律「何やら許しがたい発言をしたような気がするけど、まあ気にしないでおこう」

澪「馬鹿だなー」

律「やっぱ許さねえ」

澪「男に二言は無いんだぞ、律」

律「私は女だ」

澪「まあ、とにかく」

律「それお前の台詞じゃないから」

律「ダイエットだっけ?
 澪は体型なんて気にすることないのに」

澪「こう見えても体重は着々と増えてるんだ」

律「どれぐらい?」

澪「……入学式の日と比べてニ、三キロぐらい」

律「んー、そんな風には見えないっていうか、
 元々の体重が普通なんだから、大して気にすることでも無いだろ」

澪「でも、これから水着とか着るような季節になるだろ?」

澪「醜い水着姿の自分を想像してみろ……。
 ああ恐ろしい!」

律「……全く、仕方ないな。私も協力出来ることはしてやるよ」

澪「え?」

律「澪が走るから、私も一緒に走るとかじゃないぞ。
 傍から応援したりするだけだからな」

律「必要なものがあるなら、私が揃えてやるよ。
 ただし、それ以上は何もしないからな」

澪「いいのか?
 ……私のこと馬鹿にしたりしなくていいのか?」

律「その聞き方はどうかと思うけど、しないよ。
 太ってんのかわからないお前を馬鹿にして、何が面白いんだ?」

澪「……ありがと」

律「よせやい。
 ま、帰りぐらいはゆっくり行きますかい」

澪「……だな」



第七十話「馬鹿以外を馬鹿にするのは本当の馬鹿」‐完‐



 ‐外‐

律「……」

澪「……」

澪「ありがとう」

律「だからいいって」

澪「でも……」

澪「……」

律「……」

律「あっ」

律「トマトダイエットにはトマトジュースがオススメだぞ」

澪「えっ、何で?」

律「口の周り」

澪「ん?」

律「赤いからさ」

澪「ああ」

律「店でもトマト食ってたのか?」

澪「違うよ」

澪「これはタバスコだ」

律「……馬鹿だなあ、澪は」

澪「律ほどじゃないよ」

律「同じぐらいだよ」

澪「そのぐらいか」

律「……」

澪「……」



律・澪「ばーか」

律・澪「……」

律・澪「あははっ」



第七十一話「愛される馬鹿共」‐完‐



 ‐平沢宅‐

純「お帰りなさい、唯先輩」

唯「うん、じゃあね」

純「今からまた仕事ですか、熱心ですね」

唯「さようならするのは純ちゃんだよ」

純「まあまあ頭を冷やしてください」

唯「まずはその頭を冷やせばいいと思うよ、爆発してるから」

純「これは私の標準スタイルです。
 ところで、私が此処にいる理由は非常に簡単なものなんですよ」

唯「私としては理由が簡単かどうかは非常にどーでもいいんだけど」

純「鍵を落としました」

唯「わあ単純だね、野宿してきなよ」

純「女子高生に野宿させるなんて、唯先輩はそれでも人間ですか!」

唯「純ちゃんはまだ中学生でしょ」

純「そういえば」

唯「純ちゃんが高校生なのはバイト先だけだよ」

純「どうやらあまりに正直に生きていたせいで、その設定が外にも溢れ出したようですね」

唯「うん、自分の願望にだけは正直に生きてると思うよ」



第七十二話「正直の使い道」‐完‐



憂「あっ、お姉ちゃんお帰りなさい」

唯「ねえ憂、今から純ちゃんを野宿させようと思うんだけど」

憂「今から?時間的にちょっと遅すぎないかな?」

純「えっ、時間が問題なの?」

唯「そうだね、そろそろ野宿させる時間帯だよ」

純「人の話聞いてますか」

憂「流石に野宿は危ないから、押し入れの中に寝かせてあげようよ」

純「床でいいよ」

梓「床掃除にぴったりだね」

純「しれっと出てきて、何ナチュラルに毒吐いてんのよ」

憂「梓ちゃん、いらっしゃい。
 お姉ちゃんの部屋か私の部屋に布団敷くから、梓ちゃんはそこに寝てくれる?」

純「対応が私と正反対のような気がするんだけど」

憂「そんなことないよ、大体180度ぐらいしか変わらないよ」

純「それを正反対というんだよ」

唯「梓ちゃんはお客様だからでしょ」

純「私だって、ここではお客様です」

梓「お店でもお客様気分でしょ」

純「お店では従業員を兼業してるから全然違うよ」

唯「実質同じだよ」

憂「……純ちゃん、一つ言っておくよ」

純「うん」

憂「働かざる者、食うべからず!!」

純「それを当時の唯先輩に言ってほしかった」



第七十三話「失われた数年」‐完‐



唯「そういえば梓ちゃんは何で家に泊まるの?」

梓「ただ遊びに来ただけですよ」

唯「なるほど」

梓「猫って、勝手に家を出て散歩とかするみたいですよ」

唯「そうなんだ。で、何でその話をしたの」

梓「特に意味はありません」

唯「余計に気になるよ」

梓「まあ、一つ付け加えるならば」

梓「私の前世は猫です」

唯「へえー」

唯「……ん?」



第七十四話「蛇足な補足」‐完‐



 ‐リビング‐

純「この漫画面白いですね、続きあります?」

唯「純ちゃんに貸す漫画は無いよ」

梓「人の家にあがっておいてそれは流石に失礼だよ、純」

純「そんなこと言ってもなあ」

純「普段から誰かが働いている最中に堂々とサボってるから、失礼には慣れているというか」

純「もはや失礼が自分みたいな」

唯「自覚あったんだね」

純「いやですねー、冗談に決まってるじゃないですかー」

梓「それ冗談になってないから」



第七十五話「結局自覚は無い」‐完‐



憂「お風呂できたよー」

梓「純は別として、誰から入るの?」

純「え、私だけ一番風呂の権利無しなの?」

梓「風呂に入る権利が無いんだよ」

純「さらに酷い!」

憂「まずは私とお姉ちゃんが二人で入ろっか?」

唯「また?」

梓・純「また!?」



第七十六話「いつも通りの光景」‐完‐



純「またって……憂も憂ですが、唯先輩も唯先輩ですね」

唯「何が?」

純「高校生にもなって姉妹でお風呂に入るというのはどうかと」

唯「別に問題無いと思うけど?やましいことも無いし」

純「そういう問題じゃなくてですね」

梓「まさか純は、二人の間にやましいことがあると思ってるの?」

純「えっ」

憂「流石の私でもそれは無いよ……」

唯「そういう見方を今までしてたんだね、純ちゃん……」

梓「ちょっと引くよ……」

純「……何で私が責められてるわけ?」



第七十七話「完全アウェー戦」‐完‐



梓「というわけで、一人ずつ入ることにしましょう」

梓「そうすれば入ってない二人で純を監視することが出来ます」

純「私は悪いことしてないし、しようともしてないし」

唯「むしろ純ちゃんを野宿させれば丸く収まるんじゃないかな」

純「まだ諦めてなかったんですか、私の不満が収まりませんよ」

憂「私とお姉ちゃんが二人一緒に入れば解決だよ」

純「あんたは何を言ってるんだ」

梓「一人ずつ」

唯「野宿」

憂「お姉ちゃん」

梓「わかりました、三人で入りましょう」

純「ついに梓が壊れた」



第七十八話「釣られ、狂いはじめた歯車」‐完‐



 ‐浴室‐

唯「それでさ」

梓「はい」

唯「何で私達が一緒に入ってんだろうね」

梓「じゃんけんで決まったことに文句言っても無駄ですよ」

唯「別に一人ずつでいいよね」

梓「人の夢と書いて、儚いと読みます」

唯「つまり諦めろってことだね」

梓「理解が早くて助かります」

唯「……梓ちゃんってさ」

梓「はい」

唯「いわゆる貧にゅ」

梓「人の夢と書いて、儚いと読むんですよ、唯さん」

唯「……夢は叶わなかったんだね」

梓「理解が早くて泣けてきます」



第七十九話「人の夢は儚くて」‐完‐



 ‐脱衣所‐

純「ねえ憂、大丈夫なの?」

憂「んー……二人とも仲良く話してるから、大丈夫かな」

純「そっちじゃなくて、盗み聞きしてることが大丈夫なのかって聞いてるの」

憂「それは大丈夫じゃないよ」

純「だよね」

憂「というわけで、純ちゃんに交代ね」

純「損得感情を抜きにしても、お断りしたいんだけど」

憂「何で?」

純「特にする理由が無いからだよ……」

憂「お姉ちゃんの声が聞けるんだよ!?」

純「外でも聞けるよ」

憂「梓ちゃんとの会話付きなんだよ!?」

純「外でも聞けるよ!!」

梓「……それなら出てってもらえない?」



第八十話「本末転倒」‐完‐



 ‐リビング‐

純「……」

唯「憂の料理は世界一だね~」

憂「そんなことないよ~」

純「お腹すいた……」

梓「本当に美味しい……今度料理教えてもらえない?」

憂「うん、いいよ!」

純「あのー……」

唯「あれほど言ったのに覗こうとした罰だよ」

純「覗いてませんよ!
 仮に覗こうとしていても、首謀は憂ですよ!」

憂「純ちゃんヒドいよ、親友を売るつもりなの!?」

純「既に売り飛ばしたやつが言うな!」

梓「まあ憂はこうして美味しいご飯を作ってくれたわけだし」

梓「それに比べ、純は寝転がって床掃除をするだけ」

梓「そんなことで罪を償えると思ったら、大間違いだから」

純「そんな償いをした覚えも無いんだけど」

唯「仕方ないなあ純ちゃん、こっちにおいで」

純「唯先輩……!」

唯「はい、パセリ」

純「唯先輩……」



第八十一話「パセリの自給率は100%」‐完‐



 ‐唯の部屋‐

唯「……」←寝ようとしてる

純「……はあ」←空腹で寝れない

純「……」

純「はあー……」

唯「……純ちゃん、うるさい」

純「口を閉じても、お腹が黙ってくれませんよ」

唯「なんで純ちゃんと同じ部屋で寝ることになっちゃったんだろう」

純「じゃんけんの決めたことに文句は言えませんよ」

唯「にしても……」

 「ぐうううぅぅ……」

純「ああ、お腹までうるさくなり始めたみたいですね」

唯「……もう仕方ないなあ、ちょっと付いてきて」

 ‐リビング‐

唯「カップ麺ぐらいしか無かったけど、はい」

純「え、食べていいんですか?」

唯「いらないなら私が貰うよ」

純「まだ食べれるんですか」

唯「余裕だよ」

純「でも唯先輩には食べさせません、私が全部食べます」

唯「どうぞ」

純「……」

唯「……」

純「……唯先輩」

唯「何?」

純「これ、凄く辛いんですが」

唯「そういうのしか無かったんだもん」



第八十二話「思い出される昼間のハバネロ」‐完‐



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最終更新:2012年06月02日 21:32