エイリアンみたいな奴の口から出てきたゴキブリの様なモノを狙い撃つ
コルト独特の鈍い銃声がする度ゴキブリの様なモノが弾け飛ぶ
三匹いた内の二匹を仕留め最後の一匹に標準を定めた瞬間それは律に向かって飛びかかって来た。
意志があるかは不明だが、このままではかなわないと思いの奇襲か
だが律は顔色変えずに飛びかかって来たそれを銃で横から薙ぎ払う
律「本体は全く動かずか、これならハンターの方が優秀だな。」
コルトの弾を腰のポシェットから取り出し弾を込める。
「ウゥ……」
また吐こうとしているのを見てコルトを構え、敵の顔面に撃ち込んだ。
「ウォェッ」
気持ち悪い鳴き声を上げ苦しむ化物。
律「もっとくれてやる!」
パァン!パァン!パァン!
「グェ……」
頭を下げ橋に伏す化物。
律「なんだぁ?こんな雑魚だったとはな。弾使い過ぎたか」
伏している化物を足蹴にする律
律「まるで怪物の赤ん坊か。ははっ、怪物に赤ん坊もくそもないか」
律「さて、プラグ集めしないとな。こんな時一人なのは厄介だよな~。また愛想振り撒いて協力でも促すか。でも梓以外使い物にならないからな~梓に会ったら協力してもらおっと」
そうして部屋を出ていく律
グチャ─────
グニュグニュ─────
そう、この怪物、いや゛G ゛はまだ律の言う通り赤ん坊であった。
形を変え姿を変え……今まさに、゛G ゛は進化する
二段階目へと
夜の街をひたすら走った。
早く、早く、早くと自分自身が急かす。
ローラーは追跡者との戦闘で壊れたのか靴底から出ない為走るしかなかった。
いくら博士が天才と言われていてもやはり義足と生身の接着点が地に足を着く度に痛く体全体に響く。
その為に博士は靴にローラーをつけてくれていたのだと私はこの時理解した。
梓「病院……病院……あった!」
ゾンビの群れの向こうにラクーンシティ総合病院が見える。
問題はゾンビをどうするか…こっちは丸腰だ。
ゾンビ相手に近接戦闘も頂けない…
梓「なら無視が一番!」
このスルー、実はとても大事なことでバイオ上級者ならほとんどの敵はスルーだろう。
それ故に上級者のバイオ動画はマラソン、等と定義されているぐらいだ
梓は道端に落ちている缶を拾う。
梓「(これを壁にぶつけて引き付けてる内に左側から抜けるっ…)」
ゾンビは視覚、より嗅覚、聴覚が優れていることを梓は知っていた。
梓「えいっ!」
カランカラン
「ウゥ……」
缶の音に反応しゾンビが音のした方に向う。
その逆側の壁に身を潜めていた梓は一気に駆け出す!
「ウゥ?!」
梓「(っ…気づかれた!)」
右側に固まっていたゾンビが梓を見て左側に集まって来る。
梓「(道が……)」
左側にも群がりとうとう道が塞がれる形になった。
梓「(やっぱり戦うか……でも少しでも外傷を受けたらいくら私でも感染しちゃう……)」
確かに梓は体の何割かは機械化したが残る半分以上は普通の人間なのだ。
耐性が完璧である澪、律、唯、レオン達とは違う。一発受ければDEATH、ゾンビ化だ
梓「なら!」
道は自分で作るまで!
梓は勢いよくゾンビの群れに突っ込んで行く
梓「えぇぇい!」
ゾンビの群れに捕まる瞬間左側の壁を登るように横へ走る
地面からだとまるで半月を描く様に
少ない距離の壁走りだったがこれだけでも十分距離を稼げた
梓は見事ゾンビの群れの向こう側へ着地し、また走り出す。
これは壁がやや傾斜していたのと梓の第一歩目、右義足の脚力のおかげと言える
梓「ク~リア~♪おっといけない……こんなことで喜んでる場合じゃなかったです」
梓「あっ!……帰りどうしよう…………」
病院の中に武器……あるかな……
病院の扉は開いておりすんなりと入ることが出来た。
梓「お邪魔します……」
病院のホールの中は薄暗く、静寂と病院と言うことが相まってこれ以上ない恐怖を演出している。大の大人でもこの状況下で病院へ入って行く人は少数だろう。
梓「怖い、けど…それより唯先輩を助けたい…」
その勇気が足を一歩一歩前へと押し出して行く。
梓「……何か…いる」
私以外の誰かがこの空気の流れにいる、
梓は辺りを見渡す、増築をしていたのだろうか、そこらに鉄パイプが落ちている。
その一つを拾い上げ構えを取った。
「…………!」
梓「来た!」
それは音もなく仕掛けてくる。暗闇の中、上空から梓に向かって飛びかかって来る。
それを梓は横へ飛び回避
梓「ハンター!?いや…違う、もっと大きい……」
薄暗い中に浮かんで来たのは普通のハンターより一回り大きいものであった。
頭から肩にかけて肉腫が覆っており普通のハンターより醜悪な姿をしている。
また左側の腕が異常に発達しているため利き手は左手だと梓は瞬時に判断した。
梓「これも元は人間で…こんな酷いことをする人達が…アンブレラ!!!」
武器は鉄パイプ一本だがここは避けては通れないだろう。ワクチンを探すのに邪魔になると判断し、梓は戦闘の姿勢を取る。
梓「(強くなる為に剣の訓練もした…今それが試されます…!)」
その勝負が、今火蓋を切って落とされる
まずはハンターの強化版、ハンターβが動く。梓に向かって突進してくる
梓「……狙うは頭部…」
梓は隣にあった机を左義手で投げる。
ハンターβはこれを素早く飛びながら回避、そして尚且つ梓への攻撃姿勢を変えることなく左手を振り下ろそうとしている。
梓「やっぱり左手ですか」ニヤリ
梓「(油断していた、まさかもう一体いたなんて…!)」
背後から襲いかかって来たハンターβはその大きな左手で梓の背中を引っ掻く
梓「きゃあぁぁっ!」
背中に激痛が走る─────。
負ってはいけない一撃を負い前のめりに倒れ込んでしまう梓
そんな梓に遠慮せず飛び掛かる体勢を取るハンターβ。
首狩り、と言う即死攻撃だ。多くのプレーヤーはこれで死んでしまったことも多々あるだろうハンターの一撃必殺とも呼べる技
ハンターβは勢いをつけ梓へ向かって飛びかかる!
梓「(トラ……いや…違う……私の強さは…)」
梓「諦めない力…!」
梓は瞬時に前方へ大きく前転、ハンターβの攻撃は地面に傷をつけるだけとなった。
背をついた時に激痛が走る
梓「我慢……っ」
その前転時に別の鉄パイプを握りようやくハンターに向き直る。
ハンターβも直ぐ様距離を詰めようとこっちへ向かって来ている。
梓「いっけえぇぇぇ~」
梓は鉄パイプを左義手で持ち、振りかぶって投げた
ヒュンッと空気を切る音を放ちながらそれはハンターβの頭の肉腫を捉えそのまま貫通し病院の壁に刺さり止まった。
梓「はぁ…はあ…うっ……いたぃ……よ…」
何とか二匹を倒したものの背中には浅いとはいえ傷を負ってしまった。
早くしなければ自分はゾンビになってしまう
梓「急がないと…早く唯先輩にワクチンを」
梓に自分に使うと言う選択肢はまるでなかった。
自分はゾンビになっても構わないから血清を届けたいと言う気持ちの方が何倍も勝っていた。
時に人間は自分の為ではなく誰かの為に力を出す。それは家族であり友人であり恋人を守りたいと言う思いが、梓を強くしている。
思いの力は確かに存在した
その証拠が彼女でありまた彼女を応援する力が彼女を助けているのだ。彼の様に
隣の医師詰め所から病院のマップを入手。
医院長の手記によるとワクチンは4Fの402号室にあるワクチン素剤、B3にある研究室で培養液ベースを合成装置にかけワクチン培養液になりそれをワクチン素剤と組み合わせることにより成るらしい。
梓「ここまでの過程を踏むってことはどうやら強力なワクチンみたいですね…」
まずは4Fへ向かい資料室で病室の鍵を取りに向かう。
エレベーターに乗り込み4Fのボタンを押す。
梓「ふぅ……。ようやく一息つけます」
若干背中が痒い、でも我慢しないと
エレベーターを出て直進、資料室で病室の鍵を入手。
まず401号室でパスワードを控える、更に配置を把握。この部屋が402号室の謎を解く鍵らしい。死体があったが今は構っている場合じゃない
402号室を開けるとさっきとほとんど同じ作りだ。部屋の隅に何かを乗せるような場所が3つある。
梓「東から登った太陽は、時間と共にどこへ沈む……ですか」
奥にあった椅子の様なものを西側の隅に寄せる。
梓「うんしょ……うんしょ……」
ガチャンと音がし、壁に掛けられていた絵が落ち金庫のようなものが現れる。パスワードを打ち込み、ワクチン素剤を入手
梓「次です!」
エレベーターでB3へ行き研究室へ入る。
梓「わっ」
入った途端に見える大きい容器の中に液体と共に入った何か。ハンターみたいだがまたさっきのとは違う姿だ。
梓「…………動かない……よね」
梓は容器をコンコンと叩いてみたりして確認するが反応はない。
どうやら何かしらの方法で眠らされているみたいだ。
奥へ行くと培養液ベースがありそれを合成装置にかけると、ワクチン培養液が出来る。
これを1:1の割合で混ぜることでワクチンが完成した。
梓「やった!早く唯先輩の所に戻って……」
梓は喜びのあまり容器の中の液が抜けていることに気づいていない
梓が横切った瞬間──────
つん裂く様なガラスの割れる音がし、ハンターが飛び出してきた
梓「ひゃぃっ!」
戦っている余裕はない、逃げないと……。
梓はダッシュで研究室を出る、だが追ってくる、 ハンターと言う名前の通りの狩り
梓「エレベーターまで逃げられれば…っ」
さっき通った廊下を全力疾走し、エレベーターのボタンを押す。
しかしエレベーターは何故か一階におりそこから下がって来るのを待たなければならなかった。
梓「さっきはそのまま4階にいたのになんで!」
後ろから二匹のハンターγが迫る
武器は鉄パイプだけだ。相手のタイプがわからない以上先制攻撃は仕掛け難い。
どうする……、どう凌ぐ……
ハンター二匹が梓に襲いかかる。と、同時にエレベーターが開く。
梓は鉄パイプを牽制の為投げつけその隙にエレベーターへ乗り込もうとすると……
「なんだ!?」
エレベーターには誰か乗って来ていた
梓「あなたは……それより早くエレベーターを!」
「いや間に合わない!伏せろ!」
梓はその声と同時に伏せる。
ショットガンがエレベーター直前まで迫っていた二匹のハンターを捉えた。
「ふぅ……何とかなったな。しかし君が何故ここに?」
梓「お久しぶりです、レオンさん」
レオン「梓、見違えたな。」
梓「嫌味ですか?」
レオン「骨が繋がらないのは知っていた。だが義手にするなんてな。だがさっき言ったのはそう言う意味じゃない。綺麗になったってことだ」
梓「……そうやって誰でも口説くんですね」
レオン「嫌われたものだな……すまない。社交辞令として受け取ってくれ。おいて行ったこと恨んでるのか?」
梓「いえ…今はそれどころじゃなくて…。早く唯先輩の所へ行かない…と」
レオン「唯?そう言えば律が見たと言っていたな…。梓、詳しく話してくれないか?」
梓「だからそんな暇ないって…つぅ……」
レオン「その背中…、ハンターにやられたのか。さっき見つけたワクチンがある。治療しよう」
梓「触らないでっ!」
レオン「……梓。」
梓「……すみません。唯先輩の命が危ないんです。」
レオン「その前に君がゾンビになってしまっては元も子もないだろう?治療する間でいい、話を聞かせてくれ。俺も君に言っておかなくてはならないことがある。律について」
梓「律先輩について……?」
ワクチンを射った後、梓の黒いシャツを脱がし包帯を巻く。
梓「……気持ち悪くないんですか?義手なんて……」
梓の左肩から金属の塊が剥き出しになっている。胴体との繋ぎ目が痛々しい。
レオン「梓、お前はお前だ。どうなったってな」
梓「みんなと同じこと言うんですね…。」
レオン「気の利いたことが言えなくてすまないな(こんな小さな背中に背負っている物が多すぎる。梓も律も…)」
梓「それで律先輩の話って何ですか?」
レオン「律には口止めされてたんだがな。実は律、唯、澪の家族は生きているらしい」
梓「そう…なんですか。(私の家族は…言うだけ無駄ですよね…)」
レオン「あぁ。それをアンブレラに人質に取られている。これを知ってるの律と俺とクレアだけだ」
梓「それで律先輩はちょっと変だったんですね…。」
レオン「いや、確かに初めは悲観していたがアンブレラを倒そうと動き始めた時はもっと明るかった。だが場数を踏むにつれて段々とおかしくなってな…。」
梓「おかしく…?」
レオン「射撃や身体能力があの歳の女のものじゃない。下手すれば俺より優秀な位さ。」
梓「レオンさんがヘタレなんです」
レオン「泣けるぜ」
梓「冗談はともかくその身体能力向上がいけないことなんですか?こんな中で実戦経験を積んでいれば強くなるのは当たり前だと思いますけど」
レオン「それだけならいいんだが性格面でもおかしくなって来てな。無機質と言うか…無関心と言うか」
梓「家族の事とか色々重なって辛くなってるんじゃないですか?」
レオン「……そうかもな…。だが他にも何か要因があると思えるんだが…」
梓「次に律先輩と会ったら色々と話してみます。」
レオン「そうしてくれると助かる。よし、これでいいだろ」
梓「包帯巻くの上手いですね。ありがとうございます」
レオン「その格好じゃ寒いだろう。これを着ろ」
レオンは自分の着ていた茶色の革のジャンパーを梓に被せた。
梓「ありがとう…ございます…///」
この人も苦労しているのは髪の毛を見てわかった。昔の時は完璧な茶髪だったのに対し今はそれが白みがかっている
これは染めたと言うより自然とそうなったような色だった。
レオンを邪険にした自分はまだ子供なんだなと反省する
レオン「じゃあ今度はそっちが話してくれよ」
梓「その前に聞かせてください。レオンさんは何故ここに?」
レオン「俺は律とここへ来たんだ。生存者がいないか色々なところを歩き回ったんだが出会うのはゾンビばかりでな。人間と出会ったのは君が初めてさ。病院なら…と思ったがこの街に生き残りは君達と俺と律だけみたいだ」
梓「そうだったんですか。私の話はエレベーターに乗りながら話します」
レオン「あぁ」
二人はエレベーターに乗り込み1Fのボタンを押す。
1F──────
『ピッピッピッ』
梓はレオンに一通り端的に話した。自分がここへ救助活動をしに来たこと、その途中で唯先輩達に出会ったこと、そして律先輩達と別れた後追跡者に追われ唯先輩が重傷を負ったこと等
話自体は短いもので1Fにつく頃には終わっていた
レオン「なるほど、それで病院にワクチンを」
梓「はい。だから急がないと駄目なんです」
レオン「それはすまないな。俺はまだやることがあって一緒に行ってはやれないが…お互い生きていればまた会うことになるだろう。」
梓「はい。それじゃあ。色々ありがとうございました、レオンさん」
エレベーターを出て走る梓。
レオン「梓!」
梓「はい?」
レオン「あまり自分を責めるなよ。後律のことを頼む」
梓「わかりました。ありがとうございます」
病院を出る梓をレオンただ目で追っていた。
最終更新:2010年03月05日 02:47