律(今日は私の誕生日)
律(せっかくなので有給をとってみたのはいいけど…)
律(澪…は仕事だろうし、唯やムギも仕事中のはず)
律(梓にでも連絡を入れてみようかな…)
ピンポーン
ヤマトの人「ヤマト便でーす」
律「あっ、はーい」ガチャッ
ヤマトの人「じゃあ、ここにサインしてもらえますか」
律「……はいっ」カキカキ
ヤマトの人「あっ、どうも。じゃあ荷物ここに置いときますね」
ヤマトの人「物凄く重いので気をつけてください。では」バタン
律「でっかいダンボールだなぁ……お、重っ!」
律「送り主は…おっ、ムギだ」
律「これはズバリ」
律「誕生日プレゼントだろうなぁ」
律「うぅ…なんて友達想いのいい奴なんだ」
律「じゃあ、さっそく開けてみよう」バリバリ パカ
紬「……」
律「……」パタ
紬「だ、黙って蓋を閉めちゃ嫌っ!」
律「だってなぁ…」
紬「えーっと。おはよう、りっちゃん」
紬「もうっ…昔みたいにムギって呼んで」
律「……」
紬「……」
律「……」
紬「あのっ…」
律「なに?」
紬「おトイレ」
律「…使っていいよ」
紬「……そうじゃなくて」
律「……じゃあなに」
律(ムギの奴何しにきたんだ…)
律(私がプレゼントでーす! ってか…)
律(ないな……いや、ムギならありえる)
律(そういえばムギ、ん? …メイド服…?)
紬「わっ!!」
律「うおぁぁああああああああああああ!!!!」
紬「りっちゃんいいリアクションよ!」
律「ふぅ、心臓が止まるかと思ったぞ」
紬「ふふふ。驚かし甲斐があるわー」
律「それでムギ、今日はどうしたんだ。まさか『私がプレゼントなのー』ってことか?」
紬「りっちゃん……ひょっとしてエスパー?」
律「いやいやいやいや、本当にそうなのかよ」
紬「うん。今日はりっちゃんにご奉仕しようと思って。迷惑だったかな?」
律「いや……びっくりしたさ。でも…」
紬「でも?」
律「嬉しいよ。きてくれてありがとう」
紬「じゃあさっそくご奉仕しなきゃ」
律「なぁ、その前に一つ聞いておきたいんだが」
紬「なぁに?」
律「私が家にいなかったらどうするつもりだったんだ?」
紬「りっちゃんなら自分の誕生日に有給取ると思ったの!」
律「エスパーかよ!」
紬「私、りっちゃんのことならなんでもわかるの」
律「え”っ」
紬「そんなことよりご奉仕しなきゃ。まずは紅茶をいれてあげるね」
律「……」
律(ムギが紅茶をいれはじめてしまった)
律(あっ、なんだかこの光景懐かしいなぁ)
律(ムギのメイド服姿を見るのはいつ以来だろう)
律(いつもあんな風に楽しそうにお茶をいれてたな……)
律(……)
紬「はいっ、どうぞ」
律「あっ、ありがとー」ゴクゴク
律「ぷはっ、やっぱりムギの紅茶だなー」
紬「ふふっ、りっちゃんおやじくさーい」
律「な、なんだとー」
紬「じゃあ次はお部屋のお掃除してあげるね」
律「えっ、そんなの別にいいよ」
紬「でも結構汚れてるよ。高校時代は結構綺麗だったのにね」
律「あぁ、仕事から帰ってくると掃除する気力もなくてさー」
紬「休みの日は休みの日で気力が沸かないんでしょ」
律「さすがムギ、よくわかっていらっしゃる」
紬「じゃあ掃除はじめー」
律(ムギのやつ本当に掃除をはじめちまった)
律(実に楽しそうだ)
律(……)
律(よしっ)
律「私も手伝うよ」
紬「えっ、りっちゃんは休んでてくれればいいのに」
律「ムギが楽しそうにしてるのを見たら、私も一緒にやりたくなってんだ。ほら、道具を貸してよ」
紬「やっぱりりっちゃんは性格がイケメンさんね」
律「そ、そんなんじゃないって」
紬「掃除終わりー」
律「随分きれいになったな」
紬「じゃあお昼ごはん作ってあげるね」
律「何を作るの?」
紬「オムライスを作ろうと思うんだけど、どうかな?」
律「おう」
紬「ふふーんふふふーん」
律(本当にメイドさんがいるみたいだ)
律(メイドさんと言えば)
律「ムギってメイド喫茶の経営をやってるんだよな」
紬「うん。女性客専用のメイド喫茶」
律「経営成り立ってんの?」
紬「うん。意外と需要あるのよー」
律「へぇ~、私にはわからない世界だな」
紬「残念。りっちゃんが店員さんやってくれれば、りっちゃん目当てのお客さんが増えるのに」
律「私じゃ無理だよ…」
紬「そんなことないと思うけど…。りっちゃんのほうはどう?」
律「私か…私は……」
紬「うん」
律「毎日結構たいへんだよ」
律「最近やっと研修期間が終わったんだけどさ」
律「最初はなにやっても上手くいかなかったんだ」
紬「うん」
律「で、毎日毎日仕事の山に追われて夜遅くまで残業する日々が続いたよ」
律「でも、最近はちょっとだけ仕事になれてきたんだ」
紬「ふぅん。よかったね」
律「それがそうでもないんだ」
律「慣れてくると、今度は新たな業務をやらされるから、結局仕事の山からは解放されないわけ」
紬「大変ね」
律「そういやムギはどうなんだ? 残業とか休みとか」
紬「私の場合、仕事は家に持って帰っちゃうから…」
律「それはそれで大変そうだな」
紬「そうでもないわ」
律「休みは?」
紬「げっきゅういちにちせい」
律「月給一日制?」
紬「ちがうちがう。月休一日制」
律「え”っ。でも定休日とか」
紬「納品があるから……改装とか店舗整備も必要だし」
律「うげぇっ、それはキツイ。私だったらもたないな」
紬「でも楽しいわよ。かわいい女の子に囲まれて働くのは」
律「わからねー」
紬「……できた!」
律「うおっ、なんだこれ」
紬「ケチャップでりっちゃんの顔を描いてみたのー。お店でもやってるサービスよ」
律「…ちなみに幾ら?」
紬「タダ……と言いたいところだけど、料金はオムライスに含まれてるわ」
律「……ちなみにオムライスのお値段は?」
紬「1,200円」
律「…微妙な値段だ」
紬「さぁ、召し上がれ」
律「いただきまーす」パクッ
紬「どうかな?」
律「うん。普通に美味しいよ」パクッ
紬「そう? それはよかった」
律「……手料理を食べるのって久しぶりだなー」
紬「作ってくれる人、いないんだ」
律「うん。…って私だって女だぞー。作ってあげる側だ!」
紬「自炊は?」
律「ごめんなさい。まったくしていません」
紬「そう…でも仕方ないよね」
律「うん。疲れて自炊する気になれないんだ」
紬「じゃあ今日は思う存分私の料理を食べて」
律「ああ」パクッ
紬「……」ニコニコ
紬「じゃあ次は耳掃除してあげるね」
律「え”っ」
紬「お店でもやってるサービスなのよー」
律「ちなみにお値段は?」
紬「650円」
律「微妙だ」
紬「はいっ、ここに横になって」ポンポン
律「…まぁいいか」
紬「むむむ。りっちゃん意外と耳垢たまってますね」カキカキ
律「そうなのか?」
紬「うん。お店に来る人でもこんなにたまってる人は珍しいわ」カキカキ
律「…ちょっと傷ついた」
紬「りっちゃんは繊細ねー」カキカキ
律「よせやい」
紬「じゃあ次は反対側を見てあげるね」
律「あぁ、頼む」ゴロン
紬「……」カキカキ
律「……」
紬「……」カキカキ
律「なぁ、ムギ」
紬「なぁに、りっちゃん」カキカキ
律「月休一日なんだろ?」
紬「うん」
律「月に一度しかない休みを私のために使ってよかったのか?」
紬「うん」
律「それは私がHTTの仲間だから?」
紬「うん。でも…それだけじゃないよ」
律「うん?」
紬「ねぇ、りっちゃん」
律「な、なんだムギ、突然顔を近づけてきて」
紬「私ね…実は…」
律「……ムギ」
紬「ずっとまえからりっちゃんのことが好きだったの」チュ
律「……」
紬「……」
律「……」
紬「……ごめんね」
律「……」
律(私、ムギにキスされた?)
律(キス…私のファーストキス)
律(ムギに、奪われた……)
律「……いつからなんだ?」
最終更新:2012年08月21日 02:36