屋久島 浅瀬付近
陽介「海だー!うおっ冷てーははっ」
陽介「それに…」
律「みおーそっちボール行ったぞー!」
澪「今度は手加減しないからなー」
紬「わぁ…梓ちゃん真っ黒に焼けたわね」
梓「うう…毎年こうなんです」
陽介「…男の夢だなコレは」
陽介「あれ?」
陽介「唯を見かけねーな…」
屋久島 浜辺 岩陰
唯「…」
すたすた
陽介「お姉さん一人?なーにやってんの?」
唯「なんにも」
陽介「そっか」
陽介「じゃ、何考えてた?」
唯「…これからのことかな?」
陽介「…意外な言葉だな」
唯「もうすぐ卒業だから」
陽介「まーな」
唯「…」
唯「私…大事な後輩に何も残せなかったよ」
唯「いつもあずにゃんには迷惑を掛けて怒られてばっかりだったし」
唯「新入部員だって集められなかった」
唯「私達が卒業したらあずにゃん独りぼっちになっちゃうよ…」
陽介「そんで、昨日から上の空だったのか」
唯「うん…」
唯「私、ダメダメな先輩だね」
唯「…」
唯「…いつか大人になったら」
唯「…みんな忘れちゃうのかな」
唯「軽音部があって…HTTがあって…みんながいたこと」
唯「…忘れちゃうのかなぁ」
陽介「…唯はさ」
陽介「みんなのこと、どう思ってるよ」
唯「…」
唯「…大事な仲間」
陽介「ホントにぃ?」
唯「…うん」
陽介「マジで?」
唯「…うん」
陽介「ぜってー?」
唯「…うん」
陽介「忘れねーよ!」
唯「え?」
陽介「なら忘れねーよ」
陽介「大事なみんなと過ごした毎日はさ」
陽介「それにいずれ梓と離れても」
陽介「それだけ想ってるなら離れてても伝わるさ、唯の心は」
唯「そう…なのかな」
陽介「そうだよ」
陽介「それに唯は何も残してない訳じゃない」
唯「私が…?」
陽介「梓がさ、軽音部に入った一番の理由知ってっか?」
唯「…」ふるふる
陽介「唯、オメーだよ」
唯「!」
陽介「楽しそうにギターを引く唯に音楽の楽しさを再認識させられたんだとさ」
陽介「尊敬してる、とも言ってたぜ?すっげー嬉しそうな顔してさ、ははっ」
唯「あずにゃんが…」
陽介「…唯の姿は梓の心にちゃんと残ってる」
陽介「…いや、唯だけじゃない、軽音部全員だ」
陽介「みーんな梓ん中に残ってる!」
唯「残ってる…」
陽介「だから、んなシケた顔するなよ」
陽介「ちゃんと笑顔のままの唯で梓ん中に残してやれ!」にっ
唯「…うん!」にっ
唯「なんかスッキリしたよ!」
陽介「俺もだ!」
唯「もうウジウジなんてしたりしない!」
陽介「そうそう!んな似合わねーことはやめとけ!」
唯「しどい!私だって女の子なのに!」
陽介「女の子ってより…子供?」
唯「がーん!」
陽介「ほら、そーゆートコがガキっぽいんだよ!」
唯「なにおぅ!」
陽介「やるか!?」
唯「…」
陽介「…」
唯陽介「「…ぶっ、あはははははは!」」
唯「はー…」
陽介「…日、落ちてきたな」
唯「みんなのトコに帰ろっか」
陽介「そうすっか!」
部室
陽介「こうして、波瀾万丈の二日間の合宿は終わった」
陽介「過ごした時は短いながらも軽音部の絆はより深まったと言える」
陽介「そして俺達は残り少ない時を惜しみながらも最後の学園祭に向けて練習を重ねた」
陽介「そして、数カ月の時が過ぎた」
陽介「…」
陽介「うし、録音完了」
陽介「そして梓!後ろにいるのは分かってるぜ!」ばっ
しーん
陽介「…」
陽介「…」
陽介「///」
がらっ
梓「あれ、まだ花村センパイだけですか?」
陽介「…おぅ」
梓「いよいよ明日ですね学園祭!先に打ち合わせしていましょうか」
陽介「…うん」
梓「…何か嫌なことでもあったんですか?」
陽介「…別に」
梓「まぁ、あったとしてもどうでも良いですが」
陽介「この後輩可愛くねぇ…」
がらっ
唯「陽介君!この歌詞の部分だけど…」
陽介「わっ!ちょ!おま!馬鹿!」がたっ
唯「むがもご…」
梓「?」
梓「歌詞がどうしたんでしか?」
陽介「い、いやなんでもない!ちょっと外出るわ!」
唯「むー!むー!」じたばた
がらっ
梓「?」
廊下
陽介「ここなら良いだろ…」ぱっ
唯「げっほ!げほっ!じぬがどおぼっだ…」
陽介「わりーわりー」
唯「なんか軽いよ謝り方が!」
陽介「てか、梓の前であの話すんなよな!」
陽介「全力でバレっとこだったぞ!」
唯「うっかり~してた~ごめ~ん」
陽介「軽ぃーぞ謝り方ぁ!」
陽介「…ちゃんと細心の注意を払っとけよな」
唯「了解です!よーちゃん隊員!」
陽介「うむ、しっかりするのだぞ平沢特攻兵」
唯「しどい!」
陽介「へへーんだ!」
すたすた
唯「…」
唯「陽介君も大概、子供じゃん…」
唯「あ、歌詞のこと聞くの忘れた」
すたすた
律「おっす唯」
澪「一人で何やってるんだ?」
唯「あ、りっちゃん!澪ちゃん!この歌詞の部分なんて読むの?」
澪「例の曲のか」
律「これはな、き…」
自室
陽介「んー!最後の最後に良い練習出来たな!」
陽介「まさに息ピッタリ!一心同体っての?」
陽介「これで明日は完璧だな!」
陽介「…」
陽介「しかし相変わらず俺がこの世界に来た理由が分からんままだな」
陽介「向こうに帰る手がかりもなんもねーし」
陽介「…」
陽介「なーんか心がざわつくな…」
陽介「…寝よう、明日は学園祭だ」
陽介「…」
翌日 学園祭
澪「凄い人の数だな…」
律「さすがのあたしも緊張してきた…」
紬「頑張ろうね!」ぐっ
梓「はいです!」
唯「あれ?陽介君は?」きょろきょろ
律「ああ、あそこでライブTシャツ配ってる」
陽介「らっしゃーせー!もれなく速が上がるライブTシャツはいかがっすかー!」
客「一枚下さい」
陽介「どもっす!」
客「これに描かれてるマスコットキャラ可愛いね、なんて言うの?」
陽介「ジラちゃんって言います!俺がデザインしました!」
客「良いセンスしてるよ、ただちょっと似てるよね、ミッ」
陽介「それ以上は駄目っす!」
澪「楽しそうだな」
律「自分の仕事じゃないのに良く働く奴だよ、おせっかいって奴?」
…
陽介「そろそろか…」
紬「うん!」
梓「やってやるです!」
澪「ああ!」
唯「だね!」
律「…あたし達でやれる最後の学園祭だ!気合い入れてくぞ!」
一同「「「「「「おーっ!」」」」」」
「最後は桜高軽音部、放課後ティータイムによる演奏です!」
たたたっ
陽介「どもどもー!桜高唯一の爽やかイケメン男子、花村陽介でっす!」
しーん…
陽介「乗れよオメーら!恥ずかしーだろーが!」
どっ
陽介「そーそー!」
陽介「えっとー俺はギターをやってまーす!」
陽介「全力でやってやっから、オメーらもちゃんと答えろよなー!」
おー!
陽介「次は…見た目はお転婆元気っ娘!一皮剥けば乙女みかん!
田井中律だー!」
律「(なんだよソレ!聞いてないぞ!///)」
たたたっ
律「た、田井中律でーす!ドラムスを担当してまーす!」
律「ビシバシ叩いて会場を熱狂の渦に包んでやっからなー!覚悟しろー!」
おおおおおー!
陽介「俺より歓声凄くね?」
律「次は…ほんわかぽわぽわに騙されないで!私の力はむぎゅう1!
琴吹紬だぁ!」
紬「(褒め過ぎよりっちゃん///)」
たたたっ
紬「キーボード担当の琴吹紬です」ぺこっ
紬「こんな大勢の人に集まってもらって、私は今とても感動してます!」
紬「そして、それに応えられるように精一杯演奏して行きます!」
うおおおおおー!
陽介「うおっすげっ!」
紬「次は…小さな体に十万馬力!その指がつまびくは生か死か!?
中野梓ちゃん!」
梓「(私のだけ、物々しくないですか!?)」
たたたっ
梓「な、中野梓です!花村センパイと同じで、ギターを担当してます」
梓「まだまだ未熟ですけど、持てる全てを出し切って演奏してやるです!」
あずにゃあああああん!
陽介「えっ?広まってんの?」
梓「次は…見た目は大人で中身はピュア!合い言葉はM・M・Q!
秋山澪センパイです!」
澪「(なんで梓が知ってるんだ!?///)」
たたたっ
澪「ベースの秋山澪です!」
澪「正直、今にも心臓がはちきれそうなくらい、ききき緊張してます!」
陽介「よっしゃアレいけ澪ー!」
澪「!(うううう!陽介ぇ~!悪ノリするな馬鹿!)」
澪「ハ、ハートを…ぶち抜くゾ?」
陽介「ぐふっ」
ぐふっ…
澪「さ、最後は歩く天然記念物!Going My Way
平沢唯です!」
唯「よっし!」ふんす
たたたっ
唯「3人目のギター!平沢唯です!」
唯「あずにゃんを除いた他のメンバーはみんな3年生でね」
唯「その3年生達にとっては今日が最後のライブなんだ」
唯「だから悔いの無いように」
唯「後悔しないように」
唯「頑張るからね!」
おおおおおおおおおお!
陽介「悔いと後悔って意味被ってんだろ唯!」
唯「あっそうか」
陽介「でも気持ちは伝わったみてーだな!」
おおおおおおおおおお!
唯「うん!」
唯「一曲目!『ごはんはおかず』行くよー!」
♪
唯「~」
最終更新:2012年08月07日 23:24