そうして二人も警察署内へ…
唯「ふっふっふ……遅かったじゃないかお二人さん。」
律「お~良かった良かった。ちゃんといるな」
澪「唯のことが心配で走って来たんだぞ!」
律「だぞ!」
唯「ぶー!私は警察官何だから大丈夫だよりっちゃん澪ちゃん!」
律「唯が警察官何て…世も末だな」
澪「全く」
唯「怒るよ!?」
────────。
律「しっかし誰もいないな~」
広いエントランスホールを歩いて見て廻るものの人の気配はない。
澪「唯はここへ来る途中誰かに会わなかった?」
唯「ボウガンのおじさんに会ったけど…食べられちゃった」
澪「ボウガンのおじさんって……そうか。何でこうなったかはわからないけど……また巻き込まれたみたいだな、私達」
律「(私の場合飛び込んだが正解だけどね)」
唯「ってことは私達もゾンビになっちゃうんじゃ……!」
澪「そうだった!前はむぎのレフォンで助かったけど今回は何もしてない……腕とか大丈夫かな」
律「多分大丈夫だと思うけど……一応確認しとくか。二人ともこれくわえてみ」
律が二人にリトマス紙の様な物を手渡す
澪「こ、こうでいいの?」ぱく
唯「は~い」ぱく
律「はい返却して」
澪唯「?」
二人とも言われるままにそれを返却する。
律「やっぱりな…。二人とも感染の心配はないよ。」
澪「なんで?」
律「詳しくはわからないけど遺伝子的な問題でTウイルスに完全な抗体を持った人が10人に一人の割合でいるらしいんだ。ちなみに私もレオンもそうだった。」
澪「私達もそうだってこと?」
律「そゆこと。唾液に浸したこのリトマス紙の色が変わればそうなんだってさ。レオンが知り合いに頼んで作ってもらったんだって」
澪「じゃあとりあえず感染の心配はないのか…」
ここで詳しくTウイルスを解説しておこう。
Tウイルスとはアフリカの古代遺跡から見つかった始祖花という花から作り出された変異的なウイルスだ。
非常に感染力が強く主な感染ルートは空気感染、下水道からなどの汚染から始まる。
しかし変異性が強いためにその効力は長持ちしない。空気感染するのも実質数時間ほどでしかない。それからは血液感染、感染が非感染の血液に触れるなどして拡大していく
感染者の主な症状は、痒み、目眩、発熱、意識レベルの低下、食欲増強などがあげられる。ちなみに感染者は人間や動物だけには留まらないのを覚えておいて頂きたい
澪「さて、ここからどうするかまとめなきゃ。バイオハザードが起こってるのは間違いない、私は律も見つかったし脱出に一票」
唯「私はどうしよう…警察署のみんなもゾンビになっちゃったのかな…。ここはラクーンシティ警察署最後の生き残りとして街の人命救助に当たりたいかなぁ。りっちゃんの話が本当ならまだ感染してない人がいるかもだし」
律「私は悪いけどまだ脱出は出来ないよ。ここで少しやることがあるからさ、二人は協力して脱出ルートを探してくれないか?私は自分の目的を達成するから」
澪「目的って?」
律「それは……言えない」
澪「……またそうやって無茶するんだ」
澪「私やみんなに心配かけて……また一人でどっかに行っちゃうんだ」
律「澪……今はごめんとしか言えない。でも大事なことだから」
澪「なら私も行く!嫌とは言わせないから!もうあんな思いは…したくない…」
律「泣くなよ澪……。わかった。好きにしなよ」
澪「初めからそう言えばいいのに」
律「嘘泣きかよっ!」
澪「こうでもしないと律は嫌って言うからな」
そのやりとりを見て唯が
唯「そう言えばりっちゃん……りっちゃん」
唯「りっちゃああああん」ぎゅぅぅ
律「気づくの遅いわ!」
抱きついて来る唯のおでこに律はチョップした
唯「あまりに自然すぎて気づきませんでしたでありますりっちゃん隊長!」
律「唯隊員はもっと周りを見ることをお勧めするぞ!」
澪「でも唯だけ一人にするわけにもなぁ……。あと一人誰かいれば」
律「とりあえずこの警察署内に誰かいないか調べよう。外より生存率は高そうだし。闇雲に広い街を歩き回るよりは効率もいいだろ?唯」
唯「うん。同僚を救う為に奮闘する警察官……」
律「RPDの英雄ぅ~平沢~ゆ~い!」
澪「こらこら遊ぶんじゃない。じゃあどの扉から入ろうか……」
唯「あそこ以外はオートロックがかかってるみたい~。確か日本で見た見取図ではロッカールームだった気がするよぉ」
律「じゃあ行きますか」
澪「あぁ。」
三人はいよいよラクーンシティ警察署の探索を開始した。
桜高軽音部の二度目のバイオハザードが、今始まる
ガチャン
「うぅ……」
唯「誰か倒れてる!」
澪「大丈夫ですか?!」
急いで駆け寄る三人。
「君達は…?」
「ヒラサワ…日本の研修生か。タイミングの悪い時に来たな…。」
律「傷の手当てをしよう。まだ喋れるなら助かるかもしれない。包帯とかなら多少持ってきてる。澪、手伝ってくれ。」
澪「わかった」
二人は協力して血だらけの警察官の服を脱がせ傷口に包帯を巻いていく。
「すまない…恩にきるよ」
唯「何があったか詳しく教えてください。あっ名前は…」
マービン「マービン、マービン・ブラナーだ」
唯「マービンさんの傷は誰にやられたの?」
傷ついた体にも聞き取り易い様に唯はゆったりとハキハキした口調で問う
マービン「わからない…あれが何の生物なのか…。ピンク色の…体をしていた。手には鋭い爪、長い舌で私の同僚は首を跳ね飛ばされた…私の傷はまだ軽症な方さ」
マービン「警察署の内部にいきなりゾンビが現れたんだ。恐らく地下施設のやつが感染したのだろう……私達はバリケードを作るも突破され…警察署内部の人間はもうほどんど死んでるかゾンビさ」
律「血が止まらない…。」
澪「血……怖いけど……我慢っ…んっ…」
マービン「ゴホッ…私はもう…ここまでみたいだ。段々気が…遠退いてきた」
律「諦めんなよ!どうしてそこで諦めちゃうのそこで!」
澪「マービンさん…」
マービン「平沢唯……。R.P.D.最後の生き残りの君に託したい。この平和な街を奪ったウイルスを……撒き散らしやがった張本人を捕まえてくれ…」
唯「まーちゃん…」
マービン「そうだ…これを…」
唯にカードを渡す
マービン「これがあればエントランスのオートロックが解除出来る…」
唯「ありがとう…マービンさん」
マービン「見たところ銃を持ってないようだから私のスペアをあげよう……使ってくれ」
唯「はい…」
マービン「手当てももういい…ありがとう。気持ちだけで十分だ…」
律「……っ…もう少し早ければ!」
澪「……」
マービン「さあ行け…。君達は必ず生き残れよ。他に生きているものがいるかもしれない。助けてやってくれ…」
唯「でも……」
マービン「行け!!!」チャキ
拳銃を唯に向けるマービン。
唯「行こう…りっちゃん、澪ちゃん。マービンさん……必ず戻るから!」
三人が名残惜しくも外へ出た途端後ろから鍵を閉める音が聞こえた。戻って来るなと言うことだろう……。
唯「(自分が死んじゃうのにそれをも恐れないで私達に見せてくれた勇気……同じ警察官として心から尊敬します……っ)」
唯は黙ったまま扉へ向かい敬礼する。
律「変わったな…唯。大人になった」
澪「うん…。もう二年前の唯じゃない。唯は唯なりに考えて強く前に進んでいるんだ」
私も見習わなくちゃ…
唯「行こう、りっちゃん!澪ちゃん!」
律「おぅ!」
澪「うん!」
また一つ彼女達は死ねない理由が出来たのだった
唯「え~と、これを入れたらいいんだよね」
パソコンの読み込み端末にカードを差し込む。するとエントランスホールの二ヶ所の扉のオートロックが解除された。
澪「どっちに行く?」
一つは普通の扉、一つノブが二つついている大きい扉
律「ここは唯に任せるよ。ここに一番詳しいのは唯だろうし。どうする?唯」
唯「う~ん。人がいそうな所だと作戦会議室かなぁ。それだとこっちの大きい扉の方だよ」
澪「こっちね」
律「マービンさんが言ってたピンク色の怪物がいるかもしれない、気を引き締めて行こう」
大きい扉を開け恐る恐る中へ入る。とりあえずは何もいないみたいだ。
澪「やっぱり怖い…」ガタガタ
唯「でもピンク色らしいから意外と可愛いかもよ澪ちゃん?!」
澪「かなぁ……」
律「可愛い怪物って言うのもそれはそれで怖いが。」
三人は先に進むべく歩く。受け付けカウンターを過ぎ……その奥のドアへ行こうとした丁度その時
「………」
ピンク色の何かが窓を横切った
澪「……」パクパク
唯「……」ポカーン
律「……」スポーン
唯「帰ろっか……」
澪「うんうんうんうんうんうんうんうんそうしよう」
こうして三人のバイオハザードは幕を閉じたのだった。
FIN
律「えっ?終わり?マジで?」
律「マービンのこともう忘れたのか?!確かにこの世の者とは思えないおぞましい怪物だったけどさ!」
唯「それはそれ……これはこれだよりっちゃん」
律「いつからそんな冷たいやつになったんだ唯!」
律「ほら澪も!踞ってないで立って!」
澪「逃げなくちゃ駄目だ逃げなくちゃ駄目だ逃げなくちゃ駄目だ逃げなくちゃ駄目だ……」
律「「なく」を退けろよwwwも~わかった。私が一人で行って倒してくる」
唯「一人じゃ危ないよ!私も行く!」
澪「わ、私も……」
唯&律「どうぞどうぞ」
澪「う、嘘嘘!」
律「はあ、こんなことしてても仕方ない。みんなで行こう」
唯「うん…いくしかないよね」
澪「が、がんばるっ」
皆銃を抜き取りドアの前に集まる。
律「じゃあ戦闘開始だ!」
扉を開けまるで犯人のアジトへ踏み込む様に三人は走った───
────────。
梓「くっ……思ったより街の被害が大きい。これじゃもう生きてる人なんて…」
諦めちゃそこで終わりなんだ…きっとまだどこかに生存者がいる
梓「警察署ならまだ持ちこたえてるかもしれない…」
群がるゾンビを華麗にかわしつつ警察署を目指すことにした
律「……いないな……」
澪「うん……」
唯「このまま方円の陣で行こうよ」
律「合点承知」
澪「御意」
澪は後ろ、律は前、唯は左右を警戒する。
ポタ……ポタ……
水の滴る音が聞こえる
首がない死体を横切る。さっきマービンが言っていた人は10mほど先のドアを律が見据える。
律「(あそこが作戦会議室への扉か……さっきのはどっかへ行ったのか?)ん…?」
上からポタポタと何かが落ちてきている。雨じゃなかったのか
律「赤いな……」
更に恐る恐る上を見上げる律
するとそこには──────
ハアアアアア……
ピンク色をした、怪物──────。
何故ピンク色か、律はようやく理解した。
表面の肉が削げ落ち筋肉が露出しているからピンク色なのだ。
脳みそまで見えておりそれはもう人間の原型を留めていなかった。
律「二人とも止まれ…」
小さな声で静止を呼びかける
唯「これが……ピンク色の怪物……」
澪「ひっ……」
律「静かに、」
「ハアアアアア……」
律「目が退化している、きっと私達のことが見えていないんだ。このまま静かに行ってやり過ごそう」
唯「合点承知之助」
澪「うんうん……」
静かに……、静かーに……
律「ヨーシコレナラバレズニ……」
唯「は、…は…」
鼻がむずむずする…
が、その苦労も水に流れることとなる
バリィィン
ガラスが割れ勢い良く飛び込んで来たのはケルベロス
澪「ひいいいいぃぃぃ」
唯「っくしっ!」
律「空気読めよ……」
「!!ファアアアア!」
音を察知し、まずは一番音を立てているケルベロスに向かって飛びかかる。
飛びかかると同時に右手の大きな爪でケルベロスを引き裂く
「キャインキャイン」
胴体が真っ二つになりながら壁にぶち当たりケルベロスは動かなくなった。
「ハアアアアア!」
こちらもしっかりと唯のくしゃみでバレているようだ。
律「澪!唯!伏せろ!」
飛びかかる体制を見て瞬時に伏せる。その上をピンク色の怪物が通りすぎた。
飛びかかりは虚しく空を切る
律「このっ!」
パァン!パァン!
コルトで素早く二発撃ち込むがピンク色の怪物は弾が発射される前の撃鉄の音などを聞き分けたのか素早く天井へ張り付く。
律「ヤバい!!」
天井から身を翻しまたこちらへ飛びかかってくる。
律「駄目だ避けられ─────」
バリィィン……!
またガラスが割れる、しかもそれは律のすぐ隣
だが次に入って来たのはケルベロスではない、人だ─────
彼女はその勢いのままピンク色の化物を蹴り飛ばす。
今起こったことをありのままに話すぜ……
私はもうやられたかと思ったら急にガラスを突き破って飛び込んで来た人がそのままピンク色の怪物を蹴り飛ばした
いや、自分でも何を言ってるかわからないが……
超スピードだとかハリウッドだとかそんなチャチなもんじゃあ断じてねぇ!
私はバイオハザードの片鱗を味わったぜ……
律「はっ!」
ようやく現実へ戻って来た律が見た光景は、小さい背中に二つに束ねた髪、黒いシャツに黒のスカートを履いている。
最終更新:2010年03月05日 02:31