‐外‐
梓「……どうしてこうなったんだろう」
紬『近距離に行ってしまうからダメなのね。
純ちゃんの声が届かない範囲から、交渉に入るといいと思うわ』
紬『今、そっちに拡声機を送ってるから、受け取ってね』
梓「一ついいですか」
梓「澪先輩の犠牲はなんだったのでしょう」
紬『計り知れないものね』
梓「計ろうともしてないじゃないですか」
* * *
梓『あー、あー、純ー?』←拡声機使用
純「この声は梓?」
梓『聞こえてるのか、よくわからないなあ……』
純「……」
梓『純のばーか』
純「聞こえてるわ!」
梓『ダメだ、何も聞こえない』
純「むかつく。一方的にむかつく」
梓『とりあえず、純。何でこんなことしだしたの?一体、何が目的なの?』
純「……」
梓『って、これ純の声が聞こえないとダメじゃん』
梓『ムギ先輩、お願いできます?あっ、はい、ありがとうございます』
梓『純、今からそっちに電話が送られるから。その電話で、私と話してよ』
執事「どうぞ」
純「……あ、どうも」
‐琴吹宅・部屋‐
唯「ねえ、ムギちゃん」
紬「んー?」
唯「あずにゃん、忘れてるよね。なんで自分が離れた位置にいるか」
紬「そうねえ~」
‐外‐
梓「さて、純。電話は繋がってるね?」
純「繋がってるよ、あと梓のばーか」
梓「なにいきなり……」
純「正当な仕返しだ」
梓「何の事だか良く分からないけど、まあいいよ」
梓「純が何がしたいのか、知りたいの。教えて」
純「どうしよっかな」
梓「……そもそも町中を凍らせるなんて、あんた何者?
こっちからすれば、聞きたいことが沢山あるんだけど」
純「んー……、仕方ない。教えてあげますか!ありがたく思うんだよ?」
梓「何そのテンション。まず、あんたは何者?」
純「そうだね、まず、梓には私がただの人間に見える?」
梓「現時点の印象では、そう思えない。今まではそう思ってた」
純「正確な答えをありがとう。それは正しいよ」
純「私はこの地球の外、遥か宇宙の彼方の星からやってきた」
純「……そう、地球ではこれを、“宇宙人”と呼んでいるね」
‐琴吹宅・部屋‐
律「オイオイ、本当かよ」
紬「確かに、これまでのことは人間の成せる技ではなかったけど……」
憂「純ちゃんが……宇宙人……?」
‐外‐
梓「じゃあ、宇宙人。地球に何をしに来たの?」
純「簡単だよ。移住先を探してたんだ」
梓「あんたの星は?」
純「んー……悪くないけど、良くもない。ここと比べたら、クソみたいなもんだけどね」
‐琴吹宅・部屋‐
唯「純ちゃん、ただ楽しく暮らしたかっただけなんだね」
律「でも、それと今のコレとは説明がつかないぞ。何か理由があるはずだ」
紬「梓ちゃん、星へ来た目的じゃなくて、町を凍らせた目的を聞いて!」
‐外‐
梓「そう。じゃあ、何で。なんで、今まで平和に暮らしていたのに、
最近になって町を凍らせ始めたの?」
純「……さあ」
梓「さあ、じゃないよ!それがどれだけ重要な問題か、あんたわかってんの!?」
純「そうだね、重要かもね」
梓「わかってるなら、さっさと訳を……」
純「……あんたに説明して、理解されることじゃないよ……!」
梓「それって、何。どういうことなの?」
純「だから説明するだけ無駄だって言ってるでしょ!」
梓「純!」
純「……」
梓「……」
「…………」
梓「わかってあげられないかもしれないけど、話して?」
梓「これでも純の友人、やってたつもりなんだから」
純「……」
純「……んだから」
梓「え?」
純「原因だから」
梓「なんの?ねえ、一体何の原因なの?」
純「……ははは、決まってるじゃない……」
純「……この癖毛の原因だからだよ!!」
梓「……は?」
‐琴吹宅・部屋‐
唯「えっ?」
律「えっ?」
紬「えっ?」
憂「えっ?」
‐外‐
純「私の髪は、人間と違う。暑さに弱い」
純「……だから、暑いとすぐに癖っ毛になっちゃうんだよ」
純「私の元・ストレートさらさらヘアーがね!」
梓「……」
純「だから、私の力で……“寒い言葉”で、“物体を凍らせる”能力で星全体の熱を冷ます。
そして、最終的に私のストレートさらさらヘアーを取り戻す!」
梓「……」
梓(……心底どうでもいいわ!!)
梓(癖っ毛が嫌だから?はっ?
そんな理由で、私達にこの寒さを強いるの?)
梓(ふざけるのも大概にしなさいよ!結局どこまでも
鈴木純は鈴木純だよ!)
純「その顔。理解できなかったみたいだね」
純「うん、仕方ないよ。梓は見事なストレートヘアーだもんね」
梓「純、止めて。これ以上、勝手なことは止めて」
‐琴吹宅・部屋‐
紬「梓ちゃん、もう電話切って!じゃないと凍らされちゃう!」
憂「梓ちゃん、純ちゃん、お願い……!」
‐外‐
純「梓。そろそろ電話切れば?」
梓「私は、切らないから」
純「どうしてよ?凍るほど寒いこと言われたいの?」
梓「どんな寒いことでも聞いてあげられるのは、友人だけじゃない?」
純「ふーん、そっか。ありがと、梓」
梓「うん」
純「……さようなら」
純「“照れ”て“テレ”フォンに“出んわ”」
梓(……ばか。ホントに寒いよ……)
‐琴吹宅・部屋‐
「つー……つー……」
紬「梓ちゃん!?梓ちゃん!」
律「嘘だろ?なあ!?」
憂「梓、ちゃん……?」
唯「……あずにゃーーーん!」
* * *
唯「ムギちゃん、あずにゃんは!?そういえば澪ちゃんも!」
紬「梓ちゃんと、そういえば澪ちゃんは、別室で解凍してるところ。命に別状は無いわ」
唯「よかった……」
紬「澪ちゃんは執事が純ちゃんに電話を手渡すついでに解凍室に送ったから、
そろそろだとは思うけど、梓ちゃんはまだ時間がかかるはずよ」
紬「二人の安全は確保できたから……、後は純ちゃんの正体ね」
律「澪の時はあっという間すぎて感情の入る隙が無かったけど、
梓の時は違ったな。色々わかったし」
紬「私達もまさかとは思ったけど、純ちゃんは宇宙人だったのね」
「ピピピピピピ」
紬「通信?なにかしら?」
『こちら交渉班です』
唯「交渉班……?」
律「初めて聞くな」
紬「……結果だけ聞かせて」
『……ダメでした。日本は自衛隊を出動させることを決定。
その上、“異星人の命までは保障出来ない”とまで言われました』
紬「そんな……!」
『申し訳ありません。至急紬お嬢様と、そのお友達は避難を……』
紬「……わかった。もういいわ」
『……失礼します』
律「おい、どういうことだよ」
紬「……」
?「なるほどな。合点いったよ」
律「……澪!?」
澪「さっきのムギの説明で、どうしても納得できない点があった。けど、それも解決だ」
律「安静にしていなくて、大丈夫なのか?」
澪「ああ、むしろ今は暑すぎるぐらいだ。それよりも」
澪「ムギ、さっき言ったことを覚えてるか?
“女子高生一人に対して、国が早急に動くと思う?”だ」
紬「ええ」
澪「これ、違うよな」
澪「流石に、この国は“ただの女子高生が町を凍らせている”なんて
冗談を受け入れられる訳がないんだから」
澪「なら、何が国の動きを止めていたか。それがさっき言った“交渉班”だ」
澪「ムギは秘密裏で、純ちゃんへ攻撃しようとしていた国を、止めようとしていた。違うか?」
紬「……うん、お見事ね。その通りよ」
紬「初めは、純ちゃんがどれだけ危険な状況にさらされているかを、隠すつもりでいたんだけど。
ここまで言われたら、隠す意味もなさそう」
紬「……さ、どうしよっか?」
紬「今から十五分後、ここは戦場となる。それでも、皆はここにいる?」
律「……」
紬「……五分間だけ、考える時間をあげるね」
澪「どうすれば……」
憂「……お姉ちゃん……」
唯「……うん」
最終更新:2012年08月14日 03:03