ザーボン(そう言えば。
以前奴らに絡まれ、反撃をしていたお嬢様の攻撃を『戦闘力150程度の破壊力だろうか?』などと思ったりしたな)
実際はもっと低いのではないだろうか。
スカウターが無いので細かい数値はわからないが、様々な地球人達を見ていたらそう思う。
恐らく、この星の人間……いや、生き物達は戦闘力が低い。宇宙中を見てもずば抜けて、だ。
だが戦闘力が低い分、地球……少なくともこの日本には自然がある。物がある。自由がある。『心』がある。
自由と無責任を履き違えている者や、その当たり前に気付かず不平不満しか言わない者、
綺麗事では通らない事も多々あるみたいだが……
なに。
それこそ宇宙にある、幾多の過酷な環境の星々に比べたら些細なもの。
そう言った、この星の色々な面を知れば知るほど好きになる。
軽音部や桜が丘の皆と、日々を過ごせば過ごす程愛おしくなる。
日本とは、そして地球とはなんと素晴らしいのだろう。
唯一の懸念はフリーザが攻めて来ないかどうかだが、それもまず無い。
調べてみたのだが、地球の存在する場所はこの銀河の辺境の辺境も辺境なのだ。
いくら物資が豊かでも、誰からも買い手がつかないレベルの。
奴が惑星を攻める基準は、その星が売れるかどうか。別に滅ぼす為に攻めている訳ではない。
よって、そちらの面では最悪と言って良い条件である地球にわざわざ来る事は無いだろう。
ザーボン(私はこのまま、地球に骨を埋めたい)
それは想像するに、なんと甘美なものか……
……………………
…………
律「へっへ~!」
紬「凄いっ、凄いわりっちゃん!
なめこぬいぐるみさんがこんなにいっぱいっ!」ドンッ!
律「ふっ、ゲーセンならこの私、
田井中律様にまぁかせとけ~☆」
紬「はいっ!
んふんふ♪」
律「んふんふ♪」
澪「ふうっ。やるじゃないか、梓」
梓「こちらこそありがとうございました。
でも澪先輩こそさすがです。
こんなに高得点だなんて……」
澪「はは、まあゲームだけどな」
梓「そんなの関係ないです。素敵ですっ」キラキラ
澪「そ、そんな目で見るなよ、照れるよ///」
律「おーい澪、梓ーっ。
なにやってんだ?」
澪「律、ムギ。
梓とセッションしてたんだ」
律「なぬ!? そりゃ面白そうだ!」
梓「お二人はUFOキャッチャーですか?」
紬「んふ~♪」デン!
梓「うわ、この子たち超かわいいですね!///」
律「おっしゃ、じゃあ次は私としようぜ!」
澪「ああ、良いぞ」
律「もち、ドラムマ○アな~☆」アズサノノド、ゴロゴロ
梓「にゃふっ!?///」
紬「まあ♪」
梓「な、何するんですか! 昨夜はあんなに乙女だったくせに!」
律「な! そ、そそそれは関係ねーだろっ///」
澪「ゲーセンの中とは言え騒ぐなっ」ポコンチョ
律「あイタっ☆
まあっ、私だけポッコリするなんて、澪お姉様ったらなんてい・じ・わ・る・さん!」
澪「だーっ!
ほら行くぞっ、勝負するんだろっ」ムニー
律「いひゃい、いひゃぁ~。
ほっへ、のひる~~~」ズルズル
梓「ふふふふふっ。
──あっムギ先輩、その子たちどこに居ました?
何だか、とっても欲しいなって」
紬「あっち~♪」
梓「そうですか」ワクワク
紬「あ、よかったら一人プレゼントしよっか?」
梓「ホントですか!?
……ううん、悪いんで頑張って自分でゲットしますっ!」
紬「そっかぁ。
じゃあじゃあ、私も手伝うわっ。
りっちゃんに沢山教えて貰ったから、いっぱい力になれると思いまっす!」
梓「わあ、ありがとうございますっ!」
唯「おおっほぉ!」
さわ子「ふっふっふ! まだまだ行くわよっ!」
唯「こいつぁたまげました!」
さわ子「ふっ、任せなさい!
私は昔『お菓子すくいのさわ子』と呼ばれていたのよ!」
唯「わわっ! 五回目のタワー崩し!」
さわ子「こうなったらすべてのお菓子タワー、デェストロォォォイするわよォ~~!」
唯「頑張れさわちゃん! ゆけっ、さわちゃんっ!!」
澪「うわ、とんでもない事になってる!」
律「わっはー! お菓子まみれだ!」
梓「えへへ☆」ツヤツヤ
紬「この子達に家族だけじゃなくて、お友達まで出来ちゃったぁ♪」テカテカ
唯「あっみんなぁ!
わわわ、なめこさん祭りだ!」
紬・梓『んふんふ♪』
唯「んふ~♪」
澪「しかしどうしたんだ? そっちも負けず劣らずのお菓子の山じゃないか」
唯「うんっ。さわちゃんは天才なんだよ、おまいさん方!」
さわ子「これで……最後っ!」
律「おおっ! この辺のお菓子タワー全部崩しやがった!」
さわ子「あら。いつの間にか皆集まって来てたのね。
ほら、皆も持つの手伝って」
紬「は~い♪」
ザーボン「承知致しました」
律「うへぇ、ムギは相変わらず力持ちだな。片手になめこファミリー、片手にお菓子の山……
つかザボちゃんいつの間に後ろに!?」
ザーボン「ずっと居たが、なに。
こう言う仕事は私に任せ、気にせず皆で仲良くしてくれ」ニッコニッコ
紬「うふふふふ♪ ザーボン先生もお好きですね☆」
ザーボン「日常的な香りの百合……これもまた美しや、だな。
『キマシタワァ同盟』会長・ムギ」
紬「さすがの発言ですね、副会長♪」
律「うむうむ何かわからんが皆上機嫌で何よりじゃあ!
では行こうかの」スタスタ
澪「どさくさに紛れて一人だけ手ぶらで行くなっ。
お前も持つの!」
律「えー。りっちゃんペンより重い物持てないんだ☆」
澪「そうか。
じゃあ律の分は無しですよね? さわ子先生」
さわ子「そうね。仕方ないわ」
律「いやぁ~んっ!」
ザーボン「むう」バラハバラハ~
憂「えへへ」ウーツクシク、チルゥ~
ジャアーーーンッ!
純「わっ、二人共またパーフェクト!」
ザーボン「やるな、憂」
憂「先生こそ完璧ですよ」
澪「パーフェクトにつぐパーフェクトか……」
和「決着がつかないわね」
ザーボン「もうこれ位にしておこうか。さすがに疲れたよ。
君の勝ちだ」
憂「いえ、ずっと互角だった訳ですから引き分けですよ」スッ
ザーボン「……そうだな。引き分けだ」ガシッ
律「くうっ、熱いねっ! ナイス勝負だった!」パチパチパチ!
紬「楽しかったわ~♪」パチパチパチ!
純「いやはや、憂と遊んでてフラッと入ったゲーセンで皆さんと出会うなんて!
おかげで良い物見せて貰いましたっ!」パチパチパチ!
憂「えへへ♪」
和「で、私は唯に呼び出された訳だけど……
これは何の集まりかしら?」
唯「軽音部で遊んで、最後に全員でご飯食べようパーティですっ!」
和「……ええと、それでどうして私?
いや、呼んでくれたのは嬉しいんだけど」
唯「どうせなら皆で集まりたくなったんだよ~」
和「いや、私部外者よ?」
ザーボン「問題は無いよ。それを言ったら私も部外者だ」
さわ子「そうそう、気にする事はないわ。和ちゃんもご一緒しましょう」
澪「それに和にもいつもお世話になってるしな」
梓「主に律先輩が迷惑をかけてしまって、ですけどね」
律「な、な、な、なんの事だか私にゃわからんが、部長様も大賛成だぜ!」
和「まあ、皆がそう言ってくれるならありがたく参加させて貰うわ」
唯「やったぁ♪」
律「もちろん鈴木さんも来るよな?」
純「えっ! 良いんですか!?」
唯「当然だよ~♪」モッフリコ
純「わわわ、マイ・髪が!」
憂「全員集合しましたし、どうせならこのまま買い出しに行きましょうか?」
さわ子「そうね。それから直接憂ちゃんと唯ちゃんのお家に行きましょうか」
純「わっ、もしかして憂の手料理!?」
憂「うん。
ザーボン先生にも手伝って貰う予定だけどね」
和「あら。ザーボン先生は色々な事がお得意だと聞いてますが、料理もされるのですか?」
ザーボン「多少なら、な。
憂にはとても敵わないが」
憂「えへへ、そんな事ないじゃないですか。
先生の料理、すっごく美味しいんですよ」
和「それは楽しみだわ」
純「桜が丘一料理が上手い憂と、桜が丘一万能選手・ザーボン先生のタッグクッキングかぁ。
こりゃあ期待しちゃうわ!」
憂「純ちゃん言い過ぎだよ~///」
ザーボン「ふふっ。期待に応えられるように頑張らせて貰うよ」
純「──あっ。
澪先輩、よかったらその後にでもベ、ベースを教えて頂けませんか?」ドキドキ
澪「うん? 私で良ければ構わないよ」
純「やった!」
律「──おっ、プリクラがあるぜ!
最後に全員で撮らないか?」
梓「良い考えです!」
純「さ、さすがにこの人数で入るとキツいですね……」
紬「うふふ、もっと皆で引っ付けば良いのよ~♪」
梓「はいです」クンカクンカ
律「よし、準備はOKか?」
ザーボン「うむ」
唯「OKです、りっちゃん隊員っ!」
澪「ああ」
梓「良いですよ」
さわ子「は~い」
和「良いわよ」
純「はいっ!」
憂「はい」
紬「どんとこいですっ!」
律「おっしゃ、じゃあ行くぜっ!」
パシャッ!
……………………
…………
時はあっという間に過ぎる。
忙しくも楽しい毎日。
それは、大切な人達と大切な場所で過ごす宝物の日々──
────────────────
ザーボン「……ふむ」
とある日の夜、自宅。
今日、家で片付ける仕事も終えた私は、紅茶の入ったカップを片手に窓の前で外を見つめていた。
今は鮮やかな紅葉が町を赤く彩る季節。
その輝く魅力は、日の落ちた時間でも損なわれてはいない。
ザーボン「もう少しで学園祭か……」
このようなイベントは生まれて初めて経験する為、まったく勝手がわからない。
だが、それに向けた準備を始めた生徒達・教諭達を見ていると、学校生活でのその存在の大きさは感じ取れる。
私も新人ながらあれこれと仕事を与えられ、なかなか多忙の中に居たりする。
その為、ここしばらく軽音部にお邪魔は出来ていないのだが……
そう言えば先日廊下ですれ違った時に唯が、
唯『ご飯はおかず! おかずなんだよザボちゃ~ん♪』
などと言ってニコニコしていたな。
よくわからないが、彼女達の準備も着々と進行しているようだ。
……学園祭の準備が始まる少し前に、私は改めて軽音部の顧問への誘いを受けた。
正直迷ったのだが、ここはやんわりと断っておいた。
大イベントの一つと名高い学園祭だ。
それを初体験の私には、通常業務に合わせてそちらの仕事もこなしながら顧問が出来るかは不透明だったのだ。
そして案の定、忙しさは激増した。
まあその渦中に居る今にして思えば、すべてを受け持っていたとしても無難程度にはこなせたかもと思う……のだが、
それとて絶対の自信がある訳でもないし、そもそもそれは結果論か。
何より強制ではないのだから、八方美人になってどこかで万が一足を引っ張ったりしたら迷惑なだけからな。
ともあれ、落ち着いた時にまた必要とされたら受ければよいだろう。
しかし……先程上げたすべての仕事をきっちりとこなしているMs.山中は凄いものだ。
もちろん、他の先輩教諭の方々も。
……まあ、私がその方々と同じだけの経験を積めば、追い付き・追い抜く自信がある事は確かではあるのだが……
その自信を本当にする為にも、もっともっと頑張らないといけないな。
人に支え、助けて貰った分は成長して将来必ず返す。
時間が流れる事によって例え本人には返せなくなっても、その時は別の誰かに。
ザーボン「……さて、そろそろ湯浴みでもして休むか」
私はカップを流しに持って行き、風呂場へと向かう。
──その時。
『あと一週間』
声が聞こえた。
ザアッ!
ザーボン「!!!!!」
唐突に、部屋中に風が吹き荒れた。
ゴウッ!
その流れが私の体を貫き──
ザーボン(……ああ、そうか)
私は悟った。
ザーボン(初めから謎など何もなかったのだ)
何一つ。
最終更新:2012年07月25日 23:46