律「左右に一匹づつだと思う。私は左をやるから澪は右を」

澪「OK」

律に頼られて嬉しい……ほら見ろ……やっぱり律は私を必要としているんだ

律「1.2.の3!」

その合図と共に律と澪は走りだし左右に別れる

澪「!」

律の予想通りケルベロスが一匹こちらにいた。

「グルルルワフッ!」

こちらに気づくと一気に飛びかかってくるケルベロス。

澪「えぇぃ!!」

バァン!

イーグルの鈍い銃声が地下に響く、その銃弾はケルベロスに……ギリギリカスり壁のコンクリートへ虚しくめり込んだ

澪「外した!!?」

ケルベロスの飛びかりも澪には当たらなかったがその勢いを利用して前方にいる律に飛びかかり……そのまま左肘に噛みついた。

律「いっつっ……」

後ろは完璧に見ていなかった為油断していた律


澪「律!」

更に律の前方からもう一匹向かって来ている。

澪「(助けなきゃ……)」
澪が律の左肘に噛みついているケルベロスに銃を向ける。

律「余計なことしなくていい!」

澪「え……」

律まず前方から来ている犬を右足で蹴りあげる。
その後左肘に噛みついているケルベロスをコルトM19で0距離射撃。

鳴き声さえあげることなく即死

そして前方のケルベロスにも二発発砲した。

「キャンギャン!」

律「ふぅ……」

澪「ごめん律……私がドジしたせいで……」

律「気にしてないよ」
澪「律……ありが」

律「期待してないから。いや……まだ期待しないで何もしないならマシか。期待させといて何もしないのが一番タチが悪い」

澪「ごめん……私が悪かった……本当にごめん」

律「うっ……、い……いいよ澪…謝らなくて。」

その場に踞る律

澪「律!早く手当てしないと…!」

律「私も…完全抗体者だからこれはただ犬に噛みつかれただけだよ…心配しなくていい。それより聞いてくれ……み……」

澪「……律!?」

律「いいから……早く包帯を……」

澪「え…あ、うん!わかった。」

澪は包帯を取り出し律の肘辺りに巻き付ける。

律「はあ…は…あ…もう大丈夫」

澪「律…目が赤いっぽい…。本当に大丈夫?」

律「大丈夫、大分痛みも引いたから。さあ、行こう澪」

澪「う、うん」

二人はそのまま地下駐車場へと出る──────。


地下駐車場─────
澪「ここが地下駐車場か……確か唯の話じゃこの先の犬舎のマンホールから下へ降りられるらしい……だっけ」

律「あぁ。行こう」

あれからまた律は冷たくなり私を置いていくこともしばしばあった。
それも当然だ……あんなミスして自分の腕が噛まれれば誰だって怒るだろう

だから私は律に何も言えなかった


律「この先……なんだよな?」

澪「地図ではそうなってる……」

律「このトラック動かすしかないか……澪、手伝って」

澪「うん!」


トラックに並び二人同時に思いっきり押す

律「~~~~っ!」

澪「んんんンンン……」
少しづつだからトラックが動き、犬舎へと繋がるドアが見えてくる

律「っっっはあっ!」

澪「……はあ……はあ……」

何とか扉のスペースを確保した私達は休む暇もなくその扉へ入って行く。


澪「マンホールマンホール……あった!けどマンホールってどうやって開けるんだろ……」

律「マンホールオープナーが理想的だけどなければ何か引っかけられるものを探そう」

澪「うん」

二人は犬舎内を捜索

澪「マンホールを開けれそうなものはないなぁ」

パァン!パァン!パァン!

キャウンッ


澪「ん?」

律とは違う方を探していた澪が銃声を聞き急いで律の元へ戻る

澪「律!敵か?!」

律「まあそんなところ」

パァン!パァン!パァン!

キャウンッ……

律は檻に入れられているケルベロスを撃ち殺していた


澪「確かに敵だけどそこまでやること……」

律「殺しておいた方が後々楽だろ?もしこいつらがこの檻を突き破って来て私達に襲いかかって来たりしてみろ……もう腕を噛まれたくないからな」

澪「ごめん……」

律「私は全部片付けたら探すよ。ここになかったらもう一つの扉の方も調べて来てくれ」

澪「わかった……」

澪はもう一つの扉、収容所、つまりは牢屋へ向かった。

律「…………」

パァン!パァン!パァン!

ひたすらケルベロスを撃ち殺す律を残して

澪「律……確かに変だな…。どうしちゃったんだろ…やっぱり私がミスしたから怒ってるのかな…」

牢屋へ繋がる扉をくぐる。牢屋の数は三つあった。

中には誰もいなさそうだ。

澪「ん~マンホールを開けれそうなもの…あっ!」

一番奥の棚にマンホールオープナーがあるのを見つけ顔が綻ぶ澪

これでさっきのミスも帳消しに出来るはず!

マンホールオープナーを手に持ちそこを去ろうとした時だ

「驚いた、まだ生存者がいるなんてな」

澪「誰?!」

「こっちだこっち、牢屋の中」

澪「あなたは…?」

ベン「俺はベンだ。一応記者をやっている」

澪「はあ…。あの…捕まったまま出られないんですか?」

ベン「逆逆。自分から閉じ籠もってんのさ」

チャリン

そこの牢屋の鍵を澪に見せる

澪「何でそんなことを…逃げないんですか?」

ベン「逃げる?ははっ!冗談を!ここから逃げ延びれるわけねーだろ!ここにはゾンビ何かよりもっと恐ろしいやつがいるんだよ…」

澪「もっと恐ろしいって……」

ベン「てなわけで俺は出ない。頑張ってくれよお嬢さん」

澪「はあ…」

そんなこと知ったことじゃない
早くこれを律へ持って行って喜んでほしい……!


律「澪、どうかした?さっきから喋り声が聞こえるけど……」

澪を心配してか知らずかケルベロスを撃ち殺し終えた律が牢屋へ来た。

澪「うん。一応生き残りの人なんだけどここから出ないって言うんだよ」

律「ふ~ん」

律は澪の隣までやって来て檻の中にいるベンを見据える。

ベン「こりゃ驚いた。もう一人いたか」

律「澪、行くぞ」

澪「えっ!?助けないの律!」

律「助けるも何もそいつ鍵持ってるじゃないか。出たくなれば自分で出るだろ」

澪「それはそうだけど……」

ベン「そっちの茶髪のねーちゃんの言う通りさ。だから心配しなくていい」

律「でも…こいつもゾンビになって私達を襲う可能性があるな。このままじゃ放って置いても餓死だ。そうなる前に殺しておこうか」

澪「律!お前何言ってるんだ!相手は生きている人間だぞ!」

ベン「過激なねーちゃんだなおい。安心しな、その前に救援が来るだろ。それまでは籠城ってわけさ」

律「救援?ははは!来るわけないだろ?こんな死地にわざわざ来るの何てあのSTARSのやつぐらいさ。まあ来ない救援待って死ぬのもいいかもな。じゃあなベンさんとやら。澪、行くぞ」

澪「律…。じゃあ私達は行きますね。ベンさんも無理はしないでください」

ベン「…犬舎のマンホールを通り抜ければ下水処理場へ出る。そこから下水道から工場へいけ。トレインがまだ生きていればそこから脱出できる筈だ」

澪「ありがとう…!」


澪は急いでマンホールの場所へ行く。
律「遅い。」
澪「何であんなこと言ったんだ?律」
律「何が?」

澪「生きている人間に対して殺すなんて…!」

律「人間もゾンビもここじゃそう変わらないだろ。ゾンビになる前が人間ってだけさ。最も、こんなウイルスの濃いところに居て平気だってことは抗体者だろうけどな」

澪「律!私はそんなことを言ってるんじゃ…」

律「いいからさっさと開けてよ澪」

澪「開けない…」

律「もういい自分で……」

カチャリ……

澪「動くな」
律「何のつもりだ澪?」

澪「……お前は誰だ?」

律「澪が大好きな大好きな田井中のりっちゃんだよ。怖いから銃下ろしてよ」

澪「……」
律「下ろせって言ってんだろ?」
澪「……」


澪「……律、これだけは約束してくれないか?」

律「何」

澪「もう何かを殺すなんてこと言わないでくれ……律には似合わないよ。確かにここに来てもう大分歩きっぱなしでストレスが溜まってるのもわかるけど」
律「……そうだな。悪かったよ澪。」

澪「わかってくれたらいいんだ」
そう言って銃を下ろす澪……

ガスッ

澪「えっ……」

気づけば目の前が地面だった。私は倒れ込んだのだろうか

後頭部に痛みが走っているのは何となくわかった

律「足手まといどころか銃まで向けて来るなんてな。もう付き合いきれないよ澪。そこで寝ててくれ。」

澪「り、りつ……」

律「感謝しろよ?ケルベロスはみ~んな殺しておいたからさ」

澪「うっ……」

目の前が暗くなる…自分は気を失ったのだろう。
せっかく交わした約束も、僅か数十秒で破られた…。
昔の律は、もういなかった


────────

ウェスカー「やはり紅茶はダージリンに限る。そうは思わないかねジュン?」

ジュン「私はハーブティの方が好みですウェスカー卿」

ウェスカー「それは残念だ。君はどうかね?憂」

憂「……私はお姉ちゃんが好きです」

ウェスカー「そうだったそうだった。いや、しかし残念だ。ジュンの話じゃ平沢唯はもう半死……いや死んでるかもしれんな。ネメシスにはスターズ以外攻撃対象は取らせていないのだがね。大方無意味に拳銃でも撃ち敵と認識させたのだろう」

憂「話が違います!お姉ちゃんには手を出さな……うっ……」

ウェスカー「君は私に歯向かえないのだよ。いい加減わかってくれたまえ」


さわ子「そこまでにしときなさい、ウェスカー」

ウェスカー「ふふ、すまない。だが彼女の姉を思う気持ちは尋常じゃないようだ。P30を投与して尚これだけ歯向かって来るのだから」

さわ子「意識は残っているのに自由意思を支配するなんて悪質な薬よね。まあもっとも私はこんなものをつけなくてもあなたに荷担する意思は変わらないけどね」

ウェスカー「期待しているよ、さわ子。」

さわ子「で?これからのシナリオは?」

ウェスカー「そろそろBSAAのメンバーがここへ来る頃だ…丁重におもてなしをしてやってくれ」

さわ子「BSAA、クリス・レッドフィールドが創設した対バイオテロ専門の私有部隊か……。まあT103型を三体投入しとくわ」

ウェスカー「いや、三体じゃ少ないかもしれんな……」

さわ子「まさか。一段階目ならともかく二段階なればBSAA何て103型の敵じゃないでしょ?」

ウェスカー「君は彼を過小評価し過ぎている。もし、もしだ。私を倒しうる存在がいるとすればクリス、彼以外いないと私は思っているよ」

さわ子「あなたは彼を過大評価しすぎよ。まあ見てなさい。三体で取り囲んだ後5分で終わるわ」


ウェスカー「だといいのだがね。ジュン、彼女達の様子は?」

ジュン「平沢唯、中野梓は時計塔。秋山澪田井中律は下水道へ向かったようです。」

ウェスカー「時計塔?彼女達はネメシスと戦っていたのではないのかね?」

ジュン「観測班からの情報によりますとネメシスを一時的に退け、平沢唯の治療の為に三人は病院へ向かう途中……とありますが」

ウェスカー「ほぉ……あのネメシスを退けるとは大したものだ。ん?しかし三人…とはどう言うことだ?」

ジュン「わかりません。」

ウェスカー「ネメシスを退ける第三の実力者か…少しは面白くなってきたと言うことか。少しこちらの思惑通り行き過ぎて退屈していたところだ」


ウェスカー「ジュン、君は今まで通り彼女達を監視していてくれ。」

ジュン「わかりました。」

ウェスカー「さわ子はBSAAの方を頼むよ」

さわ子「わかった」

ウェスカー「憂君は……そうだな、この紅茶に合う美味しいお茶菓子か何かを作ってくれ。」

憂「……はい。しかしそんな悠長にしていていいんですか?」

ウェスカー「憂君、紅茶も人も同じだ。紅茶だけでも物足りない、何かお茶うけがあれば尚いいと思わないか?」

憂「はあ…」

ウェスカー「人間もそれと同じでね。片方だけ、一人だけではつまらないのだよ」

ウェスカー「私は完璧なる彼女達を倒したいのだよ。あの邸で見せた結束力と信頼関係、他人を自分より思い遣ることで垣間見せた力…。」

憂「なら何故あのようなものを使ったのですか?二年前に。あれが今彼女達を苦しめている元凶だと言うことはあなたが一番ご存知でしょう?」

ウェスカー「二年前君が彼女達の食事に混ぜ投与させたウロボロスのとこか?」

憂「はい」

ウェスカー「人は上辺だけなら何とでも言える。それを確かめたかったのだ。」

そう、全ての計画は3年前からスタートしていたのだから

あの時、彼女達の音楽を聴いた時から

ウェスカー「それでは頼んだよ、憂君」

憂「わかりました…。」

奥へ消えていく憂を見ながらウェスカーは微笑む。

ウェスカー「人などどんなに思っていようが簡単に崩れる…。それは彼女達も同じだ。ウイルスなどというまやかしのものに操られ…心を奪われる。そんな脆いものなのだよ人間は」

だから言っただろうクリス、人は愚かな生き物なのだと

ウェスカー「このまま終わるのであればそれもいい。だが…彼女達の思いと言うものが本物なら、必ず私を討ちに来るだろう」

その時を楽しみにして今は待とうか

もう一度、彼女達の奏でる音楽を聴けることを私は願っているのかもしれない


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最終更新:2010年03月05日 02:38