奈々穂「では、取ります」
聖奈「奈々穂さん、今、取りませんでしたか?」
奈々穂「いえ、まだ取っていませんが……?」
澪「ヒィッ!」
聖奈「気のせいですね。澪さんもどうぞ♪」
澪「は、はい」ゴクリ
香「2番を引け、2番を引け」ブツブツ
梓「1番を残せ、1番を残せ」ブツブツ
律「なんの呪いだ」
久遠「奈々穂さん、澪さん。引いても開かないままでお願いしますわ」
奈々穂「ふふっ、そうだな」
澪「わ、わかった。おばけなんてこわくない!」
聖奈「あとは梓さんと律さん、香さん、私の4人で~す」
みなも「じゃあ、お姉ちゃんの分取っちゃうね!」
聖奈「ありがとう~、あ! みなもちゃん!」
梓「!」
みなも「お姉ちゃんは5番で~す!」
香「はぁ、びっくりしたぁ……」ホッ
律「それじゃ引くぜ」
梓「り、律先輩! 私から引きます!」
律「お、おう……」
梓「こいこい」ガサゴソ
香「先に引きますね」
律「まぁ、残り物には服着たるっていうしな。なんつって」
シ ー ン
梓「早く引いてください」
律「なんだよ! 言葉で分かるのかよ今のギャグ!」
梓「そんな諺ありません」
香「みなさん待ってますよ」
律「ピリピリしてんな、この二人……」
聖奈「どうぞ♪」
律「こうなったら私が1番引いてやる……って、あれ、無いぞ?」スカスカ
聖奈「???」
りの「一枚足りな~い」ドロドロドロ
プッチャン「へっ、怪奇現象なんてそうそうあるわけねえぜ」
香「あんたが言うな!」
律「誰か二枚取ったか……?」
澪「律の驚かせるための小芝居だから、放っておこう」
奈々穂「では、一斉に開くぞ」
梓「1番を……!」ゴクリ
香「お願い! 奏さまと肝試し!」
ペラッ
梓「」
香「」
奈々穂「1番か」
澪「1番だ……ごめん、梓」
律「誰も取ってないのか……?」
久遠「1番チームは、奏会長、紬さん、奈々穂さん、澪さんですわね」
聖奈「2番チーム、りのさん、香さん、歩さん、梓さん」
久遠「3番チーム、私、琴葉、純さん、れいん」
聖奈「4番チーム、小百合ちゃん、憂さん、和さん、シンディさん」
久遠「5番チーム、みなも、聖奈さん、まゆらさん、唯さん……となりますが」
律「……」
さわ子「りっちゃん、一人ね」
――…
さわ子「行ってらっしゃい」
律「ほんとに一人だもんなー……」
さわ子「どこにでも合流できるという条件付けてもらったじゃない」
律「まぁ、梓と香が譲れとうるさかったくらいだからな。ある意味特別だぜ」
さわ子「うん、前向きでいいわね。後ろ振り向いちゃダメよ?」
律「それは人生教訓? それとも脅し?」
さわ子「ほらっ、さっさと行きなさい! 一人でビリになったら大変よ!」
律「うわ、それは嫌だ! 行ってくる!」
テッテッテ
さわ子「罰ゲームは皿洗い。……あの量を一人でやるには気が重いわよね」
― 5番チーム ―
唯「そろそろ、りっちゃんがスタートしたころだね」
みなも「律さんを待ってよーよ! 5人で皿洗いした方が楽だって!」
聖奈「あら、負ける気でいるの?」
みなも「そうじゃないけど~」
まゆら「コースは自由ですから、ここで待っていても律さんが通る可能性は高くありませんよ」
みなも「そうなんだ、じゃあ進もうよ」
唯「ふふ~ん、ららら~ん」ルンルン
聖奈「唯さん、楽しそうですね~♪」
唯「楽しいよ~♪」
みなも「怖くないの~?」
唯「みんなと一緒だから平気さ」キリ
みなも「わ~! 心強~い!」
まゆら「そういうみなもちゃんも怖くなさそうですね」
みなも「お姉ちゃんがいるもんね! 私も楽しくなってきた~!」
唯「むふふ、いい事思いついちゃった~」
みなも「なになに? 教えて!」
唯「りっちゃん見つけたら、闇討ちしよう!」
まゆら「洒落になりませんよ……」
聖奈「あらあら~。あら?」チラッ
…
律「!」ササッ
…
まゆら「どうしたんですか、聖奈さん……?」
聖奈「いえいえ、なんでもありませんよ~」
唯「みなもちゃん、りっちゃんが現れてもこの懐中電灯で照らしちゃダメだよ?」
みなも「どうして?」
唯「持ち前のおでこで反射するからだよ!」
みなも「えー! すっごーい!」
…
律「聖奈に気付かれたっぽいな……。勘がとてつもなく鋭いってことか。
次のチームに行くべさ。唯、あとで怖い思いをさせてやるからな」プンスカ
…
― 4番チーム ―
シンディ「スキャリー」ブルブル
憂「森の中を歩くって、雰囲気ありますね」
和「6つのコースも最終的には指定場所に着くのね」
小百合「その通りです。陽が高いうちにコースを作りましたので抜かりはありません」
和「コースから外れるとどうなるの?」
小百合「今は夜なので足場が悪く歩きづらくなります」
シンディ「ロングコース」
憂「足元を奪われて、ショートカットのつもりが逆に時間がかかるということですね」
小百合「はい」
和「憂、向こうを照らしてくれるかしら」
憂「こっちでいい?」
和「えぇ、ありがとう。……あの紐で立ち入り禁止にするには少し頼りないわね」
小百合「それほど危険性は高くありませんが、それぞれのコースに戻れなくなるのでそうしています」
和「そう……」
シンディ「デンジャラス」
憂「触ると鈴が鳴る仕組みですよね」
小百合「はい」チラッ
…
律「?」
…
小百合「コースの手前で脇にそれ、相手を待つ。という手もあります」
憂「驚かされるってことですね」
シンディ「スキャリー」ブルブル
和「……」
…
律「やれと言われた気がした」チョンチョン
チリンチリン
律「!」ビクッ
…
チリンチリン
「ぎゃぁああ!!」
和「あの叫び声は……」
小百合「れいんだな」
シンディ「ドントクライ」
憂「それにしても、いいタイミングで鳴りましたね」
小百合「向こうに人の気配がありました」
和「……律ね」
― 3番チーム ―
れいん「やだぁ、もぉ帰る~!」
純「大丈夫だって、誰かのイタズラだから気にしないで」
れいん「ほんと……?」
純「うん。多分、律先輩が誰かを驚かせようとやったことだから。ほら手を掴んで」
れいん「……うん」ギュ
久遠「頼りになりますわね」
純「怖がる人がいると、逆に冷静になるから。……澪先輩とか」
琴葉「鳴り止みません」
チリンチリン
純「律先輩はこんなにしつこくないはず……。これは仕掛けの一部?」
久遠「いえ……、そのようなはずは……」
チリンチリン
琴葉「少し、様子を見てきます」
れいん「ダメダメダメ~! 人数が減ると心細い~! 繊細、ナイーブ、乙女心!」ギュウ
純「……こんな妹もいいな」ホンワカ
…
律「確かに悪路だったな。
でも、梓と香と澪を驚かすまでは合流しないぞ!」メラメラ
チリンチリン
律「一度鳴らすとずっと鳴るのか、これは……?
お、あれは3番チームか」
…
琴葉「誰かに見られています」チャキン
久遠「それを仕舞いなさい、琴葉」
琴葉「しかし」
久遠「人だったらどうするのですか?」
琴葉「……はい」
れいん「はやく! はやく進もうよ~!」ギュウ
純「……」ホンワカ
…
律「え、なにあの子。手裏剣で私を攻撃するつもりだったのか?」
チリンチリン
律「身の危険を感じるから他を探すべし。純を驚かせたかったけどしょうがないな」コソコソ
…
琴葉「見てきます」
スタスタ
れいん「え~、もぉやだぁ~! 人の話聞いてよ琴葉~!」ギュウウ
純「痛い痛い!」
れいん「あ、ご、ごめんなさい~……」
純「見た目を裏切る握力……。でもあの子、慎重すぎないかな」
久遠「……」
ポチッ
琴葉「……?」
バサバサバサバサ
琴葉「上から!?」ササッ
れいん「!」ササッ
久遠「!」ササッ
純「いや、大丈夫だから。木の上からナニカが落ちてきただけだから」
れいん「充分怖いって!」ブルブル
久遠「だ、だれがこんな仕掛けを」ブルブル
琴葉「誰もいませんでした。どうして純さんの後ろに隠れているんですか?」
久遠「こ、こほん」
れいん「やだやだぁ~! 琴葉ナニカ持ってる~!」ブルブル
純「それは、ナニ?」
琴葉「わら人形です」
久遠「」
れいん「ぎゃぁぁああ!」
― 1番チーム ―
「ぎゃぁぁああ!」
奈々穂「む、あの声はれいんか」
紬「あっちから聞こえましたね」
奏「えぇ……」
紬「奏さん、どうかしましたか?」
奏「少し、胸騒ぎが……」
奈々穂「とりあえず、指定場所まで行きましょう。すぐそこです」
澪「……」
紬「仕掛けに掛かりませんでしたね」
奈々穂「大体の仕掛けは把握していますから、ご心配なく」
紬「そうですか」ションボリ
奈々穂「……」
奏「……」
奈々穂「奏?」ヒソヒソ
奏「どうしたの、奈々穂?」
奈々穂「具合でも悪い?」
奏「ううん、そうじゃないの。鈴の音が鳴り止まないでしょ?」
奈々穂「恐らく、誰かが驚かそうとしているのだと思うけれど」
奏「ずっとよ?」
奈々穂「……」
チリンチリン
紬「白い人影が見える……あれも仕掛けですか?」
澪「……」
奈々穂「いえ、指定場所にはないはず……」
白い影「ふっふっふ……」
奏「あ……」
白い影「お前らが来るのを待って――」
澪「さわ子先生~!」キラキラ
白い影「――え?」
澪「さわ子先生がここにいるってことは、指定場所はここですね! 札をください!」キラキラ
白い影「なによそれっ! こんな仮面意味無いじゃないのよ!」ブンッ
ペチン
紬「そう言って彼女は付けていた仮面を地面に叩きつけたのであった。……お終い」
さわ子「話を終わらせるんじゃないわよ! ほら札を持ってさっさと行きなさい!」プンスカ
奈々穂「自棄だ……」
澪「むぎ、ごめん。服伸びてないか?」
紬「大丈夫よ。でも歩きにくいから手を繋いでいきましょう」
澪「迷惑をかけるな……」ギュウ
紬「目を瞑って歩いていたら危ないものね」ニコニコ
澪「うん、頼りにしてるよ。着いたら教えてくれ、むぎ」
さわ子「ここまで目を瞑って歩いてきたの、澪ちゃん?」
澪「はいそうです。帰りもそうします」
さわ子「逆に勇気あるわね」
奏「……」
奈々穂「では行きましょう、会長」
奏「……」
紬「奏さん……?」
さわ子「どうしたのよ、向こうになにかあるの?」
チリンチリン
奈々穂「会長が見ている先は……まさか」
奏「奈々穂」
奈々穂「さわ子先生! 照明一式持って来ていますよね!?」
さわ子「え、えぇ。車でそのまま来たから、降ろしていなければ」
奈々穂「取って来ます! 待っててください!」
ダダダッ
澪「しゅ、出発しないのか?」
紬「澪ちゃん、目を開いた方がいいわ」
澪「え?」
― 律 ―
チリンチリン
律「なんで鳴り止まないんだこれ……?
演出なのかな? 真っ暗な中で聞く鈴の音は確かに怖いけども……」
スタスタ
律「おかしいな、このコースには2番チームがいるはずなんだけど……追い越したか?」
チリンチリン
律「うーん……。あり……?」
チリンチリン
律「これって、立ち入り禁止の区域だよな……」
奈々穂「律さんッ!」
律「うわっ! びっくりした!」
澪「り、律?」
紬「どうしたのりっちゃん、こんなところで」
律「いや、別に――」
奏「奈々穂、紐が切れているわ」
奈々穂「律さんが!?」
律「ち、違うぜ。私じゃないですぜ」オロオロ
奈々穂「本当ですか!?」
澪「しどろもどろになっているから、嘘は吐いてない……」
奈々穂「じゃあ、誰が……!」
律「てか、眩しい!」
奈々穂「あ、あぁ、すいません」
紬「あら、このコースって2番チームのコースよね?」
奏「……そうです」
律「そっちはゴールから来たのか?」
澪「うん、そうだぞ」
チリンチリン
最終更新:2012年07月12日 22:13