この事態に一番ガッカリしていたのはさわ子先生だったけど
それなりに気をつかってくれてるのか
唯の事を知っている筈なのに名前を出すことは無かった


こうして私達は唯のいない放課後ティータイムをスタートさせた
けどもぅそれは以前とはまるで違ったものになっていたが、

それを指摘できる人は私も含め誰もいなかった。

―――――――
―――
12月某日
~音楽室~

律「なぁ~今年はクリスマス会やんないの?」


練習の合間のその言葉が異質なものに感じられる
1ヶ月前なら当たり前の会話なのに、今では音楽関係以外の話が部活中にかわされることはほとんどなかった


澪「律…今何て?」


律「だからもうすぐクリスマスじゃん。
クリスマス会去年やったのに、今年はやんないのて変だろ?だからやんないのかなぁ~って」


聞き間違えじゃなかった!?

澪「ぁ!そうだな。みんな予定がなければやってもいんじゃないか?」


紬「そ、そうね私もやりたいわクリスマス会」

ムギも珍しくテンパってるな、当たり前か…
律からこんな提案あるなんて思ってもみなかったもんな


憂「あたしも参加したいです」

律「梓はどうする?」

梓「も、もちろん参加するです」

律「よ~しじゃ全員参加な
さて場所はどうするか…ムギん家はダメかな?」

紬「ごめんなさい。私の家は今月いっぱい予定が入っているの…」

相変わらずどんな家だ


律「やっぱりか…私の家も弟が友達つれてくるらしいし、澪の家はパンツまみれだからな」

澪「誰がパンツまみれだ」ゴン

律「アィタ!ひどいわ!みおちゃーーん」

こうやって律につっこみ入れるのも久しぶりだな…

律「なら梓の家はムリか?」

梓「すいません家もちょっと…クリスマスから年末まで親戚が遊びに来るので…」


憂「ぁ、あの~私の家じゃダメですか?」

私達にとっては唯の家と言った方がいいのかもしれない
もちろん今となっては言えないけど


憂「両親はいませんし、料理も私が準備しますから…えっと…その」


律「本当!?いや~さすがに2年連続は悪いかなぁって思ったんだけど、いや~良かった
久しぶりに憂ちゃんの美味しいご飯が食えるなんてラッキーだよ

じゃあクリスマス会は憂ちゃんの家で決定

会費は1人1000円でプレゼント交換は私のお小遣いがもぅないので今年はなし。
んじゃとりあえず今日はこのへんで解散にしますか。
ではみんな~ごきげんようアハハ」
バタン


梓「何か、あからさまに憂の話しきりましたね…」

憂「すいませんみなさん…私余計な事いおとしてました」

澪「憂ちゃんが悪い訳じゃないよ」

誰も悪い人なんていないんだ

紬「そうよ憂ちゃん。せっかくのクリスマス会なんだから楽しみましょ」


梓「唯先輩は…」

澪「梓、分かってるだろ」

梓「…………やっぱりこんなのおかしいです」
タタタッ

憂「待って梓ちゃん。それじゃ澪さん、紬さん先に帰ります
梓ちゃん待って!!」
タッタタタ

紬「私達も帰りましょうか?」

澪「そうだな…」

―――――――
――――
同日
~帰り道~

紬「…………」
澪「…………」

澪「な~ムギ…」
紬「なぁに?」

澪「唯は元気にしてる?」

紬「…うん」

澪「そっか…」

唯は家政部に転部していた。
あそこなら料理の勉強はできるし、部活中に晩御飯の仕度もできる
まさに唯にとっては一石二鳥の部活なんだから当たり前か…


紬「この前メールで言っていたのだけど、最近は昼休みになると、家庭科室に言ってるみたいよ
唯ちゃんがいうには部活の子と、自分達が持ってきたオカズをシェアして食べてるんだって
私のはあんまり人気ないんだって、唯ちゃんボヤいてたわフフ」ニコ


澪「唯はまだ料理初めて間もないからしょうがないよ
けどきっとすぐに上手くなるよ」


紬「私もそう思う」

澪「律とはどうなんだ?あの様子だとまだ…」

紬「うん…やっぱりまだムリみたい」

澪「そうだよな…」

唯と律がケンカ以来初めて顔を合わせたのは2日後の教室での事だ

唯が教室につくとすでに律は机に頭を下げて寝ていたらしい

唯はムギに挨拶をし
次に迷いながらも律にも挨拶をしたが、律からの返事はなかった。

本当に寝ていただけとは考えられなかった

お昼になり普段なら3人で食べるところだが律はすぐに教室から出て行った、
ムギも唯も声をかける暇もなかったらしい。
私も気になって唯達の教室をのぞいたけど、唯とムギは暗い顔して機械的に箸を動かしていた


次の日も律より遅く来た唯は、律にそしてムギにも挨拶することはなくなっていた
昼休みに入ると今度は唯が教室を出て行ったそうだ

律も出て行こうとしたが、
ムギが止めて一緒にお昼を食べた
そしてその日から律が軽音部に戻ってきてくれた


「私その日の朝に唯ちゃんにメールで呼び出されたの、
校舎裏の人気のないところでね、唯ちゃん言うの
教室内では私と話さないでって
りっちゃんの居場所がなくなるからって
泣きながら私に何度もお願いするの…
私…頷いちゃったわ

昼休みに入って唯ちゃんは無言でいなくなったけど、私止めなかった

その後すぐりっちゃんも立ち上がったけど、その時行かないでって叫んじゃった

クラスの子はみんなびっくりしてたけど、こうでもしないと、りっちゃんがいなくなっちゃうと思って、無我夢中だったの

りっちゃん困った顔してたけど、すぐに笑って
ムギ~びっくりするだろ~
って
そしてパン買ってくるからちょっと待っててって言ってくれたの。

ねぇ澪ちゃん私どうするのが一番良かったのかな?
私唯ちゃんにずっと友達って偉そうな事言ったのに
切り捨てたの…軽音部の為とかりっちゃんの為とか頭の中で言い訳して。
私唯ちゃんを裏切ったの…」


ムギがその日の放課後、私にそう話してくれた
淡々と話す彼女の顔には涙がでてないのが余計に悲痛で、私は何も言ってあげられなかった。


ムギはその後唯に時々メールをしている
彼女達が言葉を交わすにはこういう方法しか残されてなかった。

結局私達のために、唯は自ら犠牲になった…
ただそうする事でしか、どんな形でさえ軽音部を続けることは不可能なのも事実だった。

だからこそ暗黙の了解でけいおん部内での唯の話はタブーとなっている
ドラムまで…イヤ律まで失いたくないというのはみんなの願いだったから。


紬「りっちゃんは何でクリスマス会提案したのかしら…」

澪「多分あいつもけいおん部が今みたいになった事に責任を感じてるじゃないか
だけど素直には言いづらいからクリスマス会の事を持ち出したんだよ」

紬「私達前みたいに部活できるのかな…」

私はまたムギの問いにこたえられなかった


―――――――
――――
クリスマス会当日
~平沢家付近~

律「いや~しっかし久しぶりだな~憂ちゃん家」

澪「そうだな…」

律「梓はクリスマス会初めてだもんな!一発芸考えてきたか?」

梓「ぃ、一発芸なんて聞いてないです!」

律「まぁ~梓はいざとなれば猫耳にシッポで大丈夫だからな~
その為に今日これないさわちゃんから猫耳預かってきたんだし」
ヒョイ

梓「絶対にしないです!一発芸でコスプレなんでバカのやることです」


澪「すまん…バカで…」

律「梓…去年コスプレした澪に失礼だぞ!」

梓「ぁ違うんです澪先輩!私その知らなくって…ごめんなさい
もぅ律先輩のせいですよ!」

紬「まぁまぁまぁまぁまぁ。
澪ちゃんも似合ってたわよ」

律「まぁ今年はもう少し落ちついてやるか!さわちゃんいない事だし」

澪「………(先生だけじゃ…)」


――――――
―――
数分後
~平沢家~

律澪紬梓「おじゃましま~す」

憂「みなさんようこそ。コート預かりますね」

律「すでに玄関からいい匂いがぁ~」

憂「久しぶりに料理したんであんまり自信ないんですけど//みなさんあがってください」
ガチャ

律「おぉ~~なんじゃこりゃ!?」

梓「これ憂が1人で作ったの?」

憂「ぅ、うん!」

澪「料理の腕は健在だな」

紬「本当ね~」

律「よし!ここにけいおん部クリスマス会の開催を宣言する
今日は食うぞ~~」

澪「コラ律!!1人で食うな」

紬「りっちゃんたら」ニコニコ

私達は久しぶりに笑いあった
それが無理矢理な笑顔だとしても今は必要なんだと思う


――――――――――
―――
1時間後
~リビング~

律「いや~食った食った
ちょっと私はお手洗いにいこうかしらん」

梓「先輩言葉使いがなんか気持ち悪いですよ」
律「そんな事言う奴にはくらえ猫耳!」

スチャ
梓「わぁぁ勝手につけないでください」

律「ハハハハッ」
ガチャ

澪「まったく律の奴は」

紬「けどりっちゃん久しぶりよね、あんなに笑ってるの」

憂「……………」

澪「憂ちゃん…唯は今日どうしてる?」


憂「お姉ちゃんは…朝からでかけてます」

澪「そっか…クリスマス会の事は知っているのか?」

憂「はい…私はお姉ちゃんにも参加して欲しかったから…」

梓「だから自分の家を指定したんだよね?」

憂「うん…けどお姉ちゃん参加できないって、
その日は予定があるって言ってました。」

紬「気を使ったのね…唯ちゃんらしい」

憂「実は…
ここの料理の半分はお姉ちゃんが作ったものなんです」

澪「本当なのか!?だって美味かったぞ」

梓「澪先輩何気に失礼ですよ。けどホント美味しかった」


憂「朝私が起きたら何品か冷蔵庫に入ってたんです
私が寝たあとから作り始めたみたいで…」

紬「唯ちゃん…」

梓「先輩…」ウルウル

澪「ぁ梓泣くな!そろそろ」

ガチャ
律「田井中律只今トイレから帰還しました。ってあれ?何で梓が泣いてんだ?
ってまさか…」

澪「いや違うんだ、」

律「澪に無理矢理猫耳つけられたな!
何て悪い奴だ!」

澪「つけたのはお前だろ」ゴン

律「アィタァ!」

澪「梓はあれだ、あの…ぁ欠伸だ欠伸
今日が楽しみで寝れなかったんだって」

梓「な!?」


律「はぁは~ん梓はまだまだお子ちゃまだな」ニシシシ

澪「(梓ここは我慢だ)」ジーーー
紬「(梓ちゃん耐えて)」ジーーー

梓「(否定したいけど視線がいたい…)
楽しみだったんだからしょうがないです//」
律「可愛い奴め、よしそんな梓の為に一発芸で盛り上がるぞ~」

律は楽しそうだった
この数日間、一番辛かったのは律だったのかもしれない…
律が笑ってくれてるのは嬉しいけど、やっぱり唯がいない事は寂しかった


――――――
―――
同時刻
~真鍋家~

「ゅ………………ゅ……ぃ……唯」

唯「ぅ…ふぇ?」

和「そろそろ起きなさい。もう3時よ」

唯「ぅん…ふわぁ~ありぇ?ホントだ!いつの間に!」

和「唯ったら8時間ずっと寝っぱなしなんだから」

唯「ごめんね和ちゃん。ベット占領しちゃって…」

和「別に気にしてないわよ。けどそろそろ作り始めないとクリスマス終わっちゃうわ」

唯「そうだね!よしやるぞ~」スタッ
唯「っておっとっと」

和「危ない!?」グッ

唯「うわぁ~」
ギュ

和「もぅ危ないんだから!あれだけ寝て急に立ちあがったらそりゃ足元もふらつくわよ。」

唯「アヘヘヘありがとう和ちゃん」

和「……………」
ヨシヨシ

唯「の、和ちゃん///急にどうしたの?//」
和「あんた8時間も私をほっておいて寝てたんだから、少しは私のやりたいようにさせなさい」
ヨシヨシ


唯「うぅ…それを言われると…けど…何か赤ちゃんみたいで恥ずかしいよ~///」

和「たまには良いじゃない、私達遊ぶの久しぶりなのよ」


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最終更新:2010年02月01日 02:54