???「っ!」スッ
***「それを納めてください、琴葉さん」
琴葉「断る」
***「琴葉さんの背中に突きつけているもの、なんだか分かりますか?」
琴葉「人差し指」
***「正解です」
梓「?」
琴葉「!」サッ
***「!」サッ
梓「話し声が聞こえたような……?」
シュタッ
琴葉「神宮司家の秘密は漏らしてはいけない」
***「それは知っています」
琴葉「私は任務を遂行するのみ」
***「……」
琴葉「邪魔をするなら、貴方とて排除せざるを得ない」スッ
***「……」スッ
聖奈「は~い、そこまで~」
琴葉「聖奈さん……」
聖奈「琴葉ちゃん、投剣はしまってくださいね~」
琴葉「……」
***「……」
聖奈「歩ちゃんも、ね?」
歩「……はい」
聖奈「よろしい♪」
ガサガサッ
琴葉「!」サッ
歩「!」サッ
梓「あれ……?」
聖奈「どうかしましたか~?」
梓「聖奈さんの他に誰か居ませんでしたか?」
聖奈「ふふっ、どうでしょう~」
梓「?」
聖奈「道に迷いましたか?」
梓「いえ、むぎ先輩を探していたんですが」
聖奈「……」
梓「奏さんと話し込んでいるようなので、邪魔しちゃいけないと思って声をかけるの止めました」
聖奈「なにか、聞きましたか?」
梓「……」
聖奈「……」
梓「多分、重要なことだと思いますけど」
聖奈「けど?」
梓「忘れることにします」
聖奈「……どうして、ですか?」
梓「質問が多いですね」
聖奈「大事なことですので♪」
梓「それを言われると、重要性が高くなるような気がするんですが」
聖奈「うふふ♪」
梓「その重要なことに触れると『奏さんの今』を壊してしまいそうだから、忘れることにします」
聖奈「そうですか」
梓「……それでは、私は戻ります」
スタスタスタ
聖奈「……だ、そうですよ♪」
シュタッ
琴葉「……」
ガサガサッ
琴葉「ッ!?」
唯「あり?」
聖奈「まぁ、唯さん。どうしてここに」
唯「あずにゃんの匂いに引き寄せられたんだよ」クンクン
琴葉「……気配を感じなかった」
唯「後ろからむぎちゃんの気配を感じるよ」キラン
紬「あら、こんなところでどうしたの?」
唯「むぎちゃん、料理班ってどこか知ってる?」
紬「えっと、向こうに煙が立っているでしょ?」
唯「あ、ほんとだ~」
紬「道に迷ったのね」
唯「ち、違うよ、冒険してたんだよ」
紬「みんなのところに戻りましょうか」
唯「助かるよ~」
スタスタスタ
聖奈「迷っていたんですね~」
琴葉「何者?」
聖奈「さぁ♪」
奏「私たちも、参りましょうか」
聖奈「そうですね」
琴葉「……会長」
奏「分かっています。彼女になら、知られても平気でしょう」
琴葉「……」
聖奈「琴吹さんとどんなお話を?」
奏「ただの世間話です。他愛の無い……世間話をね」
聖奈「そうですか♪」
琴葉「……」
奏「琴葉も、行きましょう」ニコ
――…
りの「アユちゃん、どこ行ってたの?」
歩「ちょっとね、デザートの果物を採ってきたの」
プッチャン「おい、そりゃあ……」
りの「わぁ、ドリアンだぁ」
香「置いてきなさい!」
歩「持ってくるの大変だったんだけどな」
香「ダメなものはダメよ! 家の家計が苦しいの分かっているでしょ!?」
歩「???」
プッチャン「いつまでトレンディードラマやってるつもりだよ」
香「こ、こほん」
律「まぁまぁ、ものは試しだ。食してみようぜ」
和「はい、包丁」
律「私が切るのかよ。……まぁ、いいけど」スッ
憂「律さん、向こうの台でお願いします」
香「行ってらっしゃいませ」
律「う、うん。……匂いがキツイとは聞いていたけど、そこまでなのか?」
みなも「さぁ~? みなも知らな~い」
りの「わたしも知らな~い」
プッチャン「おいりの、引き返せ! 俺を巻き込むんじゃねえ!」
歩「私も気になるな」
シンディ「ノー、プロブレム。グッバイ」
りの「シンディさんも問題ないって言ってるよ?」
プッチャン「大有りなんだよ! 別れの言葉使ってたじゃねえか!」
唯「どうしたの~?」
紬「りっちゃんが持ってるそれは……」
紬「憂ちゃんの手伝いしてくるね!」スタコラサッサ
律「マジかよ……」
歩「あ……」
琴葉「……」
奏「あら……」
聖奈「み、みなもちゃん?」
みなも「どうしたのお姉ちゃん?」
聖奈「そ、それをどうするつもりなの……!?」
みなも「律さんのドリアン解体ショーで~す♪」
律「……」
奏「りの、向こうでリリアンしましょう?」
りの「奏会長……、すいません、後でいいですか?」
奏「りの……」
聖奈「そうだ、久遠さんと打ち合わせをしなくちゃ」スタコラサッサ
奏「奈々穂さんと来月の定例会議の日程を決めなくては」スィー
歩「行かないの?」
琴葉「……私も失礼する」
りの「琴葉先輩も見ていきましょうよ」ガシッ
琴葉「ッ!?」
プッチャン「へっへっへ、そのまま離すなよりの。道連れは多い方がいいからな」
律「よし……。やるか……」
唯「りっちゃん、こんな大きい果実を切るなんて凄いね」
律「えっと、唯が切るか?」
唯「?」
みなも「りつさ~ん、早く~」
律「うーん……みんなの反応を見ると、切るのに抵抗が生まれたんだよなぁ」
歩「はやく~」
琴葉「ッ!!」フルフル
りの「はやく~」ルンルン
律「まぁ、大丈夫だろ」スッ
サクッ
律「おぉ、こんな――」
モワァ~
律「散れッ!」サッ
歩「!」サッ
琴葉「!」サッ
みなも「ふぎゅっ!?」
りの「ふぎゃぅ!?」
プッチャン「うわ、やっぱ臭ぇ!」
ザザッ
律「あっぶねぇ、制服に匂いでも付いたら純になにを言われるか……。
二人ともいい反射神経だな、っていないし」
…
梓「ここはどこ……」
…
――――
澪「よいしょっと……」
純「これで人数分は用意できましたね」
小百合「助太刀、感謝します」
れいん「はぁー、疲れたー、しんどー、ヘビィだったー」
純「重力関係はないね」
れいん「じゅうりょく?」
純「……通じないか」
奈々穂「みんなご苦労だった。どうぞ、むぎ茶です」
澪「ど、どうも」
小百合「ゴクゴク」
れいん「ぷふぁー、うんまぁーい」
純「ヒンヤリしてて気持ちいいですね」
澪「あぁ……」
奈々穂「夏も後半にさしかかるが、まだまだ暑さが厳しいな」
久遠「奈々穂さんもどうぞ」
奈々穂「うむ、すまない」
澪「……」
シュタッ
歩「……ふぅ」
琴葉「……悪夢だ」
澪「!」ビクッ
久遠「どうかなさいましたの?」
歩琴葉「「 いえ、なんでもありません 」」
久遠「様子がおかしいですわね」
純「澪先輩、見てください」
澪「綺麗な夕陽だな……」
小百合「絶景だ」
れいん「それより腹へったー!」
奈々穂「れいんは花より団子だな」
琴葉「少し、聞きたいことがあるのですが」
澪「え? わ、私?」
琴葉「はい」
歩「……」
澪「な、なにかな?」
純「なんでも答えましょう。弱点から大好物まで」
澪「じゃ、弱点?」
奈々穂「そんなことを聞いてどうする?」
琴葉「いえ、弱点ではなく」
久遠「中野梓、桜が丘高校2年生。軽音部に所属し、リズムギターを担当」
奈々穂「リズムギターってなんだ?」
小百合「分かりません」
れいん「んもぅ、ダメだな~。リズムギターっていうのはですね~」
奈々穂「ふむ……」
小百合「……」
れいん「えっとぉ……」
純「っていうのは?」
れいん「リズムギターっていうのはぁ……」タラタラ
澪「リズムを取りながらギターを弾くことだ」
れいん「そうそう、そういうことっすよ~。リズムが大切~」
奈々穂「なるほど」
久遠「リズムを取ることは音楽にとって欠かせない要素ですわ」
純「そうそう。リズムギターに限ったことじゃない」
小百合「れいん、本当は知らなかったな」
奈々穂「なんだと! れいん!」
れいん「うわっ、トラップ、トリック、策略!」
歩「話が逸れてる」
久遠「特性はネコで、大好物はたいやき。部室には梓さん専用のティーカップがある、というデータが」
純「……」
澪「……」
奈々穂「おい久遠、二人が引いているぞ」
久遠「お、隠密は情報を活かすことを得意としていますので」アセアセ
琴葉「副会長……」
久遠「琴葉さんまで……って、あなたが調べたことですのよ?」
琴葉「……」
歩「意外とノリがいいんだね、矩継さんって」
れいん「副会長~、いくらなんでもぷらいばしーってもんがあってですねぇ……」
小百合「副会長、私もいささか衝撃を隠しきれない」
奈々穂「ええい! 私に向かっていうな! 副会長違いだッ!」
澪「ふふっ」
純「あははっ」
琴葉「……」フフッ
歩「あ、矩継さんが笑った……」
れいん「えぇっ?!」
琴葉「……」シーン
奈々穂「久遠しか見ていないという、半ば伝説化している琴葉の笑顔だと……」
純「そんな伝説があるんですか」
久遠「ありませんわ、みなさんがからかっているだけですのよ」
澪「……」
れいん「ほれほれ、もう一度笑ってみなさいよ~」ツンツン
小百合「ほれほれ」ツンツン
琴葉「過ぎるぞ、二人とも」チャキン
れいん小百合「「 すいません 」」
純「手裏剣!?」
澪「ほ、本物?」
久遠「えぇ、もちろんですわ」
歩「私のはクナイ」ボソッ
奈々穂「妙に張り合うな、歩」
歩「えへへ」
ガサガサッ
琴葉「!」
小百合「!」
れいん「!」
奈々穂「いや、構えを解け三人とも。梓だ」
梓「あ、あれ……?」
歩「……」
純「道に迷ったか、迷子の仔猫さんめ……」
梓「森の中に太い縄に巻かれた木がありましたけど、あれは神木ですか?」
久遠「そうですわ。あの神木には色々と謂れがありますので、お近づきになりませぬよう、
お気をつけ下さいませね」ニコニコ
梓「……そうですか」
澪「い、謂れってなんですか?」ブルブル
奈々穂「なに、大したことでは……。詳しく聞きたいのであれば食事の後にでもしましょう」
梓「できれば今、聞きたいです」
澪「あ、梓……」
純「このワガママネコ娘っ!」シュッ
梓「っ!?」
ピト
梓「……なにを、投げたの純?」
純「手裏剣さ」
梓「……なんだ、引っ付き虫か。その年で忍者ごっこ?」シュッ
歩「う……」グサッ
純「ふふ、ここまで届かなかったな。ごっこに負けたということだ」ニヤリ
梓「……」
れいん「はいはーい! あっしも参戦~!」
小百合「れいん、おまえは命中率が高いから――」
れいん「秘技、乱れ虫!」シュシュシュシュシュッ
奈々穂「うわ! やめろれいん!」ピト
久遠「きゃっ」ピト
琴葉「……」ササッ
歩「ごっこ、かぁ……」ピト
澪「懐かしいな、小さい頃よくやったよ」ピト
純「あっ、澪先輩に悪い虫が付いた!」
梓「悪いのは純でしょ」ハァ
歩「……」
小百合「おい、れいん、私にだけ集中していないか」ジリ
れいん「気のせいじゃない?」ジリ
小百合「度を越えた戯れは感心しないな」カチャ
れいん「へぇ、琴葉に同じことをした、あんたがそれを言うんだぁ」スッ
梓「え……」
純「えっと……」
澪「かかか、刀……!?」
奈々穂「いえ、刀ではなく木刀です」
梓「あの二人の空気が……」
奈々穂「いつものじゃれ合いだ、気にしないでくれ。久遠、先に三人と一緒に料理班へ向かってくれ」
久遠「それはかまいませんが……。奈々穂さん」
奈々穂「……なにかあれば連絡する」
久遠「えぇ。それでは行きましょうか」
純「あの、ふざけた私が言うのもなんですけど、大丈夫ですか?」
久遠「いつものことですわ。後でお詫びをさせますわね」ニコ
澪「……」
歩「私たちもいますから」
琴葉「深刻なことではありません」
梓「そう、ですか」
最終更新:2012年07月12日 21:58