ー平沢家ー
ピンポーン♪
憂「はーい」トタトタトタ
律「ほぇぇ、さぶっ・・・こんにちは、憂ちゃん。寒いね」
憂「いらっしゃい、律さん」ペコ
唯「りっちゃーん!」トタトタトタ
律「おーっす唯、来たぞぉ!」
憂「あ、コートもらいます」
律「おぉ、ありがとね」
唯「はれ? りっちゃんその袋なぁにー?」
律「ふっふーん。さすが唯隊員。この荷物に目を付けるとは!」
唯「いやいや、サンタさん並の大荷物じゃん」
律「はっはっはっ! 見て驚けえーー!」
ドチャアッ!
唯「おぉっ! これはっ」
律「りっちゃん厳選の駄菓子セットだぁっ」
唯「懐かしのコーラアップ!」
律「コーラ餅もあるぞ!」
唯「フェリックスガム!」
律「子どものたばこ・・・ココアシガレット!」
唯「フルーツマンボ!」
律「くるくるぼーゼリー!」
唯「りっちゃん! まるで天国だよりっちゃん!」
律「へっへー、お土産はこれだけじゃないぞー」
どどん!
唯「わぁっ・・・おおきいトンちゃん!?」
律「ふふふ、駅前のゲーセンでね。行きがけの駄賃ってやつさ」フッ
唯「すごい、すごいよりっちゃん! さすが隊長!」
律「はっはっは・・・って。今日はこんなことをしにきたんじゃなーい!」
唯「はえ・・・?」
律「妖精はどこだ、ミニゆいういを見せろー!」
唯「おぉ。あれ、そう言えば・・・どこ?」キョロキョロ
ミニゆいうい「・・・」ガクガクブルブル
唯「あ、いたぁ。おーい、ミニゆいちゃん?」
律「お、そこかぁ!」グイッ
ミニゆいうい「ヒィィィィッ」ピュー
唯「あ、逃げた」
律「うっ・・・お、おーいでてこーい」グイッ
ミニゆいうい「」ガクガク
唯「りっちゃん、この子たち怯えちゃってるよ」
律「そ、そんなぁ」ガックシ
ピンポーン♪
憂「はーい。いらっしゃい、梓ちゃん」ニコッ
梓「憂、よろしくね。はい、これクッキー」ヒョイ
憂「ありがとう・・・あれ?」
子猫「ミューミュー」
トタトタトタ...
唯「あーーずーーにゃーー・・・」ダダッ
子猫「ミュー」
唯「うぉぉっ!?」キキッ
梓「お邪魔します、唯先輩」
梓「この子、道端で震えてて」
子猫「ミューミュー」
唯「そっかぁ・・・泥だらけだねぇ」
梓「おなかも空いてるみたいで」
憂「はい、蒸しタオル用意したよ。とりあえずこれで身体拭いてあげよう?」
梓「ありがと、憂」フキフキ
憂「梓ちゃんの服も泥が付いてるね」
梓「あ」
憂「染みにならないうちに洗ったほうがいいよ」
梓「そんな、悪いよ」
唯「気にしないんだよ、あずにゃん。私のTシャツ貸してあげるから、着替えなよ」トタトタトタ
梓「う。唯先輩のTシャツ・・・」
唯「はい! おまたせえ~」スッ
梓「あう・・・やっぱり。えりんぎ」
唯「うん、それ私のお気に入りなんだぁ」エヘヘ
憂「梓ちゃん、よかったらそこの部屋で着替えるといいよ」
梓「そ、それじゃお借りします」
梓「お待たせしました」
唯「わあ、あずにゃんすっごくかわいいよ!」
憂「うんうん、お姉ちゃんみたいだよ!」
梓「お姉ちゃんみたいって、Tシャツがでしょ」
梓(この姉妹の感覚はわからない・・・)
梓「あ、子猫は?」
憂「ここにいるよ。ほら、きれいになった」
子猫「ミューミュー」
梓「ほんとだ。ふふ、良かったね」ススッ
子猫「ミャァァ」スリスリ
憂「おなか空いてるみたいだから、今ミルクあっためてるよ」
梓「そっか。ありがと、憂」ニコッ
憂「ううん、気にしないで」
唯「あずにゃん、りっちゃんが上で待ってるよ」
梓「はい。お邪魔します」
ガラッ
唯「りっちゃんおまたせ~」
梓「おはようございます、律先輩」
律「おーっす、梓。っておまえ、そのTシャツ」ブフッ
梓「にゃっ?// こ、これは、違うんです!」
唯「あずにゃん似合ってるよ」ニコニコ
梓「”えりんぎ”が似合う私って」
子猫「ミューー」
律「お、猫。梓が連れてきたのか?」
梓「はい、行き倒れの子猫なんです」
唯「?? りっちゃん。ミニゆいたちは?」
律「あー、それはその・・・ははは」
ー机の下ー
ミニゆい「」ガクガク
ミニうい「」ブルブル
唯「ありゃりゃ。おーい、私だよ」
ミニうい「!」
ミニゆい「ユインユイン」ゴソゴソ
ミニうい「ウインウイン」ゴソゴソ
梓「あ、出てきましたね」
ぽふっ
唯「えへへぇ・・・いい子いい子」
律「わ、私にもさわらせろぉ」ガバッ
ミニゆい「ヒャアアッ」ヒシッ
ミニうい「オネーチャン」ヒシッ
唯「り、りっちゃん、こわがってるよ」
梓「律先輩は、強引すぎるんですよ」
律「なんだとー。・・・きっとこいつら、唯たちにしかなつかないんだよ」
梓「わ、私がやってみます」フンス
梓「唯先輩、ちょっとこの子お願いします」スッ
唯「ほーい」ダキッ
子猫「ミュウー」
梓(さっきみたいに・・・きっと)
梓「・・・こんにちは、ミニゆいちゃん、ミニういちゃん」ニコッ
ミニゆいうい「・・・」ジーッ
梓「」ニコニコ
ミニゆい「・・・」ソォーッ
ミニうい「・・・」ソォー
ぽふっ
梓「えへへ」ナデナデ
ミニゆい「ユインユイン♪」
ミニうい「ウインウイン♪」
唯「わぁ」
律「」
律「な、なんでだぁ」シュン
梓「ふふっ・・・唯先輩のおかげかも」ナデナデ
唯「えーっ、私なにかしたっけ」キョトン
梓「なんでもないです」ナデナデ
律「ちくしょーっ・・・なんで私だけっ」
ガチャ
憂「ミルクあったまったよ」
梓「ありがと、憂」
律「ミルクって、牛乳か?」
梓「はい、子猫がおなか空かせてるようなので」
律「あー、ちょっと待って憂ちゃん」
律「飲ませる前に、ちょっと皿みせて」
憂「あ、はい。これですけど」ススッ
律「これさ、温めたときに薄膜ができてるだろ」
律「これを取ってからやるといいよ」ヒョイ
律「これでだいじょーぶ。ほら」
子猫「ミュウー」ピチャピチャ
唯「なんで薄膜取るの? あれおいしいのに」
梓「おいしいですかね・・・」
律「子猫は時々、あれをのどに詰まらせちゃうんだよ」
律「あと憂ちゃん、新聞紙を用意しておくといいぞ」
律「ミルク飲んだあとは、少し下痢気味になるからな」
憂「はい、用意してきます」タタッ
唯「りっちゃん物知り~」
梓「でも、下痢するならミルクは良くないんじゃ・・・」
律「ミルクに慣れてない最初だけだよ。すぐ固いウンチになるから大丈夫」
唯「すごい、りっちゃん見直した!」
梓「ホントですね。頼りになります」
律「ははっ。昔、聡が捨て猫拾ってきて、同じようなことしたからさ」
梓「さ、ミルクだよ」スイ
子猫「・・・」
唯「飲まないねえ?」
憂「なんでだろう・・・熱すぎたかなぁ」
律「ん。こういう時は、ミルクを指につけて・・・ほい」
子猫「ミュウー」チュッチュッ
唯「あ、指吸ってる」
律「お母さんのおっぱいと同じだよ」
律「子猫にとっては、舐めるよりも吸う方が簡単なんだよ」
梓「わ、私にもやらせてください」
律「おう。ほら、やってみ」
子猫「・・・ミュ」チュウチュウ
梓「あっ」パァア
憂「良かったね、梓ちゃん」
唯「あずにゃんは、この子猫のお母さんみたいだねぇ」
梓「あ、ありがとうございます。・・・律先輩」
憂「あ、お姉ちゃん。ミニゆいたちが」
ミニゆいうい「」ソォッ
律「お、出てきたな。よーしよし、こっち来い」
唯「おぉ、りっちゃんのところに来たよ!」
梓「悪人じゃないってわかったんですかね。ふふっ」
律「なっ!? こら、中野ぉ!」
唯「あずにゃん、この子あずにゃんの家で飼うの?」
梓「いえ、うちは・・・でも、飼い主が見つかるまでは面倒をみようかと」
子猫「ミュウミュウ」スリスリ
憂「すっかり梓ちゃんに甘えてるね」ニコニコ
梓「最初は、警戒されてたんだけどね」
子猫「ゴロゴロ」
梓「ふふ」サスサス
梓「」グルグルキュー
唯「おぉう。あずにゃんのおなかが泣いている」
憂「あ、そろそろごはんにしましょうか」
梓「す、すみません。・・・恥ずかしい//」
律「ははっ。梓は、おなかぐらい正直だと扱いやすいんだけどな」
唯「恥ずかしがることないよあずにゃん。私のおなかは、よく憂と会話してるよ?」
梓「意味不明です」
憂「皆さんおなかすいたでしょう。すぐ準備しますね」
律「悪いね、憂ちゃん」
唯「わーい、お昼だ、憂のごはんだ!」
梓「毎日食べてるでしょうに・・・」
唯「憂のごはんは毎日特別なんだよ、あずにゃん」
律「まぁ、憂ちゃんのごはんが特別おいしいのは事実だな」
梓「そこに異論はありません」
憂「そうかなぁ。ふつうだよ」
唯「憂、今日のお昼ごはんはなあに?」
憂「お鍋なんかどうかな? トマト鍋とか」
唯「おぉう!昼から鍋もいい!」
梓「トマト鍋・・・?」
律「ん?梓は初めてかー?」
梓「ええ、聞いたことはありますけど。おいしいんですか?」
律「美味いぞー。トマトの酸味が野菜や魚の旨味を引き立ててなぁ」
梓「」ゴクリ
唯「・・・弱い」
憂「え?」
唯「ただのトマト鍋じゃみんなの舌を満足させられないよ、憂!」
憂「ご、ごめん。どうすれば・・・?」
唯「トマトあんこ餅鍋なんてどうかな!」
律「却下だ!」
―――
唯「ふうー、満腹天国だよー」
梓「もう入らないです」
律「シメのトマトスパゲティ美味すぎだろ、憂ちゃん味付け最高」
憂「ありがとうございます」
唯「えへへー」
梓「なんで唯先輩が照れるんですか・・・」
ミニゆい「マンプクー」
ミニうい「マンプクダネー」
子猫「」
梓「あれ・・・?」
律「ん? どしたー?梓」
梓「いえ、ちょっと・・・子猫が」
唯「あえ? ・・・ぼーっとしてるね」
梓「まさか、体調悪くなったんじゃ」アセッ
子猫「フウー」くたっ
ミニうい「オナカイッパイ、ネムネムダヨ」
唯「ねむねむ、って言ってるけど」
梓「そうだといいですけど・・・」
子猫「」Zzz...
梓「あ、寝た」
律「はははっ、ミニういの言うとおりだったなー」
唯「・・・も、もしや」
梓「唯先輩?」
唯「ミニういは、猫の心がわかるんだよきっと!」
律「なーに言ってんだ、たまたまだよ、たまたま」
梓「そうですよ、唯先輩」
梓「いくら妖精でも、そんなに簡単にほかの生き物の心がわかるなんて思えないです」
唯「むぅー、そうかなぁ」
唯「憂は、私の考えてること言わなくてもわかるよ?」
ガチャッ
憂「みなさん、ブドウ洗ってきたのでよかったら召し上がってください」
唯「おお、ほらやっぱり。ちょうどデザートが食べたいと思ってたんだよー」
唯「さすが憂! 以心伝心だね」
憂「えへへ」//
律「それは唯が、いつも食い意地がはってるからだ」
律「ってかこのブドウうんめー!」
梓「ほんとですね、甘くておいしいです」
梓「種なしのブドウなんてあるんですね、食べやすくていいです」
律「それどころか、皮ごと食べられるブドウもあるらしいぞー」
梓「それは、唯先輩向きな感じが・・・」
唯「えーなんでー?」
梓「『皮むくのめんどくさーい』とか言いそうじゃないですか」
律「梓、まだ分からないのか・・・」
梓「え、何がです?」
律「あれを見てみろ」
憂「はいお姉ちゃん、ブドウ剥けたよ~」
唯「あーむ」モグモグ「んまい~!」
憂「よかった♪ たくさん食べてね」
梓「・・・憂、ちょっとお姉ちゃん構い過ぎ」
憂「え。そうかな、ふつうだよ?」
唯「ふつうだよー、姉妹だもん」
唯憂「ねー♪」
梓「姉妹って・・・律先輩」
律「はぁー、食った食った」
梓「・・・聞いてない」
律「ところで唯、昨日ムギんちに行ったんだろ?」
律「ミニゆいたちのこと、少しは分かったのか?」
唯「うーん、それがね。わかったような、わからないような」
梓「なんですか、それ」
唯「あの子達は妖精で、私たちを守ってくれてるみたい」
律「ほほう」
梓「妖精に守られるなんて、すてきじゃないですか」
唯「ムギちゃんが言うにはね、妖精はあちこちにいるんだって」
律「へえー。でも私が見たのは、ミニゆいたちが初めてだぞ?」
唯「うん、でもね。たとえばこの机には机の妖精。家には家の妖精がいるんだって」
梓「ああ・・・そういう話、何かで読んだことがあります」
唯「フィンランドの神話だって、ムギちゃん言ってたよ」
梓「あ、そうかもしれません」
律「じゃあ、ミニゆいたちは、何の妖精なんだ?」
唯「それはムギちゃんもわからないって」
唯「でも、ミニゆいもミニういも、私と憂に似てるよね」
律「うん。唯たちに関係のある妖精ってことか」
唯「でね、妖精たちをたくさん増やすのが、ムギちゃんの夢なんだー」
最終更新:2012年08月11日 22:53