……………………
…………
???「ようっ!」
ザーボン「……ジース。ノックせずに部屋に入ってくるのはやめてくれと何度も……」
ジース「まあまあ、堅い事言うなって」
ザーボン「まったく。
で、何か用か?」
ジース「相変わらず気難しいなぁ。せっかく親友ちゃんが遊びに来たのにー」
ザーボン「私は今勉強しているんだ。邪魔をしないでくれ」
ジース「またかあ。そんなに勉強ばかりしてどうするんだよ」
ザーボン「別に。
私はこうやって知識を得るのが好きなんだ」
ジース「ちぇっ、もったいないよなぁ。
この星じゃあ俺と並んで武術の天才なのにさ。
──よし、久しぶりに組み手しようぜ!」
ザーボン「はあ!?
だから私は今勉強を……」
ジース「良いから良いから。
頑張って、この銀河一と名高いサウザーさんより強くなってやろうぜ~」
ザーボン「そんな事に興味はない……って引っ張るな!」
ジース「この先に良い場所があったよなっ」
ザーボン「まったく……強引な奴だ」
「あら、ザーボン君にジース君だ~」
ザーボン「!」
ジース「あっ、チョリーっす!
お出かけですか?」
「そうよ。お散歩♪
二人も?」
ジース「へへっ、オレ達はこれから一戦やるんです! 修行っす!
な、ザーボンっ」
ザーボン「あ、ああ///」
「まあまあまあまあ、凄いわっ!
男の子って羨ましいな」
ジース「いずれオレ達二人が、この宇宙で一、二を争う戦士になってみせますよ!」
「うふふ、頑張ってね。
じゃあまたね♪」
ジース「はい!」
ザーボン「は、はいっ」
ジース「……姉さん行っちまったぜ。
いつまで人見知りってんだい」
ザーボン「──ハッ!?」
ジース「やれやれ。ホント奥手な奴だなあ。
いつまであの人を『憧れのお姉さん』のままにさせてんだか。
お隣さんなんだし、男ならさっさと告ろうぜ!」
ザーボン「う、うるさいな……
ほっとけよ」
ジース「つまんね。
お前は顔もスタイルも良い。オレと並んでこの星最強。頭はぶっちぎりに良い。
告ってダメな理由は特に思い付かないけどなあ」
ザーボン「…………」
ジース「姉さんも美人だからお似合いだしよ。
ちょっと眉が太いけどさ」
ザーボン「う、うるさいなっ。それも良いんじゃないか!」
ジース「……あ、もしかして例の変身が原因か?
お前、あれがコンプレックスだったよな」
ザーボン「!
そ、その事は言うなよ!」
ジース「すまんすまん。
ただオレには羨ましいけどなぁ。
確かにこの銀河でああいう事が出来る人間なんて聞いた事ないけど……
なんつーか、突然変異の特別なヒーローみたいでカッコ良いじゃん!」
ザーボン「……しかし、見た目が……」
ジース「見た目?
これぞ奥の手! な野獣っつーか、究極モンスターみたいな感じでカッコ良いと思うけどなぁ」
ザーボン「…………ありがとう」
ジース「ん?
なんか言ったか?」
ザーボン「いや、何でもない。
それに、私にとってあの人は憧れでもあるんだっ」
ジース「憧れ?」
ザーボン「ああ。見目麗しいだけじゃなく気品があって、優しくて……気高い、美しい人なんだ。
私もいつかあんな風に、本当に美しい人間になりたいと思う」
ジース「ふーん。
なら尚更告ろうぜ!
恋人がそういう相手なんて超々カッケェじゃん!」
ザーボン「う……そうは言うが……
そんな簡単にこ、こ告白なんて出来るものか……」
ジース「ンだよ。ただヘタレてるだけかぁ。
つまんねつまんね」
ザーボン「ヘ、ヘタレとはなんだ!」
ジース「だって事実じゃねぇの」
ザーボン「こいつっ。
行くぞ! ぐうの音も出ないほど叩きのめしてやる!」
ジース「おほー、ザーボンちゃんがその気になったぜ!
よっしゃよっしゃ、じゃあ──」
ドォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォン!!!
ザーボン・ジース『!?』
ジース「なんだ!?」
ザーボン「空からエネルギー波が降ってきた……のか?」
ジース「な、なんだあの宇宙船は……」
──ん。
ザーボン「行ってみよう!」
──ザ……ん。
ジース「おう!」
『ザボちゃんっ!』
……………………
…………
ザーボン「!!!」
唯「よかったぁ、やっと起きたよ~」
ここは……桜が丘高の職員室──か?
目の前には、軽音部の五人とMs.山中が立っていた。
……そうだ。今日は部活でMs.山中とセッションをし、彼女達に実演をしてみせる約束をしていたのだったな。
ザーボン「私は……居眠りをしていたのか?」
律「そ。ぐっすり眠ってたぜ」
しまった。それは行儀が悪い。
ザーボン「すまない、見苦しい所を見せてしまった」
澪「いえ。そんな事はありませんけど……」
梓「先生、お疲れですか?」
律「ザボちゃんが来て……
一ヶ月位か?
私たち生徒から見てもわかる位、頑張ってたからなぁ」
さわ子「そうね。もしお疲れでしたらセッションはまた後日でも構いませんよ?
ザーボン先生、今日はもう学校に残ってする仕事はありませんよね?」
ザーボン「そうですが、問題ありません。
少々気が緩んでいただけですので」
言って私は立ち上がる。
──そう。早い物で、私がこの学校に赴任してからはや一月ほど。
生活自体は充実していて文句のつけようもないが、やはり知らぬ間に疲れは溜まっていたのだろう。
この私が居眠りをしてしまうとは……
それに、悪夢は相変わらずだった。
いや。むしろ日が経つにつれ内容がどんどん鮮明になってきている。
ザーボン「待たせてしまってすまなかったな。
行こうか」
私は歩き出す。
律「……おっしゃ、じゃあさわちゃんもザボちゃんも期待してるぜ!」
さわ子「ふふ、任せなさい」
背中から聞こえる皆の声。
それはとても安らぐもので。
ザーボン(……そうだな。何を気にする事がある。
所詮、昔の話。それを今更思い出した所で……
忘れてしまえば良いのだ。またあの時みたいに……)
あの時みたいに。
また、逃 げ れ ば ?
ズキン。
ザーボン(痛っ……!)
激しく頭が痛んだ。
紬「ザーボン先生っ♪」
廊下に出た所で、お嬢様が私の隣に来た。
ザーボン(……!)
いかん、苦しそうな顔を見られてはいないだろうか。
そんなもの美しくはない。
顔を逸らし表情を整え──
紬「ちょっとお耳を~」
終わる前に、お嬢様が私の耳に顔を近づけた。
ザーボン「ん?」
紬「……お話したい事があります。
今晩、お会い出来ますね?」
ザーボン「……!」
私はその言葉に思わず彼女に視線を向け、固まった。
間近で……それも久しぶりに見る、お嬢様の真面目な顔。
『……逃げなさい』
それはとても、あの時のあの人みたいで。
紬「時間、場所はまた連絡します」
ザーボン「……うむ、わかった」
駄目だな。もう、忘れられない。
逃れる事なんて出来ないのだ。
そんな風に思った。
……………………
…………
私は、あの夢の続きを知っている。
当然だ。あれは現実に起こった事なのだから。
あれから爆発が起こり、宇宙船が降りて来た場所にたどり着いて……
ジース「なんだ、あいつら……?
凄い大軍だ」
ザーボン「ジース、このまま空から近付くのは危険だ。
地上から隠れながら行こう」
ジース「おう」
ザーボン(……酷いものだ)
ジース「……この辺りは町だったはずなのに、瓦礫すら見当たらねぇ。
この辺りに居た人は……」
ザーボン「あのエネルギー波で消滅したと考えるべきだろうな」
ジース「ふざけやがって……!」
ザーボン「──この岩の向こうが、宇宙船がある場所のはずだ」
ジース「……着いたぜ!
あいつら……揃いも揃って似たような格好してやがる。
何かの軍隊か?」
ザーボン「シッ! 何か言っているぞ」
????「ほっほっほ。思った通りここは素晴らしい星ですね。
では皆さん、邪魔する方達を皆殺しにして、さっさとこの星を手に入れてしまいましょう」
ザーボン「な……!」
ジース「なんだと!?」
????「さあ、お行きなさい!」
ジース「させるか!」
ザーボン「ジース、待て!
……ちいっ!」
ジース「おらあ!」ガッ、バキッ!
兵士1「ぐえぇ……」
????「!?」
兵士2「な、なんだ貴様らは!」
ザーボン「消えろ!」ドウッ!
兵士2「ぐぁ──」
ジース「へっ、こいつら数だけだぜ! まとめてブッ飛ばしてやる!」
兵士3「な、なんだとおおお!」
ザーボン「……ジース!」
ジース「おうっ!」
ザーボン・ジース『クラッシャーボール!!!』
ドウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥンッッ!!!
兵士達『ぐわあああああああ……』
????「(ピピピッ)……あの二人は、共に戦闘力一万三千程ですか。
なるほど、下っ端の兵では歯が立たない訳です。
ふふふ、この銀河はお強い方が多くて素晴らしいですね。
──さあ、出番ですよ」
????「はっ」
ザーボン「ふん……」
ジース「俺達が力を合わせれば楽勝だな」
兵士4「く、くそっ、こいつら……」
????「下がれ!」
ザーボン「……!」
ジース「あ……あんたは……まさかっ!?」
ザーボン「サウザー!?」
サウザー「お前達、なかなかやるじゃないか。
次は私が相手になろう」
ザーボン(……勝てる訳がなかった。
サウザーは私達の銀河最強と名高い戦士だ)
ジース「く、くそっ……」
サウザー「ふふふ、この私相手によく粘った。
特に貴様。あのような……変身? と言うのか。
あれにはとても驚いたよ」
ザーボン「ぐ……」
????「ほっほっほ。もうそれ位で良いでしょう」
サウザー「はっ」
ジース「て、てめえがこの集団のボスか……?」
????「そうです。
フリーザと申します。以後お見知りおきを」
ジース「なめやがって……」
フリーザ「まあまあ。
これで私と貴方達の力の差がわかったでしょう?
ちなみに、このサウザーさんは私と戦い、私に従う事を決めて下さいました」
ザーボン・ジース『!?』
ジース「じゃ、じゃあ……」
サウザー「そうだ。フリーザ様はお強い。この私すら歯が立たなかった」
ザーボン「それが……なんだと言うのだ……!」
フリーザ「貴方達も私の配下になって頂きたいと思いまして」
ジース「なんだと……!?」
ザーボン(それからフリーザは、自分達が惑星の地上げを行っている事。
その途中、強い者や有能な者が居たらどんどんスカウトして配下にしている事。
地上げをする際、邪魔な者、またスカウトをしても従う気の無い者は容赦なく殺している事。
それらを説明してきた)
フリーザ「どうですか? ぜひ貴方達も我が軍に。
……実は私も変身型の宇宙人でしてね。そちらの方とは仲良くなれそうですし」
ザーボン「…………」
フリーザ「お二人の実力なら、早速フリーザ軍の幹部にもなれますよ」
サウザー「フリーザ様は素晴らしいお方だ。
この方について行けば、何でも手に入るぞ!」
フリーザ「ほっほっほ、サウザーさんの仰る通りです」
ジース「こ、こいつら……っ」
ザーボン「……余裕ぶって長話しているのが仇となったな」
フリーザ「ほ?」
ザーボン「エレガント・バスター!」
ドォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォン!
ジース「……や、やった! やったな、ザーボン!」
ザーボン「ジース、逃げるぞっ、飛べ!」バッ!
ジース「えっ?
ま、待てよ! なんでだよ!」バッ!
ザーボン「あの技は力を貯める時間がかかり過ぎる分、確かに威力はあるが……
サウザーや、サウザーすら相手にならなかったという化け物があれで倒せたとは思えん!
これからどうするにしても、一旦体勢を整えないと……!」
ジース「そ、そうか。
そうだな……」
ザーボン(それから私達は必死で逃げつつ、短い時間ながら相談をした。
ジースは一息ついたらまた戦いたがっていたが、私は頑なに反対した。
作戦を立てれば、あるいはサウザーだけならなんとかなったかもしれないが、あのフリーザと言う奴まで居てはどうにもならないと。
悔しいがここは一旦星を脱出し、機を待つしかないと)
ジース「くっそー! わかったぜ!
じゃあ家族や出来る限りの知り合いを連れたら、即お前の家に行けば良いんだな!?」
ザーボン「ああ! すぐ飛び立てるように準備をしておく!」
ザーボン(母星を見捨てるのは身を切られる思いだったが、どうしようもなかった……と言ったら言い訳だろうか。
だが少なくとも、あの時はそれが最良の手に思えた。
……いや、今でもあれ以上の策は思いつかない)
ジース「じゃあ後でな!」
ザーボン「ああ!」
ザーボン(それから私はジースと別れ、自宅へ向かった。
──が、当時の私は知らなかった。
スカウターと言う、相手の強さだけでなく居場所も探る事が出来る機械があると。
そしてそれを奴らが持っている事を)
最終更新:2012年07月25日 23:20