‐ホール‐
「ぱりーん!」
唯「あちゃー……」
純「また皿割っちゃいましたね」
唯「こういうドジは治らないみたいだねえ……。
ちょっとチリトリとホウキ取ってくるから、誰も近づかないように見ててくれる?」
純「了解です」
唯「あっ、それと」
唯「その頭でくれぐれも掃かないようにね」
純「私をどんな狂人だと思ってるんですか」
第一一五話「セルフ箒」‐完‐
唯「うん、片付いたね。後は破損報告表かな」
純「……くくっ……」
唯「ん、どうしたの純ちゃん」
純「いやあ、私思ったんですよ」
純「四ヶ月も働いても、唯先輩は唯先輩なんだなーって」
唯「一日も働いてない純ちゃんに言われたくないなあ」
純「私だって私のペースで働いてますよ」
唯「それを働いてないっていうんだよ」
純「しかし、あれですね。皿割りクイーンとサボり魔神……」
純「響きだけ聞くと、いいコンビだと思いません!?」
唯「響きだけでも不名誉だと思うんだけど」
第一一六話「不名誉の証」‐完‐
‐キッチン‐
梓「うーん……」
梓「にゃお太郎、にゃーたん、にゃんのすけ、にゃにまる、
にゃっくりん、ニャルニーニョ、ニャニャード三世……」
梓「候補はあるけど、どれも決定打に欠けるなあ」
梓「どれがいいんでしょう、律さん!?」
律「……せめてオスなのかメスなのかを教えてくれ」
第一一七話「不毛な候補戦」‐完‐
律「まさかキッチンに猫持ち込んでないだろうな?」
梓「大丈夫です、二号は外で待機してます」
律「二号……?それが立派な名前じゃないのか?」
梓「はぁ?」
律「呆れられてるな、何故か私が」
律「とりあえずオスなのか、メスなのかハッキリしてくれよ」
梓「あれはメスです。
それを踏まえた上で、先程の候補の中から選んでいただきたいんですが……」
律「待て、お前は最初からメスだってわかってたのか?」
梓「はい」
律「その上で“にゃお太郎”とか名づける気だったのか」
梓「可能性はゼロではありませんよ」
律「どこに何の可能性があったんだか、さっぱりわからん」
梓「真面目に考えてください」
律「えっ、それ私に言う台詞?」
律「……まあメスなら」
律「御菜(おんな)なんてどうだ!?」
梓「ヘー、イイ名前デスネー」
律「何で棒読みなんだ」
梓「ちょっと他の人の意見を採用しに行ってきます」
律「私の案が不採用であることを隠す気は無いんだな」
第一一八「ねえミングセンス」‐完‐
‐備品倉庫‐
澪「ましゅまろなんてどうだ?」
梓「三毛猫ですよ?」
‐ホール‐
紬「ホームズなんてどうかしら?」
梓「少々ストレートすぎます」
‐スタッフルーム‐
さわ子「キャサリンで決定ね!」
梓「あなた誰でしたっけ」
‐ホール‐
梓「というわけで、残ったのが唯先輩なんです。
全く皆さんは、猫の名付け方がなってませんよ」
唯「わかってると思うけど、それ適当にあしらわれただけだからね?」
純「あと何で私には聞かないの?」
第一一九話「たらい回しで回されない方」‐完‐
梓「んー、そういうことだったんですかー。
でも残りは唯先輩のみなので、唯先輩は適当にしたらいけませんよ?」
純「いや、だから私が」
唯「うーん、悩むなあ」
純「何言った事を素直に受け入れてるんですか、
今の梓の言葉にはおかしなポイントがあったはずですよ」
唯「私が名付けたので決定になっちゃうんでしょ?
これは結構難しいよ」
純「おかしなのは唯先輩も同じでしたか」
梓「どうですか、何か思い浮かびました?」
純「私は空気となるしかないのかもしれない」
唯「梓ちゃんが一号なんだから、この際“梓二号”とかで良くない?」
純「じゅーん」←空気になりきっている
梓「それは嫌ですね、自分のペットの名前を呼ぶ度に
自分を呼ぶことになるので」
純「じゅわー」←空気になりきっている
唯「確かにそうだね。じゃあ……」
純「じゅじゅじゅーん」←空気になりきっている
唯「梓ちゃんの猫だから……“あずにゃん”なんてどうかな?」
純「じゅわわわわーん」←空気になりきっている
純「……んっ?」←空気になりきれていない
梓「成る程、私の猫にゃんということで“あずにゃん”ですか」
純「……素晴らしいです唯先輩!」
純「あえて採用されなさそうな名前を提示することで、
仕方なくとはいえ、私に活躍の場を与えてくれたんですね!」
純「おかげで空気にならずに済みましたよ!」
唯「面倒になっただけだけどね。
あと空気になりきれてないよ、結構やかましかったよ」
純「まあまあ。いやあ、これで私も名付け親の一人になれますよー」
梓「それ、採用します」
唯・純「えっ」
第一二〇話「命名:あずにゃん」‐完‐
‐十月某日・お店‐
梓「おはようございます」
唯「おはよう、梓ちゃん」
梓「……」
唯「どうしたの?」
梓「この感じ……間違いありません。あなた唯さんじゃありませんね?」
唯?「えっ」
梓「私にはわかるんです……。だって前世が猫なんですから!!」
唯?「なんだか良く分からないけど凄いね、梓ちゃん!!」
第一二一話「世にも奇怪な能力」‐完‐
‐ホール‐
純「まあ、簡単に話すと唯先輩が風邪ひいちゃって、
その代理で憂が来たってところかな」
憂「そういうこと」
梓「唯さん、風邪なんだ……大丈夫かな」
憂「お姉ちゃんは大丈夫だよーって言ってたし、
私も早めに切り上げようと思ってるから大丈夫だよ」
純「しかし唯先輩も風邪ひくんだねえ」
純「ナントカは風邪をひかないっていうの、あれは迷信なのかもね」
梓「いや、そうとも言い切れないね」
憂「うん、そうだね」
純「何故こっちを見ながら言う」
第一二二話「視線の暴力」‐完‐
‐キッチン‐
澪「へえ、憂ちゃんが代理に。偉いね」
憂「短い間ですけど、よろしくお願いします」
澪「難しい仕事は他の人に任せて、憂ちゃんは簡単な仕事だけしてればいいよ。
無理に来させてるわけだし」
憂「お気づかいありがとうございます、でも大丈夫です」
憂「仕事はお姉ちゃんから聞いて、全部覚えました!」
澪「良くできた子だなあ……」
憂「ついでにお店の人達の変人度も、全部覚えました!」
澪「ちょっと何言われたか言ってごらん?」
第一二三話「リーク→リーク」‐完‐
‐ホール‐
憂「いらっしゃいませー!」
憂「はい、ご注文は以上でよろしいでしょうか?」
憂「ドリンクバーはあちらとなっております。
ごゆっくりどうぞ!」
憂「三番卓の方、オムライスとミートドリアです!」
律「うぃーっす」
憂「えーと、後は……」
憂「あっ、ありがとうございましたー!」
憂「うーん、レジ打ちは流石に出来ないなあ」
憂「紬さーん、お願いしてもいいですかー?」
紬「任せて~」
憂「ありがとうございます!」
純「……」
梓「……」
純「……仕事が」
梓「無い」
憂「えっ?」
第一二四話「働きすぎる民」‐完‐
‐キッチン‐
律「しっかし、憂ちゃんは凄い働き者だよなー。
どうせだし、そのまま此処で働き続けてくれるといいんだけど」
澪「まあ無理に引き止めても悪いし、何より本人は唯の代理だと思って
来てるんだから、それは叶いそうにないな」
律「だよなあ。こうなったら一番働いてない人と取り換える、とか?」
澪「人を一人減らせば、憂ちゃんは手伝いに来てくれるってことか……」
澪「そうだな、一番働いてない人といったら」
律「純ちゃんか?」
澪「……いや」
澪「店長だろうな」
律「店長……」
第一二五話「働かざる長」‐完‐
‐外‐
憂「わあ、これが“あずにゃん”?」
猫「にゃあ」
梓「うん、そう」
梓「家に一匹で置いていくのは心配でね……。
店の外に置かせてもらってるんだ」
憂「可愛いね~」
梓「憂もそう思う?唯先輩も同じこと言ってたよ」
憂「でも、ちょっと恥ずかしい名前だよね~」
梓「憂もそう思う?唯先輩も同じこと言ってたよ」
純「命名者なのにね」
憂「お姉ちゃん、よく言ってるんだ~。
“猫は可愛い、けどあの名前は止めてほしい”って」
梓「はは、唯さんのセンスはわからないね」
純「その名前を採用した梓のセンスの方がわからないよ」
憂「私が“あずにゃん”って言うと、顔を赤らめて、
“止めて!もうその古傷を抉らないで!”って言うんだけど」
憂「その時のお姉ちゃんがとにかく可愛いの!
今すぐにでも抱きしめて、家に持ち帰りたいぐらいの可愛さなんだ~!」
純「唯先輩の家は君の家でもあるよね?」
梓「つい愛でたくなる可愛いさか、わかるなあー……」
純「わからないよ」
第一二六話「I don't know...」‐完‐
‐ホール‐
紬「あら純ちゃん、こんなところに座ってどうしたの?」
純「……これが私のスタンダードですよ」
紬「でも、いつもならお客さんが座る椅子と同じ椅子に
座ってなかった?」
純「そうでしたねえ」
紬「こんなお客さんの邪魔にならなそうな場所で休むなんて、純ちゃんらしくないわ……。
一体何があったっていうの!?」
純「いやー、これはですね」
紬「わかった!純ちゃん、唯ちゃんがいなくて調子が出ないんでしょ!?」
純「違います」
紬「わかった!純ちゃん、実はちょこっと体調が悪いとか!?」
純「違いますって」
紬「わかった!純ちゃん、自分のサボりスキルがスランプ気味なのね!?」
純「……私だって成長してるんです!!」
第一二七話「ちょこっとの成長の兆し」‐完‐
‐休憩室‐
憂「あ、澪さん休憩中ですか?」
澪「そうだよ。憂ちゃんも休憩かな?」
憂「はい」
憂「あの、お姉ちゃんがお店でどんな風なのか、聞いてもいいですか?」
澪「いいよ」
澪「……唯はね、よくミスをするけど一生懸命なんだ」
憂「一生懸命……。でも、そのミスでお店に迷惑をかけたりとか……?」
澪「……サボる純ちゃんを注意する役目を、唯が引き受けてくれたんだ」
澪「おかげで前より純ちゃんが働く回数は(少ないけど)増えてる」
澪「そういう働きのおかげで、周りに迷惑をかけているというイメージは無いし、
むしろ士気を高めてくれているイメージがあるかな」
澪「まあ、破損報告表には唯の名前ばっかりだけどね」
憂「良かった……。私、実はお姉ちゃんに悪いことしちゃったんじゃないかなーって、
ずっと思ってたんです」
澪「悪いこと?」
憂「はい。このままではいけないと思って、
勝手に(コスプレをさせるような)お店に働きに行かせてしまったわけですし」
澪「ふふ……唯は憂ちゃんが思ってるほど、困ってないよ」
澪「そりゃあ純ちゃんの扱いには困ってるだろうけど、
自分が無理してるわけでもない様子だしね……」
澪「本当かどうか気になるなら、本人に聞いてみなよ。
唯なら正直に話してくれると思うよ」
憂「……じゃあ、大丈夫なんですね」
澪「ああ、何も問題なんてないよ」
憂「この“全米を震撼させる衣装”を着させても」
澪「ごめん、前言撤回」
第一二八話「全米震撼の前言撤回」‐完‐
憂「えっ、でもお姉ちゃんはいつもこんなの着てるって、店長が言ってましたよ?」
澪「あの店長の言葉は7割のセクハラと3割の戯言で出来てるんだ」
憂「全体的にロクでもないんですね」
澪「そうなんだ」
憂「しかし残念です」
澪「ん?」
憂「これを着させるということが、いかに理に適ったことかということを
証明出来るはずだったんですけど……」
澪「私には道理の欠片も見当たらないんだけどなあ」
憂「非道な点を見つけることの方が難しいですよ!」
澪「確かに木を隠すなら森の中とは言うよね」
憂「こうなってしまえば手段は一つしか残りません」
澪「それは?」
憂「“強制”の二文字です」
澪「“中止”という二文字は残ってなかったんだね」
憂「私達は強いられてるんです!」
澪「唯の方は強いられてるね」
憂「幸い今日のお姉ちゃんは風邪で寝込んでます」
澪「幸いじゃない、唯が危ない」
憂「なので、今日は早めにあがらせてもらいますね」
澪「憂ちゃん、流石にそんな悪魔のようなことは止めておこう」
憂「澪さん、私はですね……」
憂「お姉ちゃんのためなら、悪魔にも魂を売れます!」
澪「もう悪魔に成り果ててたか」
第一二九話「デビちゃん降臨」‐完‐
最終更新:2012年06月02日 21:35