梓「流石にそれはないと思う」



第三十一話「店長、勝手に死す」‐完‐



 ‐スタッフルーム‐

梓「店長、呼んできました」

さわ子「うん、御苦労さま」

純「店長、初めまして」

さわ子「あなたが鈴木純さんね、話には聞いているわ」

梓「えっ、本当に初対面なの?」

純「私は紬さんに採用されたからね。
 “今日の店長は準備で忙しいから、私が代わりに”って」

さわ子「そうそう、最近になって落ち着いてきたんだけどね」

梓「つまり、その準備はあらかた終わったってことですか?」

さわ子「ええ。それに今回二人を呼び出したことと、その準備には関係があるのよ」

純「それで、用件とは一体?」

さわ子「これを見てもらえるかしら?」

梓「これって……えー……」

純(コスプレ……だよねえ……)

さわ子「後はわかるわよね?」

梓「はい、あとはこの職場を辞めるだけですね」



第三十二話「No, Thank You!と言う勇気」‐完‐



さわ子「えー、どうして辞めるの?」

梓「コスプレを着たくないからじゃないでしょうか」

さわ子「可愛いのも一杯なのよ?」

梓「わあ、可愛い。今までありがとうございました、さようなら」

さわ子「このメイド服なんて特にオススメなのに!!」

純「本当に止める気あるんですか」

純「まず、そんなフリフリなものは私でも恥ずかしいですよ」

さわ子「……わかった、フリフリしてなければいいのね」

純「いえ、そういうわけでは」

さわ子「というわけで全然フリフリしていない、これを着させてあげるわ!」

梓「これはスクール水着です」

さわ子「全然フリフリしてないわよ?」

梓「根本的に解決していません」

さわ子「もう、二人とも贅沢なんだから」

純「正当防衛と言ってほしいですよ……」

さわ子「あっ、警察服もあるのよ?」

梓「純、この人を警察に引き渡すから手伝って」



第三十三話「この人にピンときたら110番」‐完‐



さわ子「ひ、ヒドイわ梓ちゃん……!
 そうやって私を脅迫しようとするのね!?」

梓「勝手な勘違いで濡れ衣を着せないでください」

さわ子「濡れ衣……。濡れたワイシャツというのもアリね!」

梓「勝手にレパートリーを増やすのも止めてください、どれも着ませんから」

梓「というか、反省の色全く無しですか。
 本当に此処の仕事辞めますよ?」

純「まあまあ梓、いきなり辞めるなんて言わないでさ……」

純(ん、待てよ)

純(ここで梓が辞めれば、私の給料が取られることは無くなるんじゃ?)

純(そうだ、絶対そうなんだ)

純(よって私の給料は今の二倍になって、時給425円労働から解放される!)

純(グッバイ、時給425円!ハロー、時給850円!)

純(……)

純(冷静に考えてみよう)

純(今、梓が仕事をしているのは梓自身の厚意であって、お金のためではない。
 だから梓がここで仕事を辞めても、私との契約は解除されない)

純(つまり私の給料は一切増えない)

純「ちくしょう!!」

梓「いきなり何!?」



第三十四話「押してダメなら引いてもダメ」



梓「大体、此処はコスプレで接客するようなお店じゃありません。
 健全かつ、閑古鳥も鳴くことをお休みする程のお店なんですよ」

さわ子「二番目の情報はいるのかしら」

梓「とにかく、私はコスプレなんてする気はありません」

さわ子「でも、あの二人はわかってくれちゃったんだけどなあ」

純「あの二人って、まさか唯先輩と紬さんですか?」

さわ子「そう、ホールスタッフの二人ね」

純「紬さんは謎が多いから置いておいて、唯先輩は意外だなあ。
 可愛いもの好きだとは聞いてるけど、こういうものには冷ややかな目を向けそうだし」

梓「唯さんはどんな風に了承したんですか?」

さわ子「えーとね、こう言っていたわ。
 “お姉ちゃんなら大丈夫です、何でも着せちゃってください”って」

純「それ憂ですよね」

さわ子「知ってるわよ」



第三十五話「本人は何も知らない」‐完‐



梓「本人の了承無しに事を進めてるんですか!?」

さわ子「んー、まあ後で説明すればいいでしょ」

梓「そんなことは無いと思いますけどね」

さわ子「そんなわけで、二人とも早く着替えてね」

梓「どんなわけですか」

さわ子「これは業務命令よ?
 業務上のことなら、嫌なことも引き受けなくてはいけない……」

さわ子「これが社会の厳しさよ!」

梓「ただのセクハラだと思います」



第三十六話「それは業務命令ですか?」‐完‐



さわ子「セクハラじゃないわ、これは立派な業務なのよ」

梓「そんな業務をするファミレスがどこにあるんですか……」

さわ子「ここ以外には見たことが無いわね」

梓「わかっててやってるんですか、余計にタチが悪い」

純(……やばいよやばいよー!)

純(この流れは否が応でもコスプレさせられる流れだ)

純(こうなったら仮病で早退して、この場を切り抜けるしかない……!)

純(まだだ、まだ口を開くな……タイミングを計るんだ!
 3……2……1……!)

紬「あら純ちゃん、仮病で早退なんてしないでね?」

純「はは、何を言ってるんですか!
 朝から元気過ぎて困ってるぐらいですよ、ちくしょう!!」



第三十七話「否が応でも承知しました」‐完‐



純「って、紬さんいつの間に!?」

紬「ふふ、そろそろ始まるもの」

純「何がですか?」

紬「このお店、最大のイベントよ」

さわ子「ムギちゃん、唯ちゃんは呼んでくれたかしら?」

紬「はい、あと少しで来ると思います!」

さわ子「ありがと。ふふ、ついにこの時が来たのね」

梓(嫌な予感しかしない)

唯「あのー……」

梓(ああ、これでホールスタッフが全員集まってしまった)

純「あっ、唯先輩こっちです!」

唯「純ちゃんと梓ちゃんも呼ばれたんだ?」

純「私たちは大分前に呼び出されてましたけどね」

唯「一体これから何が始まるの?」

純「あえて言うのであれば、公開処刑です」



第三十八話「無情な宣告」‐完‐



唯「純ちゃん、私の理解が追いつかないよ」

純「これは物の例えってやつです」

唯「処刑に例えられてる時点で惨いよね」

純「確かにそうですね」

さわ子「処刑に例えるなんて失礼しちゃうわ。
 実際はそんなこと無いの」

さわ子「ただのコスプレサービスタイム、略してKSTをしてもらうだけよ」

唯「名前聞いただけで寒気がしてきました」

さわ子「確かにゾクゾクしてくるわねえ……」

唯「そういうことじゃないです」

唯「しかもコスプレの頭文字は“C”です」

さわ子「細かいことはいいのよ。
 それじゃあ、CSTの概要について説明するわね」

純(直した……)

梓(直した……)

紬(直した……)

唯「直しましたね」

さわ子「細かいことはいいのよ!!」



第三十九話「人の振り見て我が振り直せ」‐完‐




さわ子「CSTはね、ホールスタッフが様々なコスプレをして接客することサービスなの」

さわ子「どのコスプレを着るかは、自由に選べる。
 種類はライトなものからコアなものまで、幅広く扱っているわ」

唯「何でそんなものが揃ってるんですか」

紬「お仕事を返上して店長が毎日頑張って作ってるもの」

唯「返上する方向が逆です」

紬「唯ちゃんには何を着せましょうか?」

唯「話を進めないでください」

さわ子「そうねえ、唯ちゃんはバーテーンダーの服を着させてあげるわ」

唯「着れるものは私が自由に選べるんじゃないですか」

さわ子「私が自由に選べるのよ」

唯「そんな独裁体制ありですか」

唯「まあ、バーテンダーならカッコいいで済むからいいですけど……」

さわ子「よしよし、ムギちゃんはお着替えの手伝いをしてちょうだい」

紬「わかりました!
 さあ唯ちゃん、着替えるからついて来て」

唯「私一人で着替えますよ」

紬「私について来て?」

唯「ですから」

紬「私の前で着替えて?」

唯「それが目的なんでしょう」



第四十話「ノリに乗る鼻息とともに」‐完‐



さわ子「さて、と……次は純ちゃんね」

純「余命宣告を受ける一分前って感じですよ」

純「まあ、普通に可愛いやつならノープロブレムの大歓迎なんですけどね」

さわ子「そうね、清掃要員なんてどうかしら?」

純「それで納得するとでも思ったんですか、あなたの頭は」

梓「モププッ……」

純「笑うな、モップ言うな」

さわ子「それならいっそのこと、可愛いモップコスなんてどうかしら?」

純「何でそんなコスプレがあるんですか、どんな客層にニーズがあるんですか!!」

さわ子「必要なのはニーズじゃないわ、愛よ」

梓「その愛護心で私たちを守ってほしいものです」



第四十一話「必要なのは愛とモップ」‐完‐



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最終更新:2012年06月02日 21:29