レオン「仲間か…良いものだな」
ピッ…ピッ…ピッ…
レオン「何の音だ?」
エレベーターを降りたレオンがその音がする所へ行く。
小さいがピッ…ピッ…っと電子音を刻む音がする。
レオン「テーブルの下か?」
患者が待つための椅子の前に置かれたテーブルのにそれはあった。
レオン「まさか─────」
ピッ…ピッ…ピッ…ピー
────────。
梓「ゾンビがいない。きっとレオンさんが倒してくれたんだ。感謝しないと─────」
ズォッ────
病院を出たばかりの梓の体が浮く。その後に爆発の轟音が辺りに響き渡った。
梓は少し爆風に飛ばされたが病院と距離を取っていたためほとんど無傷だった。
梓「まさか…………」
後ろを振り返ると赤々と燃えている病院があった。さっきまであの中に居たと思うと背筋が凍る。
梓「レオン…さん?レオンさん!聞こえますか?!レオンさん!」
焼けている病院の出入口に向かって叫ぶ梓。当然返事など返って来なかった。
梓「レオン……さん。誰がこんなことを……!」
だがここで立ち止まっていても仕方がない。反省は先に繋がるが後悔は何も産まない。梓は今自分に出来ることをやるために時計塔へまた戻る。
レオンの革のジャンパーの暖かさを感じながら。
梓「そんな簡単に死にませんよね…レオンさん。必ず生きてまた会いましょう……」
───────。
「梓……しぶといですねさすがに。でもレオン・S・ケネディを仕留めたのは大きい。これでウェスカー郷の邪魔をするものを一人減らした……」
レオン「誰が誰を仕留めたって?お嬢さん」
「!?まさかあの爆発で生きてるなんて」
レオン「爆発する前に窓から飛び出しただけさ。もう少し早く仕掛ければな。さて、案内してもらおうか?そのウェスカーと言うやつの所に」
ジュン「くっ……」
後ろから銃を突き付けられたジュンは両手を上げたまま歩き始めた。
レオン「(ようやく尻尾を出したな…アンブレラ!)」
───────。
これは夢なのだろう、そうわかるくらい夢とわかる夢だった。
私達がステージ歌っている。
それを聴いて皆が感動してくれている。
これは私達の夢だ。覚めても、覚めない夢だ。
私達はいつから歌い、奏でることをやめ傷つけることを選んだのだろう。状況に縛られ、流され、身動き出来なくなっていたんだ。
こうなれば素晴らしいと思った。聴くもの全てを優しい気持ちにするような…
自分に出来るだろうかそんなことが
違った、私はもうそうすると決めていたんだ。
私の歌、みんなに届くといいな─────。
────────。
梓「はあ…和さん!はあ…ワクチン…はあ…持って…来ました!」
息を整えるのも忘れ和にワクチンを渡す。
和「ほんと!?良かった…。すぐに投与するわ」
和が受け取ったワクチンを唯に射ち込む。
唯「んっ……あっ……あ……」
和「唯……大丈夫?」
和の言葉に反応しゆっくりと目を開ける唯。
唯「のどか……ちゃん?それにあずにゃんも……」
梓「唯先輩……唯せんぱぁい!」
泣きながら唯に抱きつく梓
唯「よしよしだよあずにゃん」
梓「えっぐ……ひっく……ゆ゛い゛せんぱい…よ゛かった…」
和「気分はどう?痒みとか頭痛かったりしない?」
唯「大丈夫~……ちょっとお腹が痛いけど」
梓「そう言えばあの化物にいっぱいお腹叩かれて……唯先輩!」ガバッ
唯「あっ、あずにゃん?!いきなり服脱がせるなんて……大胆だよぉ//」
梓「…………」プニプニ
唯「お腹つつかないで~///くすぐったいよぉ//」
梓「痛くないですか?」
唯「そんなには…。多分折れたりもしてないと思う」
梓「でも壁すら粉々にするあのパンチをくらって無事だなんて……」
和「多分これのおかげね」
和が持っているのは防弾チョッキの様な物だった。
梓「それは?」
和「S.T.A.R.S.の特注品の衝撃吸収型の防弾チョッキよ。普通の防弾チョッキは至近距離何かで弾を受けるとその衝撃でも骨が折れたり気を失ったりするのよ。それで考え出されたのがこれってわけ。
技術部じゃないからどうなってるかは詳しく知らないんだけどね。でも何で唯がこれを?」
唯「署のみんながアメリカ危ないからつけてけって。」
和「確か各警察署に試作品として送ってたわね(その一つをつけさせてもらえるなんて…唯は相変わらずどこでも大事にされてるわね)」
梓「なら遠慮なく」ぎゅっ
梓は覆い被さる様に唯に抱きついた。
唯「あずにゃん…」
梓「お帰りなさい…唯先輩」
唯「ただいま、あずにゃん♪」
────────。
唯はやはり疲れていたのか少し喋った後また眠ってしまった。
和と梓は唯のことが一段落した為、今までの事とこれからの事を話し合っていた。
和「そう……「俺」はあなたを守って…。」
梓「はい…」
和「でもその後かどうかわからないけど「俺」から梓は心配するな、ちゃんと脱出させるって連絡をもらったわ。だから私は唯達の脱出協力に専念出来たの」
梓「はい…、私も死んだと思って俺さんは生きてました。追跡者に私達が殺されそうになった時に助けてくれたんです。私はすぐ気を失ってしまってそれからどうなったかはわからないですけど…」
和「実は私があなた達を見つけたのはこの時計塔の前なのよ。RPDへ急いで向かってた時なんだけどね。あなた達が二人してここの入口にもたれ掛かってたのを見て…」
梓「俺さんがここまで連れて来てくれたんでしょうか?」
和「わからないわね…体に風穴開いて生きてるなんて……いや「俺」ならあり得るけど」
梓「しぶとそうですよね俺さんって」
和「次に会ったらS.T.A.R.S.にあんたの席ないから!って言っておいて。ただみんなは心配してる、私も含めてって」
梓「はい」
苦笑いする梓。やっぱり和も心配していたのだろう。生きてるとわかった途端笑顔の回数が増えていた。
和「そろそろ行くわ。唯が心配だけど…梓がいてくれれば安心だわ」
梓「ラクーンシティ警察署にですか?」
和「えぇ。私達の他にも生存者がいるかもしれない、それにちょっと話し合わなきゃならない人がいるのよ」
梓「律…先輩ですか」
和「……そうよ」
和「知ってるかもしれないけど律とはこの二年間で何度か会ったわ。何度も協力を促したり救助活動を手伝ってほしいと言った。けど彼女はそれを無視してずっと何かを探してる」
梓「何か…?」
和「何か…はわからない。けれど前に彼女は……とうとう私の隊の……。新米の隊員が律のことを生存者と思って保護しようとしたらしいのよ。
でも律はそれを拒否してね。それだけならいいんだけど新米は正義感が強いから…女の子一人にはさせられないって無理矢理連れていこうとしてね…脚を撃たれたわ」
梓「律先輩が…人を…」
和「いくらなんでもやり過ぎよね。それから彼女はS.T.A.R.S.でも危険視されてね、見つけ次第連行せよって命令が出てるの」
梓「そんな…信じられません…」
和「私もよ。確かに律は二年前と随分変わった。でもそんな人を撃つ様な真似はどんなに変わってもする人とは思えないの。」
梓「……。律先輩……家族をアンブレラに人質にされてるみたいなんです。レオンさんが言ってました」
和「レオン・S・ケネディ、律の相棒って話よね。彼は良く私達に協力してくれるわ。それにしてもそんな事情があったなんて…言ってくれれば協力するのに…」
梓「言えない理由があるんだと思います…きっと。律先輩は今何もかも自分で背負い込んで…自分で解決しようとしてる。だから気持ちが焦って…イラついて…」
和「そうだとしても、もし本当に私の部下を撃ったのが彼女なら…責任は取ってもらわないとね。勿論…全てが終わった後に」
梓「はい…。だから律先輩に会ったら言っておいてください。私達は今でも、軽音部の仲間だって」
和「わかったわ。じゃあ唯のこと、頼んだわね」
梓「はい!」
唯「のどかちゃん…………これ…」
梓「先輩、起きてたんですか?」
和「何これ?」
唯が手に持っていたのは狼?のキーホルダーだった。
唯「お守り…作ったの。みんながまた集まって楽しく出来ますようにって…。あずにゃんにもあるんだぁ」ニコ
唯がポケットから出した猫のキーホルダー。しかしそれは殴られた時の衝撃か片目がなくなっていた。それに気づきそれを引っ込める唯
唯「あっ…」
梓「いいんです。この方が私にそっくりですから…」
唯「ごめんね…」
唯の優しさに梓は涙を溜める。壊れてしまったキーホルダーを梓の体に見立てて欲しくなかった唯の優しさに…。
梓「先輩っ//」ギュッ
唯「あずにゃん暖かぁい//」
和「ラブラブねあなた達。妬けるわ」
唯「和ちゃんもおいで~」
こっちに来いと言わんばかりに手招きする唯。
和「遠慮しとくわ。私には似合わないもの。でも何で私は狼なの?そんな怖いイメージかしら私…」
唯「昔クリスさんが和ちゃんがすたぁーずの狼って言ってたからだよぉ」
和「あぁ…なるほど…それで。でもまあ嬉しいわ。ありがとう唯」
唯「えへへ//」
和「じゃあもう行くわね。あなた達も気をつけて」
梓「はい!色々お世話になりました」
唯「りっちゃんのことよろしくね。私達もすぐ行くから!」
和「えぇ。粗方街と警察署を探してみて生存者がいなければこの街から脱出するわよ。無線は私が外と連絡する様しかないから…まあきっとまた会えるでしょ。このお守りがあるから」
唯「うん♪」
和が名残惜しくも部屋を出て行こうとした時地面がグラツク。
和「なっ、何?」
唯「地震??」アタフタ
梓「違う…これは」
梓は天井を見上げる。すると上の階から段々と盛り上がって来ている。
梓「また奴が…来た」
和「梓!唯を連れて隠れて」
梓「でも…っ」
和「いいから!」
梓は言われた通り寝ている唯を抱き抱える。
唯「また来たんだ…。でも……」
ゴォン、ゴォンと天井が叩きつけられついには轟音と共に穴が開き、そこから奴が現れる。
追跡者「スターズ…!!!」
ようやく本物に会えたと言わんばかりに和を見据える。
和「へぇ…こいつが唯を。丁度いいわ」
腰に差している刀の柄に右手を添える。
時代などで見られる居合い抜きのポーズを取る和
和「本物のS.T.A.R.S.の力、見せてあげる」
唯と梓は部屋にあった祭壇の後ろに隠れて様子を伺っていた。
梓「前と形状が違ってる…」
上半身の黒いコートはなくなっておりオオドイロの肌が露出している。触手が前より全面に押し出されており異様に膨張していた。
追跡者「スターズ…!」
和に向かって走り出す。
梓「前より明らかに遅い…」
右手を振りかぶり和に向かって振り下ろす。膨張した腕がブォッとうねりをあげる
和「…………」
手は出さずにバックステップで避ける。敵との間合いを再度確認する。
その距離をまた詰めようと追跡者は走る、が──────。
和「はぁッ!」
刀を抜き出す前、鞘の頭部にあるボタンを左の親指で押す。
すると中から空気が圧縮され刀を押し出し、通常の何倍もの抜き出し速度を可能にする
ブオッ…
和の繰り出す斬撃に一陣の風が吹いた、
それと同時に追跡者の右腕が飛ぶ。一瞬の内に和の銀の切っ先は追跡者の腕を捉えていた。
追跡者「スターズ!」
だが追跡者は止まらず左腕を突き出しながら突進。その必死さが恨みの深さを伺わせる。
和「くっ…」
首を狙ったつもりがだいぶズレてしまったことに和は自分の未熟さを思い知る。この刀は居合い抜きには最高の刀だが、抜いたままならただの刀に成り下がることを知っていた。
和「はあ!」
向かってきた追跡者の突き出した左腕を斬り落とそうと刀を振り下ろす。しかし膨張している太い腕を斬り落とすのは容易ではなく、刃は肉を途中までえぐり止まる
和「ちぃっ」
追跡者「ォォォ!」
追跡者は体に巻き付いている触手を動かし和を捕まえようとするが和は追跡者の胴体を足蹴にしてまた距離を取った。
和「このっ!」
追跡者「スターズ…」
さっき斬り落とした右腕がみるみるうちに再生していく、、、
和「これは厄介ね…。」
和は紫色の血がこびりついた刀を一度振るって血を飛ばし、また刀を鞘に収める。
唯「もうやめて!!!」
唯が珍しく声を荒げる
和「唯?!」
梓「唯先輩危ないですから!」
唯「私にはわかる…彼は本当はこんなことをしたくないって言ってる」
和「何でそんなこと…」
唯「私の首を絞めている時に…ごめんなさいごめんなさいって…言ってたから…」
梓「そんなわけないです!こいつは唯先輩を!」
追跡者「ウゥ……ォォォ!」
唯「もうやめよう?あなたもこんなことしたくないんだよね?」
唯が追跡者へ向かってゆっくり近づく
和「唯!!!」
カチン─────
唯「やめて和ちゃん!」
居合い抜きの構えを取った和を制止する唯
和「でも!」
唯「大丈夫…怖がらないで。あなたは本当は優しい人…。」
梓「バカなことはやめてください先輩!」
梓が大声で叫ぶ。唯がやっていることを信じられないと言った表情を浮かべる
唯はそんな梓の心配を他所にどんどん追跡者との距離を詰めていく。
追跡者「……」
徐々近づく唯に警戒はするものの手は出してこない。二人の距離は5m…4m、ついには3mにまで縮まった。
唯は両手を胸に当て目を瞑る、そして────
唯「何でなんだろ 気になる夜 キミへの この想い便せんにね 書いてみるよ」
歌い始めた────。
唯「もしかして 気まぐれかもしれない それなのに枚数だけ 増えてゆくよ」
梓「この歌は…」
唯が作った放課後ティータイムの曲の一つ、「私の恋はホッチキス 」。乙女のふと気になる人を想って気持ちをとりあえず何かに表してみる…と言う恋をテーマしているこの曲は唯がメインボーカルをしていて、唯のお気に入りの曲でもあった。
唯「好き確率 割り出す 計算式 あればいいのに」
───────。
ウェスカー「何だ…この歌は」
脳髄にはっきり響いてくる歌声。全身に鳥肌が走る────
ウェスカー「そうか…そうだったのか!ははは…面白い…!」
こうでなくてはな…
最終更新:2010年03月05日 02:48