‐ホール‐

憂「というわけで今晩が楽しみなんだー」

純「それを聞いた私はどうすればいいの」

憂「純ちゃんも家に来る?」

純「憂とは逆の意味で行った方がいいのかもしれないね」

憂「つまり?」

純「止めに行くから」

憂「例え純ちゃんを敵に回しても、私は歩みを止めるつもりはないよ」

純「カッコイイけどサイテーな言葉だ」

憂「虎穴に入らずんば虎児を得ずって、素敵な言葉だよね~」

純「虎穴に放り込まれるのは唯先輩だけどね」

憂「というわけで、よろしくね純ちゃん!」

純「……何をよろしくされてしまったんだろう」



第一三〇話「虎穴によろしく」‐完‐



姫子(私の名前は立花姫子

姫子(この見た目のせいで皆からの第一印象は)

姫子(“近づきにくい”)

姫子(というものが非常に多い)

姫子(だけども、本当の私を知ってくれた人は)

姫子(そんな第一印象なんて無かったかのように接してくれる)

姫子(そう、皆が仲良く接してくれるんだ……)

姫子(……)

姫子(……だけど)

梓「あっ、姫子さん、私のあずにゃん知りません?」

姫子(この店の皆は第一印象の方がマトモです)



第一三一話「マイノリティの結集」‐完‐



 ‐スタッフルーム‐

紬「憂ちゃん、今日は本当にお疲れ様。
 唯ちゃんにお大事にって、伝えておいてくれる?」

憂「はい、わかりました。
 お疲れ様でした」

紬「はい、お疲れ様~」

純「お疲れ様でーす」

紬「純ちゃんには言ってないわよ?」

純「でも、私もお仕事終了の時間ですよ?」

紬「純ちゃんには個人で話があるのよ」

純「えっ、私、呼び出されるようなことした覚えは多少しかありませんよ!?」

紬「多少あるならお話しましょう」



第一三二話「バイト後ミーティングタイム」‐完‐



紬「純ちゃん、あなた嘘ついてない?」

純「どれですか?」

紬「そんなにあるのね」

純「嘘です一つです」

紬「ほら、また嘘ついた」

紬「……さて、どうやって嘘を暴いていこうかしら」

純「まるで全てを知ってるような口ぶりですね」

紬「知ってるわ。例えば」

紬「あなたが中学生であることも」

純「……」



第一三三話「唯一の嘘」‐完‐



純「……それで、いつから知ってたんですか?」

紬「もうずっと前から」

純「私、辞めさせられるんですか?」

紬「そんなつもりは無いわ。
 ただ、純ちゃんはどうするつもりなの?」

純「……さて、なんの話ですか」

紬「……バイトやめなさいって、お母さんに言われたんでしょう?」

純「えっ……!」

紬「いくら模試で高い合格率を出していても、受験生がバイトをしてるなんて“心持ち”が足りない」

紬「そう、言われたんでしょう?」

純「……紬さん」

純「何故お母さんが言ったことを一語一句違えずに知ってるんですか」

紬「企業秘密よ」

純「自宅で言われた言葉なんですけど」

紬「黙秘権を行使しま~す」



第一三四話「エスパーつむぎ~その秘密の裏に~」‐完‐



純「まあ、それは事実です」

純「……私も六月ぐらいまでは違ってたんですけどねー」

紬「つまり七月……夏休みで、大体の子が本格的に勉強に取り組む時期に、
 純ちゃんの意識が変わったのね」

純「はい。私の周りにも少しずつ勉強ムードが漂い始めていました」

純「そんな中で、内申を上手く取ってるだけの私が一人、
 取り残されているような気がしてたんです」

純「でも、孤独感とは別に、このお店を簡単に辞めたくない自分もいたんです」

純「……いや、これが別だと錯覚していたことに最近気付いたんですがね」

純「これを別だと思っていた時期は、二つをどれだけ比べても答えは出ませんでした」

純「孤独感を払拭したい自分とお店に居場所を作る自分は、
 所詮イコールなんだから、天秤がどちらにも傾くはずもなかったんです」

純「……本当に長い時間を掛けてしまいましたよ」

紬「それで、どうするの?」

純「まだ答えは出していません。
 当然、今の状況が良いとも思ってませんけど」

紬「答えはすぐに出せそう?」

純「ふふ、今から出してきますよ」

紬「そう……」

純「……では」


純「今日はお疲れ様でした!」


第一三五話「決意の分岐点に、向かう」‐完‐



 ‐平沢宅‐

純「お邪魔しまーす」

憂「純ちゃん本当に来たんだ」

純「うん、まあお見舞いってことで」

憂「ありがとうね。でも心配しないで、お姉ちゃん、もう元気になってきてるから」

純「おお、それは良かった」

憂「全米が震撼する衣装を着させられないのは、本当に残念なんだけどね」

純「うん、本当に良かった」



第一三六話「全米の安堵」‐完‐



 ‐唯の部屋‐

純「……唯先輩ー?」

唯「純ちゃん?」

純「はい、全米が認めた美少女純ちゃんです」

唯「良かった、確かに純ちゃんだ」

純「一応お見舞いにきたんですけど、大丈夫そうで良かったです」

唯「……全然大丈夫じゃないよ」

純「え?」

唯「憂の衣装を見たらね、こう、体が勝手に元気を装いはじめて」

純「とんだ荒療治ですね」

唯「防衛反応と言って欲しいな」

純「あれですか、個別的自衛権を行使したんですか」

唯「出来ることなら集団的自衛権で純ちゃんも助けてよ」

純「おっと、私がそれを行使することは違憲ですので」

唯「そんな国単位のことじゃないんだから」

純「確かに」


純「……」

純「ところで唯先輩」

純「さっき言った言葉の意味、ちゃんとわかってますか?」

唯「私も同じこと思ったよ、純ちゃん」



第一三七話「知ったかぶり同盟」‐完‐



純「それぐらい元気なら大丈夫ですね」

唯「今ので元気な私を感じ取ってくれたとしたら、それはそれで複雑だよ」

純「まあいいじゃないですか、私と唯先輩の仲なんですから」

唯「そんな親密な仲だったんだ、非常に複雑な気持ちだよ」

純「ヒドい!」

唯「……まあ、純ちゃんは十二番目ぐらいに仲良しだと思ってるよ」

純「高いのか低いのか、わからない順位ですね」

純「一番は誰なんですか?」

唯「憂かなー」

純「ほほう」

純「唯先輩って実はドMなんですね!」

唯「純ちゃんは、ちょっと頭のネジが足りないのかな?」



第一三八話「ネージー巻き巻き」‐完‐



純「何言ってるんですか、私の頭は十分色んなものが詰まってますよ」

唯「そっか、だからそんなに頭が爆発してるんだね」

純「これは髪の毛です」

純「いや、だってですよ?
 あれだけ色々してくる憂が一番なんて、ちょっとおかしいですよ」

唯「まあ、純ちゃんにはそう見えるよね。純ちゃんだし」

純「なんか馬鹿にされた気分です」

唯「そんなつもりは少ししかないよ」

純「少しあるんですか」

唯「うん、あのね、憂は確かに私に対して暴走することが多いかもしれないけどね」

純「はい」

唯「それ以上に感謝しきれないほど、家事を進んでやってくれてるの」

唯「私には想像出来ないぐらいの回数だけ、憂はこんな私のためにご飯を作ってくれるの」

純「なるほど」

唯「今の私は、そんな憂がいないとダメなんだ」

唯「あの可愛くて、自慢の妹がね」

純「唯先輩……」


 「いよっしゃああああああぁぁぁぁーーー!!!!!」


唯・純「えっ」



第一三九話「雄叫びの憂」‐完‐



唯「……」

純「……」

純「……えーと」

純「自慢の妹ですか?」

唯「今のは聞かなかったことにしようね、純ちゃん」

純「いや、でもあれは確かに憂の声で」

唯「何も無かったよね、純ちゃん?」

純「わあー不思議です、さっきまで何かを気にしていたようだったのに、
 今は何を気にしていたのかすら覚えていませんよー」

唯「そうそう、何も無かったんだよ」

純「そんな“自慢の妹”を持ってる唯先輩に質問です」

唯「やけに“自慢の妹”を強調しないでよ、何?」

純「もし一番仲良しな憂が、自分の身の回りから離れたら悲しみますか?」

唯「悲しむよ」

純「では、十二番目ぐらいの人はどうですか?」

唯「……悲しむんじゃないかな、きっと」

純「意外ですね」

唯「そう?」

純「はい」

純「迷うことなく悲しまないと思ってました」

唯「二十番目ぐらいに格下げするよ、純ちゃん」



第一四〇話「悲しみランキング」‐完‐



純「冗談ですって」

唯「そう?まあ私も冗談だよ」

唯「友達にランキングなんかつけられないもん。
 憂は家族だから別格だけど」

純「成る程、つまり仲良しな人なら誰でも悲しむと」

唯「そうだね」

純「……じゃあ、私は唯先輩を少し悲しませるかもしれませんね」

唯「えっ?」

純「今日はこれで帰ります。
 治りかけとはいえ、安静にしておいてくださいね」

唯「ちょっと純ちゃん?どういうこと?」

純「まあ、その時が来たら話しますよ」

唯「今話せることじゃないの?」

純「それどころか、今決めた話なんですけどね」

唯「なら今すぐに話してよ!」

純「唯先輩は安静にしててください」

唯「ねえってば!」

純「……特に珍しいことでも無いですし、こんなに前もって伝えることでも無いと思いますが」



純「私、年末にバイトを辞めようと思ってます」



第一四一話「決意した日」‐完‐



唯「……ふーん。そうなんだ」

純「そうなんです」

唯「まあ、バイトだもんね、うん。
 純ちゃんは受験生でもあるんだし、仕方ないよ、うん」

純「そうです、仕方ないんですよ」

純「では、私はこれで帰ります。お邪魔しました」

唯「うん」

純「……えーと、どうかお大事に」

唯「うん」

純「……」

唯「早く行かないと、風邪うつっちゃうよ?」

純「そうですね」

唯「……」

純「唯先輩」

純「服の裾を掴まないでください。動けません」

唯「純ちゃんだって、病人の手を払えないほど弱っているようには見えないけど?」

純「振り払ってほしいんですか?違いますよね?」

唯「……純ちゃんのばか。分からず屋」

純「えいっ」

唯「本当に振り払った!?」

純「分からず屋と言われたので、つい」

唯「こっちの方が余計に分からず屋だよ!」

純「まあ、でもあれですよ。その分、約束はしますから」

純「それでいいですよね、唯先輩?」

唯「……わかったよ。それなら」

唯「私もそれに釣り合う約束をするよ」



唯「残りの二ヶ月、純ちゃんをびしばし働かせちゃうから」

純「私はそれを、精一杯笑ってやり過ごすことを約束しますよ」



第一四二話「約束した日」‐完‐



11
最終更新:2012年06月02日 21:36