純梓

梓「純~?どこに隠れたのー?」ガッチャガッチャ

純「・・・!~~~~っ!」ブルブルガタガタ

梓「早く出ておいでよー?早く私にそのモフ毛を刈らせてよー?」ジャギジャギ

純(に、逃げなきゃ!逃げなきゃっ!)ダッ

梓「あ、いたー♪」バッ

純「ひ、ひぃっ!」ビクビク

梓「待てぇええええっ!!」ジャギジャギジャギジャギ

終!



 登校した梓の目に、早速憂と話し込む純の姿が目に入った。

「おはよー」

 梓は大きな声で挨拶すると、二人の間に割り込むように座る。
恋人の純を、憂から隔離するように。

「おはよ、梓」

「おはよう、梓ちゃん」

 純がまず挨拶を返し、憂も続いた。

「ところで、純。
昨日貸してくれたラムシュタインのライブ映像だけど、とても良かった。
火炎放射カッコいいよね」

 梓は挨拶が終わるとすぐ、憂が関わってこないであろう話題を振った。
排他的な話題で、純を独占したかった。

 だがその話題には純よりも早く、憂が食い付いてきた。

「あ、私も知ってるー。純ちゃんからこの前、借りたんだ。
ちょっと過激かな、って気もするけど、歌自体は悪く無かったよ」

 自分と純だけの話題だと思っていた。
だが実際には、憂の方が一歩先んじて純からメディアを借りている。
純と憂だけの話題だったものに、自分が後発で入り込めたに過ぎないのだ。
その事が分かって、梓は不機嫌になった。

「借りといてネガティブな評価とか、
憂ってちょっと配慮に欠けるところがあるよね」

 梓は不機嫌を発散するように、言葉へと刺を込めた。
憂の戸惑った顔つきに、少しだけ胸がすく。

 梓の憂に対する対抗心は、純との交際が始まった時から芽生えたものだ。
憂と純は中学時代からの友人という事もあり、二人だけで経験してきた事が多い。
梓にはその事実が、どうしても許せなかった。

 だから、純が憂にだけ見せる弛緩した態度に、苛立ちを伝えてきた。
憂の部屋で漫画を読み始めた純へと、注意をした事もその一環だった。
自分の部屋のように振る舞える関係の証左として、梓には映っていたのだ。

「ちょっ、ちょっと梓。何言ってるの?」

 純が慌てたように、梓を窘めてきた。
やはり純は、梓よりも憂を大切にするのだろうか。

「へぇ、純ったら、憂の肩持つんだ?
恋人の私より、憂の肩持つんだ?
純に対する失礼な態度、窘めただけなのにね」

 梓の声は自然、挑発するような語調となった。

「梓っ、いい加減にしてよ。梓が変な絡み方するから」

「あ、純ちゃん、いいの、私が悪いから。私が謝るから」

 純の言葉を遮って、憂が割り込んできた。
そうして梓へと向き直ると、しおらしく頭を下げながら言う。

「ごめんね、梓ちゃん」

 ただ、憂の謙虚な態度よりも、純の視線の方が梓には気になっていた。
純の視線は怒気を孕み、自分を射ぬいている。

「私に謝ってどうするの?失礼な態度は、純に対して取ったんでしょ?」

 純の視線を逃れるように、梓は憂へと言った。
とにかく、憂が悪いという既成事実を作ってしまいたかった。

 梓の指摘を受けた憂は、素直に純へと向き直った。

「あ、そうだった。ごめんね、じゅ」

「いいよ、憂」

 純は憂の言葉を遮ると、梓の手を掴んできた。

「梓、おいで」

 梓が返事をする間もなく、そして憂が何か反応する間もなく。
梓は純に、廊下へと連れ出された。

「ちょっ、純。ホームルーム」

 純の強引な態度に、梓はふと不安を覚えて慌てたように言う。
時間の逼迫を伝える事で、純の行動を一旦止めたかった。

「いいっ。大切な、話があるから」

 だが純は取り合わず、そのまま早歩きを続けた。

 漸く純が梓の手を離したのは、ジャズ研の部室に入ってからだった。
ホームルームの時間帯という事もあり、室内には誰も居ない。

「じゅ、純。話って、何?」

 流石に、憂に対する態度を怒っている事くらい、梓にも察しが付く。
問題は、それで純がどういう措置を取るか、だった。
梓は不安になりながら、問い掛ける。

「いや、その。教えて欲しい事があって。
実は、前々から気付いてたんだよね。
梓が何か、憂を嫌ってるんじゃないかって事。何が、あったの?」

 激昂するだろうという梓の予想に反し、純の声は穏やかだった。

「別に。憂を嫌ってる訳じゃ、ないよ。
ただ……純が、憂と仲が良すぎるから……。
過去を共有してるだけあって、私が入り込めない空気を、二人が形成しちゃってて。
それが、恋人の私には悔しくて……。
うん、憂が悪い訳じゃないよ、勝手に嫉妬してる、私が悪いんだ。
憂には謝っておくね。もう、嫉妬心を露わにしたりもしないから」

 梓は今まで抱えてきた胸の痞えを、一思いに吐き出した。

「そう……。なら私から、梓に言っておきたい事があるんだ」

 純はそう言うと、続きを躊躇うように俯いた。
それが別れを切り出す前兆に見えて、梓は慌てて言う。

「い、いや。後でいいよ。ほら、ホームルームまでもう、本当に時間がないし。
憂にだって、早く謝りたいし」

「ま、待って。今、聞いて欲しい話なんだ。
こういう話は一旦言うタイミングを逃すと、ちょっと言い難いから」

 ならば、このタイミングからさえ逃れてしまえれば。
別れ話を切り出されずに済むのだろうか。
そう思った梓は、踵を返して言う。

「いや、本当に時間ないから。早く、戻ろうっ」

「ちょっ、待って」

 歩き出そうとした梓の肩を、純が掴んできた。
そのまま、純が続きを放とうとする。

「いや、聞きたくないっ、別れたくないよっ」

 梓は涙交じりに叫んだ。

「そういう、話じゃないよ」

 対する純の声は、あくまで優しかった。
梓を逃がすまいとする腕の力とは、対照的なまでに。

「あのね、梓が憂に嫉妬する必要なんて無いんだよって事、教えてあげようと思って」

「え?」

 続けられた純の言葉に、梓は顔を上げて応じた。

「私と憂の過去に梓は嫉妬してるみたいだけど。
私と梓はさ、これから未来を共有するんだから、嫉妬する必要なんてないでしょ?
その未来には、その、梓以外には見せられないもの、
梓以外とは経験できないもの、あるんだし」

 純はそこまで言うと視線を逸らし、顔を羞恥に赤らめた。

「それって……つまり……」

「ハジメテ、とか」

 純は顔の紅潮を深めると、慌てたように歩き出した。

「さぁ、話は終わり終わり。ホームルームが始まっちゃうから、戻るよ」

 今度は、梓が純を引き留める番だった。

「だーめ、今度は私の用事があるから。
えっと、まずは、ありがとね、純。
これで、心の底から、憂に謝れそうだよ。
憂に醜い思いを抱く事なく、友達やってけそうだよ」

「そ、そう。それは良かった。じゃあ、戻ろ」

「だから、用事があるんだって。
今から行っても、どうせホームルームには遅刻確定だし。
憂に謝ろうにも、私語と見做されて先生に注意されちゃうし。
だから、午前中いっぱいはここで、二人っきりで時間潰してよ?」

 純は時計と梓を見比べた後、頷いた。

「まぁ、そうだね。私も、梓と二人っきりで、居たいし。
憂には開口一番、謝ってもらいたいし。
それに幸いここには、時間潰す物、いっぱいあるものね。
音楽機材は色々あるから、練習でも」

「何言ってるの、純」

 梓は妖艶に笑うと、純を近くの机へと押し倒した。

「あ、梓……?」

「時間は、純と私のハジメテで、潰そう?」

 純は何も言葉を返さなかった。
ただ、制服のタイを緩めただけだった。それだけで、答えは十分だった。

<FIN>



憂菫

ガチャ
憂「あれ?今日はスミーレちゃんだけ?」

菫「はい。直は弟さんが風邪引いちゃったらしくて部活お休みです」

憂「そっかぁ。純ちゃんは今日は塾だし、梓ちゃんは進路指導受けるから今日は来れないんだって」

菫「皆さん受験生ですものね。仕方ありません」

憂「なるべく誰かは来れるようにはするけど、全員揃うのは滅多になくなっちゃうかもしれないね」

菫「そうですか・・・」しゅん

憂「んー、とりあえずティータイムにしよっか?」

菫「はいっ」

憂「はい、今日のおやつはクッキーだよ~」

菫「わぁ、私憂先輩のクッキー大好きです!」

憂「ありがと菫ちゃん」

菫「お茶は私が淹れますね」

憂「菫ちゃんが?」

菫「はいっ!こう見えてメイドなんですよ?任せて下さい!」つるっ

憂「あ」

菫「あ」

ガチャーン!

憂「菫ちゃん、怪我無かった!?」

菫「は、はい。すみません。私から言い出しておいて、皆さんのカップを・・・」

憂「ううん。気にしないでね」

菫「い、今片付けっ・・・痛っ!」ザクッ

憂「菫ちゃん!?」

菫「あ、あはは、指切っちゃいました」ポタポタ

憂「菫ちゃ、血がっ!」

菫「えとっ、そんなに大げさな傷でもないですよ?あはは、舐めておけば治っちゃいます!
もう、自分から言い出してこの様なんだから本当に私って・・・」

憂「あむっ」ちゅぱっ

菫「ひゃっ!?」

憂「ちゅっ、ちゅぱっ、ちゅ」れろっ

菫「うううう憂先輩!?」ドキドキドキドキ

憂「んっ・・・これで大丈夫かな?」

菫「あぅ、あ、あの、はい」
菫(う、憂先輩に指舐められちゃったよぉ)ドキドキドキドキ

憂「菫ちゃんはあわてんぼうだね。気をつけないとダメだよ?」なでなで

菫「・・・はいっ」

その時以来、憂先輩のことが気になって仕方ありません




【唯澪】

澪「はあっ!」 サッ

唯「なんのっ!」 キンッ!

唯「隙ありっ! とおっ!」 シュッ

澪「させるかっ!」 カキン!

澪「これでどうだ! うりゃぁっ!!」 シュバッ

唯「どっこいっ!!」 ギャリン!


和「あの子達何してるの?」

紬「ケーキの苺を守る練習だって」

和「なんの意味があるのかしら?」

紬「さあ」

律「……お前らのせいだっての」


澪「まだまだぁっ!」 シュッ

唯「そりゃあっ!」 ギンッ!


おしまい



【唯澪】


唯「みおちゃんはさ」

澪「ん?」

唯「恥ずかしがりやさんだけどカメラ持ってるよね」

澪「恥ずかしがり屋が持っちゃいけないってことはないだろ」

唯「ん、そーじゃなくて。自分を撮ることもあるでしょ? 恥ずかしくないのかなーって」

澪「まぁ極力写らないようにしてるけど、でもある程度は慣れたよ、正直なところ」

唯「つまんないねー」

澪「失礼なやつだな」

唯「つまんないから澪ちゃんの恥ずかしい写真を撮ろうと思います」

澪「・・・この前の寝顔でいいじゃないか・・・」

唯「あれはあれで恥ずかしがってたね」

澪「寝起きにカメラ向けられてたら誰だって驚くし恥ずかしがるって」

唯「だから今度は正面から恥ずかしがってる写真をね!」

澪「理屈はよくわからないけど正面から言われて認めると思うか?」

唯「でも、慣れたんでしょ?」

澪「うっ・・・ま、まぁね、慣れた・・・かな」

唯「じゃあいいよね」

澪(・・・まぁ、無理して笑え、とかいう注文つけられるよりマシか・・・
   たとえ硬い表情でも恥ずかしがってさえなければいいんだし)

唯「さわちゃんに頼んでとっておきの服を送ってもらおうかな」

澪「それはやめろ」

唯「じゃあとっておきの秘策を出すよ!」

澪「二個目にしてとっておきって」

唯「必殺!澪ちゃんぷにぷに大作戦!」ガタッ

トコトコ

澪「唯? 後ろに回って何を・・・ひゃんっ!」

唯「えへへー、澪ちゃんのおっぱいぷにぷに~」モミモミ

澪「こ、こらっ、やめっ、揉むなぁ!」

唯「え~いいじゃん、私と澪ちゃんのカンケイじゃん・・・もみもみ~」

澪「ひゃっ、あっ、やめっ、ダメだってばぁ!」

唯「もみもみ~」

澪「んっ・・・ん! ゆ、ゆい、ほんと、やめて・・・こういうのは、そんな、昼間っからすることじゃ・・・」

唯「・・・今だ! シャッターチャンス!」パシャ

澪「・・・・・・ふぇ?」

唯「・・・ふふっ、バッチリ撮れてるよ、気持ちよさそうな澪ちゃんの顔」

澪「・・・え、ええっ!? ちょっ、唯、なにを・・・」

唯「はい、ここで問題です。この写真は恥ずかしい写真? 恥ずかしくない写真?」

澪「・・・恥ずかしい・・・って、ちょ、何だよそれ! ちょっと話が違わないか!? 私の恥ずかしい表情を撮るんじゃなかったのか!?」

唯「澪ちゃんの恥ずかしい写真、だよー。そういう意味では及第点、でしょ?」

澪「うっ・・・わ、わかった、私の負けでいいから、誰にも見せるな! 今すぐ消しなさい!」

唯「えへへ、やったー。じゃあ消すから、ご褒美ちょうだい?」

澪「・・・な、なんだ、ご褒美って」

唯「・・・私にもおんなじこと、してくれる、とか・・・?」

澪「っ・・・」ゴクリ


おわろう



【唯憂】

唯「い~、だ!」

憂「べー、だっ!」

唯「ふんっ! 憂なんて、ふんっ!」

憂「お姉ちゃんこそ、ふんっ! ふんっだ!」


純「あれ何してるの?」

梓「姉妹ゲンカごっこだって」

純「ごっこ?」

梓「したこと無いからやってみてるらしいよ」

純「へえ……」


唯「もう憂なんてきらーい!  嘘だけど」

憂「お姉ちゃんなんてもう知らないからね!  嘘だけど」


純「……相変わらず仲いいね」

梓「……そうだね」


また「おしまい」書くの忘れた



最終更新:2012年06月20日 23:27