奏紬「「 よろしくお願いします 」」


奈々穂「よし。
    会長同士の挨拶が終わったところで、我々の自己紹介といこう」

梓「いえ、会長は――」

律「いいから」スッ

梓「え?」

久遠「クスッ」

奈々穂「私がこの極上生徒会・副会長を務める、金城奈々穂だ」

久遠「同じく、極上生徒会・副会長を務める、銀河久遠ですわ」

唯「よろしくですわ」

まゆら「会計の市川まゆらです」

奈々穂「そして、私が統括する遊撃部の飛田と角元だ」

小百合「飛田小百合です」

れいん「角元れいんっす! よーろしくっすー!」

唯「よろしくっす!」

梓「唯先輩、適当に合わせないでください」

奈々穂「他にも居るが、まぁ、追々紹介することでいいだろう」

久遠「それでは、極上生徒会・隠密部を紹介いたしますわ」

唯「甘くて美味しいよね~」

律「それはあんみつな。って、隠密!?」

聖奈「そうで~す。隠密部のリーダーやってます、桂聖奈で~す♪」

梓「も、もしかして……NINJAですか?」

聖奈「私は違いま~す♪」

律「なんだ、発音が外国人みたいだったぞ、梓」

梓「少し、気が急いてしまって……」

奈々穂「気が急いだら発音がよくなるのか」

唯「私はってことは……いるんだね! 視線を感じるよりっちゃん!」

律「どこだ!?」

唯「あっちだよ!」

聖奈「違いま~す♪」

律「あっちじゃないらしいぞ」

唯「知ってたよ」フフン

律「少し、しずかにしていてくれ、唯」

久遠「勘がいいのかどうか、判断しかねますわね」

れいん「ねーねー、立ち話もなんだから座ろうよ~」

唯「そうだよ、ロングジャーニーでフットがスティックだよ!」

久遠「?」

梓「長旅で足が疲れたそうです」

小百合「どうぞ」

唯「ありがと~。はぁー、どっこいしょ」

奈々穂「そうだな。こちらの紹介は粗方済んだ。
    紅茶とお茶請けを持ってこさせるから座ってくれ」

唯「ティータイムだね!?」

和「こちらの紹介がまだなので、それは後にいただきます。おあずけよ、唯」

唯「」ガーン

律「お、やっと口を開いたな、我が学校の生徒会長」

奈々穂「なに……?」

久遠「奈々穂さん、情報不足ですわよ」

聖奈「それでは、あの特別ステージにて自己紹介をお願いしまーす!」

律唯「「 おぉー! 」」

梓「えぇー……」

まゆら「ちょ、ちょっと待ってください。いつの間にあんな豪華なステージを用意したんですか?」

聖奈「昨晩でーす♪」

まゆら「また予算を使ったんですね!?」

聖奈「そうでーす♪」

まゆら「」サラサラサラ

律「石化して風化してるけど、大丈夫か?」

奈々穂「あぁ、問題無い」

まゆら「ありますよ! いつも言っていますが、会計の私をちゃんと通してください~!」

和「桜が丘高校・生徒会会長を務めます、真鍋和といいます」

まゆら「ステージ使ってくださいよぉ!」

和「いえ、あれは少し恥ずかしいので、遠慮します」

聖奈「あら~、ざんね~ん♪」

まゆら「そんなぁ~……」

奈々穂「待て、奏会長と話をしているあの人、そちらの生徒会の人間ではないのか?」

梓「琴吹紬、愛称はむぎと呼ばれている軽音部のキーボード担当の雰囲気の柔らかい上品な方です」

小百合「……え?」

れいん「へ?」

久遠「早口で聞こえませんでしたわ」

和「文法も滅茶苦茶ね」

律「聞こえてたんかい」

梓「放課後に部室でティータイムをいただく時、むぎ先輩が用意してくれるのですが、
  これがまた上品な味わいで、のんびりとした空気を包んでくれて、素敵な時間を共有できます」

まゆら「え?」

純「え?」

奈々穂「えっと……?」

律「いや、おまえは知ってるだろ、純」

純「どうして私がここにいるんですか?」

律「知らねえよ!」

奈々穂「軽音部の部員ではないのか?」

純「チガイマス」

律「じゃあ帰宅しろ」

純「あぁ、今だけ! 今だけ軽音部ということで!」

律「しょうがないな、今日だけだぞ」

久遠「あら、それはベースですわよね」

純「一応持ってきました」ブイ

れいん「注目、着目、スポットライト! みんな! ステージ見て!」

唯『みなさんこんにちは、軽音部、ボーカルとギターの平沢唯です! どうぞ盛大なる拍手を!!』パチパチパチ

奈々穂「……」

久遠「……」

聖奈「……」

小百合「……」

まゆら「……」

梓「なんで純が来てるの?」

純「暇だったから」

律「わ、わぁー、ゆいさんすてきー」パチパチパチ

唯『りっちゃん、静粛に』

律「おいッ!」

和「生徒会室にステージを設けるなんて、凄いですね」

久遠「えぇ、基本的になんでもありですから」フフッ

奈々穂「宮神学園極大権限保有最上級生徒会。略して――」


ガチャ


りの「お、遅れてすいませ~ん!」

奏「りの!」

紬「?」


ガッ


りの「うわぁ! なにもないところで蹴躓いちゃったー!」

プッチャン「状況を説明してる場合かよ」

純「あの歳で腹話術師か……多才だ」

奈々穂「飛田! 角元!」

小百合「御意」サッ

れいん「がってん!」サッ


スッ


りの「わぁー、転ばぬ先に布団だよぉー」

律「なんでだよ」

奈々穂「しまった! 枕が間に合わないッ!」

和「……」


シュー

ストン

モフッ


りの「ふぁ~、暖かくていい気持ち~」

プッチャン「最高だぜこりゃあ」

聖奈「なんとか、間に合いましたね~」チラッ

???「……」コクリ

シュッ


奈々穂「よし。そのまま部屋の端っこまで寄せておけ」

れいん「がってん承知でアイアイサー」

小百合「了解」

りの「むにゃむにゃ」ズサー

プッチャン「世話かけるな」

小百合「気にするな」

香「大変です副会長!」


ドンッ

ポロッ


小百合「めがね、めがね……」

香「あっ、ごめんなさい! 小百合先輩!」

梓「和先輩、メガネ貸してくれますか?」

和「?」スチャ

梓「どうですか?」

和「視界が悪くなっただけで、手探りで探すほどじゃないわね」

梓「ですよね。お返しします」

純「和先輩のああいうお約束事、見てみたい……!」

小百合「めがね、めがね」

れいん「こっちだよ、小百合」

小百合「うむ、かたじけない」

れいん「いいってことよー」

奈々穂「ふむ、一段落着いたな。香、そちらの方は誰だ?」

香「そうです! 不審者を連れてきました!」

澪「……」

律「……あ」

唯『じゃじゃーん、ぎゅぃぃん』

梓「誰も見ていませんから、降りてきてください」

唯『えぇー!?』

香「ほらっ、歩きなさい!」

澪「い、いや、私はだな……」

奈々穂「私服で構内を歩いていたのか、確かに不審なヤツだ」

香「そうなんですよ!」

澪「せ、制服は……」チラッ

律「島流しにしましょうぜ、旦那」

奈々穂「うむ」

久遠「そうですわね」

澪「おいッ!」

聖奈「あらあら~♪」

純「澪先輩に対する不届き千万、成敗致す!」サッ

れいん「おっ、中々いい動きするねぇ」

香「な、なんですか?」

純「澪先輩には指一本――」

プッチャン「はむっ」ガブリ

純「ふぎゃー!」

小百合「なにをしている」

プッチャン「目の前に足があったら噛まずにはいられないのさ」

小百合「客人に無礼を働くな」

プッチャン「へへっ、すまねぇな」

律「いやいや、あのメガネの子、人形と自然に会話してるぞ」

奈々穂「今寝ている人形の持ち主蘭堂りのとは別に、人形自身が意思を持っています」

律「意思ねぇ……。ってすごいな」

奈々穂「まずは不審者をどうするか、だな」

律「無人島に一人で一泊、というのはどうだ?」

澪「いい加減に紹介しろっ!」ゴスッ

律「いひゃい!」

聖奈「こちらの方は秋山澪さん。みなさんと同じく、軽音部所属ですよ~」

奈々穂「な、なんだと!」

久遠「……」

香「あ、そ、その、ごめんなさい!」ペコリ

澪「いや、気にしないでくれ」

香「で、でも……もう少しで島送りになるところでした」

澪「それくらい、どうってこと――」

れいん「あー……あそこの島かぁ……。夜に変な声が聞こえてきて怖かったぁ」ブルブル

小百合「うむ」

澪「ど、どど、どうってこととどと」

律「どうってことないそうです」

奏「それじゃあ、行きましょうか」

紬「まぁ、楽しそう~」

まゆら「ちょ、ちょっと待ってください。……今からですか?」

奏「えぇ。軽音部のみなさんも招待いたしましょう」

奈々穂「いえ、会長。みなさんにも都合ってものが」

唯「そうです。私たち受験生ですから」フフン

梓「八月の前半、丸々消費したじゃないですか」

唯「思い出作りだよ! 無人島だよあずにゃん!」ヒャッホゥ

梓「乗り気じゃないですか! 先輩方はもっと勉強をですね――」

紬「あら、ダメ?」

梓「行きましょう」

純「おいっ」ビシッ

奈々穂「会長、こちらも予算の都合というものがありまして……」

まゆら「副会長……」キラキラ

奏「ダメ?」

奈々穂「行くぞ! 極上生徒会、全員に告ぐ! これから無人島探検だッ!」

聖奈「船のチャーター完了しました~♪」

まゆら「珍しく副会長から常識的な意見が出たと思ったのに」シクシク

れいん「よっしゃー! 夜が来なければなんとかなるなる~!」

小百合「それはない」

久遠「やれやれ、ですわね」

香「あぁ、行きたいけど、行けないぃ~!」

わかな「私にいい考えがあるわ」

香「わかな先生……?」

紬「みんなの予定はどう?」

律「暇」

純「右に同じく」

梓「しょうがないですね」ピッピップ

trrrr

澪「なにをしにここまできたんだ……?」

紬「せっかくだからお言葉に甘えましょう~」

和「そうなんだ、じゃあ私生徒会行くね」

唯「どこの生徒会行くの!? 唐突すぎるよ和ちゃん!?」

りの「うへへ、もう食べられないよ~」ムニャムニャ

プッチャン「能天気だな、まったく」

紬「気持ちよさそうに寝ている彼女は?」

奏「書記の蘭堂りの、です」ニコ

………

…………


――― 無人島 ―――


さわ子「なんでここにいるのよォ!」ブンッ

ペチン

律「そう言い放ち、彼女は無人島のしおりを非情にも地面に叩き付けた」

純「怒りである」

りの「あぁ~、船の上で一生懸命制作したのにぃ~」シクシク

プッチャン「生徒の苦労を無にするとは、教師の風上にも置けねえな」

さわ子「ッ!」ギロッ

プッチャン「俺に脅し入れようってのかぁ? 女だからって容赦――」

さわ子「……」パシッ


シュルルル

パサッ


プッチャン「」

りの「プッチャン!」ガーン

律「彼女が無慈悲に叩いた人形は、硬いアスファルトの上に無惨にも横たわるのであった」

純「怒りである」

律「純、ワンパターンになってるぞ。もうちょっと捻りを入れないとだな……」

純「はい、勉強させていただきます」

さわ子「なんなのよあなたは、人形なんかに代弁させて。失礼じゃない」

りの「え、えっと……」

歩「その人形はただの人形ではありません」

りの「アユちゃん! あれ、でも、バイトで来れないはずじゃ……?」

歩「シフト変更してもらったの☆」ウィンク

律「ただの人形じゃないってどういう意味だ……? 腹話術にしちゃ巧すぎると思っていたけど」ヒョイ

歩「ダメですっ! それを手にはめては!」

純「律先輩、ご教授を放棄しないでください」

律「あぁ……、これでも読んで勉強しとけ」

純「はい。って、これ無人島のしおりじゃないですか!」ブンッ

ペチン

りの「ひどいぃ~」シクシク

プッチャン「まぁ、今日の予定表を即席で作っただけの代物だからなー」

律「うわっ! 喋った!?」

純「律先輩上手ですね」

律「ちげえ! この人形が勝手に喋るんだよ!」

プッチャン「世の中には知らないでいい事がたくさんあるんだ」

さわ子「……」

律「なんだこれ、離れねえ……!」グググ

歩「だから言ったのに……」

プッチャン「それはそうと。おい! メガネ教師!」

さわ子「……」パシッ


シュルルル

パサッ


プッチャン「」

りの「プッチャン!」ガガーン

梓「すいません、ここにむぎ先輩来ていませんか?」

歩「私と同じ髪型……?」

律「怖ぇ……! この人形怖ぇ!」

梓「なんですか、また妖怪の類ですか」ヒョイ

りの「プッチャンは妖怪じゃないよー」プクー

さわ子「……」

歩「だから、なんで手にはめようとするんですか!」

プッチャン「やれやれ」

梓「え?」

プッチャン「なんだよ、俺がそんなに珍しいか?」

梓「純、キャッチボールしよう」

純「おっけー」

りの「?」

梓「えいっ!」ブンッ

純「ボーク!」

梓「外れないか……」

プッチャン「俺をボールにするんじゃねえ!」


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最終更新:2012年07月12日 21:52