純「せめて人にしてください、ただし清掃要員以外でお願いします」

さわ子「それならこうしましょう。純ちゃんは犬耳、梓ちゃんは猫耳をつけるの!」

純・梓「はっ!?」

梓「何でここで私に飛び火するんですか!?」

さわ子「選択肢は二つよ。
 純ちゃんが清掃要員になるか、犬耳をつけるか」

さわ子「後者の場合は、梓ちゃんに猫耳をつけさせるわ」

純「唯先輩が羨ましい選択肢だよ」

梓「これは迷わず清掃要員だよね、純!」

純「迷うよ」

梓「私は迷わないなあ」

純「そこは迷ってほしいところだったよ、梓だから期待してなかったけど」

梓「それなら問題ないよね?」

純「うーん……あ、そうだ店長。
 清掃要員には清掃用具が必要ですよね?」

さわ子「そうねえ」

純「それなら私が清掃要員の格好をしたら、梓はモップになるべきではないでしょうか」

梓「えっ」

純「用具があってこそ、清掃要因は仕事が出来ると思うんです」

梓「ちょっと純さーん、あなた何を言ってるのかわかってるのかなー?」

純「わかっててやってるの」

さわ子「……そうね、そうしましょう」

梓「うわあああ、純の馬鹿ーーー!!」



第四十二話「Mop or Cat?」‐完‐



唯「で、結局二人とも犬耳と猫耳を選んだと」

梓「うう……純の馬鹿」

純「まあそういうわけです」

唯「猫耳梓ちゃんに比べて、犬耳純ちゃんは落ち着いてるね」

純「慣れました」

唯「早すぎない?」

純「順応性に優れてるとよく言われますので、純だけに」

唯「うーん、30点」

純「結構厳しいですね」

梓「その順応性とメンタルの強さを分けて欲しいよ、本当に」

梓「それにしても似合いますね、唯さんのバーテンダー」

唯「そうかな?」

梓「いつもより引き締まって、カッコよく見えます」

唯「本当?ありがとね~」

純「ちょっとヘアピン外してみてくださいよ」

唯「え?」

純「あと、このヘアアイロン貸してあげますから、ストレートにしてみてください」

唯「え?え?」

純「自分でやらないなら、私がやります。
 覚悟してくださいね」

唯「ちょっと純ちゃん、怖いよ?」

梓「純は唯さんだけがカッコイイ格好出来て羨ましいんです」

梓「だから髪型だけでも、いつもの唯さんからは考えられないものにしたいんじゃないんですね」

唯「つまり」

梓「嫉妬です」

唯「……やけにストレートだよ!!」



第四十三話「ストレート勝負」‐完‐



唯「はあ」←ストレートにされた

純「……」

唯「純ちゃん、ちょっと強引だよ?
 髪を痛めるかもしれないのに」

純「……」

唯「純ちゃん?」

純「カッコよすぎます」

唯「へ?」

純「唯先輩カッコよすぎです!
 恥ずかしがらせようと思ったら逆効果でしたよ、見てるこっちが照れるカッコよさですよ!!」

唯「そんな大袈裟な」

純「ご謙遜せずに、じゃんじゃん前に出てきてください!
 本当にカッコイイんですから!」

唯「それほどじゃないってば」

梓「いや、正直自慢していいレベルのカッコよさですよ」

唯「うーん……そこまで言われると、こっちが恥ずかしいよ」

純「それが狙いですから」

唯「謀ったね、純ちゃん」

純「計画通りです」



第四十四話「策士、策に溺れると見せかける」‐完‐



純「実際カッコいいことは事実なんですけどね。
 唯先輩が羨ましいです」

唯「そ、そうなの?」

純「それに比べて私はこれですよ。
 犬耳と、犬の尻尾が付いたウェイトレス服」

梓「普通に恥ずかしいです」

唯「うーん、でもさ」

唯「二人とも恥ずかしがる必要なんてないよ」

純「何でですか?」

唯「さっきチラッとホールの方を見てきたんだけど、お客さんが全員女性なんだよね」

梓「あっ、そういえば」

梓「紬さんが門前に近づかせる前に男性客は排除したとか言ってました」

唯「そこまで言ったかは疑問だけど、紬さんのおかげなんだね」

唯「これはつまり、私たちへの配慮なんだよ。
 女の子同士で可愛い格好して、女の子同士で盛り上がればいい」

唯「CSTって、そういうイベントなんだと思う」

純「なるほど……」

梓「何かちょっとだけ、前向きになれるような気がしました」

唯「それにね、今の二人はとっても」

唯「……可愛いよ?」

純・梓「……」

唯「それじゃあ、ホールに出ようか。
 頑張ってお仕事しようね、特に純ちゃんはサボらずに!」



第四十五話「輝くストレートフラッシュ」‐完‐



純「……行ったね」

梓「そうだね」

純「さっき、可愛いって言われた時、どきっとしたよ私」

梓「あの格好で、あの台詞はズルイって」

純「うん、確かに」

梓「ねえ純、私、恥ずかしいけど頑張ってみるよ」

純「そうだね」



純・梓「……さて、お仕事頑張りますか!」



第四十六話「トドメのロイヤルストレートフラッシュ」‐完‐



 ‐六月某日・平沢宅‐

唯(……朝が来た)

唯(今日もバイトだ、頑張ろう)

唯(あれ、メールが来てる)

唯(純ちゃんからだ)

唯(『気分が乗らないので今日のバイトはサボります』)

唯(……正直者すぎるよ純ちゃん)

唯(実際純ちゃんは、いてもいなくても変わらないんだけどね)

唯(働いてないから)

唯(働き者の梓ちゃんは来てくれるかな)

憂「お姉ちゃん、おはよー」

唯「おはよう」

憂「今日の朝ご飯はテーブルに置いてあるから。
 じゃあ行ってくるね」

唯「どこに?」

憂「純ちゃんの家に行くんだよ」

唯「サボったまま同僚の妹と遊ぶって何事なの」

憂「純ちゃんらしいよね」

唯「憂もそう思ってるなら直すように言ってくれないかな」

憂「ダメだよ」

唯「なんで?」

憂「今の純ちゃんからサボりを取ったら何が残るの」

唯「それはそれでどうなの」

憂「サボらない純ちゃんはもはや人面モップだよ」

唯「人ですら無くなるんだ」

憂「純ちゃんだもん」

憂「あっ、あとね」

唯「ん?」

憂「今日は梓ちゃんも一緒に遊ぶんだ~」

唯「それは困るなあ」



第四十七話「助っ人>>>バイト」‐完‐



憂「じゃあ純ちゃんか梓ちゃんをバイト先に行かせればいいんだね?」

唯「そういうこと、出来るなら梓ちゃんを」

憂「でも、わざわざサボってまで遊んでるぐらいだし、難しいと思うよ」

唯「大丈夫、梓ちゃんはサボってるわけじゃないから。
 その状態が普通なだけだから」

憂「しかも外は梅雨真っ盛りの大雨。
 あの純ちゃんのことだし、外に出すことすらままならないと見て間違い無いよ」

唯「この際、外に出すのは梓ちゃんだけでいいから、純ちゃんは家に置いといてもいいから」

憂「……さっきから梓ちゃん梓ちゃんって……」

唯「えっ?」

憂「お姉ちゃんはそんなに梓ちゃんと結婚したいの!?」

唯「いくつもステップを飛ばし過ぎだよ」

憂「まさか体目的!?」

唯「少し戻ったと思ったら違う方向に飛んじゃってるよ、違うよ」

憂「やっぱりお姉ちゃんは年下好きなんだあ……照れるなあ」

唯「なんで照れるの」



第四十八話「飛躍的トーク」‐完‐



憂「話を整理するね」

唯「うん」

憂「まずお姉ちゃんはロリコンじゃん?」

唯「どっから出てきたの、その言葉」

憂「だってお姉ちゃんは梓ちゃんが好きなんでしょ?」

唯「働くか働かないかの違いだよ、純ちゃんも好きな方だよ」

憂「ついに純ちゃんまでも狙うんだ……!
 お姉ちゃんはロリコンであり、モッコンでもあるんだね!」

唯「モッコンが何の略称だか分かりきってるから特にツッコまないけど、どっちも違うからね」

憂「どうでもいいけど、モッコンと毛根って発音似てるよね」

唯「本当にどうでもいいけど」

憂「以上のことから判断すると」

唯「判断材料が一つも無いよね」

憂「お姉ちゃんは今からシスコンになればいいと思うよ」

唯「ハッキリと言わせてもらうね」

唯「お断りだよ」



第四十九話「毛根とシスコン」‐完‐



憂「お姉ちゃんが聞こえてなかったみたいだから、もう一回言うね?」

唯「都合の悪いことを聞いてないのはそっちでしょうが」

憂「実の妹からシスコンになれって言われてるんだよ?
 こんな珍しいシチュエーションをお姉ちゃんは見逃すの?」

唯「うん、実の妹なんかに言われたら余計に避けたくもなっちゃうよね」

憂「因みに私はシスコンだよ」

唯「憂は同じことを二回繰り返させたいのかな」

憂「嘘だよ、結婚したい程度に好きなだけだよ」

唯「それもうゴールインしてるからね」

憂「じゃあ我慢して、結婚式を挙げるぐらいにするよ」

唯「同義だね」

憂「わかった、婚姻届に二人の名前を書くところまででいいよ」

唯「憂は同じことを二回繰り返させたいのかな」



第五十話「時を無駄遣いする少女」‐完‐



 ‐外‐

唯(とりあえず憂には二人のうち、どちらかを連れて来るようには伝えたし)

唯(私は普通にバイトしに行っていいんだよね?)

唯(これで二人とも来なかったら、今日はかなり忙しくなるよなあ)

唯(……あれ?)

唯(元々忙しいことなんて無かったような気がする)

唯(……それに、他のバイトの子が純ちゃんの代理で出勤するよう、誰かが頼んでいるかもしれない)

唯(純ちゃんはサボってるわけだけど)

唯(どっちにしろ、このままだと梓ちゃんに迷惑がかかるかもしれない)

唯(やっぱり梓ちゃんに迷惑かけるのは申し訳無い。
 憂に手間をかけさせるのも悪いし)

唯(やっぱり連れて来なくて大丈夫だって、憂に連絡しよう)

唯(……あっ)

唯「携帯忘れてるよ……」

唯「ゴメンね憂、梓ちゃん」

 ‐鈴木宅‐

純「……」



第五十一話「特に心配されない少女」‐完‐



 ‐外‐

澪「おっ、唯ー!」

唯「あ、澪ちゃんおはよう。
 澪ちゃんって、いつもはこの道使ってたっけ?」

澪「いや、最近使い初めたんだ」

唯「何で?こっちの方が近かったりするの?」

澪「ううん、こっちの道の方がいつもより遠いよ」

唯「じゃあ、何で……」

唯「……あれ、澪ちゃんっていつもは自転車でお店に来てたたよね?」

唯「見たところ、ここまで歩きで来たようだけど」

澪「唯、一つ言わせてくれ」

唯「うん」

澪「トマトを一日六個なんて無理だと思うんだ」

唯「ダイエットなんだね」



第五十二話「赤を食する少女」‐完‐



澪「まあそういうことなんだよ」

唯「澪ちゃん、太ってるようには見えないけど」

澪「外見に現れるようになったら、それはもう手遅れだろ?」

唯「納得だよ」

澪「だから世間が言うダイエットというには小規模なものかもしれないけど、
 今の内に出来ることはしておきたいんだ」

唯「澪ちゃんは努力家だなあ。
 ところで澪ちゃんの家って、ここからどれぐらい離れた場所にあるの?」

澪「ここから徒歩五分かな」

唯「やっぱり前言撤回させて」



第五十三話「徒歩五分の道も一歩から」‐完‐



 ‐お店‐

唯「おはようございます」

紬「あら唯ちゃん、おはよう。
 聞いてるかもしれないけど、今日は純ちゃんがお休みよ」

唯「そうみたいですね」

紬「そんなサボりの純ちゃんの分だけど、他のバイトの子が代わりに出勤してもらうことになったわ」

紬「おかげで唯ちゃんが過労死する心配は無いから、安心してね」

唯「このお店に過労という概念はありませんよ」

唯「あと普通に流しちゃいましたけど、純ちゃんがサボりだって言い切ってますよ」

紬「違うの?」

唯「何当然のことを聞いてるような口で言ってんですか、そうですよ」

紬「あとトマトの摂取にはトマトジュースがオススメよ」

唯「いきなり何の話ですか」

紬「13-オキソ-9,11-オクタデカジエン酸の話よ」



第五十四話「専門的無駄知識」‐完‐



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最終更新:2012年06月02日 21:30