ー琴吹邸前ー
唯「こ、ここが・・・」
憂「紬さんのおうち・・・すごいね」
唯「どこが入り口か分からないよ・・・あっ」
ウイーン
紬「唯ちゃん、憂ちゃん、こっちよ~」フリフリ
唯「あ、ムギちゃんー。やっほー!」
紬「ううん、来てくれてありがとう。ゆっくりしていってね」
紬「あ・・・ミニゆいちゃんたちも一緒なのよね?」
憂「はい! ミニゆいは、ここに・・・」ピラッ
ミニゆい「クー」スヤスヤ
紬「うふふ・・・ポッケの中で寝ちゃったのね」
唯「ミニういはこっちだよー」ピラッ
ミニうい「ササッ」ジィィ
紬「あ、隠れちゃった」
唯「だいじょうぶだよ? お友だちのムギちゃんだよ」
ミニうい「・・・」ソォー
紬「仲良くしてね♪」チョン
唯「はい、ごあいさつだよ?」
ミニうい「エヘヘ」ペコッ
紬「あらあら、よろしくね」ウフフ
紬「・・・すごいわ、唯ちゃんも憂ちゃんも」
唯「すごい?」
紬「えぇ・・・たった一晩でこんなにミニゆいういと仲良くなるなんて」
憂「それって、すごいことなんですか?」
紬「うん、ミニゆいういは自由奔放だから、人になつくことは少ないの」
唯「へえー。私たちの教育のたまものだね!」
紬「ふふっ。じゃあ、とりあえず家に入って」
ミニゆい「ホレホレー」キャッキャッ
ミニうい「ヤーン」ウフフ
憂「2人とも楽しそう♪」
唯「ねえねえ、ムギちゃん。ミニゆいたちは、どうやって育てればいいの?」
紬「そうねえ・・・育てると言っても特に」
紬「あの子たちのことは、分かってないことが多いの」
唯「へえ・・・」
紬「・・・憂ちゃん、ミニゆいはどんな顔に見える?」
憂「えっと・・・小さいお姉ちゃんに見えます」
紬「じゃあ、唯ちゃんは? ミニういはどんなふうに見えるかしら?」
唯「憂そっくりだよ!」
紬「やっぱり、思ったとおりねえ」ニコ
紬「あの子たちは、その人がいちばん大切に思っている人の姿に似るの」
憂「え//」
唯「ほえ? どゆことー?」
紬「唯ちゃんと憂ちゃんにとって、お互いが特別な存在だってこと」ニコニコ
唯「なんだー、当たり前だよ、私と憂は、ずーっと一緒だもん」
憂「・・・//」テレテレ
紬「ミニゆいういは寂しがり屋だから、お互いが近くにいないと泣いちゃうんだけど・・・」
唯「そうなの? この子たちは平気みたいだよ? ねー、ミニういちゃん」
ミニうい「ウインウイン♪」コクコク
紬「それはきっと、唯ちゃんたちが離れていても互いの繋がりを強く感じているからね」
唯「ふうん・・・」
憂「紬さんは、この子たちをどこで見つけたんですか?」
紬「それはね・・・あ、っと、そろそろお昼ね。つづきは、お昼ごはんのあとにしましょう?」
唯「おぉ、ムギちゃんちのお昼ってどんなだろ~!? きっとすごいご馳走だよ~」
憂「もぉ、お姉ちゃんったら。失礼だよ?」
唯「てへへ、ごめんごめん」
紬「うふふ、唯ちゃんたちのために、シェフが腕に寄りをかけて作ってくれてるわ」
紬「唯ちゃん、憂ちゃん、そちらの椅子に座って?」
憂「は、はい」(すごいお部屋・・・やっぱり緊張しちゃうな)
唯「ほほーい。楽しみだねぇ、憂~」ワクワク
憂「う、うん」
紬「ミニゆいういちゃんの分は、こっちよ」ヒョイ
ミニゆい「ゴハン! ゴハン!」チンチン
ミニうい「オネエチャ オギョウギワルイヨー メッ」
メイド「お待たせいたしました」カパッ
唯「おぉっ! 何これー?」
憂「すごいね・・・これは、ロールキャベツかなぁ」
メイド「こちらから、カーリカーリリート、ヘルネケイット、レイパユーストでございます」
唯「か、カリカリトースト?? 呪文料理!?」
紬「ふふ。ロールキャベツに、エンドウ豆のスープ、雌牛のチーズよ」
メイド「パンは、マイトリエスカとルイスレイパをご用意しました」
紬「ミルク入りパンとライ麦パンよ。たくさん食べてね」ニコニコ
唯「いただきまーす!」ハグハグ
唯「・・・う、うまあぁっ」
唯「このスープも、コクがあって最高だね憂~」
憂「うん。・・・お姉ちゃんほら、お口のまわり」フキフキ
唯「えへへ、ありがと」
紬「うふふ」ニコニコ
ミニゆい「ウマー!ウマー!」ハグハグ
ミニうい「オイシーネー」モグモグ
唯「ミニゆいたちも、美味しそうに食べてるねえ」モシャモシャ
憂「紬さん、この子たちは、人間と同じ食べ物でいいんですよね?」
紬「うん。何でも分け合って食べる習慣があるわ」
紬「でも、何よりの栄養は愛情よ。むしろ、愛情が栄養になってるの」
ミニうい「ハイ、アーン」
ミニゆい「アーン・・・モグモグ・・・ンッマイ」ピカァァ
唯「癒やされるねー・・・あ、これもおいひぃー!」モギュモギュ
紬「ふふっ」ニコニコ
唯「はむはぐ・・・んん?このレイパユーストって、イチゴジャムがかかってる」
唯「美味しいよぉ、憂も食べてごらんよ、はい、あーん」ヒョイ
憂「ん//・・・モグモグ゙・・・ほんとだ、美味しいね!」ニコッ
紬「癒やされるわぁ」ニコニコ
唯「ふう・・・満足じゃあ」
憂「食べ過ぎちゃったね。お姉ちゃん、おなか大丈夫?」
紬「食後のデザートもあるんだけど、どうする?」
唯「いただきます! デザートは別腹だよぉ」
憂「・・・すごいね、お姉ちゃん」
紬「コーヒーと、デザートにコルヴァプースティよ」デデン
憂「うわぁ、おおきい・・・」
唯「あれ、ムギちゃん今日は紅茶じゃなくてコーヒーなの? 珍しいね」
紬「実はね、今日のお料理はぜんぶ、この子たちにちなんだものなの」
唯「へ、そうなの? ・・・憂、何か分かるー?」
憂「えっと、もしかしたらですけど、・・・フィンランドですか?」
紬「せいか~い! すごいわ、憂ちゃん」
唯「へええ・・・私には何だか全然分かりません!」キッパリ
憂「えへへ・・・レイパユーストは有名なフィンランドのお料理だし、あとコーヒーも」
紬「そう。フィンランドは、世界一のコーヒー好きな国なの」
憂「でも、それとミニゆいういとの関係って・・・もしかして」
紬「ええ。あの子たちは、フィンランドで見つかった妖精よ」
唯憂「妖精!?」
紬「森の樹の妖精で、災厄から人間を守ってくれるの。トントゥと呼ばれてるわ」
唯「森の妖精、トントゥかぁ・・・何だかかっこいいね!」
紬「日本中を妖精でいっぱいにするのが、私の夢なの~」
唯「トントゥがいれば、災厄からみんなを守ってくれるかもしれないねー」
紬「うん、ミニゆいういは、日本に来た最初のトントゥよ」
憂「・・・そんな大切な子たちを、私たちが預かってしまって、いいんですか?」
紬「ううん。憂ちゃんたちじゃないと、駄目なのよ」
紬「この子たちは、一緒にいる人の心を写して成長していくわ」
紬「優しい人と居れば、優しく。暴力的な人と居れば、暴力的なトントゥになるの」
唯「・・・分かったよムギちゃん。私が、トントゥを天才ギタリストに育てるよ!」
紬「」
憂「お、お姉ちゃん」
唯「えへへ、冗談だよぉ」
紬「もうひとつ大事なのが、トントゥと一緒に居る人間も、2人が仲良しなこと」
紬「2人の愛情が深いほど、トントゥ・・・ミニゆいとミニういも、大きく成長するわ」
唯「それで、愛情が栄養だってこと?」
紬「えぇ、唯ちゃんと憂ちゃんは、世界一仲良しの姉妹だと思うもの」ニコニコ
唯憂「えへへ//」
紬「唯ちゃんたちのお互いへの愛情が、トントゥを育ててくれるわ」
唯「ムギちゃん、難しいことはわからないけど、私一生懸命育ててみるよ」
憂「私も。お姉ちゃんと一緒に、頑張ってトントゥを育てます」
ー帰り道ー
唯「君たちは妖精さんだったんだねぇ」
ミニうい「ウイーウイー」パタパタ
憂「いたずらっ子のトントゥかぁ・・・どんな子に育つのか、楽しみだね」
唯「2人で子育てがんばろうね、憂」フンス!
憂「うん//」
唯「ムギちゃんちのごはん美味しかったねぇ」
憂「あ、うん、すごかったよね・・・」
唯「また食べたいよぉ、カリカリトースト!」
憂「ふふっ。カーリカーリリート、だったっけ?」
唯「複雑でいて繊細、まさに妙なる食感だよねえ・・・」
憂「あんなお料理、私にはまだ無理だなぁ」
憂「私も、お姉ちゃんにもっとおいしいお料理食べさせてあげたいな」
唯「もう、何言ってるの、憂」
憂「え?」
唯「人はパンのみで生きるに非ず、だよ」
憂「えっと、どういう・・・」
唯「いつだって、家に帰れば憂のごはんが食べられる!」
唯「だから、どこで何を食べても、楽しくごはんが食べられるんだよ?」
憂「そっか・・・ありがとうお姉ちゃん」
唯「今日のごはんだって、憂と一緒に食べたからこそ、特別美味しかったんだ~」
憂「うん。美味しかった!」
ミニゆい「ウイノゴハンハ セカイイチ!」
憂「えへへ// ありがとー、ミニゆいちゃん」
ー夜・平沢家ー
唯「結局、ミニゆいういの事で分かったのは、フィンランドの妖精さんだって事くらいかなぁ」
憂「うん。だからね、フィンランドの妖精について調べてみたよ」
唯「おぉ、憂さんや。仕事が早いですな!」
唯「それでそれで、どうだったのー?」
憂「あのね、まず、妖精はイタズラ好きだってこと」
憂「モノがなくなったり、置き場所が変わってたら、妖精の仕業かもしれないって」
唯「・・・む」
憂「? お姉ちゃん、どうかした?」
唯「憂。・・・どうやらこの家には、昔から妖精がいたのかもしれないよ」
憂「・・・お姉ちゃんの忘れ物癖とかは、関係ないと思うよ?」
唯「憂! なんてことを~」
憂「ふふっ、冗談」
唯「うぅっ・・・憂がいじめる」
憂「ところでお姉ちゃん、あの子たちは?」
唯「あれ? そういえば・・・」
憂「ハウスにもいないよ?」
唯「さ、探さなきゃ」
唯「いない・・・」
唯「家中探したけど、見つからないよぉ」
憂「もしかして、家出・・・?」
唯「私に、愛想を尽かして・・・」グスッ
憂「そうだ、お姉ちゃん。とりあえず紬さんに聞いてみよう?」
唯「そうだね・・・そうしてみる」
唯「あれ・・・私のケータイがない」
憂「えっ!? どこかに置いてきちゃった?」
唯「ううん。いつもこのポケットに入れてるもん。忘れる訳ないよ」
憂「・・・そうだ、お姉ちゃんのケータイならしてみれば・・・」ピピポペ...
ブブブ...フワッフワッターイム♪
...フワッフワッターイム♪
憂「あ!」
唯「鳴ってる!・・・この辺かな」ガラッ
ミニゆい「」スヤスヤ
ミニうい「」スヤスヤ
唯「いた・・・!」
憂「引き出しの中で、ケータイ枕変わりにして寝てるね・・・」
唯「イタズラしおったな、こやつ」ニカッ
憂「ふふっ、起きたらメッだね」
唯「ふあ、安心したら眠くなっちゃったよ」
憂「じゃあ、私たちも寝よっか」
唯「そうしよー」
パチッ
憂「・・・」
唯「・・・」
憂「ね、お姉ちゃん?」ボソッ
唯「ん?」
憂「お姉ちゃんが言ってた『人はパンのみで生きるに非ず』って」
唯「うん? ・・・私そんなこと言ったっけ?」
憂「言ったよぅ。 あれって、聖書の言葉なんだよね?」
唯「そうだっけー。あんまり考えずに口から出てたや」
憂「お姉ちゃんらしいなぁ」クスッ
憂「さっき、妖精さんのこと調べてたときに、ついでに調べたら見つけたんだ」
唯「うん」
憂「人は、たくさんの人やもののおかげで生きていける」
憂「人それぞれに生きる目的があってかまわない」
憂「どんな心で生きていくかも大事なこと」
憂「そんな意味があるんだって」
憂「今まで、あまりそういうの考えたことなかったけど・・・」
憂「幸せだなぁって思えることの数を数えて生きていきたいよね」
憂「幸せになるためには、今ある幸せを知ることも大事なんだって」
憂「・・・お姉ちゃん?」
唯「」スヤスヤ
憂「もぉ、お姉ちゃん」
憂「ふふっ」
唯憂「」スヤスヤ
最終更新:2012年08月11日 22:50