唯「そうだよね…ちゃんと話さなきゃダメだよね…
分かったよみんな、ちゃんと話すね
えっと…うぅ…本当に急だし勝手なんだけど…
私今日で…
けいおん部を辞めます」
律澪紬梓憂「えっ!」
憂「そんなぁ…」
律「アハハな、何言ってんだよ唯」
紬「そうだよ唯ちゃん。こんな時に冗談なんて」
梓「そ、そうです悪趣味です」
澪「(やっぱり…)」
唯「みんなごめんね…冗談じゃないくて、私ね本当にけいおん部を辞めようと思ってるの」
律「ふ、ふざけるなよ。ちょっと待てよ唯」
憂「そうだよお姉ちゃん!私お姉ちゃんと音楽やりたくてけいおん部に入ったんだよ
それなのに」
澪「ちょっとみんな落ち着け!」
律「落ち着けって!澪分かってるのか!唯が部を辞めるっていってるんだぞ」
澪「分かってるよ。けどまずは唯の話を聞くのが先だろ」
律「それは……そうだけど…」
梓「…ぁたしの…」ウルウル
唯「あずにゃん?」
梓「ぁたしのせいですか?あたしが先輩に酷い事…言ったから…
グス私が悪いんですね…私そんなつもりじゃ…」
唯「違うよ!あずにゃんのせいじゃないよ!」
梓「ごめんなさい私先輩に酷い事…
あやり…ますか…ら
なんどでもグスン…ぁあやま…ヒックりますから…何でも…しますからグス
せんぱい…やめないで…やめないで」
澪「ちょっと梓落ちつけ」
梓「だってしぇんぱいがぁ…うわぁーーーん」
紬「梓ちゃんいったん座りましょう?ね?」
梓「せんぱぃ…グス…ヒック」
澪「よし、とりあえずみんな落ち着いて唯の話を聞こう
まず唯、けいおん部がイヤになったのか?」
唯「ううん!そんな事ないよ」
紬「だったら何で!?」バタン
梓「うぅ…せんぱぃ…ごめんなさぃ…せんぱぃ…」
澪「ちょっとムギも落ち着けって座って座って
梓も話が前に進まないから、な?
唯順番に話してくれ。何でけいおん部をやめたいなのか?この2週間何をしていたのか?」
唯「うん…分かった
えっとまずは私が音楽室を出てった後、家に帰って料理をしようと思ったんだ
憂に姉らしいところを見せたくて…でも結局失敗しちゃって憂にまた迷惑かけちゃって」
憂「お姉ちゃん迷惑なんて私」バタン
澪「憂ちゃん今は唯の話を聞こう」
憂「ぅ…すいませんでした」ストン
唯「それでお風呂に入って考えたんだ私って今まで全部憂に頼ってばっかりだったって」
憂「そんな事!?」
澪「憂ちゃん!」
憂「………」
唯「憂もけいおん部に入っくれて私本当に嬉しかった
けど憂がこの1週間疲れてるのも感じてたんだ
そりゃそうだよね、
けいおん部の練習の後、家事全部やって寝る前に宿題やギターの練習
これだけやったら疲れて当たり前だよ」
憂「お姉ちゃん…」
唯「だから憂の負担が減ればと思ってまた次の日料理したんだ
結局あんまり上手くはいかなかったけど、
憂は美味しいって言って笑ってくれたんだ」
憂「本当に美味しいかったよ」ウルウル
唯「ありがとう憂。
でね、その笑顔を見たとき私もスッゴい嬉しかった
たくさん失敗したけど、それを吹き飛ばすくらい嬉しくて、それでこの笑顔またみたいな~って」
澪「それで部活に来ないで、家に帰って料理を?」
唯「うん…けいおん部にはあんな事があってちょっと行きづらいってのもあったから…
けどそれよりも、
もぅ一回美味しいって言葉が聞きたかったから、次の日も本を見ながら作って
それを憂はまた美味しいって言ってくれた。
そしたら止まらなくなって…
授業中もずっと今日は何作ろうか考えてた、どんな料理なら憂が笑ってくれるだろうって、
授業が終わったら材料を買って家で作ってを繰り返してた。」
澪「和が唯はやり始めたらまわりが見えなくなっちゃうって言ってたな…」
唯「うん多分それ当たってると思う」
澪「けいおん部はどうしようと思ったんだ?」
唯「その時は辞めるなんて考えていなかったよ
ただあの美味しいって笑ってる顔が見たくて
それしか考えていなかった。
部活に誘ってくれるムギちゃんやりっちゃんには本当に悪いと思ったけど…」
紬「唯ちゃん…」
律「……………」
澪「調理実習室に行ったのは何でだ?クッキーの為だけか?」
唯「ううん違うよ。
最初は料理の事で分からないことがあったて、
本みてもさっぱりだったから家庭科の授業終わりに先生に聞いたんだ。
そしたらその先生が顧問の家政部が、ちょうどその料理の調理法と似たものを作るからって、誘われて」
澪「それで見に行ったんだな?」
唯「うん!
私がけいおん部だって知ってる子がいて驚いてた。
それでグループに混ぜてもらって教えてもらったよ
私はへたっぴだからグループの子に迷惑かけちゃったけど
みんなフォローしてくれて最後はみんな美味しいって誉めてくれた。
憂の時と同じくらいポカポカした気分になれたんだぁ」
澪「それからは放課後、家政部に行ったのか?」
唯「ううん。行けなかった…」
澪「行けなかった?」
唯「家政部の子達の顔みたら、けいおん部のみんなの事思い出して、自分がみんなを裏切ってるって思った
だって家政部にいるときスッゴい楽しかったから…
それでちょうどその日に澪ちゃんから連絡もらったんだぁ」
澪「だから1週間時間をくれって言ったわけか」
唯「うん、自分でいろいろ考えたくて…
けいおん部は私が初めて熱中できた事だし、みんなの事は大好きだから」
澪「で、決めたんだな」
唯「うん…
最後にみんなに私の作ったもの食べてもらいたくて、家政部の人達にお願いしてクッキーの作り方を習ったんだけど、結局失敗しちゃった…
みんな本当にごめんなさい
せっかく私にギター教えてくれたのに」
紬「唯ちゃん」
梓「そんな…私は嫌です!私は先輩のギターに憧れてこの部活に入ったんですよ
その先輩がいなくなるなんて…
そんなのって…ヒック…そんなのって」
唯「あずにゃん…」
梓「一緒に…いてグス…くれるって…」
バンッッッ!!!!
澪「り、律!」
唯「りっちゃん…」
律「何だよそれ…
2週間ぶりに来たと思ったら辞めますって…しかも料理が作りたいからって
何考えてんだよ!」
唯「ごめんりっちゃん。けど私どうしても」
律「聞きたくないんだよそんな事!!!!
ハァ…ハァ…
なぁ唯?どうしちゃったんだよ…
2週間前は楽しくやってたじゃんか
言い過ぎた事は謝るからさ、また一緒に楽しくやろうぜ」
唯「………ごめん」グッ
律「…そうかよ…お前の気持ちは分かったよ
見損なったよ唯!お前はギターの腕を憂ちゃんに抜かれそうだからって逃げてるだけなんだよ!!!
そんな弱虫こっちから願い下げだ
もぅお前はけいおん部でも何でもない、それに私の友達でもないからな!
何だよクッキーなんか作って来て、
こんなマズいのしか作れないのに、何が料理だ!
こんなもんいらないんだよ!!!」
バン!!!!ボロボロ
紬「りっちゃん!!」
澪「律やり過ぎだぞ!せっかくの唯が私達の為に…」
律「うるさい!こんな弱虫なんて
弱虫なんて…大っきらいだ!!!!」
ダッダダダダ
バタン
紬「りっちゃん!」
ガタッ
澪「ムギ辞めとけ!今行っても逆効果だよ」
紬「そんなぁ……」
ストン
憂「ごめん…なさぃ…」ウルウル
唯「憂?」
憂「私がけいおん部に入らなければ、お姉ちゃんがけいおん部を辞めることも、律さんが怒ることもなかったのに…
本当に…ごめんなさい
私今すぐにけいおん部辞めます
だからお姉ちゃんけいおん部に戻ってきて
お願いお姉ちゃん」ウルウル
唯「憂…それはできないよぉ」
憂「何で!?それだったら誰も悲しまないよ!?
律さんだってお姉ちゃんがけいおん部に戻ったらすぐに許してくれるよ!」
唯「違うんだよ憂…
私が今やりたい事は料理なんだよ
誰かに私の料理なんてまだまだマズいし、へたっぴだけど、もっと上手くなってみんなに美味しいって言って欲しいんだぁ
正直今はその気持ちが、ギターを弾きたいって気持ちより大きいんだよ…
そんな人がけいおん部にいたって邪魔なだけだよ、きっと」
憂「そんな…」
唯「それに憂だって音楽やりたいって言ったでしょ
憂がけいおん部入るって決めた時
お姉ちゃんみていたらギターやりたくなったって言ってくれたよね?
私凄い嬉しかったよ。
だから憂はギターを悔いの残らないよう頑張って」
憂「お姉ちゃん…ゥゥ…お姉ちゃ~ん」ウルウル
ダキ
唯「憂今までありがとう
憂のサポートのおかげでたくさんけいおん部で思い出作れたよ。
だから次は私が憂を、美味しい料理でサポートするね」
ヨシヨシ
梓「ゅぃしぇんぱい…」グスグス
唯「あずにゃんも今までごめんね
先輩なのに足ひっぱっちゃって…
けどあずにゃんと一緒にできた半年間、スッゴい楽しかったよ。ありがとうあずにゃん…
ギター頑張ってね」
梓「やっぱりエッグ…イヤです…わたし…ゆぃせんぱいといっしょじゃないとイヤです」
唯「……ごめんね」
梓「うぅ…せんばぃ…」
ダキツキ
唯「ごめんねあずにゃん…ダメな先輩でごめんね」
ヨシヨシ
紬「唯ちゃん…掛け持ちじゃダメなの?」
唯「ムギちゃん…
ほら私って不器用でしょ?だから一つ覚えたらもう一つ忘れちゃうんだ
だから料理と音楽両方はきっとムリだよ…」
紬「そっか…」
唯「それに一生会えないわけじゃないんだよ、ムギちゃんとはクラスも一緒だし
私ムギちゃんが持ってきてくれたお菓子くらい、美味しいの作れるよう頑張るね。」
紬「……うん分かったわ。私は唯ちゃんを応援すわ
唯ちゃんが決めた事だもん!
例え部活が違ってもいつまでも友達だよ」
唯「もちろんだよムギちゃん」
澪「唯…」
唯「澪ちゃんさっきはありがとう
おかげで上手く話せたよ…
私がけいおん部辞めるって分かってた?」
澪「分からなかったけど、何となく覚悟はしてた。最初に電話で話したのは私だしな」
唯「さすが澪ちゃんだね♪
…ごめんねいつも損な役回りばかりやらせて!澪ちゃん大好きだよ」
澪「………………バカ唯///グス」
唯「へへへ♪
……でも最後にりっちゃんには嫌われちゃったな」
澪「グスッ…あいつはけいおん部の中でも一番唯と気があったからな、唯が辞める事を受け入れられないんだよ
…許してやってくれるか?」
唯「もちろんだよ!それに私が逆の立場ならりっちゃんみたいに怒ったと思うs…」
澪「唯…お前…」
紬「唯ちゃん涙…」
唯「あれ?あれ?おかしいな…ここにくる前にね、覚悟はグスッ覚悟は…きめてね…ヒックきたんだよ…
きらわれてもグスン…しょうがないt……」
ギュ
澪「唯もぅいいんだぞ」
紬「唯ちゃん」グスッ
唯「みぉ…ちゃ…ん……ぅぅうわぁーーー」
その日私達は音楽室でたくさん泣いていた
泣くことで何かが変わることはないけど、
それでも泣かずにはいられなかった。
そうして翌日からけいおん部に唯が来ることはなくなった。
――――――
―――
唯が辞めて1ヶ月がたとうとしていた。
その影響で軽音部全体にもかなり変化がおきている
まずリードギターが梓になり
梓の元のポジションを憂ちゃんが担当した。
唯がいない軽音部では当然の結果である
そしてもっとも大きな変化が
練習前のティータイムの時間がなくなってしまったのである。
しかもそれを実行したのは
普段から練習をしようと言っていた梓や私ではなく、
ティータイムの時間を唯と同じくらい楽しみにしていた律であった。
唯との話合いから3日間
律もまた部活に来なくなってしまった
私達はそれを仕方がないものだと受け入れ、律に部活に出るよう強制する事は無かった
しかし週明けの日
律はフラッと部にやってきた
まるで何もなかったように…
音楽室に来た律は挨拶もないまま、ドラムの椅子に腰かけるとスティックを持ちだし
練習し始めた。
無言の律に私達は唖然としていたが、
律に流されるよう各々楽器の準備を始めた。
全員の準備が終わると律は練習を辞めて、
初めて言葉を発し、3日間部活を休んだ事を詫びたが、そこに唯の話がでることはなかった。
その後私達は全員で練習した
次の日も、律は音楽室に来るとドラムの椅子に腰掛け練習を始めた
次の日も、その次の日も
翌週からムギがお菓子を持ってこなくなり、私達は音楽室に来たら部活をやるという、軽音部としてはヒドく当たり前の事をするようになり
ティータイムの時間はなくなっていった。
最終更新:2010年02月01日 02:52