――…
久遠「近くには温泉が沸いておりますので、ティータイムの後にでも、みなさんと参りましょう」
純「温泉! やった!」
澪「……」
梓「あの、久遠さん、一つ聞いてもいいですか?」
久遠「なんでしょう、なんでも答えましてよ」
梓「二人はどうして残ったのですか?」
久遠「二人……とは?」
純「?」
梓「琴葉……さんと、歩さんです」
久遠「……」
梓「……」
澪「……あ」
唯「あずにゃああん!」ガバッ
梓「あぶないっ」サッ
澪「うわっ!」
唯「どうして避けるの!?」スリスリ
梓「残暑が厳しいので」
唯「まだ八月だよっ!?」スリスリ
澪「唯、離れてくれないか」
唯「でへへ~」
「あずさちゃ~ん」
梓「むぎせんぱ~い!」
テッテッテ
唯「しくしく」シクシク
久遠「ふふっ、あの二人、まるで姉妹のようですわね」
純「この夏に色々あって……、梓が紬先輩に懐いているだけなんですけどね」
久遠「奏会長とりのを見ているようですわ」
澪「……あの――」
律「なんだ、梓はそっちにいたのか」
澪「う、うん」
ザザッ
律「メーデー、メーデー。りの、応答せよ」
『はい、なんでしょう、りっちゃんさん』
律「梓は無事、帰還した。戻ってまいれ」
『了解で~す』
澪「梓がどうかした?」
律「あぁ、ちょっと所在が分からなかったから探しに行ってもらってたんだ。
暇だったしな」
澪「そうか……。一応言っておくけど、メーデーは遭難信号だぞ」
律「……え」
純「律先輩……ある意味、遭難していますね」
律「うるさい。ってか、どういう意味だよっ」
久遠「クスッ」
紬「あずさちゃん、引っ付き虫が付いてるわ」ヒョイ
梓「あ、まだ付いていたんですか」
紬「森の中を歩いていたの?」
梓「いえ、通りすがりの髪がボンバーな人にやられました」
紬「まぁ、そうなの。見当が付くけどね」ウフフ
梓「困った人ですね」アハハ
純「……」
ガサガサッ
プッチャン「ちゃんといやがったか」
りの「よかったぁ~」
和「……森で彷徨っているのかと思ったわ」
さわ子「迷惑な子ねぇ」
律「4人と1体で探していたんだぞ」
梓「お騒がせしました」ペコリ
奏「りの、お疲れさま」
りの「あ、奏会長~。わたくし、しっかりと捜査をしてまいりました」ビシッ
奏「捜査、じゃなくて捜索ね。……動かないで、引っ付き虫が」ヒョイ
りの「わぁ、気付きませんでした~。ありがとうございます」
奏「どんどん付けて来ていいのよ」ウフフ
りの「私だけ付いてるなんて、おっちょこちょいですね」アハハ
澪「これがデジャヴというものか」
まゆら「多分、違います……。
みなさん、座って待っていてください。準備は私たちでできますから」
律「それは申しわけない。唯と梓が手伝おうじゃないか」
梓「手伝います」
純「唯先輩の代わりにわたしが行きます」
唯「りっちゃんのデザートはドリアンにしようね。ヒソヒソ」
純「そうしましょう。ヒソヒソ」
律「ヒソヒソってバッチリ聞こえているんですけどー」
澪「」ヒソヒソ
和「そ、それは本当なの……?」ゴクリ
澪「……」コクリ
律「な、なんて言ったんだ?」
和「なんでもないわ、気にするほどのものではないから」
律「すいません、私も働きますから仲間外れにしないでください」
澪「……」
和「本当ね、自ら働きだしたわ」
律「まんまと乗せられたよ!」
さわ子「どう、うちの子達は」
プッチャン「フン、認めないわけにはいかねえな」
さわ子「意外と物分りいいのね」
プッチャン「俺を侮るんじゃねえぜ……?」
さわ子「フフ……」
プッチャン「フッ……」
シンディ「グレート」
奈々穂「なにがだ」
れいん「腹減ったー!」
小百合「……」
香「よっしゃあー! 香特製、インド人もビックリしてスプーンを使い出すカレー、出来たぁ!」
憂「こっちも出来ました」
香「名前はなんですか?」キラキラ
律「早くもバトルの火花が散っております」
憂「はちみつリンゴカレーです」ニコニコ
香「つ、強い!」
れいん「管理人さんの料理も凄いんだぞー!」
小百合「今日は来れなくて残念だ」
和「確か、小学五年生だったわね」
律「……マジかよ、すげぇな、ここ」
れいん「へへーん、どんなもんでーい」
小百合「れいんが威張ることじゃないだろう」
れいん「えっへへ~」
純「雰囲気が落ち着いてますね」
澪「……うん、よかった」
奈々穂「迷惑かけたな、すまない」
純「いえいえ」
久遠「そうだ、梓さん」
梓「……?」
久遠「先ほどの質問に答えていませんが、少しよろしいですか?」
梓「……うん」
久遠「質問の意図が理解できていませんので、もう一度仰っていただきたいのですが」
梓「えっと、なんだっけ……?」ハテサテ
久遠「琴葉と歩、二人があの場に残ったことについて、ですわ」
奈々穂「なんだ、それは?」
久遠「お静かに」
奈々穂「……」
梓「れいんと小百合の二人が睨み合っている場面で、どうしてあの二人が残るのか、単純に気になっただけです」
久遠「それだけ、ですか?」
梓「???」
久遠「いえ、よくある、なんて言いましたが、本当のところは滅多にありません。
あの二人があんな空気を出すこと自体が」
梓「……」
奈々穂「おい、変に気を遣わせるようなことを――」
久遠「奈々穂さん、もう見抜かれていましてよ。あれが茶番だってこと」
奈々穂「……そうか」
梓「茶番……、なるほど」
久遠「三人を先に帰らせて、作戦を練っただけのこと、ですわね」
梓「肝試しですか」
久遠「そういうことですわ」
奈々穂「まったく、それを言ったら警戒されてしまうじゃないか」
久遠「いいではありませんか。それを上回る演出を行えばいいだけのことですから」
奈々穂「まぁ、な」
梓「……それじゃ、手伝ってきます」
スタスタスタ
久遠「……」
奈々穂「……」
聖奈「巧い交わし方ですね~」
久遠「聞いていたのなら、誘導の手伝いをしてくださってもよかったのに」
聖奈「わたしはそこまで巧く交わせませ~ん♪」
久遠「……ふぅ。それで奈々穂さん、ご神木の方は……」
奈々穂「問題ない。変わった様子は無かったからな」
歩「はい。梓さんは遠目にあの木を確認しただけだと思います」
琴葉「範囲内に入った形跡はありませんでした。大丈夫です」
久遠「そうですか……。ご苦労様ですわ」
奈々穂「今回の件はただの偶然なのかどうか、分からないな」
久遠「会長の気まぐれではない、と?」
聖奈「どうでしょう~」
奈々穂「まぁいい。肝試しでコースを外れさえしなければな」
久遠「そうですわね」
唯「おまたせ! カレーフルコースだよ!」ドンッ
奈々穂「大盛り……ですね」
唯「りのちゃんが、ういと香ちゃんの両方のカレーをミックスしちゃったんだよ~」
奈々穂「それとこれとは関係が無いと思うが……」
聖奈「みなさん、行き渡りましたか~?」
「「「 はーい! 」」」
聖奈「それではみなさ~ん」
みなも「両手を合わせて~」
律「いよぉー!」
パンッ
澪「違うだろ!」
みなも「きゃははっ!」
プッチャン「見事なほど全員がやりやがったぜ」
奈々穂「極上生徒会の団結力を甘く見ないことだ」
純「軽音部の団結力を――」
聖奈「いただきま~す」
奏「いただきます」
りの「いただきま~す!」
紬「いただきます」
梓「……いただきます」
「「「 いただきまーす! 」」」
――…
「「「 ごちそうさま~! 」」」
香「ハァ……。奏さまに褒めてもらいたかったのにぃ」ションボリ
律「おいしかったぞ、憂ちゃん、香」
憂「お粗末さまでした」
香「……どうも」
まゆら「憂さんはお家でも料理されているんですか?」
憂「はい。母の手伝いをしています」
唯「わたしの妹です」
澪「この場にいる全員知ってるぞ」
まゆら「とってもおいしかったです」
れいん「ほんとほんと、絶品だったさ~」
憂「そんな、私なんてまだまだですよ。もっと頑張りたいです」
律「唯も頑張らないとな」
唯「はいよ」
香「ハァ~……」ボケー
奏「おいしかったわ、憂さん、香」
憂「ありが――」
香「いよっしゃぁぁあああ!!!」ガッツ
憂「!」ビクッ
律「……」
奈々穂「……」
まゆら「……」
みなも「……」
澪「……」
シ ー ン
香「そんな、私なんてまだまだですよぉ。
もっと腕を磨いてぇ、食べてくださった人たちを幸せにしたいなぁ、なんて思ったりしてますぅ」モジモジ
律「だれだ、こいつ」
奈々穂「そういえば、紹介がまだでしたね。遊撃部所属、和泉香です」
香「それでぇ、わたしの心が奏会長に届いたらいいなぁ、なんて」テヘ
奏「あら、むぎさんとりのはどこへ行ったの?」
久遠「梓さんと聖奈さんを連れてテントの方へ向かいましたわ」
奏「そうですか」
律「声すら届いていないぞ」
香「りの……! 何度わたしの邪魔をするのよ……!」メラメラ
奈々穂「それでは諸君。お風呂に入る前に肝試しを始めよう」
澪「すいません、そろそろかえらないとおやがしんぱいするのでわたしはこれでしつれいします」
まゆら「小学生が作文を音読したような棒読みっぷりですね」
れいん「わたしもかえってべんきょうをしないといけないです」
小百合「れいんもか」
奈々穂「なんだ、二人とも怖いのか?」
澪れいん「「 はい、こわいです 」」
奈々穂「正直だな。悪いが全員参加だ。諦めてくれ」
澪「よいしょっと。船は何時の出港かな?」
律「諦め悪いな」
久遠「船は明日までありませんわね」
れいん「なら、泳いで帰ります」
憂「この距離をですか?」
れいん「楽勝、常勝、一等賞」
小百合「動揺している。いつもの切れが無い」
奈々穂「夜の海を渡るには、お前達にはまだ早い」
唯「昼ならいいんだね。凄いねりっちゃん、かっこいいねりっちゃん」ワクワク
律「う、うん。私に何を期待している、唯」
澪「灯りを確認しながら泳げばいいんだ」
律「烏賊か」
澪「烏賊だ」
律「……認めやがった」
れいん「イカ?」
小百合「習性の話だ。座れ、れいん」ガシッ
れいん「あぁ! 捕まった!」
奈々穂「それでは、説明を行う」
……
………
奈々穂「――と、いうことだ」
純「なるほど、指定場所にあるお札を取ってきてここまで戻ればいいわけですね」
奈々穂「あぁ。道中、仕掛けを用意してあるから心して行くがいい」
奏「まぁ、怖いわね」
香「はいはい! 奏さまは私と行きましょう! 悪霊なんてぶっ飛ばしますよ!」
奏「頼もしいわ」ニコニコ
香「よ、よぉし!」メラメラメラメラ
聖奈「では、くじ引きを始めまーす!」
香「えぇー! くじですかぁー?」ブー
奈々穂「四人一組だからな。自分の運を信じろ、香」
まゆら「くじ引きは定番ですよ」
香「は、はい。……ソウデスヨネ」
聖奈「それでは、会長から。1~5の数字が書かれた紙が入っていますので、引いてください♪」
奏「それでは」ガサゴソ
りの「何番ですか? 何番ですか? 奏会長~」ワクワク
プッチャン「落ち着け、りの」
奏「1番ね」
香「1番ですね……!」
さわ子「わたしはパスするから、一組は5人でいいんじゃないかしら」
久遠「21人を5チームに分け、余った一人を5番チームにしましょう、奈々穂さん」
奈々穂「そうだな。5番を一枚取ってください、聖奈さん」
聖奈「は~い。えっと……」
ガサゴソ
聖奈「これかな?」
ピラッ
聖奈「正解でした~。紬さん、どうぞ♪」
紬「では」ガサゴソ
律「あれ、なんで誰も驚かないんだ? 今、聖奈は一発で5番を引き当てたんだぞ?」
純「凄いですね」
律「……私の持ってる常識ってなんだろう」シミジミ
梓「五人チームを引いてくださいむぎ先輩!」
紬「ごめんね、1番だったの」
梓香「「 えぇー!? 」」
久遠「最初から引き合うなんて……」
和「21分の2の確率ね」
聖奈「さぁ、どんどん引いてくださ~い♪」
琴葉「3番」
歩「2番」
憂「4番です」
小百合「4番だ」
れいん「あー、小百合と別だよ~。あっしは3番!」
みなも「5番だよ~!」
久遠「3番ですわね」
唯「5番だす!」
シンディ「フォー」
りの「あちゃ~、奏会長とはぐれちゃいました。ざんね~ん」
奏「何番なの?」
りの「2番です。アユちゃんよろしくね!」
歩「うん」
プッチャン「そこの二人がほくそ笑んでるぜ」
梓香「「 よしよし、まだ1番は出てこない 」」ウッヒッヒ
和「4番ね」
純「3番!」
まゆら「5番ですね」
聖奈「みなもちゃん、今の状況分かる?」
みなも「うん。残るは1番、2番、5番が二枚づつ空いてて、3番4番は決定だよ!」
聖奈「は~い、ありがと~♪」
ヒュッ
聖奈「あら?」
最終更新:2012年07月12日 22:08