いつものように部室に集まってお茶をしていたら

律「放課後新選組!!」

一同「えっ?」

梓「いきなり何を言い出すんですか?」

律「いやぁ~。新選組って名前もなんかカッコいいなぁと思ってさ」

澪「またくだらないことを」

唯「でも、確かにカッコいいね。

梓「どこがですか!!」

唯「だって、語呂がいいじゃん」

唯「あずにゃんは沖田総司かな?」

紬「唯ちゃん、それはダメ!!」

唯「えっ?だって私たちの中で一番年下だし、演奏も上手いし」

紬「でも、沖田総司は労咳で早く死んじゃうのよ?」

紬「梓ちゃんがかわいそうじゃない」

唯「そっかぁ~、そうだね。あずにゃんは死んだらだめだよね。」

澪(ちょっとピントがずれてるけど、これで一段落っと)

紬「かわりに私が配役を考えてあげる!!」

澪「えっ?」

紬「唯ちゃんは…そうねぇ~」

紬「芹沢鴨!!」

唯「それ誰なの?」

紬「新選組はね、最初の頃は局長が3人いたのよ。その3人で一番偉かったのが芹沢鴨なのよ」

紬「それに鴨よ鴨!!かわいいじゃない!!」

唯「鴨かぁ。なんとなくかわいいから私は鴨でいいや」

紬「律ちゃんは新見錦ね。」

律「はぁ?だれだそれ?」

紬「芹沢鴨と一緒で最初の局長の一人だった人で、鴨ちゃんの友達ってところかしら」

紬「それに律ちゃんには部長として『錦』が入っている方が箔がつくじゃない!!」

律「そっか、やっぱり部長は見栄えも大事だもんな!!じゃあうちは錦で決定!!」

澪「おい、ムギ!!」

紬「あっ、澪ちゃんごめんなさい…」

紬「でも澪ちゃんはちょっと難しいわねぇ~」

澪「だからムギ!!」

紬「澪ちゃんは、文武に秀でてて、眉目秀麗と言われてた伊東甲子太郎!!」

紬「うん!!ぴったり!!」

澪「いや役柄じゃなくってさ」

紬「私はっと…」

紬「結成時からの幹部だけどあまり目立たなかった山南敬助かな?」

唯「これであずにゃん以外は決まったね。」

律「さすがはムギだな。近藤勇とか土方歳三じゃないところがなんとなく日本史ができそうって感じがするし。」

唯「これで入試で日本史を選択したらばっちりだね!!」

澪「そうじゃなくってさ…」

律「なんだよ~澪は文武に秀でてるからって」

唯「そうそう。せっかくムギちゃんが考えてくれたんだから、いいじゃん」

澪「みんな、本当に良いのか?」

唯・律「なんで?」

澪「ムギが今言ったのは全員、仲間割れで殺された人たちだぞ!!」

唯・律「えっ?」

澪「だよな?ムギ!!」キッ

紬「えへへばれた?」ペロッ

紬「私は新選組って血なまぐさいから嫌いなの~、でも澪ちゃんなら気づくかな?と思って」

紬「みんな、ごめんなさい。でも新選組はやめましょ!!」

律「そういうことなら新選組はなしだな」

唯「そうだね、私たちは仲良しだもんね」

紬「うふふっ。さて話も終わった事だし…」

唯「ちょっと待ったぁ!!」

唯「放課後海援隊!!」

梓「あ~」

梓「いつものパターンですね…」ハァ

澪「ああっ、いつものパターンだ」

澪「で、唯!!だれがどういう役なんだ?」

唯「えっ?えっと、律ちゃんが坂本竜馬で…」

唯「澪ちゃんは…サカモトリョウマで…」

唯「ムギちゃんは…サカモトリョウマで…」

唯「あずにゃんは…サカモトリョウマ…」

澪「唯!!坂本竜馬以外を知らないんだろ?」

唯「えへへ…ばれた?」

梓「もういい加減に練習しましょうよ。」

律「そうだなぁ~。今の唯でオチが付いたようだしな」


翌日の口火は唯だった

唯「放課後十字軍!!」

梓「あ~、まだ続くんですか…」ハァ

紬「唯ちゃん。十字軍の幹部はみんな火あぶりの刑で死ぬのよ。」

唯「え~!!」

唯「暑いのやだよぉ~」

澪「暑い程度じゃすまないぞ!!」

律「そうだな"暑~い"じゃなくて"熱いよ~"って感じかな?」

唯「じゃあ十字軍は無し」

梓「十字軍の話はいいですから、今年の活動計画を考えましょうよ!」

律「そうだなぁ~」

律「取りあえず、備品でも買いに行くか」

唯「さんせーい。」

梓「やっぱり、今年もこのパターンなんですね」

澪「あぁ、このパターンだ」マッタク

梓「ところで、律先輩も唯先輩も進路はどうするんですか?」

梓「一応確認しますが3年生ですよね?」

梓「受験勉強も大事でしょうけど、もうすぐ中間試験ですよ。」

梓「私と一緒に卒業どころか、私が先に卒業してもいいんですか?」

唯「『あずにゃーんせんぱーい』てのも良いかな?」

律「でも梓が先輩だと毎日練習ばっかりになりそうだぞ」

唯「え~。それは嫌だよ」

梓「じゃあ、練習も勉強も真面目にやってくださいよ!!」

律・唯「へ~い」


翌日はカオスそのものだった

唯「放課後古今和歌集!!」

律「放課後新古今和歌集!!」

唯「放課後梁塵秘抄!!」

梓「あの~これって…」

澪「見ての通りだ!!」

梓「見ての通りですか?」

澪「そう」

紬「梓ちゃんが悪いのよ?」

梓「私がですか?」

紬「だって、『真面目に勉強してください』って昨日言ったじゃない。」

澪「そしたら律がメールしてきてさぁ『古文の勉強ついでに、どれだけ古い書物の名前を覚えられるか競争しよう』って」

紬「私も澪ちゃんも、ちょっとはやる気を出したんだって喜んだんだけど…」

梓「予想外ですね」

澪「ああ。予想外というか…もうなんか…」

紬「第3次接近遭遇って感じよねぇ~」

紬「でも、梓ちゃんは平安時代後期からだけど、私と澪ちゃんは『放課後古事記』『放課後日本書紀』から聞いてたのよ。」

澪「もう突っ込む気もなくなったから、ムギと傍観することにしたんだ。」

紬「最初はすぐ終わると思ったんだけどね。鎌倉時代に入ってもよどみなく続いてるの。」

梓「じゃあ、見ているしかないですね。」

澪「あぁ」ハァ、紬「えぇ」ハァ


律「放課後方丈記」

唯「放課後徒然草」

律「放課後大鏡」

唯「放課後今鏡」

律「放課後水鏡」

唯「放課後増鏡」


梓「だいこんみずましがでましたね。」

澪「でたな」

紬「でたね」

梓「あ~あ、今日も練習どころの話じゃなかったなぁ~」

澪「でも、今日は意外と有意義だったよ。なぁムギ?」

紬「えぇ、私たちも勉強になったし」ウフフ

澪「さてと」

澪「おーい、律ぅ、唯ぃ」

紬「下校時間だから帰りましょう~。」

梓(私はこの4人の先輩たちを『ちょっと変わった人たち』と思ってたけど…ちょっとどころでは済まないのかもしれない…)

…下校途中…

律「唯もなかなかやるなぁ~」

唯「律ちゃんもね!!」

律「お互い頑張ればできるってことだよ。なぁ澪・ムギ?」

澪「まぁな」

紬「ゲーム感覚で覚えるのは、律ちゃんと唯ちゃんには向いているのよ。」

梓「そうかもしれないですね。お二人とも桜高に入学できたくらいだから元はしっかりしてるんだと思いますよ。」

澪「ゲーム感覚じゃなくても勉強してくれたら、律の一夜限りの家庭教師からも解放されるのになぁ~」

紬「でも、そうなったら寂しいんじゃないの?」

澪「…」


いつまで続くんだろう…

唯(身振り1)

律(身振り2)

唯(身振り3)

律(身振り4)


梓「もう私…軽音部やめます…」

梓「もうついていけません…」

梓「ウッウッウッ」涙

澪「あっ梓!!これにはわけがあるんだ。」

紬「そうなの、それにこの原因は私にあるの…だからちょっと我慢して聞いて」

紬「ねっ?お願い!!」

梓「ハイ…」

澪「昨日の事を覚えてるか?」

梓「ハイ!!延々と古い書物名を言い続けてましたね。」

澪「今日は室町時代に差し掛かったんだよ。」

紬「室町時代に差し掛かると避けて通れない名前がでてくるのよ。」

梓「観阿弥世阿弥?ですか?」

澪「そう…中学生でも知ってるような名前で、梓は2年だから今年は日本史ならうだろうからわかると思うけど」

紬「高校の授業だとちょっとだけ踏み込んだ内容になるのよね。」

澪「それに昨日の続きが絡んで世阿弥の『花伝書』がでたんだよ。」


唯「放課後風姿花伝!!」

律「ストーップ!!風姿花伝と言えば?」

唯「風姿花伝と言えば?うーん」


唯「秘すれば花!!」

律「ピンポーン!!」

唯「でも、どういう意味なの?」

律「そ、それは…」

紬「大事なことは黙っておくことなのよ。でも、それじゃ伝えられないから所作振舞で伝えるの!!」

唯「へ~そうなんだぁ」

唯「律ちゃん!!」

唯「ここからは喋らずに意思疎通をしようよ!!」

律「よしきた!!伝わらなかったらアイスおごり!!」


梓「あの~ムギ先輩?」

梓「秘すれば花ってそんな簡単な意味じゃないですよね?」

紬「もちろん!!でも、唯ちゃんと律ちゃんの『秘すれば花』があれなのよ」

紬「だから今日は私が悪いの…」

紬「梓ちゃん!!ごめんなさい!!」ペコリッ

梓(ムギ先輩に頭を下げられて許せない人なんかいないよ~)

梓「そういうことですか…」

梓「じゃあ、今日は私もお茶しながら傍観しておきます。」


澪「不思議なもんだなあ~」

紬「だね~」

梓「ですよね~」

澪「あの一見でたらめな動きだけど、いつもの律と唯そのものだから会話が聞こえてきそう。」

紬「私には

 律『唯がタルトを作ったら(指で輪を作って)せいぜい500円玉くらいのもんだろ?』
 唯『何を!!私が作ったら(大きな輪を作って)大きなお盆くらいのものを作るよ!!』

 て会話をしているように見えるわ。」

梓「ムギ先輩。それは落語も餅屋問答ですよね?」

紬「ウフフッ」

紬「でもそんな感じがしない?」

澪「まぁ言葉がない分、解釈もいろいろあるってこと」

梓「そう考えると、結構楽しいですね。」

紬「律ちゃんと唯ちゃんだから楽しいのよ。澪ちゃんと梓ちゃんだと緊張感しか伝わらなさそうだし。」

梓「そりゃあ…私は一応後輩ですから遠慮がでますし…」

紬「梓ちゃんらしいなぁ」カワイイッ

紬「でも、無言だから遠慮のフリをして罵詈雑言を浴びせるってのもあり」

梓「そっ!!そんなことできるわけないじゃないですか!!」

澪「でも言葉がない分、誤解も受けるだろうけど、伝えたいことが動作だけで正確に伝えられたら凄いよなぁ~」

梓「そうですねぇ~。言葉の壁がない分、本質の部分で世界中の人と共感できるかも知れませんね。」

梓「そういえば、ジョン・レノンが歌舞伎か文楽を見て言葉がわからなくても感動して泣いたって話を聞いたことがあります。」

澪「目の前の二人を見て感動する人はだれもいないけど…人形の動きだけの芸能って世界中にあるから…」

紬「原点よね!!」

梓(説得力がありそうだけど、二人とも無茶苦茶な言ってるして…)

コンコン(ドアをノックする音)

紬「あっ、ハーイ!!開いてますからどうぞぉ~」


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最終更新:2012年07月22日 00:43